外国人留学生に直撃!日本人学生のGood&Bad

Vol.6 芝浦工業大学 フレデリコ・ガイヤさん

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フレデリコ・ガイヤ●1992年7月11日生まれ、ブラジル出身。高校まで北東部のテレジナで過ごし、兄と同じ国立カンピーナ大学へ進学。化学工学部専攻で入学したが、2年修了時に医学部に転部。第二外国語で日本語を選択し、ブラジル政府派遣留学生プログラム「国境なき科学」に応募。2014年3月から芝浦工業大学システム理工学部に1年間留学中。ニックネームはブラジルではフレッド、日本ではガイヤ。

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芝浦工業大学で音楽クラブに所属し、ピアノを担当している。写真は来日初コンサートで、芝浦工業大学の齋藤記念館で実施したときのもの。

 

疲弊していた大学生活を小休止したくて海外研修プログラムに挑戦

ブラジル北東部のテレジナという町で育ち、2009年に私立の高校を卒業しました。10年にブラジルの大学入試制度が大きく変わり、多くの大学の入学試験が共通問題になったのですが、僕は変革の前年だったので、10大学を受験。自分が何を専攻したいのかわからず、一つの大学でも複数の学科を受験したので、11月に高校の卒業式が終わると毎週、毎週入試で大変でした。6校に合格し、兄が通う国立カンピーナ大学への進学を決意。兄は数学科ですが、僕は医学部と化学工学部に合格し、迷いましたが化学工学を専攻することにしました。兄も僕も高校までは私立で、大学は国立です。ブラジルでは多くの家庭が、国立大学に合格するには、私立の高校に進学させるのが理想だと考えています。ブラジルの学校は、新学期は2月に始まり6月で前期が終了、夏休みを挟み、後期は8月から12月前後までで、卒業式は11月末が多い。年度の変わり目の休みが一番長くて3カ月くらいあります。

 

化学工学部では、大企業の工場での研修を経験。工場という空間で一日中閉じこもる日が何日か続き、一日中誰にも接することなく、何年も工場に閉じこもって研究を続けていく生活は、自分には向いていないことがよくわかりました。もっと人とコミュニケーションをとり、自分の仕事が役に立っていると実感しながら仕事がしたいと、医学部へ転部。ブラジルの大学では、入試の段階で学部を決めなくてはいけないという点は日本と同じですが、入学後の転部はそんなに珍しいことではありません。多くの学生が今の学部が自分に合っていないと感じたらすぐ、転部。3年生までにすでに5回も専攻を変えた友人もいますよ。ブラジルの国立大学は学費が無料なので、経済的な負担はありませんが、僕が化学工学部に在籍した2年間で取得した単位のうち医学部で必要な科目は統計学のみ。そのほかの単位を最初から取り直さなくてはなりませんでした。でも、化学工学部に在籍した2年間は無駄ではなかった。化学の知識を得たことに加え、働く意義や人生について深く考える貴重な時間だったと思っています。医学部は6年制で、僕は13年に医学部2年生まで修了し、日本に留学しました。

 

留学には2つの理由があります。一つには、入学以来、化学工学部、医学部それぞれ2年ずつ4年間、週40時間の授業を取り続けて、一息つきたくなったこと。僕は医者というのは机の上の研究だけじゃなくて、実際の社会と結びつく社会学や語学なども勉強するべきだと考えて、空いている時に医学部の必須科目ではない授業も履修。それから毎週土曜日には病院のボランティアスタッフとして、長期入院で学校へ行けない子どもたちの勉強を手伝い、苦痛をやわらげるために一緒に遊んでいました。このボランティアには、医学生以外の情報処理学や教育学専攻の学生も参加できるシステムでとても社会に役立っています。

 

もう一つは、日本語と出合ってしまったから。大学に入学し、何か新しい語学を始めようと、日本語を取りました。医学部の授業は毎朝8時~12時と、14時~18時ですが、ちょうど12時~14時に日本語の授業があったので履修することに。日本語の授業がある週2回は朝8時~18時まで授業があって昼食がとれないのですが、日系二世の鈴木恵美子先生の授業がとても面白い授業で、日本に対する興味は増すばかり。ついに、ブラジル政府による国際的に活躍する科学者を養成する「国境なき科学」の海外研修プログラムに応募し、芝浦工大への留学が決まりました。

 

