「就活のギモン」徹底研究

Vol.3 中小企業って、給与が安くて働きにくいって本当?

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海老原嗣生(えびはらつぐお)●20年以上雇用の現場を見続けてきた経験を生かし、雇用ジャーナリストとして活躍。内閣府若年雇用対策チーム、広島県雇用推進アドバイザー、京都精華大学講師を務める。漫画『エンゼルバンク』の主人公であるカリスマ転職代理人のモデルにもなった。『日本で働くのは本当に損なのか~日本型キャリアVS欧米型キャリア』(PHP研究所/税抜き820円)など著書多数。

個性ある中小企業は日本に多く、自分に合った1社に出合える可能性は大。ぜひ注目を!

いつの世も、学生の志望は、人気企業や有名企業に集中します。しかし、前回でご説明したとおり、人気企業に入れる学生は、ほんの一握りにすぎません。

私は、学生の皆さんにはもっと中小企業に目を向けてほしいと思っています。新卒採用をしている企業のうち、7割程度が中小企業。しかも、表向きには求人広告を出していないところも非常に多い。「どうせ出しても一人も来ないから、新卒は採りたいけどあきらめている」という“隠れ求人”は、かなりの数に上ります。そして、いつの時代でも二十数万人の学生が中小企業に就職しています。

 

中小企業のビジネスは千差万別であり、職場環境も、与えられる役割も、実にさまざま。そんな中から、自分に合う企業を発掘しようと考えると、就活も少しは楽しく思えますよ。

例えば、こんな企業を知っています。年配者ばかりの10人程度の企業だけれど、みんな優しくて手とり足とり仕事を教えてくれる。安定顧客がいるので業績は安泰で、17時には毎日帰れる…という企業。小さな町工場で職場はきれいとは言えないけれど、営業ノルマは一切なくプレッシャーを感じず働ける企業。こんな特徴ある企業がとても多いんです。

中小企業は、元気のある若手が来てくれるだけでうれしい。そして、なにかその人なりの秀でたものがあれば、多少のワガママを言ってもそこを評価して採用するケースが多いのです。例えば、「言われたことは地道にコツコツやるけれど、ミッションやノルマなどのストレスは感じたくない」、「勤務時間中は頑張るけれど、残業はしたくない」なんて人には、ピッタリの環境が探せるのではないかな。「これだけはやりたくないという仕事がある」「これだけは譲れないという条件がある」という人は、ぜひ目を向けてほしいですね。

 

また、「中小は給与が安い」というイメージが強いかもしれません。大手企業と比較すると、確かに差があることがわかります(グラフ参照)。

 

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従業員数1000人以上の会社の、50歳課長職の平均年収は約1080万円と言われています。ただ、大手は能力による給与差が大きいのも特徴。同じ年齢の35パーセントは係長以下の役職であり、年収は880万円程度と言われています。

中堅・中小企業の50歳の給与は、課長職でも750万円前後と言われ、「大手の係長以下」よりも低水準です。しかし、例えば地方の中小企業であれば、住居費も安ければランチ代も安い。物価そのものが低いから、生活費全般が安く収まります。職住近接なので通勤ストレスもありません。一方の大手勤務では、都心のオフィスに通勤するのに1時間2時間満員電車に揺られるなんてザラ。外でランチをすれば1回1000円以上すぐにかかってしまうし、通勤時間をかけたところで都内近郊でさえ家賃はかなりの高水準、駐車場代だってバカになりません。つまり、日々の生活にかかるお金を考えれば、「大手の係長クラス」より地方で暮らす中小企業の課長職の方が、豊かな生活が送れるケースだって多いのです。

 

単純なイメージだけで、最初から中小企業という選択肢を排除せず、視野を広げてみてください。「なんかいいな」「興味をひかれる」という中小企業に、きっと出合えると思いますよ。

 

 

取材・文/伊藤理子 撮影/鈴木慶子

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