ビジネスパーソン研究FILE

Vol.354 ケニス株式会社

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いしだ・つばさ●企画部。帯広畜産大学畜産学部食品科学ユニット卒業。2013年入社。当初は食品メーカーや化学系の香料メーカーを志望していたが、部活動に専念していたため、就職活動に出遅れる。研究や化学の分野で募集企業を探し、就活サイトで「楽しくなければ理科ではない」という現社のキャッチコピーを見て、興味を持つ。ジャガイモのでんぷん質の研究をしていたスキルも役立つと思い、入社。

問い合わせやクレームなどの電話応対を行いながら業務に必要な知識を身につける

小学校の時に理科の実験で使われる顕微鏡などの教材や器具。ケニス株式会社は、その教材や器具類の開発、製造、販売を行う。最近では、企業の研究開発部門や大学の研究室で使用される器具や機器など、研究部門でも業績を拡大している。

 

石田翼さんは研修を経て、2013年6月から企画部に配属。企画部のスタッフは11人で、教育教材・研究用の商品の開発、他社製品のセレクト、新商品の試作品製作やその性能検証、商品紹介のカタログに掲載する紹介文や写真の制作、カタログ制作の進行管理など多岐にわたる業務を行う。また、お客さまのリアルな声を聞く機会として、商品の問い合わせの対応も企画部が担っている。
「ルーティンの仕事がないので、日々、起こることをやりながらスキルを身につける、いわゆるOJT(On the Job Training)方式でスタートしました。まずは電話応対から始めたのですが、学校の先生や販売代理店、社内の営業担当など問い合わせも多方面にわたります。例えば、学校の先生から『こんな実験をしたいけれど、どの器具を使用するのが一番いいのか?』といった相談の場合。何万種類もある取り扱い商品をすべて把握していれば即答できるでしょうが、入社したばかりの自分には難しく、いったん電話を保留にして先輩にアドバイスをもらって返答するため時間がかかり、お客さまに申し訳なく、自分自身も歯がゆい思いをしました」

 

仕事に慣れてきた1年目の冬、石田さんはミスをしてしまった。
「大学や企業の品質管理部門などで使用される機器で、“恒温水槽”という温度を一定に保つための商品があるのですが、温度管理ができないと指摘が入りました。実際に自分で検証してみて、お客さまの言う通り機器に問題があると結論づけ上司に報告。上司と共に再度、検証を行ったのですが、僕の使い方が間違っていたことがわかりました。つまり、商品に問題はありませんでした。お客さまに報告する前だったので大きなトラブルにはなりませんでしたが、一歩間違えていたら返品はもちろん、会社の信頼を損なうことになっていたかもしれません。当たり前だけれど報告・連絡・相談の必要性、そして、日々の業務一つひとつに正しい判断や対応を心がけようと肝に銘じました」

 

1年目からカタログ制作も担当。教育教材、研究用の2種類、それぞれ1000ページ以上を2年に1回、交互で制作する。教育現場や最先端の研究現場に器具や機器を広く紹介することで、子どもたちが「科学者になりたい」と思うきっかけとなる理科教育の機会をつくったり、日々進歩している科学技術の発展を支えることにつながる仕事だ。加えて、防災や放射線教育といったテーマ別のカタログなども年間10種類以上を制作。さらに教科書販売会社に、新たな教材を使った実験の提案も行う。
「先生は、教科書通りに行う実験をされることが多いので、教科書に載ることは大きな意味があります。また、ガラス素材を樹脂にすることで安全面とともに片づけも簡単になったり、豆電球をLEDにすることで明るく見やすく、電球の取り換えも不要になります。時代に応じて理科実験も変わっていくべきなので、教科書販売会社と関係を構築し、これからの理科教育を考えていくことも大切な仕事なのです」

 

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自分たちで開発した製品は、カタログの原稿作成も行う。仕入れ先が開発したものは、記載内容に相違ないか、細かく何度もチェックする。

 

理科実験の先進国、アメリカでの展示会で刺激を受け、新製品開発に意欲をそそぐ

ニーズに合わせて新しい実験器具や機器を提供するため、毎月、新製品のアイデアミーティングを部内で行っている。その時にお客さまからの電話や営業からのフィードバックが大いに役立つと石田さんは話す。
「お客さまからの問い合わせや営業が現場で聞いてきたリアルな声が、改良や新製品を考えるヒントになります。なので、問い合わせ電話で聞いたことや営業から言われたことを、社内サーバー内のフォルダにメモを残します。メンバーそれぞれが得た情報を共有することで、それが思わぬ連鎖や化学反応を生み、今までにない製品を作りだすことにつながるんですよ」

 

現在の課長は、石田さんの研修担当だった人で、特に顕微鏡に精通。石田さんも自然と顕微鏡に触れる機会が増え、顕微鏡担当の補佐を行うポジションに。現在は顕微鏡もデジタル化が進み、光源がLEDだったり、テレビモニターに映し出すことができたり、Wi-Fiでパソコンにデータを送信できるなど進化している。
「課長は顕微鏡に詳しく、その知識を教えてもらいながら、デジタル顕微鏡は僕が担当することに。2年目からは、デジタル顕微鏡のメイン担当として対応する機会が増えました。デジタル顕微鏡は石田に聞けばいい、と言われるようになった時は、本当にうれしかった。顕微鏡は当社の主力商品ですから、会社に貢献できていることが何より喜びです」

 

