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Vol.358 株式会社 公文教育研究会

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つじ・ひろのり●町田事務局。立命館大学政策科学部政策科学科卒業。2005年4月入社。大学院に進学する予定で院の研究を前倒しで進めていたが、迷いが生じて4年生6月から就職活動を開始。大学1年時から友人と個人塾を運営していたことから、教育系で選考に間に合う2社にエントリー。現社の“能力を伸ばす”というフレーズにひかれ、伸ばせるものだと考えたこともなかった能力を本当に伸ばせるのかどうか試してみたいと思い、入社を決意。

先輩社員・公文式指導者から学び、試行錯誤を続けた新人時代

公文式教育法は、1954年、高校教師だった公文 公(くもんとおる)が作った計算問題で、小学2年生の長男がみるみるレベルアップしたことから、自宅で教室を開設し、近所の子どもたちを指導したことが始まり。2016年3月現在は、49の国と地域に展開し、国内に1万6300、海外に8400の教室がある。

 

公文式教室の指導者と共に子ども一人ひとりの成長と教室の発展を目指し、さまざまなサポートを行っているのが各エリアの事務局。2005年に入社した辻 宏典さんは、千葉事務局でコンサルティング職としてのキャリアをスタートさせた。
「コンサルティング職の役割は、担当する教室の運営課題や指導課題を解決すること。教室を訪問して先生方の悩みに耳を傾け、時には先生方が気づいていない課題を見いだしながら、一緒に解決策を考えていきます。ほかにも、よりよい教室発展のための戦略づくり、先生方のスキル向上のための小集団ゼミ活動や講習会などの学びの機会の提供も行っています」

 

コンサルティング職の先輩に同行し、その仕事ぶりを見ながらノウハウを習得していった辻さんだが、経験の乏しい新人時代には解決策が導き出せないこともあった。そんなとき頼りにしたのが、担当する教室のベテラン指導者だ。
「豊富な経験と知恵を持っているベテランの先生方のアドバイスや説得力のある解決策は、とても参考になります。コンサルティング職の先輩だけでなく、ベテランの先生方からも随分多くのことを学びました」

 

千葉事務局では、地域性を踏まえたコンサルティングが重要となることを学んだ。担当エリアは都市部から郡部にかけての広範囲にわたり、それぞれの地域ごとに、例えば保護者が教室に望むことも「進学校を受験したい」「学校の成績を維持したい」など、かなり異なる。
「地域によってヒットしやすい広告媒体も異なります。先生と相談した末、町内放送を使ってPRアナウンスを流してもらったこともありました。たくさんの試行錯誤の中で経験を蓄積し、生徒個々、先生個々、教室個々、教室のある地域個々に向き合うコンサルティング業務にシフトしていけたように思います」

 

多くの指導者に共通する悩みの一つは、個々の子どもへの指導方法だ。公文式は個人別指導を特長の一つとしている。使う教材は同じでも、その使い方を子ども一人ひとりの特性にどのように合わせていくのか、その使い方や渡し方はバリエーションに富む。ベテランの指導者やベテランの社員であってもいつまでも頭を悩ませるポイントだという。
「教材の使い方や渡し方を工夫したことで驚くほどの成長を見せてくれる子どもの姿を目にすると、うれしさがこみ上げてきます。ところが、半年後にその時のことを思い返すと、『本当にあの指導法でよかったのかな!?』という思いに駆られることが多々あります。なぜなら、その指導法が最適だと判断したのは半年前の自分であり、時間の経過とともに自分の中にさらに知識・経験が蓄積され、子どもを把握する精度が上がっているからです。だから、半年後の自分が当時を振り返ると『もっといい方法があったのに』と思えて仕方ないんです。この気持ちはコンサルティング業務全般においても常に感じることです。そのせいか、コンサルティング職としての自分の仕事にいまだに大きな達成感を感じたことがありません」

 

辻さんは、指導者と話した内容を記録にとるように心がけている。
「その内容を1年後に読み返すと、その拙さに恥ずかしくなります。勉強すればするほど『自分はまだまだだ』と思えてなりませんが、これからも現状に満足することなく自分を更新し続けていきたいと思っていますし、担当する先生方にもそうあってほしいと願っています」

