【メキシコ編】子どもにやさしいメキシコの社会

Reported by アガベ
メキシコにある日系企業に勤務。現地での楽しみは、週末の食べ歩きや旅行など。車で2~3時間で行ける範囲に魅力的な地方都市が多いため、この機会にメキシコの文化に触れようと、週末ごとに小旅行を楽しんでいる。

子どもを抱いていると優先的に搭乗できる

こんにちは。アガベです。今回は、メキシコの社会についてお話しします。

メキシコの社会は、日本と比べて非常に貧富の差が激しいという特徴があります。お金持ちはとんでもなく裕福ですが、貧しい人は本当に貧しいのです。例えば、車に乗っていると、信号待ちの間に必ず物売りがガムやたばこなどを売りに来ます。私は窓を開けたりはしないのですが、現地の方々は意外と買ってあげていますね。子どもを連れたホームレスも多く、「ミルク代をください」と言っては施しを受けようとしていますが、キリスト教の精神なのか、やはり彼らに小銭を施す人も多く見受けられます。

メキシコシティにはスラム街もあり、貧しい人々はそうした地域に集まって暮らしています。彼らが歩く分には危険はないようですが、外部の人間が入り込むと非常に危険だと聞いています。日本人が多く住んでいるエリアは、メキシコシティでは安全なエリアで、明るい間はスリなどの軽犯罪に遭うリスクが低いと思いますが、暗くなると、やはり危険ですね。私自身が住まいを探す際も、治安は非常に気になったので、実際に自分の足で歩いて周辺環境を確認しました。

日本と比べると治安は非常に悪いので、流しのタクシーにはなるべく乗らないようにしています。こちらでの暮らしに慣れている日本人でも、大事なものを持っていないときくらいしか乗らないようです。自宅から500メートルくらいしか離れていないところで発砲事件があったこともありましたし、日本人が強盗や空き巣に遭った話も頻繁に聞きます。車上荒らしも多いので、車には絶対に物を置いていかないようにしていますし、現金を下ろしたいときは、町中の銀行では下ろさずに、ホテル内のATMなどで下ろします。なぜなら、銀行から通りに出ていった時点で、お金を持っていることがわかり、襲われてしまうからです。

誰もが踊れるサルサやルンバ

一方、暮らしやすい面もあります。子どもに対してとても寛容なのです。私が子どもと街を歩いていると、必ずと言っていいほど見知らぬ人が子どもに話しかけてくれます。日本では家族で入るのがためらわれるような高級レストランでも、子どもを連れて入っていやな思いをしたことなどありません。キッズメニューを用意してくれているところもあり、周囲の客も温かい目で家族連れを迎えてくれるので、遠慮せずにどんどん家族で外食が楽しめます。日本では、疲れた乗客で満席となった夕方の新幹線の車内で子どもが泣くと、すかさず冷たい視線が飛んでくるものですが、こちらでは、そういう肩身の狭さとは無縁でいられます。

それどころか、助けてくれることも多いですね。飛行機に乗るときなども、子どもを抱いていると、ほかの乗客が並んでいても、係員が手招きして優先的に搭乗させてくれますし、困っていれば、すぐに誰かが手を貸してくれます。子連れだと税関の職員も非常におおらかで、赴任時の入国の際など、本来であれば一つずつ開梱(かいこん)しなければならない段ボールの荷物も、「これは子どものおもちゃです」などと言えば、そのまま通してくれたりします。

メキシコの人々が子どもに温かい理由として考えられるのが、こちらの人は家族が第一であり、家族と過ごす時間を何よりも大切にしていること。自分が家族を大事にするだけでなく、ほかの人にも家族を大切にしてほしいと思っているようなのです。その上、以前ほどの大家族は減ってきているものの、今でも「子は宝」と考える人が多く、他人の子どもも含め、子どもをかわいがるのが習慣となっている様子。レストランや空港でのサービスが子どもに寛容なのも、家族で過ごすことの大切さを社会全体で共有しており、「メキシコ人として、その場を提供することは当然の務め」と思っているからのようです。

そして、メキシコと言えば踊り。クリスマスパーティーなどのイベントの際には、必ずと言っていいほどダンスタイムがあり、サルサやルンバといったラテンのダンスを踊ることになっているのですが、メキシコの人々は、まず全員がこうしたダンスを踊れる上、これまたその踊りがとても上手なのです。どこで習ったのかと聞いたところ、子どものころ、親せきの集まるホームパーティーで、踊り好きのおじさんやおばさん、従姉(いとこ)などから踊りを仕込まれたのだそう。特に、女性は喜々として踊っていますね。もっとも、こうした踊り好きな文化も最近は下火になりつつあるのか、若年層になるほど、ダンスへの熱意は冷めているようです。

ダンスタイムになると、困ってしまうのが私たち日本人。もともとダンスが踊れる人などなかなかいませんが、人によって対応はまちまちです。最初から踊らない人、踊り方はわからなくてもとにかく頑張って踊ってしまう人、この機会にと習い始める人、何年か居るうちになんとか踊れるようになった人…。本当にいろいろです。

次回は、海外駐在で得られる収穫や、そのためにできることについてお話しします。

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サンミゲル教区教会の夕暮れ風景。北緯22度にあるため、日本よりも季節による日没時刻の変化は少ない。

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近所にある公園沿いに毎週土曜日に出る市場。売られているアクセサリーの色使いもメキシカン・テイストだ。

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メキシコシティにあるソウマヤ美術館。世界有数の富豪として有名なメキシコの実業家カルロス・スリムにより建てられた。メキシコシティには、歴史的建造物と並んで、このような近代的な建造物もある。

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メキシコの典型的な朝食の一つであるチラキレス。トルティーヤ(トウモロコシの粉で作った薄焼きパン)をサルサで煮立てたものに、鶏肉などが添えられている。

構成/日笠由紀

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