外国人留学生に直撃!日本人学生のGood&Bad

Vol.8 産業能率大学 バトエルデネ・トゥブシンさん

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バトエルデネ・トゥブシン●1995年2月20日生まれ、モンゴル出身。首都ウランバートルの高校を卒業後、得意の数学を生かしモンゴル国立科学技術大学の数学エンジニア科に進学。在学中、日本への留学試験を受け、2013年4月から日本に留学。現在、日本語能力検定試験1級を目指し、猛勉強中。

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高校時代にはバスケットボール部に所属しセンターポジションで活躍、地区大会で優勝した。最前列の一番左がバトエルデネさん。

 

親戚のお兄さんの影響で日本へ

日本の大学で、モンゴルからの留学生だと自己紹介すると、「小学校は馬に乗って通っていたの?」とか「ゲルに住んで遊牧しているの?」などと聞かれることが多く、思わず苦笑いしてしまいます。私が生まれたウランバートルは、モンゴルの首都で、東京ほど規模は大きくありませんが、車が走りビルが立ち並ぶ都会ですよ。

 

モンゴルの教育制度は、8歳で小学校に入学し、1年生から10年生までの小・中・高が一貫している10年制です。私は6歳の時に飛び級で入学が認められました。英語や中国語は1年生の時から8年間習いましたが、日本語の知識はまったくありませんでした。

 

留学へのイメージが具体的に膨らんできたのは、日本へ留学していた親戚のお兄さんから直接、日本の様子を聞いた中学時代です。留学中に日本人にとても親切にしてもらった話や日本の礼儀作法の話をいろいろ聞くうちに、自分もいつの日か日本に留学したいなと思うように。日本の大学の留学生試験を受けるためにはモンゴルの10年の義務教育期間では足りないので、卒業後は自分の得意科目の数学を生かして、国内に10校ある国立大学の中から科学技術大学に入学し1年半数学エンジニアの勉強をしました。そして、日本への留学試験の条件を満たしたので、試験に挑戦。2013年の春から東京で留学生活を始めました。実際にこうして日本で生活してみると、お兄さんの言葉の通りだったと納得することが多い毎日です。

 

モンゴルでは英語や中国語を学校で習うので、アメリカや中国の大学に留学する人もいますが、最近は中国に並び、日本への留学が人気です。特に、モンゴルはPCやスマホの基板となるレアメタル(希少金属)の産出国なので、鉱山学を勉強するために足利工業大学や信州大学、高知大学などに留学している同級生がいます。

 

コミュニケーションの仕方が異なる日本の大学生

日本語があまりしゃべれないまま、東京での大学生活が始まったので、最初は大変でした。大学内にモンゴルからの留学生は私一人なので先輩からの情報はなくて、同じ学部の台湾や中国やミャンマーなどのアジアの国々からの15人の留学生に、いつも助けてもらっています。

 

生活費を稼ぐために、すぐにでもアルバイトを始めなくてはいけなかったのですが、求人情報を見て電話をしても日本語がうまく話せないので、なかなか仕事が見つからず苦労しました。最初は運送業や建築業などの現場で単純な作業をしていましたが、大学で日本語を勉強するようになってからは、コンビニでアルバイトができるように。新しい日本語をたくさん覚え、日本の社会を知る機会が増えてうれしいです。

 

私はたまたま入学式の日に日本人のグループと友達になれたので幸いでしたが、一般的に日本の学生は、知らない人とあまりコミュニケーションを取ろうとしないですね。休み時間やランチタイムには、いつも決まった仲間と話をしたり食事をしたりしています。積極的に知らない人に話しかけようとする人はいないので、留学生は一人で孤立してしまいがちです。モンゴルでは、隣の席に座ったら授業の話や天気の話をしたり、お互いの国の話をしたりするので、食堂や休み時間の教室で、一人になることは少ないと思います。異文化の友達と交流できるいい機会なのに、興味がないのでしょうか。残念です。

 