 

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町田事務局を訪問した指導者と面談。子どもの学習の様子を撮影したビデオなどをパソコンで見ながら、その子により合った指導方法を共に探る。

 

蓄積した経験をさまざまな場で発信する中から、自分自身のさらなる成長が生まれる

12年、辻さんは、組織変更によって新しく誕生した部署で新任指導者育成職に就いた。以前は、コンサルティング職がベテラン指導者も新任指導者も一括で担当していたが、教室を開設したての新任指導者だけを担当する部署が新設されたのだ。東関東エリア育成チームで、全国で運用するマニュアルの改訂作業などに携わったのち、大阪北事務局に異動した辻さんは、新任指導者育成職としての活動を本格的にスタートした。
「新任指導者育成職の仕事は、新任指導者の教室開設のサポートから教室開設後2年間までのフォローアップ。生徒を指導するのは初めての方々が大半なので、まずは公文式指導者として必要なセンス、保護者とのコミュニケーション力、スタッフ育成力などを身につけてもらいながら、『この先生には数年後にこうなっていてほしい』と将来の成長を見据えたコンサルティングを心がけました」

 

大阪北事務局での2年半で約30名の新任指導者を担当した辻さんの元に、最近になって当時新任指導者だった先生から一通のメールが届いた。「辻さんの言っていたことの意味が、今になってよくわかります」という内容だ。
「当時の私が描いた道を歩んでいただいているようで、とてもうれしかったですね。実践してきたコンサルティングの成果が表れたのかな、と感慨深いものがありました。コンサルティング時代に無我夢中で蓄積したものを少しずつ体系化して伝えられるようになったからこそ、先を見据えたアドバイスができるようになってきたのかなと手ごたえを感じられた瞬間でした」

 

15年4月からはグローバル人材交流チームの一員として、香港とフィリピンの現地法人に半年間ずつ出張し、現地のコンサルティング職社員と一緒に活動した。
「社員も教室指導者も生徒も、9割以上が現地の人たち。仕事で英語を使った経験などありませんから、最初は何が不安なのかもわからないほど不安でした(笑)」

 

国民性の違いはあっても、指導者と一緒に指導力を高めていくというミッションは世界共通。辻さんは、現地社員と教室に同行し、自分の中にこれまで蓄積してきたコンサルティングのノウハウを彼らに伝えていった。不安だった英語でのコミュニケーションには、意外な収穫があった。
「ボキャブラリーが限られているため、おのずとシンプルな言葉で表現するようになります。言いたいことをシンプルな言葉に置き換えて伝えることを繰り返すうちに、難しく考えていたこともシンプルなことに落とし込んで考えようとするクセがつきました。これは、日本語で仕事をしていたら気づかなかったことです。その後は、日本語でも自分が伝えたいことを突き詰めて考えて抽出し、平易な言葉で伝えられるように意識するようになりました」

 

16年4月、辻さんは町田事務局に異動。現在は、中堅コンサルティング職として約60教室を担当しながら、後輩の指導にも力を注いでいる。
「自分の知識や経験を若手に伝え、実践できるよう導いていくことも中堅社員の役割。教室訪問に同行し、一緒に振り返りを行いながら、彼らの視野を広げていくよう積極的にかかわっています。そうやって物事を伝える過程で思考が深まったり、彼らから刺激を受けたりと、自分自身が成長させてもらっています」

 

コンサルティング職として、千葉事務局時代は「いかに担当地区の子どもを伸ばすか」に苦心してきた辻さんだったが、現在は「指導者がいかに子どもを伸ばせるか」を意識してサポートするように。
「目指しているのは、先生方へのサポートを通して子どもを成長させること。すべての公文式の先生方には子ども一人ひとりの力を見極め、伸ばしたい力についての見通しを持ち、最適な教材を使うことで、最大限に子どもたちを伸ばしていただきたい、と考えています。

当面の目標は、担当地区のすべての先生方に高い指導力を身につけていただけるよう、サポートしていくことです。キャリアプランとしては、先生方が持つあらゆる課題を解決できるコンサルティング力をつけることで、数年後には海外事務局に赴任し、駐在員として現地のコンサルティング職の育成に携わっていきたい、と思っています」

