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Vol.351 株式会社ノリタケカンパニーリミテド

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とりもと・みきお●エンジニアリング事業部東京営業所 副主事。名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻修了。2010年4月入社。大学院で実験のための装置を自分で組み立てていたところ、実験装置を作ることに楽しさを見いだし、設備関連メーカーを志望するように。大学院1年の10月から就職活動をスタートし、6社にエントリー。3社から内定を得たが、説明会で知ったスタティックミキサーという液体を混ぜる製品に魅力を感じ、現社への入社を決意。

実績のなかった業界にイチからアプローチして納入に成功し、大きな自信に

洋食器のブランドとして広く知られているノリタケカンパニーリミテド(以下ノリタケ)は、1904年に創立。現在は、食器製造で培った技術を応用し、研削砥石(けんさくといし)やダイヤモンド工具で産業界を支える工業機材事業、電子やセラミックスの部品・材料などをさまざまな製造業に供給するセラミック・マテリアル事業、焼成炉などの製造設備やシステムを提案するエンジニアリング事業、豊かな食卓を演出する食器事業の4事業を展開している。

 

鳥本さんは、2010年の入社以来、エンジニアリング事業部の製品であるスタティックミキサーのセールスエンジニアとして活躍。
「エンジニアリング事業部には、焼成炉や乾燥炉を扱うヒートテクノ部、切断機などの装置を扱うマシンテクノ部、液体の混合や濾過(ろか)などの装置を扱う流体テクノ部があります。私は、流体テクノ部でスタティックミキサーを担当。入社前から興味を持っていた製品に携わることができて、ラッキーです」

 

スタティックミキサーは、液体や気体を混ぜるために使用される製品。従来のミキサーとは異なり、駆動部がなく、パイプ内に設置した、らせん形状の本製品に液体や気体などの流体を流しこむだけで、さまざまなものを混合できる画期的な装置だ。鳥本さんは、営業活動だけでなく、用途に応じて製品の選定、周辺機器を含めた装置の提案、製造プロセスにおける試運転も行う。

 

まず、企業に最初にアプローチするのは、代理店の営業担当。次に、ノリタケ製品に関心を抱いた企業にセールスエンジニアが同行し、お客さまの技術担当者が抱えている課題や要望を具体的に聞き出し、最適な装置構成を考え、見積書を作成して、受注へと結び付けていく。

 

設計や仕様が決定した段階でいったん製造担当者に引き継ぐが、完成した装置の試運転に立ち会うのもセールスエンジニア。実際の原料を使用して、装置が想定通りに作動するかどうかを確認し、納入した装置のパフォーマンスに顧客が満足するまでフォローする。装置の規模にもよるが、ヒアリングから納入まで半年から1年を要する仕事だ。
「セールスエンジニアは、文字通り技術の知識を持った営業です。ポイントは、社内の豊富な知見や最新装置の情報を自分の中に蓄積し、それらを組み合わせてお客さまに最適な提案をすること。目指すゴールは同じでも、お客さまによって考え方や運用方法が異なるので、それを踏まえて提案するよう心がけています」

 

仕事をする上で、鳥本さんが常に意識しているのは、スピード感を持って対応すること。
「セールスエンジニアの仕事は、お客さまが現場で困っている課題を聞き出すことから始まります。話を聞いた時点で、すでに困っていらっしゃるわけですから、迅速な対応が求められますし、そのスピード感が受注につながり、お客さまの満足度アップにつながると思っています」

 

大学院で同様の技術は学んでいた鳥本さんだが、入社して先輩の商談に同行してみると、机上と実社会とのギャップに驚いたそう。
「最初のころは、訪問先の技術担当者と先輩の会話についていけませんでしたし、自分には思いもつかないような先輩の提案に敬服しました。先輩の発想力や仕事ぶりに一日も早く追いつこうと、わからないことは会社に戻ってから先輩に質問するなどして、知識を養っていきました」

 