モンゴルでは、私もそうでしたが、中学生の4割くらいは、アルバイトをしています。仕事を通じて社会に接すると、大人と交渉し、自分とは異なる境遇の人とも共同で作業をしなくてはなりません。日本の学生は学校だけで完結していて社会と接することが少ないので、モンゴルの学生より精神的に幼いのかもしれません。

 

卒業式には両親への恩返しをしたい

一方で、講義に臨む日本の学生の態度は素晴らしい。授業はあいさつから始まり、先生には敬語を使い、師弟の関係が自然に成り立っているのがすごいと思います。モンゴルでは、教室はいつまでたってもざわついているし、若者は規律とか体制に常に反発しています。政治や教育制度に不満があるのです。だから先生方も授業が終わるとどこかへ逃げるようにして教室から出ていってしまう。日本で当たり前に行われていることが、モンゴルではとても難しいことなのです。

 

先日、モンゴルに一時帰国したのですが、以前よりも強くモンゴルの若者の礼儀の悪さを感じました。社会が荒廃しているというか、現状に不満が高まっている印象を受けましたね。きっと、私の親戚のお兄さんも日本に留学した直後に同じことを感じたのだと思います。若者が社会全体のことを考えて行動するというよりは、自分の目先の利益のことにばかりにとらわれているように感じたんです。

 

日本の大学は、年次ごとに就職セミナーを開催したり、OB・OG訪問があったりととても面倒見がいい。学生も安心して大学に相談する体制が整っていると思います。私は卒業するまでの3年間で、自分が将来どんなビジネスを始めたいかをじっくり決めたいと思っています。もし、自分でビジネスを始めることができなかったら、中国語や英語、モンゴル語、日本語などの語学力が生かせるような会社に就職したい。ただ、ゆくゆくはモンゴルの特産で日本でも人気があるカシミヤの会社を日本で展開したいというのが夢です。卒業式には、まだ日本に来たことがない両親を日本に招き、いろいろ案内して恩返ししたいと思っています。

 

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バトエルデネさんに質問!

Q1.日本にきて一番驚いたことは何ですか?

モンゴルには電車がないので、成田空港に到着後、電車に乗った時、切符の入れ方、出し方すらわからなくて焦りました。それから、東京で夜に空を見上げた時に星が出ていなくてびっくりしました。

Q2.日本では食事は自炊していますか?

実は高校時代から5年間付き合っている彼女と二人で「日本へ留学しよう」と決め、一緒に住んでいます。彼女は、別の大学に通っていますが、お互いの両親公認です。だから、朝夕食やお弁当はお互いが作ったモンゴル料理が中心。海のない国で育ったせいか、私は魚が苦手なので肉料理が多いですね。

Q3.日本の食事はどうですか?

ラーメンやそばがとてもおいしい。モンゴルにもラーメンはありますが、まったく違います。日本のラーメンは世界一おいしいと思います。モンゴルは牛乳がおいしいと言われているので、チーズやバターなどの乳製品は濃厚でおいしいです。日本では手に入りにくいので、時々モンゴル産のチーズが懐かしくなります。

Q4.モンゴル時代から続けている趣味はありますか?

中学時代からずっとバスケットボールの選手でした。最近、モンゴルの学生の間でバスケットボールがはやってきているのです。日本の大学では週1回くらいの割合で、バスケットボールのサークルに参加しているので、スポーツを通じて新しい友人が増えました。

Q5.日本で行ってみたいところはありますか?

一番行きたいのは沖縄です! モンゴルは内陸国で海が近くにないので、実際に海風を感じたり、砂浜を歩いたりしたい。モンゴル人にとって常夏のビーチは永遠の憧れです。次に行きたいのは真逆になりますが、北海道。2014年の冬、東京で雪が降ったのですが(写真)、冬はマイナス30度近くまで気温が下がり空気が乾燥しているモンゴルの雪と違って、水分が多くて、すぐ溶けてしまう雪だったので驚きました。北海道はパウダースノーで、モンゴルの雪質に似ているのではないでしょうか。実際に行って確かめてみたいのです。

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取材・文/釣田美加 撮影/刑部友康

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