外国人留学生に直撃!日本人学生のGood&Bad

Vol.3 関西学院大学 タル・トルヴァネンさん

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タル・トルヴァネン●1991年10月26日生まれ、フィンランド出身。高校時代、大阪府立千里高校に10カ月短期留学する。帰国後ヘルシンキ大学アジア学科に入学し、2012年関西学院大学商学部に留学。フィンランド語、英語、ドイツ語、スウェーデン語、日本語(関西弁)が堪能。15年に関西学院大学を卒業した後は日本での就職を希望。3人姉妹の次女で、姉も大阪に留学中。

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フィンランドで高校3年生の時に行った学祭の写真。卒業100日前を祝って記念祭を行ったのだそう。写真中央列、右から4番目(黒の丸えりのブラウス)がタルさん。

 

高校時代の思い出がつまった関西の地が忘れられず再来日

私は、フィンランドのノーシアイネンという人口4700人ほどの小さな町で、高校卒業まで過ごしました。小さいころから海外で暮らしてみたいと思っていたので、高校1年生の時、ニュージーランド留学を希望したのですが、偶然日本に行くことになり、何も知らないまま来日したんです。宝塚市(兵庫県)にホームステイし、大阪の公立高校へ高校1年の9月から10カ月通いました。フィンランドの9月に比べると、大阪はすごく暑くて、人が多い。電車通学も初めてで、毎日が驚きの連続でした。自己紹介とあいさつ程度の日本語しか知らなかったので、早口の関西弁はほとんど聞き取れず、英語以外は、右も左もわからないまま、歴史や生物の授業に参加。半年くらいたち、だんだん日本語に慣れてくると、とても暮らしやすい国であることに気づき、もっと日本の社会を勉強したいと思うようになりました。

 

本当は、そのまま日本の大学に入学したかったのですが、親孝行のため一度帰国し、猛勉強してヘルシンキ大学に合格しました。フィンランドの大学入試では高校3年間で習ったことはまったく出題されません。ですから、現役高校生は十分に勉強する時間がなく、浪人するのが普通です。ヘルシンキ大学アジア学科に、現役で合格したのは私一人で、最年少でした。入学すると、すぐに留学できる日本の大学を探し、半年後に関西学院大学商学部に留学しました。関西学院大学はとても美しいキャンパスで、構内を歩く学生が皆この大学に通っていることを誇りに感じているようです。ヘルシンキ大学には自分の大学のTシャツや文房具を売っているようなお店はなかったので、とても新鮮でした。商学部に決めたのは、日本の会社経営に興味があったからです。1、2年の時にどんなゼミをとろうか迷っていましたが、3年生になって、則定隆男教授の国際ビジネスコミュニケーションに決めました。交渉論や契約取引のコツをゲーム形式で学ぶなど、とても面白く、楽しい日々を過ごしています。

 

面倒見がいい大学と受け身の学生、授業中に寝ている生徒の多さにびっくり

初めて高校に留学した時、授業中に寝ている生徒がいることにとても驚きました。フィンランドでは高校まで学費は無料ですが、日本では両親が学費を払ってくれているのに、寝るなんてもったいないと思います。大学に留学して、授業中熟睡している学生がさらに増えていて、びっくり。寝ている学生を先生が注意しないことも驚きです。フィンランドでは、授業中に寝ていることが先生にばれたら、高校生でも大学生でも単位がもらえません。実際、高校のドイツ語の授業で寝ている生徒を見つけた先生が切れて、その生徒は再履修になりました。ヘルシンキ大学の学費は年間約8000円で、その100倍以上の学費を出す日本の大学で授業中に寝るというのは考えられません。フィンランドの授業は参加型で、生徒と先生がコミュニケーションをとりながら授業を進めますが、日本の授業は受け身が多いので眠くなってしまうのかもしれませんね。

 

それから、日本の学生は外国語の課題が出るのをとても嫌がりますね。ヘルシンキ大学では、母国語のフィンランド語で行われる授業数は少なく、海外から来た先生の授業はだいたい英語です。当然、レポートや課題も英語で提出することになります。私自身、最初の半年間で、40ページは英語で、10ページはフィンランド語でレポートを書きました。医学部ではそれがドイツ語になるなど、担当の先生の言語に合わせて勉強します。日本の学生は、参考文献を英語で読むのさえ嫌がりますよね。

 

一方、日本の大学はとても団結力が強いところが魅力的です。関西学院大学が特別なのかもしれませんが、大学と学生が一体となって、部活動や就職活動に取り組む姿勢は、素晴らしい。卒業生の結束が強く、入社後もずっとその人脈が続きます。履歴書の書き方まで学校が面倒をみてくれるのは、心強いですね。