クライアントの課題を聞いて自分で装置を考え、提案できるようになったのは3年目。中でも印象に残っているのが、お客さまであるプラントメーカーと協力してリチウム電池メーカーに装置を導入した案件だ。リチウム電池は成長分野でありながら、納入実績がなかった。何とかして受注したいと考えた鳥本さんは、自分で構成した装置の実証テストをすぐに実施し、いち早く先方に提案した。
「すると、先方の担当者がテスト対応の早さを評価してくださり、複数社の中から当社の装置が採用されたのです。それまでは、先輩から引き継いだ既存クライアントへの提案しか経験がありませんでしたが、今回は、前例のない新しい業界に自分でイチからアプローチして成約した案件。自らテストを重ね、試行錯誤の末に完成させた装置だけに、喜びもひとしおでした。初テストから納入まで1年近くかかりましたが、苦労が報われ、セールスエンジニアとしての大きな自信になりました」

 

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スタティックミキサーの実物を見せながら、商談する鳥本さん。技術担当者との専門的な話にもその場で対応できるのが、セールスエンジニアの強みだ。

 

新たな使い方、関連製品を使った新たな装置構成で、新分野の開拓を目指す

入社4年目、鳥本さんは名古屋本社のエンジニアリング事業部で、中国を中心とする海外営業を担当することになった。上海と深圳(しんせん)に拠点を置く中国の代理店を通じてスタティックミキサーを営業するので、仕事内容に大きな変化はない。代理店には日本語を話せる担当者がいて、日本語でのやりとりも可能だった。
「ところが、現地に出張して営業に同行すると、顧客と代理店との会話は中国語。私の説明を通訳したはずなのに、再び同じ質問を受けることもあり、『私の意図がきちんと伝わっているのだろうか』と不安になりました」

 

そこで、鳥本さんは代理店とのコミュニケーション強化に注力。3カ月が経過するころには、代理店担当者のノリタケ製品に対する知識も深まり、うまく連携できるようになった。

 

海外営業を担当するようになって2年目、鳥本さんは日系メーカーからの注文を受ける。自ら中国にテスト機材を持ち込み、稼働に問題のないことをきちんと確認した上で、装置を納入した。
「うれしかったのは、現地の日本人担当者に『鳥本さんがいるおかげで、設備を順調に稼働できる』と言ってもらえたこと。別の担当者になってからも2台目の注文を受けるなど、そのメーカーとの取引は順調に続いています」

 

海外営業の経験から鳥本さんが学んだのは、自ら積極的にアプローチしていくことの重要性。国内ではノリタケというブランドの認知度があるため、引き合いも多いが、海外での認知度はまだ高くない。自ら働きかけないと何も始まらないと気づいてからは、代理店に「こんな業種にも当社の製品ニーズがあるはず」とアドバイスするなど、新たな分野開拓を促した。
「当社の技術力がまだ知られていない海外での営業は大変でしたが、一方で、やればやっただけ成果となって表れるのが醍醐味(だいごみ)。大きな手応えを感じることができました」

 

入社6年目、鳥本さんは東京に転勤。現在は東京営業所にてスタティックミキサーの新たな使い方を提案することに力を入れている。
「例えば、タンクに熱を加えて化学物質の反応を促す化学プラントの反応器。そこにスタティックミキサーを利用することで、もっと優れた化学反応が期待できるのです。このように、混ぜるという従来の用途以外にも利用価値があることをアピールして、スタティックミキサーの販売につなげています」

 

こうした新たな使い方の提案で、鳥本さんはすでに3社への大型設備の導入に成功。さらに、数社が試用段階に進んでいる。
「スタティックミキサーの新たな使い方の提案に加えて、開発部隊が続々と開発している製品を組み込んだ装置を提案し、事業部の売り上げに貢献していくことが今の目標です。そして、流体(液体)に関連したさまざまな装置を組み合わせて、今まで誰も思いつかなかった新しいシステムを設計し、新分野での利用を開拓していきたいですね」

 