2015年4月には、ニューオーリンズとシカゴで行われた理科教材や研究機器の展示会を訪問するメンバーに加わった。理科実験において、日本は先進諸国の中でも遅れ気味。一方アメリカでは、驚くような実験機器が次々と登場する。さらに、15年9月と12月には、海外の顕微鏡製造会社の視察メンバーに。品質管理や入荷前の検査などの確認や要望を、製造会社の人たちとすり合わせた。
「入社2年目の夏に、社員旅行でシンガポールを訪れたのが、初めての海外。海外を知らない僕が、海外視察メンバーに加えてもらえるなんて、自分でも驚きました。アメリカでの展示会巡りは衝撃的で、日本にはないユニークな機器が多かったんです。強烈に記憶に残っているのが、ゴキブリを使って、脳からからだを動かす信号が出ているということを実験するもの。脳から腕を動かす信号を読み取る電極機器を使い、機器につないだリード線の先にゴキブリの足をちぎって装着。その機器から電流を流すだけで足が動くというものです。日本では倫理的に難しいと思いますが、強烈なインパクトや実験を楽しむ風土は学ぶべき部分も多いもの。日本では決められたカリキュラムという枠の中での開発になりますが、子どもが目を輝かせてできるような、新しい実験機器を作りたいですね」

 

2016年5月には石田さんの部署に新入社員1名が配属され、石田さんが教育担当になった。
「電話応対をベースに必要な知識を伝え、アドバイスや改善点を指摘。自分の新人時代を思い出すとともに、そのころと比べて少しは成長できたかなと思います。僕が新人時代、どんなに忙しくても先輩が丁寧に対応してくださったので、僕も質問されたら必ず手を止め、その問題解決を最優先にするよう心がけています」

 

石田さんは、教員を目指す大学生に向けて理科実験の講義を行うこともある。その時に、声を大きくして伝えるのが、「自分の仕事は、理科の教育を変えることができる」ということ。
「社会や算数は事実を教える教育なので、教科書の内容を変えることはできませんが、理科実験はどんどん変わっているんです。理科の教育を変えることで、子どもたちに理科って面白い、実験って楽しいと思ってもらいたいです」

 

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石田さんが教育担当をする新入社員は、隣の席。ちょっとした疑問にもすぐに対応するために、どんなに忙しくても手を止めて話を聞くように心がける。

 

石田さんのキャリアステップ

STEP1 2013年4月 研修を経て企画部に配属(入社1年目)

座学研修、企画部以外の3部門で2週間ずつの研修を経て、6月から本配属。企画部の仕事が多岐にわたるため、OJTで業務を覚えていくことに。商品についての質問や故障・修理、クレームなど電話応対からスタート。教科書に掲載されている実験器具は質問を受けることが多く、繰り返し対応するうちに徐々に商品知識を増やしていった。

STEP2 2014年1月 会社に大きな損失を与える一歩手前でクレームを解決(入社1年目)

温度管理を一定に保つ機器の温度調整ができないとクレーム。「一人で検証実験を行い、故障しているとの結論にいたったのですが、上司と共に検証を行ったら何も問題なし。返品を受け付けてしまうと損失だけでなく、会社に対する信頼を失うところでした。ミスをミスで終わらせず、今後の自分への反省課題として生かしたいと思いました」。

STEP3 2015年4月 アメリカで開催された理科実験の展示会を訪問(入社3年目)

ニューオーリンズとシカゴでの実験器具や機器の展示会へ。日本では見たことのない器具や実験方法が紹介され、今後の商品開発のヒントに生かす。2015年9月と12月には、海外の顕微鏡製造会社を訪問。「海外でもコミュニケーションが取れるよう語学力のレベルアップの必要性を痛感し、英語の勉強を始めました」。

STEP4 2016年5月 自身の業務と並行して新入社員の教育研修を担当(入社4年目)

教育学部卒業の女性新入社員の教育担当に。自分自身が新人だったころ、先輩がどんなに忙しくても丁寧にわかりやすく指導してくれたので、仕事の手を止め、後輩からの質問や確認などを優先するよう心がけている。後輩を教育することで、あらためて自分の認識が曖昧だったり知識が足りないというウィークポイントに気づくことができている。

ある日のスケジュール

6:00 起床。ランニング後にシャワーをあび、手作りした朝食を食べて出勤。
8:30 始業30分前に出社。メールチェックや仕入れ先への指示など事務処理を行う。
9:00 始業後は、連絡や確認など電話業務中心。先生や販売店からの問い合わせ対応など。
11:00 商品仕入れ先から、新しい商品の提案を受ける。
12:00 営業スタッフとコミュニケーションを取るために、一緒に外でランチ。忙しいときは、お弁当を買って済ませることも。
13:00 週に1回、企画部でミーティング。新商品のアイデア交換、情報共有などを行う。
15:00 試作商品の動作検証。スムーズに動くか、危険性はないか、操作は簡単かなどをチェックする。
17:00 毎月、販売代理店などに配布する冊子用の原稿を作成。
18:00 2年に1度発行する、総合カタログの編集作業。原稿制作やレイアウト確認、仕入れ商品の紹介文について事実に間違いないかなどをチェック。
21:00 退社。営業スタッフと飲みに行く日もあり。予定がなければ帰宅。

プライベート

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大学時代はアイスホッケー部に所属。現在も社会人チームに所属している。「練習は月2回ぐらい、土日にあります。秋から冬は平日に試合があり、終業後に急いで試合会場に向かいます」。

 

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会社の有志メンバーで、フットサルのチームを結成。「同じスポーツをすることでコミュニケーションも取りやすく、企画部以外の方からもかわいがってもらっています」。

 

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会社の若手同士で時々遠出もしている。「2016年の5月には、三重県にある遊園地で絶叫マシーン巡りをしてきました。写真は到着直後、まだ元気なころの様子です(笑)」。

 

取材・文/森下裕美子 撮影/笹木 淳

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