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Vol.290 株式会社ジャフコ

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きたざわ・ともたけ●2010年入社。投資部投資四グループ シニアアソシエイト。東京工業大学大学院社会理工学研究科修了。就職活動当初は製造業を志望していたが、リーマン・ショック直後の不況下で多くの企業が事業縮小傾向になる様子から、「激動の時代でも、5年先、10年先の未来について考えて、次の産業を創りだす事業を手がけるベンチャーキャピタル(※1)が面白い」と考え、現社への入社を決意。
(※1)成長が期待される未上場の企業に対し、投資と経営支援を行う会社

入社1年目、投資先の企業訪問を繰り返し、投資は「人と人との商売」だと実感

株式会社ジャフコは、ベンチャーキャピタルとして、企業の成長支援を行う会社。インキュベーション投資(※2)からベンチャー・中堅企業投資、バイアウト投資(※3)まで、さまざまな成長ステージの企業へ投資し、成長支援を行うことが主な事業内容だ。リーマン・ショック直後に就職活動をした北澤さんは、「日本が変わっていく中、新しいビジネスに投資をしていくベンチャーキャピタルに可能性がある」と考え、現社に入社した。入社後、約2週間の研修を受けたのち、指導担当の先輩について現場を学びながら、いろいろな企業を訪問していったという。

(※2)主に、バイオ・IT・ナノテク分野の技術シーズの事業化やスタートアップ企業を対象とした投資

(※3)グループ再編や事業承継などによりオーナーが手放すことになった事業部門や企業を、現行もしくは外部から採用する経営陣と共同で買収する投資

 

「僕らの仕事は、金融機関や事業会社などから募った資金でファンドを組成し、その資金で、高い成長可能性が見込まれる未上場企業(ベンチャー企業)に投資するというもの。成長過程のベンチャー企業に投資し、投資後はあらゆる経営支援をしながら5年後、10年後にその事業が成長したら株式上場やM&A(※4)などにより株式を売却して、リターン(利益)を得る。さまざまなジャンルの新しいビジネスに関してその可能性を分析し、『未来を考える仕事』なので、入社前はスマートな仕事をイメージしていました。ところが、実際には、投資の可能性がある企業を訪問して、経営者と直接コミュニケーションをとることが重要で…。学生時代は研究ばかりで人と接することが得意ではなかったので、戸惑いましたね」

(※4)mergers and acquisitions:マージャー・アンド・アクイジション。企業の合併や買収

 

入社後の1年間は、新規の訪問先を自分で見つけていくために、毎朝、経済新聞やビジネス専門誌、Webの経済ニュースなどをチェック。可能性のある会社を探しては、1日に何十件も電話をかけた。

「受付の人に用件を聞かれて口ごもり、そのまま切られることも。なかなかアポイントが取れなかったのですが、たまたま社長が電話口に出てくれた会社に訪問できることになりました。面談では、何を話せばいいかわからずに、先輩がやりとりする様子を見ているだけ。とにかくわからない言葉をメモし、会社に戻ってから調べたり、先輩がどうやって相手とコミュニケーションをとっているかを学ぼうと努力しました。当初は緊張しっぱなしでしたが、相手の事業内容や思い描いている未来についての話を聞けることが本当に面白かった! 電話でアポイントを取ることも『この時間のためなら』と頑張れるようになりました」

 

北澤さんは、入社4カ月後には単独で企業を訪問するようになり、事業内容や経営者のビジョン、今後の具体的な事業計画や、必要としている資金などのヒアリングを行うことに。これを基に、会社の現状や将来性、ビジネス自体の成功性などを分析していき、投資先候補の選定を行う。

「経営者は、僕よりも年齢もビジネス経験も上の方ばかり。『なぜこんな若造が来たんだ』と、相手にされないこともありました。正直、入社して間もないころは、相手の会社どころか、自社のことすらよく理解していない状態です。一生懸命にその会社の強みを話していただいても、僕自身に話の内容を理解する知識がないと痛感して…。それ以来、訪問予定の会社の事業内容や社長の経歴を事前に調べ、面談で何を話すのかをよく考えるようになりました。投資はスマートなものではなく、結局は人と人とのつながりなのだとあらためて思いましたし、倒産するかどうかの瀬戸際にある会社もあった。『会社を継続するには資金が必要なんです』と、本気で向かってくる相手に対し、こちらも本気で応えなければなりません。そのプレッシャーはすごく大きかったですね」

