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Vol.347 一広株式会社

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わたなべ・だいすけ●東京営業所 営業部 課長。タオルソムリエ。流通経済大学経済学部経済学科卒業。2006年入社。新卒で、冷機メーカーに入社し、3年間営業を経験。提案型営業に挑戦したいと思い、一広(いちひろ)への転職を決めた。

お客さまと一緒に商品を作っていく、提案型営業に魅力を感じた

国内最大規模のタオル生産地、愛媛県今治市に本社を置く、タオル製造小売業のリーディングカンパニー・一広株式会社。デザインから染色、プリントまで全工程を自社でまかない、国内、中国、ベトナムに約150台の革新織機(かくしんしょっき・高速で高性能な織り機のこと)を置いている。百貨店からスポーツブランドメーカー、テーマパークのほか、プロスポーツチームやアーティストのグッズまで、タオル生地を使った商品の製造販売を幅広く手がけている。

 

渡辺さんが一広のことを知ったのは、社会人3年目の転職活動中だった。それまで、冷機メーカーで営業を担当しており、3年目で営業部内のサブリーダーを任されるほど結果を残していた。ただ、“完成された商品を売る”のではなく、“まだ形になっていないものを企画して売る”という提案型営業に挑戦したいという気持ちが芽生え、一広に興味をいだいたという。
「タオルには、あらゆるブランドのものがありますし、スポーツ観戦の場でもイベント会場でも、誰もが気軽に購入して使うものです。さまざまな企業へ提案できる可能性を感じ、お客さまと一緒に商品づくりをしていくプロセスを経験してみたいと思いました」

 

入社後、営業本部に配属されると、さっそく先輩に同行してお客さま先を回る日々が始まった。同じ“メーカー営業”とはいえ、前職との違いに戸惑うことばかりだったという。
「タオルとひと言でいっても、用途によって商品の幅が非常に広いんです。日常生活で自宅の洗面台で使うのか、スポーツ観戦で首にかけたり巻いたりするのかなど、使用目的によって、タオルのサイズや糸の細さは変わります。デザインも、お客さまに愛される色合いや素材でありつつも、今までにないオリジナルなものを提案しなくてはいけません。タオル生地ごとの詳細な違いと価格帯、お客さまの特性やターゲット層の把握など、覚えることがとにかく多く、『一人前になるには、時間がかかるな』と覚悟したのを覚えています。さらに前職は、新規開拓スタイルだったため、お客さまにとっては常に自分が初めての営業担当者でしたが、一広では、既存顧客を回るルートセールスがメイン。経験のある前任の先輩たちと比較されるプレッシャーもとても大きかったですね」

 

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お客さまにサンプルを見せながら打ち合わせ。生地の触り心地、色合いなど、こだわりの点をお客さまと共有する。

 

自分が手がけた商品をうれしそうに手に取るお客さまがいる

仕事の面白さと難しさを実感したのは、入社して約10カ月後のこと。サッカーJリーグの2007年3月開幕に合わせて、計15チームのタオルデザインから製造までをメインで担当することになったのだ。
「小学校から高校までサッカーに明け暮れ、将来はスポーツ関係の仕事に…と淡い夢をいだいていた自分にとっては、夢のような仕事でした。サッカー観戦も大好きで、チーム名や選手名が入ったタオルを購入しては応援していたので、この選手のデザインはこうしよう、色はこうしようとアイデアがどんどん出てきました。開幕までの半年間で、15チームのタオル企画を担当。観戦へ行った時に、実際に自分の手がけたタオルを掲げて応援しているサポーターを見かけたり、スポーツニュースで、自分の手がけたタオルを掲げて応援しているサポーターの姿が映ると、とても誇らしい気持ちになりました」

 

一方、開幕に間に合わせることが必須な中で、納品遅れの危機にも直面し、スケジューリングの重要性を痛感した仕事でもあったという。
「納品までは、大きく4つの工程があります。まずはデザイン提案。1カ月かけてお客さまとデザイン内容を確定させます。次にサンプルづくりと提案。デザイン修正や配色の変更などを1カ月かけて詰め、翌月にセカンドサンプルを提出します。ここまで約3カ月かけて終えたら、いよいよ工場での量産過程に入り、ここから3カ月ほどで商品の納品が完了します。納期通りに進めるには、お客さまへ明確にこちらの要望を伝えることも必要なのですが、入社1年目の当時は、デザイン確定やサンプル検証の段階でお客さまからのさまざまな意見に心が揺らぎ、何度もデザイン案を提出したり、議論を重ねたり、時間をかけすぎてしまいました。結果、生産に割くべき時間が少なくなり、開幕当日の朝に納品した商品もあったほど…。『開幕に間に合わなかったら、販売機会の大幅ロスになる』とお客さまから叱責(しっせき)を受け、うまくいかない状況に落ちこんだこともありました。お客さまのためにも、営業担当である自分がしっかりディレクションし『納品を間に合わせるには、もう決断しましょう』などとリードすることが大事だと実感しました」

 

入社以来、営業一筋で、すでに10年以上のキャリアがある渡辺さんだが、タオルのデザインの幅広さにまだまだ学ぶことが多いと話す。
「百貨店や雑貨店などで、女性向けのハンカチタオルや、結婚式の引き出物用の商品を担当することもあるのですが、今でも難しさを感じます。最初は『このデザインがかわいい』『大人っぽくていい』という、女性担当者たちの感性についていくことができず、打ち合わせで出てきた意見を社内デザイナーに伝達しているだけでした。どんなデザインが女性に愛されるのか、そのお店の商品に目を通し特徴を知ることで、少しずつ自分なりの提案もできるようになりましたね」

