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Vol.356 株式会社ブリヂストン

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くわばら・ひろゆき●調達本部調達戦略企画部戦略企画課。慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。2014年4月入社。“グローバルにビジネス展開している”と“業界のリーダー”をキーワードに、メーカー、商社、石油開発企業など約30社にエントリー。そのうち数社に内定した。現社への入社の決め手となったのは、若いうちから仕事を任せてもらえる環境の中で、早く成長できそうだと感じられたこと。

入社2年目、グローバル会議に集まった海外拠点のトップに英語でプレゼン

2014年に入社した桑原広幸さんが配属となったのは、調達本部調達企画部(当時)。この本部のミッションは、グローバルに広がる生産活動に必要な原材料や生産設備を、競争力のある価格・品質・納期で安定的に調達すること。その中で調達企画部のミッションは、原材料のコストや在庫動向を把握し、さまざまなグローバル調達戦略を提案・実行・管理していくことだ。

 

入社1年目、調達企画部(当時)の一員となった桑原さんが最初に担当した仕事は、調達先がグローバルに広がる原材料のコストや在庫動向を取りまとめ、経営層に報告すること。
「半期ごとに全社の予算が決まり、生産部からの情報に基づいて必要な原材料量が決まると、調達本部の各専門セクションが市況を分析し、国内外のサプライヤー(原材料などを供給するメーカー)と価格交渉を行います。こうして調達した原材料が生産工場に送られ、タイヤなどの製品になっていきます。実際に原材料を調達するのは各専門セクション。私の仕事は、各専門セクションからコストや在庫状況の数字を集めて報告書にまとめるなど、調達活動のパフォーマンスを管理することです」

 

この仕事は、数字を出してもらう各専門セクションをはじめ、原材料の開発を担当する技術部門、営業や経理など、他部署との密なコミュニケーションが欠かせない。
「新人とはいえ、他部署の上長と折衝する機会も多いので、メールや電話よりも対面でコミュニケーションを取ることを心がけています。また、業務を円滑に進めるために、相手の状況や気持ちを察すること、納期や約束を守ることも大切にしています」

 

報告書は経営判断にかかわる重要な資料なので、数字のミスは絶対に許されない。また、単なる数字での報告だけでなく、その意味を解説するなど、報告書にメッセージ性を持たせる工夫も求められる。
「どんなに注意を払っても、ヒューマンエラーはつきものなので、経営層に渡る前段階でミスを発見できるよう、いろいろな方法でデータを検証しています。また、調達活動のアウトプットをあらわす資料なので、誤解を招くような表現は避けるよう気をつけています」

 

もう1つの重要な仕事が、グローバル調達戦略を策定・遂行していくこと。例えば、原材料購入から製造までのリードタイム(所要期間)を短縮することで、資産の圧縮に貢献するだけでなく、販売施策との整合性を確保することができる。こうした新たな仕組みづくりを考え、提案し、関連部門と連携しながら実行・管理していくのだ。

 

北米・南米・ヨーロッパ・アジア・中国・日本の6拠点の原材料在庫の管理を担当することになった桑原さんは、管理方法の改善に向けた仕組みづくりに取り組んだ。
「それまでは各拠点がそれぞれの方法で管理していたため、管理方法がまちまちで、日本サイドで把握しきれていませんでした。この課題を改善すれば、リードタイムの短縮につながり、財務諸表にも好影響をもたらすと考えたのです」

 

大きな節目となったのは、入社1年目の10月。桑原さんが主体となって、新しいプロジェクトを動かすことになった。翌年5月に各拠点のトップが集まって本社で開催されるグローバル会議で、その提案内容をプレゼンするため、まずは各拠点の在庫管理状況の現状リサーチに取りかかった。
「とはいえ、当初はどんな要素を確認すればいいのかもわからない状態。電話やメール、テレビ会議で海外拠点と連絡を取り合い、試行錯誤しながら、約3カ月かけて調査結果をまとめました」

 

