外国人学生のリアルレポート

Vol.2 ハーバード大学 シャノン・サトノリ・レティルさん

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シャノン・サトノリ・レティル●1994年生まれ、オハイオ州(アメリカ)出身。日本人の母を持ち、5人兄弟の長男。5歳の時からバイオリンを習い、高校時代はオーケストラのコンサートマスター、ブラスバンドのリーダーを務める。スピーチコンテストでオハイオ州優勝、全米準々決勝進出。複数のアルバイトで家計を助けながら勉強に励み奨学生としてハーバード大学へ進学。高校でスペイン語を学び、現在、日本語に挑戦中。

大学生活について

高校と大学の違いは何だと思いますか?

高校時代も現在も、勉強と課外活動でフル回転という点では同じです。ただ、高校の時は、その勉強がどう成績に結びつくかがわかり、大学進学という目標が明確でしたが、大学の勉強にはゴールがありません。やればやるほど新しい課題が見えてくる。ハーバード大学には、世界中から自信満々の学生が集まってくるので、受ける刺激とプレッシャーに日々圧倒されています。

 

専攻科目はどのように決めましたか?

ハーバード大学では2年生前期までに専攻を決めなくてはなりません。そこで、1年生の時は、自分の可能性を探るために政治学、ビジネス、医学関係など多くの授業を取りました。コンピュータサイエンスを専攻にしたのは、もちろんスキルを身につけたいと思ったからですが、それだけではありません。授業を受けるうちに、コンピュータサイエンスを専攻するような理系の人は、頭はすごくいいのですが、人とコミュニケーションをとるのが苦手な人が多いと感じました。僕は、自分の考えを人前で話し、リーダーシップをとるのが得意なので、自分に有利な気がして挑戦することにしたんです。ハーバード大学では、コンピュータサイエンスは、最難関学科と言われています。専攻しようと1年次で授業を受ける学生は多いのですが、最初の授業で「難しすぎる」とあきらめてしまう。僕は一筋縄ではいかないところが面白いと感じています。

 

一日の勉強時間はどのくらいですか?

授業によってずいぶん違いますね。例えば1年次に取った生物の授業は、実験室にこもりきりになります。コンピュータサイエンスでは、授業中にやらなくてはいけないことは少ないのですが、課題の量が膨大。授業は週3時間ですが、課題には15~30時間必要です。僕は人と話をするのが大好きなので、普段はカフェで勉強しますが、期限が迫った課題があると、誰ともしゃべらず、寝食を惜しんでレポートを仕上げなくてはなりません。それが、この専攻のつらいところ。期限日になると、同じ専攻の学生が「終わらない!!」と大声で叫んでいるのが自室から聞こえてくるくらいです。

 

毎日の睡眠時間は?

入学当初は、規則正しい生活を心がけていましたが、やることが多すぎて、明け方4時ごろ就寝という日がかなりありました。それで一念発起して、2年生から朝型人間になろうと思い、朝6時に起きて、授業前に宿題をするように心がけています。ポイントは、午前中の早めの授業をとることですね。ついつい明け方に寝ることになっちゃうこともありますが、太陽がいつ昇ったかわからないという生活は避けたいです。3年生からの目標は、夜0時までに就寝です。

 

アルバイトの経験は?

苦学生でしたから、高校のころからマクドナルドを中心に何のアルバイトでもやりましたね。放課後、スピーチ大会の練習、部活動、マクドナルドのアルバイトをして、それから家に帰って家事をし、弟や妹を寝かしつけて、自分の勉強をしました。奨学金制度を利用して難関校に進学するためには、高校で絶対にいい成績をとらなくてはいけなかったのです。

ハーバード大学は最先端の学問の場ですが、多くの学生は、本当の「貧しさ」というものを知りません。僕は、高校時代、夜遅くにアルバイト先からスラム街の中を歩いて帰っていました。車は持っていないですし。だから、一般のハーバード大学の学生が感じないことが、肌でわかる。コンピュータサイエンスを選んだのは、貧民街や開発途上国にインターネットがもたらす力の大きさを知っているからだと思います。

 

インターンシップの経験は?

僕にとってインターンシップは収入ではなく経験が目的なので、すでに4、5社で経験しました。法律事務所や福祉関係事務所で性転換したHIV患者ケアのためにバイオリンを演奏したことも。人と話すことが好きな僕には、建物の中でじっと患者が来るのを待っている仕事は性に合わないと感じるなど、インターンシップは将来の仕事を具体的にイメージすることに役立っています。

 

大学に入って良かったこと、驚いたことは?

大学進学にあたっては、自分なりにいろいろと調べて22校に願書を出しました。これはアメリカではかなり多い方です。理系に特化した大学ならMIT(マサチューセッツ工科大学)、ビジネスや政治の世界に精通した大学ならペンシルバニア大学というように有名大学はたくさんありますが、僕は特定の分野に傾くのはイヤだった。ハーバード大学の学生には、純粋に「もっと高みに達したい」「世界のリーダーであれ」という姿勢を感じました。世界中から志が高い学生が集まっている。それが僕にはとても魅力的でした。入学してみると、競争は激しいし、落ちこぼれる恐怖はあるし、楽しいことばかりではないですけどね。

 

将来についての相談は誰にしますか?