 

ひたすら訪問を続け、「この会社の経営者・事業はさらなる成長が見込めるから投資したい」と判断するたび、上司にアポイント先への同行を頼んだが、「この事業では難しい」と言われる日々。それを繰り返しながら自分の中で事業の価値や経営者の力量を見抜く精度を高めていったという。そんな入社1年目の夏、北澤さんはようやく訪問先の1社について具体的な「デュー・ディリジェンス(※5)」のプロセスに進むことになった。

(※5)企業に投資する前に、その企業の経営状況や財務内容に関する綿密な調査を行い、企業の成長性を評価すること

 

「経営者はどんな人か、どんな事業で、将来どうしていく予定なのか、現状の収益や、いつごろ、どのくらいの収益になるのか、というヒアリング結果を基に、実際はどうなのかを検証していきます。市場のニーズや可能性を調べたり、競合と比較して強みを分析したり、事業計画に修正を加えたり…。これによって、『この事業はきっと成功する』と確信が持てたら、今度は計画通りに事業を進めるためにどのくらいの資金が必要なのか、どのような条件で投資を行うのかをその会社と話し合います。ここでようやく『投資をするので、一緒に事業を大きくしていきましょう』と具体的なお話をする流れとなるのです」

 

デュー・ディリジェンスでは、これから投資をしようとしている会社の事業や業界、さらには経営者について、専門家やその業界に精通している企業の経営者、大学教授など、いろいろな人にヒアリングを行いながらリサーチをかけていく。

「こうした結果を基に、その事業が将来成長するかどうかを考えていきます。実際のところ、どんなに考えても机上の空論であり、その通りになるのかは誰にもわかりません。けれど、徹底的にその会社の事業について考え抜き、経営者をより理解する中で、その事業のリスクと本当の強みが明確になり、確信が持てます。誰にも『絶対こうなる』と断言はできませんが、『この事業は必ず成長する』『この経営者はきっと成功する』と思えるかどうかが重要なんです。残念ながら初めてデュー・ディリジェンスを行った会社は、検証の時点で投資は難しいとの判断になりましたが、脳みそをフル回転させて可能性を追求していくこの仕事の面白さを実感することができました」

 

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訪問先の会社の事業について検証。リスクや本当の強みが明確になるまで考え抜く。また、経済ニュースなどをチェックし、可能性のある新規ビジネスのリサーチも行う。

 

入社2年目でゲーム会社への大規模投資が決定。自分の仕事スタイルを確立

入社2年目、北澤さんはあるゲーム会社が設立されたことに注目。さっそく訪問のアポイントを取り、その社長と面談することに。

「僕はもともとゲーム好きで、過去にその会社の社長が制作したゲームを面白いと思っていたんです。面談してみると、スマートフォン向けのゲームを作っていくという計画で、設立メンバーはゲーム業界の経験が豊富で、高い技術力を持つ会社でした。当時は、まさにスマートフォンが普及する転換期。『この会社はきっと成功する!』と感じましたね。上司とも相談して、すぐに事業のデュー・ディリジェンスを開始。投資を決定するまでの社内プロセスも、初めはわからないことばかりでしたが、なんとか投資をすることが決定したんです」

 

通常、1社に対して投資する金額は平均2億~3億円だが、その会社にはその数倍の金額を投資することになり、初案件で大規模投資に。しかし、北澤さんは喜ぶ間もなく次のプロセスへ向かう。

「投資の際には、投資の条件をいろいろと決めなければなりません。投資金額はもちろん、その会社の株式をどれくらい引き受けるか、投資した後のルール(投資契約)はどうするか、などです。これを短期間で、相手の会社と交渉しなければならず、投資ができてうれしいと思うヒマもありませんでした(笑)。相手の口座に資金が振り込まれたことを確認して、ようやく『初めて投資できたんだ』と実感できましたが、翌日からはその会社の企業価値をいかに上げていくか、どう経営支援をしていくかを考えていかなくてはなりません。投資がゴールではなく、投資した会社を成長させて株式上場やM&Aなどで株式を売却し、投資した資金のリターンを得ることが僕らの仕事。投資しただけでは1円も儲かってないわけですから、投資というのはただスタートラインに立っただけなんです」

