【ベトナム編】“日本人英語”に自信を持とう

Reported by 回遊魚
ベトナムのハノイにある日系オフィスに勤務。現地では、ローカルフードの食べ比べや、テニス、写真撮影、旅行を楽しんでいる。

文法の間違いや発音は気にしなくても大丈夫

こんにちは。回遊魚です。今回は、英語の勉強法についてお話しします。

英語について、まず私が声を大にして言いたいのは、「日本人英語」でもいいから、臆せずに自信を持って話そうということ。文法の間違いを恐れ、発音がネイティブのようでないことを恥ずかしがるのはもうやめるべきです。統計によって多少の違いはありますが、英語を母国語とする人口よりも、英語を外国語として話す人口が圧倒的に多い現代では、それぞれの母国語の影響を受けた英語を使うのは当たり前。「RとLの違い」「BとVの違い」「THは舌を噛(か)むように」などというルールは気にせずに、どんどん話をしましょう。そうしているうちにゆとりができます。発音などは、それから直しても十分間に合います。

私は、中学生のころから英語が得意科目であり、TOEIC(R)Testではほぼ満点の980点をマーク、英検も1級を取得していますが、そんな私でも、自分自身の英語を「日本人英語だな」と感じています。決してネイティブのような発音ではなく、話すスピードも速くはありません。しかし、最初に海外駐在した国が移民の多い国だったため、語学学校でアジア、中東、南米出身者と接するうちに、「これでいいのだ」と気づきました。彼らは皆、母国語の影響を強く受けた話し方をしていたのですが、それで十分お互いに理解し合えていたからです。

その後、いろいろな国籍のさまざまなバックグラウンドを持った人たちと働いているうちに、きれいな発音も大事だけれど、それより話の内容に意味があること、理解されるように話すこと、相手の話を理解し、対話を成り立たせることの方が大切だと思うようになりました。言い換えれば、ペラペラと喋(しゃべ)れても中身のない幼稚な話では人に聞いてはもらえないこと、速いスピードで話せても、相手に理解してもらえなければ繰り返すことになり、かえって時間がかかってしまうことがわかってきたのです。コミュニケーションは、言ってみれば言葉のキャッチボール。言語に関係なく、相手の投げるボールを受け取り、また相手が受け取りやすいボールを投げ返す姿勢さえあれば、日本語的発音やアクセントでも十分ビジネスで通用します。

私も、相手の強烈な発音、アクセントに圧倒されることはしばしばありますが、そんなとき、率直に「あなたの言っていることはわからない」と聞き返すだけでは、相手は前とほとんど同じ話を繰り返すだけか、あるいはこちらが英語の理解できない人と思われてしまい、対話が途切れてしまいます。それよりも、「あなたの言っていることはこういうことですか?」とか「わたしの理解はこうですが、合っていますか?」という質問に置き換えて、一つひとつ確認するようにしています。このやり方は非常に役立ちますね。また、会話の中ではユーモアも大事な潤滑油。持ちネタとしていくつか笑い話をキープしておくのもいいでしょう。もちろん、美しい発音と正しいアクセントは大切ですので、徐々にでも直していく努力は必要です。

今でも英語のブラッシュアップは続けており、毎日少しでもいいから美しい英文を読むことを心がけています。特にお勧めしたいのが、斎藤兆史さんの『英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語-』(中公新書)という本。英語教材のようなものがほとんどない明治から昭和初期に、英語で日本の文化、立場を世界に発信した著名人10名が、どのようにして英語を学び、使っていたかという話ですが、外国に行くことがなくてもネイティブと渡りあう英語を習得できることを実証しています。私は、この本を読んでから、ペラペラでなくても、聞き手・読み手をうならせる英語、格のある英語というものがあることを知り、少しでもその域に近づきたいと願うようになりました。英語への取り組みや学習方法について、必ず新しいヒントを与え、またモチベーションを高めてくれる本だと思います。

同じく斎藤兆史さんの『こころの音読 -名文で味わう英語の美しさ-』(講談社インターナショナル)という本は、美しい英語を身につけたいと思って見つけたもの。名文が音読されたCDには、聞き手の気持ちを動かす表現などが多く、繰り返し聴くことで理解が深まります。また、ニュースなどで耳にする英語の中では、個人的にヒラリー・クリントン女史の英語がお勧め。話す態度、発音、スピード、内容のどれをとってもとてもわかりやすく、ぜひとも真似(まね)たいと思っています。