 

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グローバル人材交流時代のフィリピンにて。現地のコンサルティング職社員と一緒に教材を囲んで生徒の指導について議論している。

 

辻さんのキャリアステップ

STEP1 2005年 千葉事務局にて、コンサルティング職の基礎を学ぶ(入社1年目)

4月、大阪本社にて1カ月間の集合研修に参加。新人約80名が集まり、創始者の理念や公文式の教材などについて学ぶ。5月、千葉事務局に配属。約5カ月間の実践研修では、指導者の気持ちを知るため、生徒指導と教室運営を経験。小学2年生が小学5年生相当の学習をしているなど、学年ではなく個々のレベルに合った内容を学び楽しんでいる姿が印象に残った。その後はOJT(On the Job Training)で業務を習得し、2006年2月よりコンサルティング職として独り立ち。約40の公文式教室を担当する。

STEP2 2010年 千葉事務局にて、子どもの指導と教室運営を経験(入社6年目)

11月から1年10カ月間、千葉事務局でのコンサルティング職業務と並行して、直営の公文式教室の指導者として教室に通ってくる子どもたちの指導と教室運営にも携わる。入社1年目の実践研修では、子どもたちを手こずらせたという思いが強かったが、その後5年間たくさんの子どもたちと接し、公文式教材をより細かく理解したコンサルティング職としての経験を生かして、一人ひとりの成長を考えた指導を実践。子どもたちの学力や自習する力がより高まったという手ごたえを得られた。

STEP3 2012年 東関東エリアと大阪北事務局にて、新任指導者の育成に携わる(入社8年目)

2月、組織体制の変更により誕生した育成チームに異動。船橋にある東関東エリア育成チームにて、新任指導者が安心して教室を開設し、安定的に発展できるような仕組みづくりに従事。全国で利用する運用マニュアルの作成と1教室の開設サポートを経験。10月、大阪北事務局に異動し、新任指導者育成職として約30名の新任指導者を担当。大阪北事務局の先輩から、教材や指導の知識、生徒の状態の把握の仕方、それぞれの先生に合わせた伝え方を学び、ひと回り成長することができた。

STEP4 2015年 グローバル人材交流チームにて、海外社員と一緒にコンサルティング業務にあたる(入社11年目)

4月、グローバル人材交流チームに異動。香港とフィリピンに半年間ずつ出張し、現地コンサルティング職と一緒に活動した。たまたま異動前に高校1年生相当からセンター試験レベル相当までの内容を公文式英語で学んでいたため、異動時はTOEIC(R)テスト800点。出張終了後も、お互いのコンサルティング業務の情報交換など、現地スタッフとの交流が続いている。16年4月、町田事務局に異動し、コンサルティング職として町田市と海老名市の約60教室を担当。若手社員の育成にも力を入れている。

ある日のスケジュール

8:30 出社して、メールチェックなどのデスクワーク。後輩社員に声をかける。
9:20 町田事務局の社員全員で朝礼。業務報告や連絡事項を伝達。
10:00 教室指導者に電話し、前回訪問した後の状況についてヒアリング。事務局に来訪した指導者と面談。
12:20  昼食。同僚と近所の店に食べに行く。
13:20 デスクワーク後、担当する教室に向かう。
15:30 教室に到着。15時から生徒指導が始まっているので、その様子を観察。
17:45 教室を出て直帰。帰宅途中の電車内で、教室訪問について振り返る。

プライベート

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社会人になってからサーフィンを始めた。写真は2015年に出張していたフィリピンでの休日。「現在も2週間に1度は湘南方面に出かけ、サーフィンで気分をリフレッシュしています」。

 

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4歳の長女が寝る時間までに帰宅し、読み聞かせをするのが日課。「娘は0歳からKUMONの国語を始めたので、本を読むが大好き。ひとりでもいろいろな本を読んで楽しんでいます」。

 

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読書が趣味で、本棚には本がぎっしり。「小説、歴史、自然など分野はいろいろ。世に出て10年以上たっているか、10年後にも書店の棚にならんでいそうな本かどうかが本選びの基準です。今はニーチェを読んでいます」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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