 

投資決定後には、その会社の担当者として、会社の方向性を決定する経営会議への参加や経営全体のフォローなども任され、企業価値を上げるためにあらゆる手助けをしていく。初めて自分の担当企業を持った北澤さんだが、そこから現在までの3年半にさまざまな紆余(うよ)曲折があったという。

「一番初めは、相手の会社から『担当者だからといって入社2年目のビジネス経験の浅い者に、会社の大切な経営会議に参加してほしくない。ちゃんと経験のある人に参加してもらいたい』と言われたことです。好きな相手に振られたような気分でショックでしたよ(笑)。上司と一緒にという形で、会議には出席できるようになりましたが、その会社には、信頼してもらえるようにいろいろと自分ができる支援を行って、徐々に相手との関係を深めていきました。そんな中で、今度は開発が遅れたことでゲームのリリース時期がズレてしまって…。ゲームがなければ、当然お金は入らず人件費や開発費が出ていく一方。結局、1年もたたない内に、次の資金調達が必要となりました」

 

入社3年目の北澤さんはこの会社に対し、『事業を止めないためにさらに追加投資をすべきか、それとも事業を縮小して時を待つべきか、それともほかのファイナンス策を探すか…』といった判断をすることになる。

「担当者として何をするかを導き出すのは自分。裁量も大きいですが、その分責任も大きいです。事業計画通りに進んでいない会社にさらにリスクをとって投資をしていいのか、一方で資金調達をしなければ最初に投資をした資金を失う可能性もある…。まったく判断がつきませんでした。社内にもさまざまな意見がありましたが、最終的にはさらに追加で数億円単位の投資を実行。そもそも億単位のお金の価値を自分自身が実感できていなかったんです。成功すると思っていたけれど、どう確信を持てばいいかわからない。投資した資金の重みに怖さも感じ、上司に判断を委ねました」

 

追加投資が決定し、その会社は継続して成長を目指すことになる。北澤さんが担当している数年の間に何度か資金調達の必要に迫られる場面があったが、そこで信頼関係も築いていくことができたという。

「その会社の経営陣に代わって、銀行を十数行回ったこともありましたし、どうやったらうまくいくのかを自分なりに考えて経営者に話したり、会社に代わって自分ができる事をやっていく中で徐々に認めてもらえるようになりました。近い将来に株式上場をする予定で、次のステージに上がります。投資先企業が成功しなければ、僕らの成功もない。ですから現在も、投資先の営業や人材採用、経理・財務面など、やれる限りのすべての支援を行っています」

 

また、入社3年目のこの時期、数百億円規模の新しいファンド組成に向け、出資者を募る仕事も経験。

「ベンチャーキャピタルにとって、出資者から資金を集め、ファンドを組成することは最重要の仕事。社内一丸となり、ファンドに出資してくれる先を募ります。これまではお金を出す側でしたが、今度は逆に億単位の金額を出してもらう側となり、資金を集めることの難しさを実感しました。半年間で100社近くを訪問。この経験のおかげで、自分たちが扱うお金の重さをより強く実感できましたね」

 

 

現在、入社5年目を迎えた北澤さんは、投資先5社を担当。当事者意識を強く持って仕事に臨むよう心がけているという。

「担当者は、誰よりも投資先の会社の状況を知っていて、投資先の経営について真剣に考えているもの。だからこそ、当事者意識を持ち、自分の判断に責任を持たなければなりません。投資先企業の経営者は人生を捧げて会社を経営しています、ファンドに出資してもらっている資金も軽いものではありません。甘い考え・判断が許される仕事ではないと考えています。だからこそ、自分が確信を持てるまで考え抜き、同時に手足を動かしてやれることはすべてやることが大事ですね。もちろん、投資した会社が結果を出すまでには何年もかかるので、気の長い話ではありますが、自分が信じた経営者や事業が世の中に受け入れられた瞬間に大きな喜びを感じます。これからも『こんなふうに世の中が変わったら面白い』と思えるようなビジネスに投資して、経営者と共に成功に向かって進んでいきたいですね。未来を創るこの仕事には大きなやりがいがありますよ!」

 

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可能性を感じたベンチャー企業の社長と面談。自社のパンフレットを開き、ベンチャーキャピタルがどういうものなのかを説明してからヒアリングをスタート。

