外国人留学生に直撃!日本人学生のGood&Bad

Vol.9 早稲田大学 李 侊玄(イ・グァンヒョン)さん

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イ・グァンヒョン●1992年11月17日生まれ、韓国出身。2011年、韓国・大邱(テグ)広域市の難関公立高校を卒業後、日本への留学試験に挑戦。13年、早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科へ入学。16年度は、早稲田大学を休学し、兵役のため韓国で軍隊へ入隊し、2年後、早稲田大学に復学する予定。現在、大学入学後に始めた中国語とともにフランス語を学習中。

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日本の大学への留学準備のため釜山で日本語を勉強していたころ。留学のきっかけを与えてくれた姉(右)と。

 

留学のきっかけは、日本のアイドルの大ファンの姉が見る日本のテレビドラマ

日本びいきは、家に1台しかないパソコンで、いつも日本の芸能番組を見ていた姉の影響でしょうか。ドラマ『金田一少年の事件簿』に出てくる「謎はすべて解けた」などの決め台詞を聞いて育つうちに、外国語としては英語より日本語の方が自然に身についたようです。

 

自分では漠然と考えていましたが、日本への留学をはっきりと両親に話したのは、中学2年の時。両親は反対して怒るというよりびっくりしていましたね。生まれ育った大邱は、韓国では第三の都市とされていますが、ソウルや釜山に比べるとかなり田舎で、ほとんどの同級生が大邱で一番いい大学を目指して勉強していました。ソウル大学へ進学する人も多くはいません。両親は、私も大邱で一番の高校に合格し、そのまま大邱で一番の大学へ進むとばかり思っていました。しばらく沈黙が流れた後、父は「日本の大学に合格したらサポートするが、留学に反対も協力もしないから勉強法など自分で責任持って決めなさい」と言ってくれました。それで、それまで通っていた韓国の進学塾をやめて、高校入学後は、自分で留学の受験勉強を開始。韓国語の高校の授業を一人だけ日本語でノートを取ったり…。家族旅行ですら海外に行ったことはありませんでしたが、高校1年生の時に一人で東京に来てみました。まだ日本語が不自由で、成田空港から大田区(東京都)まで8時間以上かかりましたが、楽しかった。翌年は、日本を南北に歩いてみたいと思い、高知から青森までの一人旅も経験。この旅行で日本への留学は揺るぎないものになりました。大邱では外国の情報が入りづらかったので、高校卒業後は釜山で1年間勉強することに。通っていた高校から韓国の大学に進学しなかったのは自分だけです。

 

私費留学だったので、親の経済的負担を考え国立の一橋大学と、国立に比べて受験科目数が少ない早稲田大学を受験。浪人してからは早稲田一本に絞り、2013年に第1希望の政治経済学部に入学しました。父がサムスン電子の系列会社で働いていて、同社の李 健熙(イ・ゴンヒ)会長も早稲田大学OBとして有名なので、合格した時はとてもうれしかったです。

 

自由度が高い日本の大学で自分らしさを追求

受験戦争が激しいことで有名な韓国ですが、実際に部活動などの学園生活を楽しめるのは中学校までです。高校に入ったらひたすら勉強。進学校ならなおさらです。私の高校は放課後4時くらいから補講が始まり毎日深夜12時まで続きました。それから塾へ行って深夜2時ごろ帰宅する同級生もいましたね。少しでも良い成績、偏差値の高い大学、優良企業に就職とずっと追い立てられて学校生活が続いていきます。日本の大学生は、もっと自由にのびのびとしているように感じられます。高校生でも部活に励んだり、バイトをしたり、旅行をしたり。大学生は良い会社に入りたいというより、自分が何をしたいかということに重きを置いているように見えます。韓国の学生が他人の目、評価を意識して勉強するのに対し、日本の大学生はもっと自発的です。自分にとって今、何が大切か、何を学びたいか、どう生きたいかを意識しながら学生生活を送れる。私自身、周りの目はあまり気にならないし、自分が気にならない人からはどう思われても関係ないというタイプなので、日本の大学はかなり居心地がいいですね。

 