 

入社6年目には課長になり、メンバー育成をしながらお客さまを担当するプレイングマネジャーを続けている。スポーツ関係に強いメンバーもいれば、アーティストのイベントものやテーマパークの商品デザインが得意なメンバー、女性向けの海外ブランドメーカーを長く担当してきたメンバーなど、それぞれに強みがある。渡辺さんは各メンバーの強みを生かしながら、課全体の売り上げアップに向けて、各業界の知識を広く身につけなくてはいけない。「午前は自分が担当するテーマパークでの打ち合わせ、午後は部下が担当するスポーツメーカーへのデザイン提案に同行」など、業界もテーマも目まぐるしく変わり、取引先業界の幅広さが今の仕事の面白さだと話す。
「タオル生地を使って、まだ世の中に出ていない商品を作りたいし、まだ取引のない企業さまに提案を進めていきたい。『こんなアイテムがあったら売れるのでは』『こんなサイズのタオルがあったら使い勝手がいいのでは』などいつも考えています。今後は、ギフトショーなどの展示会にも積極的に出店して提案の機会を設け、パートナー企業さまを増やしていきたいですね」

 

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企画商談のため自分のお客さまであるテーマパークのオフィスを、訪問する。

 

渡辺さんのキャリアステップ

STEP1 2006年1月 中途入社として、東京営業所営業部に配属される(入社1年目)

前職ではメーカー営業を3年間経験していたが、扱う商材や営業スタイルが大きく異なり、「即戦力には程遠かった」と当時を振り返る。入社1カ月間は、OJTとして、先輩同行の中で商談の流れを覚えていった。「タオル生地ひとつとっても『この用途なら、この素材がオススメです』などと、提案内容が本当に幅広い。最初は、自分でも提案できるようになるのだろうかと不安でいっぱいでした」。

STEP2 2006年9月 Jリーグの案件を手がける(入社1年目)

15チームのタオルデザインを手がける大型案件を担当した。チームごとにチームカラーやエンブレムデザインが決まっており、選手タオルに入れる情報も限られていたため、デザイン企画を立てやすい仕事だったという。「デザインから考えるほかの案件に比べれば、新人でもやりやすいんです。プライベートでもよくサッカー観戦に行っていたので、『どんなデザインなら買いたいと思うか』『どんなサイズなら使いやすいか』『厚手のものがいいのか、薄くて軽いものが好まれるか』など、さまざまな観点からイメージでき、手応えのある仕事になりました」。

STEP3 2011年 テーマパークを担当し人気商品を手がける(入社6年目)

タオル生地を使った商品提案を幅広く行い、人気アイテムも生み出した。テーマパークでは、「夏にペットボトルを持ち歩くと水滴で手やバッグの中がぬれてしまう」という点に注目し、タオル生地で作ったペットボトルカバーを提案。来場者に愛用される商品となった。「販売する場所やターゲット層によって『500円だと売れるが、600円になると売り上げが下がる』ということもあります。価格ごとの売り上げ状況の分析データをお客さまから頂き、予算を緻密に計算するのも営業担当の役割です。価格よりもデザイン性によって売り上げが左右されるのであれば、予算をしっかり取ってレースやラインストーンなどの装飾をつけることも。一つとして同じ商品がない、というのがとても面白いです」。

STEP4 2011年 課長として、メンバーのマネジメントを任される(入社6年目)

2009年に主任、2010年に係長となり、順調にステップアップしてきた。現在は5名のメンバーを持ち、課が担当するお客さまの売り上げを管理する。「かつて自分が担当していた企業さまをメンバーに引き継ぐこともあります。引き継いだばかりのころは、お客さまが私の方ばかり見て話していたのに、メンバーに任せて数カ月たったあとに同行すると、もう、私ではなくメンバーのことだけを見て打ち合わせを進めているんです。『頼もしくなったな』『しっかり信頼関係を築けているんだな』と実感し、とてもうれしくなりますね」。

ある日のスケジュール

8:45 出社し、朝礼。
9:15 チームミーティング。生産状況の進捗や週間スケジュールを共有。
9:30 海外工場(中国、ベトナム)、国内工場(今治)の生産状況を確認。
10:30 国内出荷センターと出荷状況の打ち合わせ。
11:00 提案資料、見積書を作成。
12:00 メンバーと昼食。
13:30 大型テーマパークにて、イベント企画商品のデザイン仕様について商談。
15:00 スポーツブランドメーカーにて、プロスポーツチーム応援タオルの企画商談。
17:00 帰社。企画デザイナーとデザイン内容を打ち合わせ。
18:00 商品サンプル、デザイン案、資料の確認。
19:30 退社。

プライベート

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2015年のゴールデンウイークに、長崎のハウステンボスに家族旅行。夜景の美しさに子どもたちも大満足!

 

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休日は息子と娘と公園で遊んで過ごす。息子はサッカーや自転車の練習、娘はすべり台に夢中。

 

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趣味は小学校から高校まで続けていたサッカー。今も高校時代のチームメートとフットサルをやったり、海外の試合を一緒にテレビ観戦したり。いいリフレッシュになっている。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

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