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海外駐在員ライフ

Vol.340 【ブラジル編】現地でのビジネスは「ブラジル・コスト」との果てなき戦い

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Reported by E.カルロス
ブラジルにある日本のとある法人のサンパウロ事務所に勤務。現地での楽しみは、サンパウロ近郊への小旅行や日本人同士の飲み会、読書など。

初めての海外赴任先がブラジルだった

こんにちは。E.カルロスです。今回は、ブラジル駐在で得たものなどについてお話しします。

 

海外どころか東京以外の勤務経験がなかった私に、いきなり「ブラジル赴任」の話が出た時は、うれしいとか悲しいとかではなく「仕方ないな」というのが正直な感想。ただ、これまでにも、辞令で命じられたポジションには、やりがいのある大きな仕事が待っていたので、今回もそのような予感を抱きながら赴任しました。事実、ブラジルでの任務は、私のいる組織においても非常に重要な業務であり、そういう意味では来た甲斐(かい)があると感じています。

 

ブラジルの公用語はポルトガル語ですが、それまでにポルトガル語を勉強したことなどありません。今回の赴任が決まってから勉強し始めたので、ゼロからのスタートとなりました。まず、赴任直前に2カ月間、ブラジルから日本に戻ってきた日系2世の方に個人レッスンを受けました。ただ実際は、後任への引き継ぎや赴任準備に忙しくてレッスンどころではなく、習えたのはごくごく触りだけ。結局、唯一、勉強したと言えるのは、赴任直前に買った市販のNHKラジオテキスト「ポルトガル語入門」(CD付き)のみです。

 

赴任後、半年間は語学どころではなかったので、その後、少し落ち着いてから、週1回のペースで語学学校に通うようになりました。ただ、やはり忙しくてなかなか休まずに通うことができず、ごくごく基本的な日常会話はできているものの、きちんとしたポルトガル語はまだ話せていない状況。高度なビジネスの話になると、現地スタッフの助けを借りてなんとか凌(しの)いでいるところです。最近、ポルトガル語の字幕がついた子ども向け番組のDVDを購入したのを機に、今後はもう少し語学の勉強に力を入れたいと考えています。

 

進出企業に苦労を強いる「ブラジル・コスト」

ブラジルに赴任して感じたのは、この国が海外駐在先としてはかなり特殊だということ。事実、海外展開を図る企業からは、ブラジルへの進出には「ブラジル・コスト」ともいうべき障壁が立ちはだかっていると言われています。税率・税額が高いこと、労働力の質があまり高くないこと、一方で労働者の権利が過剰に守られ、手厚く保護されていること、輸入規制や「アミーゴ社会」ゆえの不透明な意思決定プロセス…こういった諸々(もろもろ)が、進出企業に多大な苦労を強いているからです。それだけに、ブラジル社会のこうした特性に精通した優秀なカウンターパート(受け入れ担当者)を早く見つけて味方につけることが、この国でのビジネスを成功させる秘訣(ひけつ)ではないかと私は考えています。

 

ブラジルという国がこうした特殊性を帯びている理由としては、もともとあった均一的な文化を基盤にして法律を定めた欧米とは対照的に、多様な移民がいて核となる代表的な文化のないところに最大公約数的な法律だけを先に作ってしまったせいではないかと私は思っています。言い換えれば、守れもしない規則や法律を作る傾向があるということです。このことから、ブラジルは、社会や集団よりも、個々人が生きることに忠実な国とも言えるかもしれません。ここブラジルでは、法や秩序は、個人が生き延びるという意味において二の次、三の次ということなのかもしれないと思っています。

 

そう考えると、法や秩序が守られている日本は、実に素晴らしい国だと思います。同時に、よく外国人から言われる「日本は窮屈」という言葉の意味も実感します。あけっぴろげで裏表なく接するブラジルと比べて、日本には「暗黙の了解事項」が多く、相手の顔色を見ながら察しなければならないことが多いからです。日本に定住しようとした日系ブラジル人が「もうブラジルに帰る!」と言い出すきっかけになるのは、こうした日本の、一見、陰湿にも見える文化が理由のことが多いとも聞きます。

 

ブラジル人と接することで、日本とは異なる価値観に触れ、視野は広がりましたが、「頑張らない」「ありのまま」「欲望に忠実」というブラジルの価値観は、あまりにも日本人の美徳と正面から対立するので、まだ素直には受け入れられないというのが正直なところです。

 

将来、海外留学や海外赴任を考えている皆さんに言いたいのは、「語学も含め、準備は周到に」ということ。加えて、留学や海外赴任に具体的なビジョンを持って臨むことも重要です。準備は、あくまでもそのビジョンを実現するためになされるべきであり、どちらが欠けても得られる成果は少なくなってしまうように思います。

 

私の場合、準備期間などほとんどなく、もともとそれほど海外、特にブラジルに行きたいという想いも強くなく、明確な赴任のビジョンもなかったため、個人的に少々もったいないことをしてしまった気がしています。できることなら、日本ブラジル協会などの関係機関にも足を運び、語学や文化などについて事前に調査した上で、赴任している2~3年の間に何をするか、何ができるかを主体的に考えておくべきでした。

 

とはいえ、在留邦人の人たちとの出会いにも恵まれ、結果的にブラジルに赴任して良かったと感じています。あんなに準備不足と言われたFIFAワールドカップブラジル大会も「大成功!」、リオデジャネイロでのオリンピックも、たぶん終わってみればきっと「大成功!」と言って憚(はばか)らないであろうブラジル人的感覚で言えば、私の赴任も「大成功!」なのかもしれません。しかし、それはあくまでもいいかげんな結果論。私はすでに40代ですが、若い皆さんには、やはり、後悔しない海外経験を積んでもらいたいと思います。

 

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イグアスの滝を説明するガイド。イグアスの滝は、最大落差80メートル。アメリカ合衆国とカナダ国境にある「ナイアガラの滝」、ジンバブエ共和国とザンビア共和国の国境にある「ヴィクトリアの滝」と並ぶ、「世界三大瀑布」に数えられている。

 

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サンパウロにある「スナック新宿」。この店での日本語での会話は、ポルトガル語があまり得意でない私にとって貴重な情報源となっている。

 

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スナック「新宿」の店内。カラオケありボトルキープありで、まるっきり日本のスナックだ。

 

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サンパウロで2015年8月に開催された「第4回 土佐祭りよさこい踊り」の光景。このように日本にちなんだ催しが頻繁にある。

 

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サンパウロは大阪市と姉妹都市関係にあり、日本人街「リベルダージ」には、大阪市が寄贈した鳥居がある。ほかにも、街の中心にかかる「大阪橋」など、日本にちなんだものが多い。

 

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サンパウロの地下鉄「ブリガデイロ」駅。普段着の通勤客が多く、スーツ姿はまず見かけない。

 

構成/日笠由紀

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