英語の勉強には、集中する時期が必要だと思いますが、その点、大学生の時期は最適。就職してしまうと、新しい仕事を覚えるのに一生懸命で、しばらくはなかなかほかのことに時間を割けなくなるためです。そして継続も大事。NHKのラジオ講座は私も利用していますが、内容に比してテキストが安価であることや、CDも売られていること、今ではインターネットでも聞けることから、とても気軽に試すことができます。古いテキストを繰り返して使うだけでもよいので、毎日少しずつ勉強するにはお勧めの教材です。また、日本人英語でも通用すると言っても、これはあくまで話し方についてであり、中身のある話ができること、書けることが大前提です。英語で論理的に話を組み立てるには、ルールやコツがあるので、そのために集中してライティングの勉強をすることをお勧めします。

“旬”なアジアの空気に触れておくのもお勧め

海外で仕事をすることで、私がまず実感したのが、「世界は広い。いろいろな人がいて、いろいろな考えがあり、いろいろな生活がある」ということ。途上国や中進国では、日本人にとって不便に感じることがまだまだありますが、そこで生活をしている人たちがいる以上、自分も生きていけるはずだという自信、いわば「サバイバル力(りょく)」がつきました。日本や韓国、中国を追い上げてくるアジアの新興国の人たちとは、今後ますます密な関係を結ぶようになっていくことでしょう。相手の懐に入って生活、仕事をする上では、こうした自信が役に立つと思っています。

日本に対する思いも強くなりました。東日本震災で大打撃を受け、また経済が低迷している日本ですが、それでも一時帰国したときに見る日常風景には、「日本って本当に豊かだなぁ」と感じます。ここまで築き上げてきたこれまでの日本人の努力を素晴らしいと思うと同時に、この生活を今後私たちが維持できるかどうかは自分たち次第だなとも感じます。外から批判するのではなく、どうしたら自分が役に立てるのかを考えるようにもなりました。

また、日本のことを聞かれて英語で説明できないことがあり、せっかく日本に興味を持ってくれているのに、それに応えられないのを残念に思ったことがありました。そこで、少しずつですが英語で日本のことを話せるようにと勉強しています。海外の人たちは、「芸者」「富士」「忍者」「茶道」といった歴史、文化分野だけでなく、今の日本の「社会」「経済」「ポップカルチャー」にも関心が高いので、雑誌、新聞で触れる日本の情報にも敏感になりました。英語での発信力はまだ十分とは言えませんが、日本のことを見直す良いきっかけになっています。日本の話をするときには、相手の国の事情と比較するとわかりやすいので、相手の国に対しても興味が湧き、視野も広がっていると思います。

海外では、日本で出会わないタイプの人にもたくさん出会いますが、そういった出会いは必ず新しい視点を与えてくれると思います。そうした人たちと仲良くなるコツを身につけるには、まず日本で友達をたくさん作ること。海外では、仕事や学校で現地の人だけでなく、在留の日本人とも年齢に関係なくお付き合いをすることも多いので、親の年代の方々、先輩、後輩とのつながりも大切にしてほしいと思います。

また、大学生のうちに外国を訪れておくこともお勧めです。短期間でもよいし、近い国でも構わないので、先入観のない自由な立場の今のうちに日本と違う空気を感じてください。グローバル化は日本より海外の方が圧倒的に進んでいます。特に今、急速に成長している“旬”なアジアがお勧めですよ。

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ホーチミンにある有名ホテル。フレンチコロニアルの外観、内装が歴史を感じさせる。

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朝暗いうちから園芸農家や仕入れ人でごった返すハノイの花市場。ベトナムの人々は花が好きで、日常的に飾る習慣がある。

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テレビで紹介されて大ブレイクした「プラカゴ」。プラスチックのベルトを編み込んだバッグで、いろいろなデザインのカラフルなものが安価で買える。もともとは、ベトナムの市場の女性たちがずっと前から使っている丈夫なエコバッグなのだとか。

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ハノイにある焼き鳥店。ちょっと甘めのたれと炭火の香りがマッチしておいしい。日本語メニューのあるこの店は、2012年、東京に進出。

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豊富な緑が古い建物と調和して独特の雰囲気を漂わせているハノイの街。郊外では、高層ビルの建築も始まっている。

構成/日笠由紀

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