入社2年目となった15年5月、自ら立案した新しい戦略をグローバル会議でプレゼンする日がやってきた。
「これまでも経営層への報告は毎月行っていましたが、今回はまったく新しい仕組みについての提案ですし、英語でプレゼンするのも初めて。すごく緊張しましたね。想定外の質問も出るでしょうし、相手のリアクションも読めません。前夜は自宅で一人リハーサルを行い、質疑応答もシミュレーションして本番に臨みました」

 

不安と緊張をはねのけ、本番は開き直って堂々とプレゼンできたと思う、と話す桑原さん。プレゼンの反応は上々で、提案内容は概ね合意に達し、大きな達成感を味わった。

 

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対面でのコミュニケーションを大切にしているので、用事があるときは、できるだけ相手のデスクに出向くことにしている。

 

新たな仕組みの導入に工場の現場が猛反発。多面的に考える重要性を学ぶ

一方で、苦い経験もあった。タイに出張し、新しい提案を実行する現場である工場に向けた説明会を行った時のことだ。約30名の出席者を前に新しい仕組みの導入について説明したところ、猛反発に遭ってしまったのだ。
「正直、予想外でした。しかし、よくよく考えてみれば、経営や調達の立場から見れば優れた提案であっても、実行する現場にとっては新しい仕事が1つ増えるだけ。面倒が増えるだけで、彼らにとってのメリットが見えなかったのです」

 

現場の人たちをその場で説得しきれなかった桑原さんは、課題を日本に持ち帰り、彼らの意見を踏まえながら負担を軽減するよう仕組みを効率化。現場のメリットがわかりやすい資料に作り直して、テレビ会議で再度説明し、説得した。こうして導入に至った新たな仕組みは、半年後には効果が表れてきたという。
「悔しかったのは、1度の説明で相手のメリットをきちんと伝えて、説得しきれなかったこと。ですが、この一件で多面的に考える重要性を学びました。1つの仕組み提案でも、国や現場によっていろいろな受け止め方がある。それを理解した上で多面的に考えなくては、どんなに良いと思う提案でも実現できないのだということを身をもって知りました。現在は、この仕組みを滞りなく運用し、ルーティン業務として定着させることに力を注いでいます」

 

桑原さんは、グローバル調達情報の見える化にも取り組んできた。各拠点はいろいろなサプライヤーから原材料を調達しており、どのサプライヤーからどの程度購入したかを、これまでのエクセルデータでの集計から、IT部門と協力して作り上げた新たなシステムで集計する方式に変更。今後、こういった調達情報をみえる化して、自動的にテレビモニターで映し出す等の改善に繋げようとしている。
「このシステムを導入することで、調達先に偏りがある、あるいは分散しすぎているといった状況がひと目でわかるようになり、より効果的・効率的に業務を推進できるようになると考えています」

 

入社3年目の現在は、これらの仕組みをさらに改良するプロジェクトを自ら発足。見える化対象の拡大等、コンテンツの充実に取り組んでいる。
「これほど早い時期から、たくさんのナショナルスタッフ(海外拠点の現地出身スタッフ)と連携しながらグローバルな仕事をできることに喜びを感じています。対象となる金額が数千億円規模というスケールの大きさにもやりがいを感じますし、年次に関係なく若手の提案でも内容で勝負できるフェアな職場環境も気に入っています」

 

桑原さんが、仕事をする上で常に意識していること――それは、自分の指導社員だった現在の課長から言われた「5歳上の先輩に負けない仕事をして、後輩には断トツで勝つこと」という言葉だ。
「私にとっての“勝つ”とは、目立つこと。目立つとは、今まで誰も考えなかった新しいことを提案し、その提案が効果的な仕組みとなり、標準化されること。こうした実績を積み重ねて目立っていくことで、『この人と一緒に働きたい』『この人に任せておけば大丈夫』と信頼される存在になりたいと思っています」

 

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打ち合わせで席を離れる以外は、ほとんどがデスクワーク。約5割の電話が海外からの質問や連絡なので、英語で対応することも多い。

 