何もかも正反対のブラジルと日本、中間の国があるといいかも

芝浦工大に留学してまず驚いたのは、施設に最先端技術が備わっていること。床から天井まで、空調、パソコン、トイレにいたるまですべてがハイテク。世界一の水準ではないかと思います。また、キャンパス全体が自然と調和していて、校舎の前のちょっとした緑のスペースなど学生にとって居心地がいい空間が多い。カンピーナ大学は医学部から体育学部まで備える総合大学で、巨大な敷地ですが、建物は無機物に並んでいるだけで、光や風などの自然との融合は考えられていない気がします。

 

授業では、日本人の規律の高さがとても好きです。ブラジルでは、例えば定員120名の授業の始業時には、1割の20名位の学生しか出席していなくて、残りは遅刻。3年生の授業は、どれも同じ状態で「一体、この人たちは卒業後、どんな医者になるのか」と心配になります。授業が始まっても、私語が多く、立ち歩いたり、途中退出したり。先生は「来るものは拒まず、去る者は追わず」。注意してトラブルになると、講義ができなくなるので、見て見ぬふりですね。国立大学ですから教授は公務員で、学生は学費が無料で、テストにさえ合格すれば単位はもらえるので、どちらもなれ合いの関係。入学時の書類には「進級には75パーセントの出席が必要」と書いてありますが、誰も従わない。小学校から高校まで、遅刻、私語、早退は日常茶飯事で、大学は違うだろうと思っていましたが、見事に期待を裏切られました。日本に留学し、初めて、チャイムが鳴る前に全員が着席している授業を経験し、「あぁこれこそ僕が望んでいたことだ」と実感。今、ブラジル人と日本人が半々で履修している授業を取っていますが、日本人は開始10分前、ブラジル人は10分後と、きれいに分かれて着席します。時間の感覚が20分、確実にずれていますね。レポートや宿題の提出も同じで、ブラジルでは締め切りを守る生徒の方が少ないです。それに対して教授は、あきらめの境地か、大事なことだとは思っていないのか、何も言いません。ところが、日本では、1時間でも締め切りを過ぎたレポートは受け取らない先生がいるのを見たことがあります。とても驚きました。

 

授業中、日本の学生は私語をしませんね。寝ている学生はいますが、それはブラジルも同じ。寝ている学生は自分が損をするだけだけど、私語は周囲に迷惑がかかるので、これも日本の方がいい。ただ、授業が教授からの一方通行で受け身すぎるなぁと感じることはあります。日本人に「どうして、質問しないの?」とたずねたら、「恥ずかしい。わからないことがあったら授業の後で先生に質問しに行く」と答えました。ブラジル人はワイワイガヤガヤとみんなの前で質問するのが好きなので、精神面の違いが授業態度に出るのだと感じました。

 

一方、日本の大学の悪い点は、生徒がとても孤立しやすいということです。僕は大学構内を1人、2人でしか歩いていません。もし、ブラジルで、あきらかに外国人とわかる転校生がいたら、絶対に一人にはなれませんよ。話しかけたり、ランチに誘ったり、ほかの外国人と一緒のホームパーティに連れて行ったり…。外国人が一人で学食に座っていたら、周りに幾重にも輪ができ、そのテーブルがブラジルの学生で埋まってしまいます。でも、日本では、カフェや電車の中はとても静かで、僕はときどき学食で一人で昼食をとることがあります。一緒にいても、大切なことはメールで伝え合い、携帯ばかり気にしている。ブラジルは逆で、映画館、電車の中、レストランでも、大きな声で話しうるさすぎる。ちょうど中間くらいの国があるといいですね。

 

「生まれてくる国を間違えた」と思うほど日本になじむ日々

週末は気分転換に都心のライブハウスに行くことが多いのですが、電車の中など公共の場では、肌や髪の毛の色が違う人種に対しての偏見を感じることがよくあります。ブラジルは人種のるつぼと言われるように、あらゆる人種が混在していますから、周囲と違っていて当たり前。14年のサッカーのワールドカップで多くの日本人がブラジルへ行きましたが、日本人という外見で偏見を受けるようなことはまったくなかったと思います。日本には異人種に対する偏見がありますね。差別というのではなく、区別というか、「違う」から遠巻きに見てしまう。ブラジル人は「違う」から近づいていくのに。それは、今、住んでいる学生会館でも同じで、日本人とブラジル人の学生の両方がリビングで一緒になることがあっても、けっして日本人から「今日どうだった?」と話しかけてくることはなく、はっきりと分かれて座っています。それがさびしい。