フィンランドでは就職に関して、大学は何もしてくれません。企業が学校で会社説明会を開くなんてあり得ません。卒業後、就職したければ、自分で新卒募集をしている企業を探し、自分でドアと叩かなくてはいけません。たまたま自分がやりたい職種に空きがあれば面接してもらえますが、運に左右される要素が大きく、就職活動はとても大変です。

 

卒業後は日本で暮らしながら、国際的なビジネスの世界で働きたい

大学卒業後は、日本にある外資系企業に就職したいと考えています。外資系企業にこだわるのは、実力主義だから。やればやるだけ評価されるというところで勝負したいと思います。生活のベースを日本に置きながら、外国へ出張しビジネスを展開していきたいです。なぜなら、日本は世界で一番暮らしやすい国だと思うから。コンビニエンスストアは24時間営業しているし、電車でどこへでも行けるし、とても清潔で安全な国です。フィンランドの首都ヘルシンキでは、スーパーマーケットは夕方には閉まってしまうし、土日もお休みの店が多い。母国のフィンランドには何歳になっても帰れますから、若いうちは日本に住んでいたいですね。

 

「若いうち」とこだわるのは、社会の構造の違いからくるのだと思います。フィンランドでは、ヘルシンキ大学アジア学科で私が最年少なことからもわかるように、大学入学や就職の年齢が限られていません。大学には、子育て中の30代もいれば、定年後に文学を楽しみたくなって文学部に入学してくる老婦人もいます。学びたい人が学びたい時期に集まってくるのが大学です。私の姉も一度大学を卒業し働いていましたが、20代後半で大学へ戻りました。日本は新卒で働けるのは20代の前半のごく限られた期間だけです。つまり、新卒の時に日本で就職して、しばらく働いた後でフィンランドの大学に戻ることはできても、その逆は、社会のシステム上とても難しいと思います。なので、まずは日本での就職活動を頑張りたいですね。

 

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タルさんに質問!

Q1.アルバイトをしていますか?

フィンランドにいたころから、「自分のお小遣いは自分で稼ぎなさい」という親の方針だったので、アルバイトは常に探していました。フィンランドでは飲食業でのアルバイトは、資格が必要です。そのため、スーパーのレジ打ちなどの募集に学生が殺到し、なかなか希望のアルバイトを見つけられないのが現状。日本では、コンビニのレジ係とフィンランド語の教師をしています。コンビニのアルバイトは新しい日本語を覚えるのに役に立っていますね。また、北欧家具やヘルシンキが舞台となった映画『かもめ食堂』やムーミンの影響なのか、小学生から熟年女性までフィンランド語を習いたいという人が少しずつ増えているようで、とても楽しく教えています。

Q2.フィンランド語は難しいですか?

ヨーロッパの言語の中ではフィンランド語は特殊な言語で、英語のようにYesとNoがはっきりしていません。あいまいな表現が多いという点では日本語に似ているところがありますね。それから、日本語の母音のうち、「あ」「い」「え」「お」の発音はフィンランド語と似ていて、同じような発音の単語があります。

Q3.日本の英語教育についてどう思いますか?

フィンランドでは小学校3年から英語の授業が始まります。大学までの英語の授業数は、日本とほぼ同じです。でも、日本の英語の授業は暗記が中心で、単語の穴埋め問題が多いのに対し、フィンランドでは、英語で文章をつくるのが中心で、単語そのものよりそれを使う能力を鍛えられます。日本は多くの単語の意味は知っていても、英語で自分の考えを文章にする訓練ができていないのではないでしょうか。

Q4.日本で印象に残った出来事はなんですか?

2013年の天神祭(大阪天満宮)で、屋台の人に「すみません、これいくらですか?」と日本語で話しかけたのですが、相手の方が「No English」「Yes….Water」とパニックになってしまって・・・。
仕方がないので「これ、なんぼ?」と関西弁で聞きなおしたら、「Oh!えっとfive hundred yen」と必死で英語に直して答えようとしているので笑ってしまいました。金髪や白人に、対する先入観が強いですね。
日本のお祭りが好きで、浴衣を着て参加することもあります。写真は京都嵐山に友人と行ったときのもの。(写真左がタルさん)
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Q5.日本の学生にアドバイスをするとしたら?

フィンランドでは18歳を過ぎたら大人として扱われます。日本は親や大学の面倒見がいいせいか、大学生が精神的に幼いと感じますね。私は3年生ですが、同級生は「男性」という感じではなく「男子」で、若いです。私が高校時代に留学したのをきっかけに姉は大阪に留学し、2014年フィンランドで歯学部に合格した妹もいずれドイツかアメリカへ留学したいと言いだしました。母は「あんたのせいだ」と嘆いていますが、日本の若者も、もっと今しかできないことにチャレンジすればいいのにと思います。留学ではなくても、長い休みを利用して学生時代にしかできない旅をするなど、世界に目を向けることをお勧めしたいです。

取材・文/川瀬美加 撮影/笹木淳

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