 

北澤さんのキャリアステップ

STEP1 2010年 研修時代(入社1年目)

入社後、2週間の新人研修で社会人としての心構えから、会計、経理などの簿記知識、財務諸表の読み方などを学んだ。「入社前に『簿記の勉強はしておいてほしい』との話があったので、内定者研修も活用しましたし、本を読んで自分でも学んでいました。理系出身の自分にとっては、経済を学ぶことがすごく新鮮で楽しかったですね!」
新人研修期間の後半には企業への電話・訪問研修も行った。また、1年間のOJT(※6)研修では指導担当として先輩社員がつき、ビジネスの基本からデュー・ディリジェンスのやり方まですべて教えてもらったという。入社後しばらくの間は、企業訪問に付いてきてもらい、独り立ちした後にも、報告・相談を続けながら指導を受けた。
(※6)On-the-Job Training:オン・ザ・ジョブトレーニング。仕事しながら学んでいく研修の方法

STEP2 2010年 第二投資運用本部 投資運用三部時代(入社1年目)

国内の未上場企業を対象に、投資候補先の発掘、投資、株式上場に向けた成長支援を行う。日ごろからアンテナを張って情報を集め、高い成長性を見込める企業に接触。経営者との対話を通じて資本政策の提案・交渉を行う。投資を決定するまでの期間は最短で1カ月。また、現状では資金を必要としていない会社でも、将来的に投資先となりそうな場合は定期訪問を続ける。

STEP3 2012年 投資業務に加えファンド組成の時代(入社3年目)

ベンチャーキャピタル事業の根幹を支えるファンドを組成するため、出資者を探して奔走。「僕らの仕事は、事業の源泉となる資金がなければ成り立ちません。全社員が一丸となってファンドの資金を集めるんです。ファンドには億単位で出資してもらうため、非常にハードルが高いんです。出資先となりそうな会社のリストを見て電話をかけていきましたが、なかなかうまくいかず、どんな相手なら出資してくれそうかを必死で考えましたね。とにかく大変だったけれど、『自分が見つけた将来性あるベンチャーに投資するために必要な資金だ』と考え、頑張りました」。

STEP4 2014年 投資部 投資四グループ時代(入社5年目)

現部署に異動。担当している投資先では、人材採用から始まり、営業やマーケティング、さらには海外企業との業務提携など、さまざまな支援を行う。「投資先では日々いろいろな問題も起きます。どんなやり方で解決できるかを考えたうえで、専門家や国内・海外の拠点で働くメンバーと連携して仕事を進めています」。現在、IT関連の業界を中心とした投資先を担当。「世界で闘える力を持っている会社、未来を変えていけるような会社に投資していきたいと思っています」。

 

ある日のスケジュール

7:30 早めに出社し、新聞やWebサイトでニュースをチェック。気になる会社には、いち早くアプローチしたい。
8:40 始業。グループミーティング。グループのメンバーで業務の進捗状況の報告や、情報共有を行う。
10:00 投資先企業の経営会議に参加。事業について議論する。
12:00 ランチタイム。外出していることが多いため、外出先近辺のお店で食事をすることが多い。仕事がら新しいお店もチェック。
13:00 新規のベンチャー企業を訪問。事業内容や資本政策などについて議論。
15:00 別の投資先企業を訪問。社内管理体制の整備のために必要な書類を作成。
18:00 デスクワーク。投資先や訪問先についての報告資料を作成。
20:00 退社。取引先との会食に参加。

プライベート

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会社の先輩に誘われ、2012年ごろからゴルフを始めた。写真は同期とラウンド中のもので、北澤さんは右から2番目。「2~3カ月に一度はラウンドに出ています。自宅から5分のところにゴルフ練習場があるので、土日は時間があれば出かけています」。

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冬場には必ずスノーボードを楽しんでいる。写真は、2015年の1月に前部署で仲の良かった先輩(右)と長野に出かけたときのもの。「この先輩とは本当に仲が良くて、いろんな相談に乗ってもらっています」。

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この半年間、空いた時間には英語の勉強を続けている。「投資先の企業の中で、会議を英語で行う会社が増えているんです。参考書を読んだり、会社の研修制度を使って英会話スクールに通ったりしています」。

 

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康

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