 

でも、学校の音楽クラブに入っているので、日本人の友達はすぐできました。ブラジルの大学ではサッカーがやりたい人は体育学部、音楽が好きな人は芸術学部というように、娯楽が目的のサークルは存在しません。音楽クラブでは週2回練習があって、合宿や他大学でのコンサートなどにも参加しています。僕はピアノ担当。ジャズの曲を中心に、とても楽しく演奏させてもらっています。

 

僕はよく周囲に「間違った国に生まれてきた」とか「生前は日本人だったのかも」と冗談を言いますが、それほど日本での生活は肌に合っています。学生生活から食事まで、違和感がないというより、これが望んでいた生活だと思うことばかりです。ブラジル人は、年一度のカーニバルの1週間のために生きている人が多いですが、僕には、カーニバルより、和太鼓と提灯(ちょうちん)でゆっくりしたリズムで踊る盆踊りの方がいい。教会より、寺や神社に行った方が、心休まります。それほど日本が好きで、現在の研修留学を修了後も一日でも長く日本にいたい。ブラジルでは医学生なので、今後、日本の医学部に留学することになると、日本で医師免許を取らなければいけないなど、ハードルは多いですが、それでも日本に滞在したいので、情報を集めています。周囲は「医学部生なのに、なんで留学?」とあきれ顔ですが、親は「あなたの人生なのだから、大いに楽しみなさい」と目をつぶってくれていますね。自分が「幸せになりたい、幸せでありたい」。そのためにも、一日でも長く日本にいられるようにしたいですね。

 

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フレデリコさんに質問!

Q1.時間があるときは何をしていますか?

映画を見るのが趣味で、高校の時は週1回のペースで映画館へ足を運んでいました。ハリウッド映画やブラジル映画など、面白そうだと思ったら何でも。最近の映画で一番気にいっているのは、『ブロークバック・マウンテン』(2005年アメリカ)。ちょっとひねったドラマが好きです。日本に来てからは映画の料金がブラジルの2、3倍するので、なかなか見に行けませんが。高校時代から見だめた映画の一覧をリストにしてパソコンに保存してあります。

Q2.日本との出合いは?

最初に日本文化に触れたのは、1990年代にブラジルではやったアニメ『聖闘士星矢』です。でも、ポルトガル語で見ていたからそれが日本製とはまったく知らなかった。大学生になって、日本語の授業をとるようになってから知りました。

Q3.日本食は好きですか?

納豆、豆腐、ソバが僕の好物ベスト3です。実は、僕は生まれてからずっとベジタリアン(菜食主義)です。家族全員がベジタリアンで肉は食べたことがありません。大学のあるカンピーナには、ベジタリアンレストランが3軒しかなくて、寿司店より少ない。だから日本にいる方がずっと食事は体に合っています。でも、日本に来てからは何でも挑戦してみるつもりで、生まれて初めて肉を口にしました。自分から積極的に食べることはありませんが。コンビニにも、納豆、豆腐、ソバは必ず置いてあるし、24時間好きな時に食べられて、幸せです。

Q4.日本の学生にアドバイスはありますか?

英語をもっと使いなさいと言いたいです。僕も英語は母国語ではありません。中学から高校まで約5年間、外国語として授業がありましたが、それ以降大学では4年間、まったく授業で取りませんでした。芝浦工業大学で英語の授業を受けるようになり、再び英語に触れるようになりました。日本人の学生と条件はほとんど同じなので、恥ずかしがらずに、もっともっと外国人に英語で話しかけた方がいい。英語はテストの点数をとる手段ではなく、コミュニケーションの手段です。話しかけなければ、次の展開は生まれない。それから、大学生で長い休みがあるうちに、日本国内でもいいからどんどん旅行してみるべきです。自分の町で、知っている顔だけに囲まれ、アルバイトに追われるのはもったいない。僕は雪がない国から来たので、冬になったら北海道の雪まつりに行きたいと思って、今から計画中です。そのほかにも、京都の伏見稲荷(写真)や清水寺にも行きました。日本の学生ももっと自分の国を知る機会を増やしてほしいと思います。

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取材・文/川瀬美加 撮影/刑部友康

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