【シンガポール編】シンガポールでフードコートがはやる理由

Reported by Banbi
グローバル企業の日本オフィスからシンガポールに派遣され、シンガポールのみならず、日系企業のアジア・オセアニア事業にフォーカスしたプロジェクトにかかわる。現地では、シンガポールの環境を満喫しようと、朝のランニングやクラシックバレエのレッスン、ヨガ、ゴルフなどのスポーツにアクティブに取り組んだり、友達や同僚と家族ぐるみでプールブランチ(プールサイドで食事を楽しむこと)やバーベキューパーティーなどを楽しんでいる。

異なる食文化を持つ仲間と一緒に食事できる屋台村

こんにちは。Banbiです。今回は、多民族国家シンガポールの文化についてお話しします。

シンガポールは、中国系、マレー系、インド系の人々から成る多民族国家であり、その文化の多様性で知られてますが、私の印象では、民族ごとの文化が共存していて、その文化圏ごとに住み分けているように見受けられます。特に、食文化においてはそれが顕著。マレー系のイスラム教徒は豚肉を食べてはいけないので、教義に即したハラル食品であるマレー料理しか食べないし、インド系の人々も、基本インド料理しか食べません。実際に、職場のフードコートへ行くと、インド人社員のほぼ90パーセントがカレーを食べている光景も確認済みです。中国系の人々は、基本的になんでも食べますが、気づけばやはり中華料理を食べている印象。欧米人は、サラダやサンドイッチを食べている人が多く、極端に言えば、なんでも食べるのは日本人くらいかもしれません。そのぐらい、きれいに住み分けができているように思います。

シンガポールにフードコートやホーカーズ(屋台村)が根づいている背景には、「安い」「速い」という利点以上に、こうした多国籍のメンバーが一緒に食事をしようとすると、必然的にこのような場所を選ばざるを得ない事情があるのではないかと感じています。例えば、チームディナーをするときは、ベジタリアンメニューがあり、豚肉を使わない料理のチョイスも豊富なイタリアンレストランが多いのですが、職場のランチ、送迎会、プライベートの友達とのランチ・ディナーなど、さまざまな機会にお店選びの難しさを感じますね。

とはいえ、私自身は、素材や衛生面が心配なこと、脂っこい料理が多いことから、屋台の料理は少々苦手。赴任当初は、シンガポールらしいものが味わいたくて、ホーカーズやフードコートでの食事もしましたが、現地の生活に慣れるにしたがって自然とそのような場所で食事をすることが減ってしまいました。欧米の駐在員たちも、日本人ほどアジアの食材や料理に慣れていないことや、中華料理に脂っこいイメージがあり、健康的ではないという理由で、フードコートやホーカーズでの食事を避ける傾向にあるようです。

シンガポールは「外食文化」と言われますが、オフィスにはランチを持参する人もいます。この場合も、やはりエスニックコミュニティーに応じて、やり方はいろいろ。中国系の人々は、持参した炊飯器でご飯を炊いて、おかずも中華料理版「鍋料理」や煮込み料理を作る人もいます。わざわざ、延長コードまで持ってきてたこ足配線で電源を独占し、慌ただしく料理をしている光景を頻繁に目にしますね。

欧米の文化がハイスピードで浸透中

シンガポールのカルチャーシーンで目を見張るのが、欧米の文化が飛躍的なスピードで浸透、展開していることです。例えば、シンガポール交響楽団(Singapore Symphony Orchestra)や、SDT(シンガポールダンスシアター)の活躍。公演回数も多く、劇場やホールの質もとても高いと思います。アートイベントなどが定期的に開催されるなど、アートシーンも魅力的。これまで、アメリカの心理学者マーズローの「欲求5段階説」(人間の欲求は5段階のピラミッド状に構成されており、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するという学説)で言う「下3階層」の欲求(生理的欲求・安全欲求・社会的欲求)を満たすべく成長を続けてきたシンガポール人たちですが、それらの欲求が満たされたことにより、より文化的なもの(承認欲求・自己実現欲求)へと欲求がシフトしているような気がします。今のところ、シンガポールからはまだ世界的に有名なダンサーは出ていませんが、子どもたちの習いごととしても浸透し始めていることを考えると、今後はそのような人材が輩出されるかもしれません。

とはいえ、私が見る限り、シンガポールでの欧米文化の成熟度はまだまだで、日本の15~20年くらい前の水準という気がします。世界的に有名なオーケストラやバレエ団の公演に訪れる客層を見ても、やはり現地人は少なく、ほとんどが欧米人と日本人。バレエを習っている子どもも、駐在員の子どもか、あるいは現地の裕福な家庭の子どもに限られます。日本と比べて、特別、月謝が高いわけではありませんが、どうしても「お金持ちの娯楽」レベルのように見受けられます。まだまだ現地の人々の多くが、そうした音楽・バレエ鑑賞や習い事にお金と時間を費やすよりも、食事やお酒、ショッピングにお金を使う方に価値があると考えている気がします。

また、トウシューズやレオタードといったバレエの小物も、ここシンガポールでは、品数・質、共に非常に選択肢が限られています。私もこちらでシューズやレオタードを買おうと探しましたが、結局日本で買うことにしました。決して需要がないのではなく、そもそもほかの国なら豊富な選択肢があるということを、現地の人々が知らないだけなのだと思います。だからこそ、まだまだ未成熟なこの分野には、ビジネスチャンスがあるのかもしれません。投資のし甲斐(がい)がある未開のマーケットなのではないかとひそかに期待しています。

次回は、シンガポールでの私の生活についてお話しします。

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マレーシアに根付いた中華系移民の末裔(まつえい)「プラナカン」によるプラナカン文化の影響が色濃く出ているシンガポールの家庭料理。

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プラナカンのデザート。シンガポールの東海岸には特にプラナカン文化が色濃く残っており、今では珍しいプラナカンデザートや雑貨を売る店が軒を並べている。

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「ホーカーズ」は「ホーカーセンター」とも言い、通常は屋外にある。夕食を取る人で夕方から夜にかけてもにぎわう。

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シンガポール交響楽団のコンサートをはじめ、さまざまなイベントが開催されているVictorian Concert Hall。

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バレエを学ぶ子どもたちの中には、少数ながら男の子の姿も。バレエの文化が浸透しつつある過程にあることが伝わってくる。

構成/日笠由紀

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