授業は、板書をしてくれる先生はいいのですが、パワーポイントやPDFを投影して授業をされるとノートを取れなくて大変です。韓国からの留学生は、学部生200人のうち10名ほどですが、みんなで助け合っています。儒教の影響があるのかもしれませんが、韓国では先輩、後輩のつながりをとても重んじるのです。先人を尊ぶ。就職も先輩に引っ張られて入社ということが多いです。自由さがなくても、高学歴にこだわるのは、そうした人脈が得やすいからだと言われています。韓国の大学は難関校であればあるほど、夢が持ちにくいかもしれません。

 

自分の将来をゆっくり考えるいい機会になる兵役制度

16年度は、大学を休学し韓国へ戻り2年間の兵役を受けます。韓国で男子として生まれてきた時から徴兵制があるのは当然だと考えてきたので、行きたくないというような否定的な考えはありません。北朝鮮とは陸続きなので、派兵に対して備えるというのは、当然のことなのです。日本は周囲に海がある島国なので派兵に備えるという感覚が、韓国とは少し違うかもしれませんね。在学中にあえて行くのは、年齢的にあまり遅くならない方がいいと感じたからです。

 

兵役は嫌なことばかりではないんですよ。もちろん、訓練中には殴られたり厳しい言葉で叱られたりすることもありますが、先輩と男同士24時間、同じ釜の飯を食べて生活するというのは貴重な経験。自分の将来や人生についてゆっくり考える時間もたっぷりあります し、兵役を終えた先輩の話を聞くと有意義だったということが多いですね。兵役を終えた後は早稲田大学に戻り、新しい自分が留学生活をどう思うのか、不安だけど体感してみたいと思っています。

 

女性には兵役がないので、就職したときの給与体系が異なります。男性新入社員には兵役分の加算があるのに、女性にはない。これに対して、出産した女性には加算がないのは不平等などという声が聞かれます。それと、韓国の高学歴の女性は保守的な人が多いように思います。良い大学に進学し優良企業に就職する良き伴侶と結婚し、出産退社というのが一般的です。日本の女子学生の方が、将来について選択の幅が広いように感じます。

 

早稲田大学に復学した後はきちんと卒業する予定です。卒業後は、日本で就職できたらいいですね。父の定年がちょうど同時期なので、早く安心させたいんです。早稲田大学では1年から日本語と中国語を勉強していますが、東アジアの懸け橋になれるような仕事ができればいいですね。

 

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李さんに質問!

Q1.日本で一番お気に入りの場所はどこですか?

青森です。冬に行ったのですが、大きな除雪車があっという間に道の両脇に雪を積み上げ2~3メートルの雪の壁になっていくのが面白くてずっと見ていました。故郷の大邱は内陸なので冬の気温は低いですが積雪はないので、初めて大雪を体験しました。

Q2.お気に入りの日本の料理は?

焼き魚定食です。特に脂ののったサバ定食。お味噌汁と白米があれば言うことないですね。お寿司も大好きです。焼き肉も好きですが、韓国では大きい肉を焼いてからハサミで切って食べるのが普通ですが、日本ではあらかじめ小さく切ってあるので食べた気がしないんです。巻く野菜の大きさに合わせて自分で切りたいので、あまり日本の焼肉屋には行きませんね。

Q3.アルバイトはしていますか?

1年の時は牛丼屋でアルバイトをしていました。その時、酔っ払いにひどく絡まれてしまって…。一時期かなり日本人恐怖症みたいになって落ち込みました。その後、コールセンターにアルバイトを変えて、今はファストフード店で働いています。

Q4.影響を受けた本はありますか?

高校生の時に、東アジア情勢について書かれた『日本はなぜ?韓国はどこへ?』という本を何度も読みました。今後のアジアの成長は、日本、中国、韓国の連帯が欠かせないと思いました。それぞれの国がいいパートナーになるために、自分が学んできたことを社会に役立てたいと思っています。

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Q5.英語は得意ですか?

韓国では小学校3年になると週2回の英語の授業が始まりました。韓国の英語は受験英語なので、全然しゃべれるようにならなかったのですが、留学した1年目は留学生会館にいたので、世界各国から来ている学生と話すのに英語という共通語が必要だと実感しましたね。英語よりは日本語の方が得意なんですが、新たなことに挑戦しようと2015年度はフランス語を履修しています。

取材・文/釣田美加 撮影/刑部友康

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