桑原さんのキャリアステップ

STEP1 2014年 2カ月間の新入社員研修で工場実習や販売実習を経験(入社1年目)

4月に入社し、同期98名と新入社員研修に参加。最初の1カ月は座学で各部門の概要などを学び、その後の工場実習ではタイヤの製造ラインに入って実作業を経験。販売実習は、北海道のタイヤ館で店頭接客や代理店への営業に同行した。現場で働く社員の優しさに触れると同時に、万一の事故の際、人命を左右するタイヤという製品に携わる一員としての品質に対する厳しい姿勢を目の当たりにした。2カ月に及ぶ研修を経て、同期との交流も深まった。

STEP2 2014年 調達に関する経営層向けの月次報告書の作成などに携わる(入社1年目)

新入社員研修中の配属面談では、調達、マーケティング、営業を希望。6月、東京本社の調達企画部調達企画課(現・調達戦略企画部戦略企画課)に配属となる。指導社員の下で、経営層向けの月次報告書の作成など、ルーティン業務から学んでいった。エクセル初心者からスタートし、3カ月が過ぎるころには調達業務全般の流れを理解。仕事にも慣れ、少々準備不足なまま部長に質問しに行ったところ、「レベルが低すぎる。きちんと準備をしてきなさい」と一喝された。それからは何事にも念入りに事前準備をして臨むようになった。

STEP3 2015年 新プロジェクトや新工場立ち上げのサポートなどを経験(入社2年目)

2年目に入ると、自分がやるべきことがわかってきて、主体的に動けるように。月次報告書作成などのルーティン業務を効率的に行い、プロジェクトなどの“考える業務”により多くの時間を費やせるようになった。先輩のアシスタントとして、アジアの新工場立ち上げのサポートも経験。6月に新入社員が配属されることを知り、いっそう気持ちが引き締まった。後輩と一緒に仕事をするようになって、当たり前にやってきたことを言葉でうまく説明できない自分に気づくなど、勉強になることも多かった。

STEP4 2016年 新たなプロジェクトを自ら積極的に発案・実行するように(入社3年目)

現在は、調達先がグローバルに広がる原材料のコスト・在庫動向をまとめて経営層に報告するなど、予算管理業務が3割、さまざまな仕組みづくりなどの企画業務が5割、アジア・中国におけるプロジェクトのサポート業務が2割。アジア担当として、年に1、2回現地に出張している。突発的に発生するプロジェクトにも積極的に参加しつつ、
自分から新たな提案をしていくことも意識している。将来的には海外赴任も経験したいと考えている。

ある日のスケジュール

8:00 (サマータイム時)出社して、メール&当日スケジュールを確認。
8:30 南米事業所のスタッフと英語で電話打ち合わせ。インターネットなどで市況や経済情報をチェック。
10:00 週例の課内ミーティングに参加し、各自の業務進捗状況を共有。
11:00 月例の役員報告会に出席し、原材料のコスト・在庫状況などを報告。
12:00 社員食堂でランチ。気分転換に外食することも。
13:00 検討中のコンテンツについて、IT部門担当者と打ち合わせ。
14:00 アジア事業所・社内関連部門のスタッフとTV会議。
16:00 データ整理、報告資料作成、翌日の準備などを終えて、18時30分ごろ退社。帰りにメンバーと飲みに行くことも。

プライベート

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大学時代の友人たちとは、卒業後もよく会っていて、仕事の話のほかに、たわいのない話をする。写真は、2016年のゴールデンウィークに葛西臨海公園でバーベキューをしたとき(一番左が桑原さん)。

 

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同期メンバーとは、仕事帰りに月1回ぐらいのペースで食事を楽しむ。写真は2015年(左から2人目が桑原さん)。「特に新入社員研修で同じチームだったメンバーとは、今も仲が良いですね」。

 

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2015年夏、友人と2人で奥多摩にプチ旅行。写真は鍾乳洞。「大学時代はよくバーベキューに行きました。奥多摩は東京から近くて自然が豊かなので、お気に入りの場所です」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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