キャリアの「決断」、どう決めましたか? 株式会社野村総合研究所

かわべしゅんすけ●1986年京都府生まれ。2010年京都大学大学院工学研究科 機械理工学専攻修了後、野村総合研究所入社。グローバル製造業コンサルティング部を経て、14年よりコンサルティング事業本部の人材戦略を担当。大学時代は博多ラーメン店でのアルバイトに励み、スープ作りの技術も習得した。

野村総合研究所
日本の民間シンクタンクの先駆けとして1965年に設立。企業戦略の立案、経営革新の実行・支援、政策提言や施策支援などのコンサルタンティングサービスと情報システムの企画・設計から開発・運用・保守までを手がけるITソリューションサービスを2本柱としてクライアントの課題解決に取り組んでいる。

就職活動中、志望企業をどのように決めましたか?

私が就職活動をスタートしたのはリーマン・ショックの最中。世界的な経済危機の影響で、当たり前にあると思っていた大企業でさえ倒産したり、経営難に陥っていきました。その様子を目の当たりにし、「この先、どうやって生きていけばいいんだろう」と真剣に考えた時、「個人として価値ある人材にならなければ」と思いました。当時リーマン・ショックは「100年に1度」の経済危機と言われていましたが、世界経済が順調に回復する保証はどこにもなく、5年後、10年後に再び大きな経済危機が起きても不思議はない。そういう状況を生き抜くには、組織に依存せず、どんな業種、職種でも価値を認められる人材になることが本当の安定につながると考えたんです。

「個人として価値ある人材になること」をゴールとしたとき、就職する企業はどういう条件で選べばいいのか。3つの条件が大事だと考えました。1つ目は業界問わず使える能力を身につけること。2つ目は幅広い人脈を構築できることです。そして、特に重視していたのが3つ目で「スピード感」。1つ目と2つ目の条件を5年以内に実現できる環境に身を置きたいと考えました。

冗談ではなく「死ぬ気で」就職活動をし、最終的には総合商社とベンチャー企業、外資系コンサルティング会社と野村総合研究所から内定を頂きました。4社を比較した時、先ほどお話しした3つの条件に最も合うと考えたのがコンサルティング業界です。中でも当社は「事業領域の広さ」と「個人の裁量の大きさ」からより早く成長できると考えて入社を決めました。

この決断は私にとっては大正解でした。特に「若いうちから責任のある仕事を経験して、早く成長したい」と考える人にとって野村総合研究所は絶好の環境だと思います。と申しますのも、当社は獅子の子を崖から突き落として成長させることが大好きなんですね(笑)。入社して間もない社員にも「河邊くん、ちょっとやってみる?」とやらせてしまうんです。「はい」と言ったが最後、大変な日々が始まるのですが、プロジェクトが完了するたびに自分の成長を実感できます。

将来の仕事をどう決めればいいのか。いきなり答えを探しに行っても迷うばかりだと思いますので、まずは決める基準を持つことをおすすめします。ただし、この基準は人によって違うと思うんです。100人いたら、100通りの基準があるんですよね。人間関係が第一条件という人もいれば、仕事にやりがいを感じられれば人間関係は気にならないという人もいるし、競争が好きな人もいれば、周りと協力することが好きな人もいる。日々自分が生活していく中で「これは楽しいな」「これは我慢ならないな」ということを書き留めておくなり、覚えておくなりして自分なりの基準を作ってから就職活動に臨むと、納得のいく仕事に出合いやすくなるのではと思います。

今のお仕事で一番やりがいを感じたこと、一番つらかったことを教えてください。

一番やりがいを感じた時と苦しかった時とが同時なんです。苦しい壁を越えられた時ほど、やりがいも感じられます。現在私は500人ほどのコンサルタントが集まるコンサルティング事業本部で人材戦略を担当していますが、それまでは一コンサルタントとして製造業のお客さまに戦略提案を行っていました。

入社3年目に、ある化学メーカーの新規事業立ち上げを担当した時のこと。最初の打ち合わせでクライアントから伝えられたのは「取りあえず10年後くらいに100億円ほどの売り上げになるビジネスを作りたい」という意向だけ。業界の動向やクライアントの状況を徹底的にリサーチし、自分より10歳も20歳も上のクライアントの経営陣10名ほどと一緒に、ゼロから新規事業のアイデアを考えていきました。責任も重く大変でしたが、最後に役員の方々を前にプレゼンテーションをした時に、拍手とともに「ありがとうございました」と言っていただいたのが忘れられません。報われたなと思いましたね。

コンサルタントって好きじゃないと続けていけない職業だと思うんです。クライアントが数百億円の投資をするかどうかというような大きな曲がり角でその決断をサポートするという仕事ですから、責任は重大。若いうちから社会に対する影力を持てる一方で、時にはハードワークにもなりますし、プレッシャーも感じながらやっていかなければいけない仕事です。ですが、私はそれが好きなんです。ドMですね(笑)。

皆さんにドMになれと言っている訳ではありません。私の場合は好奇心旺盛だったり、責任と権限が与えられたプレッシャーのある環境で働くのが好きだったり、自分の性格がコンサルティング会社に合っていると考えたので、この道を選びました。数十年働くのですから、その仕事が自分の性格に合っているかどうかというのはすごく大事なのではないでしょうか。だから、皆さんもそれぞれ自分が好きだったり、楽しいと思える仕事を選んでほしいなと思います。

河邊さんから学生の皆さんへ

皆さんにはこれから数多くの決断を迫られる瞬間がやってくると思いますが、「わからない」「決められない」と悩んでも答えは出ません。社会における決断は「情報がない」「時間がない」「答えはひとつではない」というのが当たり前です。その中で良い決断をするためには、自分自身で決め方を考え、手に入る情報から素早く判断していくことが大切だと思います。また、就職活動ではぜひ目先のキャリアではなく向こう40年間のキャリアを考えて仕事を選んでください。過去40年間に世界でさまざまな変化が起こったように、今後の40年間でもきっと多くの変化が起こります。その環境を生き抜くにはどうすればいいかを考えて、一つひとつの決断をしてほしいと思います。

取材・文/泉彩子 撮影/刑部友康

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