誰にも相談しません。学校にはこまやかなカウンセリングの場が用意されていますが、僕は他人の意見を信用せず、自分で考えて納得のいく結論を出したいのです。高校生のころは、自分に自信が持てなくて人の意見をうのみにしていましたが、今は違います。大学生になると自分に自信が持てるようになり、迷ったときにどうすればいいかという道筋が自分なりに見えるようになりました。僕は元来せっかちなので、結局自分で決めてしまうのです。

 

プライベートについて

どんなところに住んでいますか?

ハーバード大生は、1年生は構内のヤードハウスに住み、2~4年までの3年間は大学があっせんしてくれる家に住むのですが、僕は1年ごとに引っ越しています。2年生の時に住んだ家は学校まで徒歩15分もかかりました。1往復すると30分でしょ。一日3度往復すると、2時間くらい無駄な時間ができちゃう。やることがたくさんある僕には遠すぎる。3年生から住む家は、真面目な医学生とシェアすることになっています。僕自身はパーティー好きだけど、帰宅したら落ち着いた時間を持ちたいので、いいルームメートになれそうです。

 

好きなアーティストはいますか?

レディー・ガガが好きです。彼女にはクラシック音楽のベースがあって、どうやったら若者に音楽が受け入れられるかちゃんと計算してパフォーマンスしています。僕自身、5歳からクラシック音楽を始め、現代の若者とクラッシック音楽を結びつけるために、ラップやヒップホップミュージックを編曲してきたので、彼女のすごさがわかるんです。小さいころはバイオリンの稽古が嫌いでやめたくて仕方なかったけれど、今、コンピュータサイエンスを通して取り組んでいる編曲では、バイオリンの知識が役に立っていることが多く、やっと親に感謝できる気持ちになりました。

 

どんな本が好きですか?

チャールズ=ディケンズの『二都物語(A Tale of Two Cities)』です。古典で難しい本ですが、高校時代にほとんど寝ないで一気に読み、泣きそうになりました。フランス革命時代の富と貧困についての悲しい話です。小説は悲劇の方がリアリティがあるので好きですね。だからFacebookの世界には違和感があります。「自分はこんなに幸せだ」「見て」っていうのはなんだかうそっぽい。人生って本来悲しいもので、それでいいと思うのです。

 

彼女はいますか?

いいえ、いません。今までは「時間がない」ということを言い訳にしてきましたが、最近、それではいけないと思うようになりました。若いころに異性と人間的な信頼関係を築くことは、とても大切だと思うのです。30歳になったとき、時間ができたから誰かといいパートナーシップを築きましょうと思っても、うまくいかないのではないかと思うようになりました。誰かと人間関係を築き上げるということは多少なりとも犠牲を強いられるでしょう。そういう犠牲って人生には必要だと思うのです。今の日本の若者はシングル志向が強く、恋人の関係は面倒だと思う人が増えているという記事を読んだことがあります。これはきっと世界的な傾向だと思うのですが、僕にはとても自己中心で利己的に聞こえます。人として何かが欠けている。もし「この人のパートナーになりたい」と思えたら、何に優先しても時間を作りたいと思っています。

 

理想の人はどんな女性ですか?

外見が魅力的であるというより、僕に挑んでくるような人が好きです。その人と関係を築くことで、自分の新たな部分を発見できるような人。自分の言う通りになる、行動が簡単に想像できる人には魅力を感じません。友達でもそう。予想外のことをしてくる人、自分を驚かすような、そんな人にひかれます。そういう人とは、ぶつかったり、言い合いになったりするかもしれませんが、そういうやりとりの中でお互いが成長していける関係がベストです。歴史上の人物では、自分の信念を貫き通し、行動を起こしたジャンヌ・ダルクを尊敬しています。

 

宝物はなんですか?

ありません。あえていうなら実家から持ってきたバイオリンかな? 物には固執しないし、これからもしたくないと思っています。旅に出るときは、いつも自分の必要なものをスーツケース一個にまとめますが、どこへ行ってもスーツケース一個分の荷物で暮らせる、そういうシンプルな生き方が理想です。

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どんな人生を送りたいですか?

「あぁ自分の力でこの世界はちょっと良くなったな」と言いながら死んでいけるような人生を送りたいです。自分がこの世に存在したことで、幸せになれる人が一人でも多くいれば、自分の人生はより満足なものになるでしょう。僕は物質的なものや履歴書に書けるような資格にはあまり興味がありません。ハーバード大学を卒業すると、履歴書ばかりが立派になってしまいますが、この大学で4年間を過ごすことの意義は、自己の成長によって内部に蓄積されたものの大きさだと思っています。

 

INFORMATION

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今回取材協力してくれた学生は、株式会社アクティブラーニングのインターンシップ生として来日。『Active Summer Camp2014』では、来日中の海外大生と日本の学生のインターンシップ生で、5日間にわたり日本の小中高校生向けに能動的な学びを推進するワークショップを実施した。アクティブラーニングは、ハーバード大学で指導経験のある羽根拓也氏が代表を務め、定期的に世界トップレベルの大学の学生をインターンシップ、フルタイムスタッフとして招聘している。海外の優秀な人材をアジアのトップベンチャー企業とつなげるNEXGENプロジェクトなどを進行。最近では、アジア各国に進出し、能動人材の育成、イノベーションの創出、デジタル教育などの普及に努めている。(HP:http://als.co.jp)

 

取材・文/川瀬美加 撮影/刑部友康

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