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月の3分の2は日帰り出張と半日出張のため、デスクワークは社内にいる時に集中的に行う。

 

鳥本さんのキャリアステップ

STEP1 2010年 2カ月間の新入社員研修に参加し、工場で製品作りを体験(入社1年目)

文系・理系の総合職25名で2カ月間の新入社員研修に参加。4月は、名古屋の本社でビジネスマナーや各事業部の製品の概要などを学び、自社製品のラインナップの多さにあらためて驚いた。5月は、愛知県で工場実習に参加。砥石を製造する工場で先輩社員に作業を教わり、ラインに加わって製品作りを体験。工場でのライン作業を初めて経験し、自分がしっかりと仕事をしないと周囲に迷惑をかけてしまうことを実感した。

STEP2 2010年 エンジニアリング事業部でセールスエンジニアの仕事を習得(入社1年目)

6月、エンジニアリング事業部流体テクノ部に配属。スタティックミキサーのセールスエンジニアとなる。父親も同様の仕事をしていたので、営業職に就くことにまったく抵抗はなかった。教育担当の先輩の下でセールスエンジニアの基礎を習得し、半年後には商談の内容を理解できるレベルに。2年目に独り立ちして、西日本エリアの化学・プラント業界の企業を担当することに。製品単体の営業は一人で対応できたが、スタティックミキサーを組み合わせた大がかりな装置は、先輩のサポートを受けながら提案するなどしてステップアップ。3年目には大きな案件も一人で対処できるように。

STEP3 2013年 海外担当として、中国でのセールスエンジニアを経験(入社4年目)

4月、同じエンジニアリング事業部で海外営業を担当することに。月に1回、1週間程度中国に出張して、代理店に同行。滞在中に5社程度を訪問し、自社の技術PRに努めた。1台の納入が決定すると「あと10台は購入するから」と、日本では経験しないような値引きを強いられ、中国でのタフなビジネスを実感。顧客との食事会では、グラスを空にするまで飲み干す中国の伝統にならって“乾杯”を繰り返し、宴会中に寝てしまった経験も。4月、主任に昇進。

STEP4 2015年 東京に異動し、東日本エリアのセールスエンジニアに(入社6年目)

10月、エンジニアリング事業部東京営業所に異動となり、東日本(関東地区と新潟)の化学業界を担当。名古屋本社に比べて組織が小さく、1人で担当する企業数が増えたので、考える仕事に軸足を置いて活動。16年2月、日本のプラントメーカーに海外で使用する装置を納品した際には、装置を海外に送るにあたって必要な輸出許可などについてアドバイス。海外営業で培った知識を生かしてクライアントをサポートした。16年4月、副主事に昇進。

 

ある日のスケジュール

8:15 出社。始業時間まで、出張中に机の上にたまった書類を処理。
8:30 フロア全体での朝礼と体操。
8:40 見積書や営業プレゼン資料の作成、クライアントの条件に合った製品の選定などのデスクワーク。
12:00 同僚と会社付近でランチを取り、栃木にあるクライアントに向かう。
14:00 代理店の担当者と合流してクライアントと商談。見積もりを提出した装置について、技術担当者と話し合う。
16:00 代理店担当者と、商談に進む可能性のある近隣の企業を1、2社訪問。自社製品のプレゼンを行う。
18:00 栃木の出張先から直帰。

プライベート

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大学に入ってからスノーボードを始めた。岐阜県に里帰りするタイミングで、地元の友人たちと年に数回、岐阜周辺のゲレンデに繰り出している。写真は15年12月。

 

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5年間勤めると3連休を取れる休暇制度を利用して、16年2月に8日間のローマ&パリ旅行へ。写真はバチカン市国のシスティーナ礼拝堂の前。「パリの街散策が楽しかったですね」。

 

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名古屋駅から徒歩約15分、ノリタケの森は、クリスマス時期になるとライトアップされて観光スポットに。本社はその敷地の一角にある。「仕事の疲れを忘れさせてくれる美しさです」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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