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Vol.367 株式会社うかい

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むらはた・まい●東京芝とうふ屋うかい。昭和女子大学生活科学部管理栄養学科卒業。2013年4月入社。大学進学時から食にかかわる仕事を目指し、栄養士の資格を取得。保育園や病院などに栄養士を派遣する企業に内定したが、大学1年から続けてきた焼き鳥店やファミレスでの接客アルバイトの楽しさが忘れられず、両親を説得。新卒採用が終わっていた4年生の11月、とうふ屋うかい鷺沼店に直接出向いて熱意を伝え、新卒枠での採用が決まった。

多岐にわたる研修で日本の文化や作法について幅広く学び、接客担当に

1964年に創業した株式会社うかいは、高級鉄板料理「うかい亭」、とうふ会席「とうふ屋うかい」などのレストラン経営、大涌谷や箱根連山を望む庭園美術館「箱根ガラスの森美術館」の運営などを行っている。

 

自宅近くにとうふ屋うかい鷺沼店やあざみ野うかい亭があり、子どものころから祖父母に連れて行ってもらっていた村端さんにとって、うかいは特別な場所だった。
「美しい日本庭園とおいしい料理…子ども心にもとても印象的でした。そして今、自分の職場になっても、この非日常空間の素晴らしさに、日々感動しています」

 

2013年に入社した村端舞さんが配属となったのは、とうふ会席料理を供する東京芝とうふ屋うかい。東京タワーにほど近い数寄屋造りの家屋に、日本庭園を望む58の個室が並び、平日には約500名、週末には約800名が来店する繁忙店だ。

 

期待に胸を躍らせて入社した村端さんだったが、最初の2カ月間はお客さまの部屋に入ることは許されず、部屋の前まで料理を運ぶ毎日。そして、来客が少ない時間帯に行われる研修や講習会で、接客に必要な日本文化や作法などをひたすら学んだ。
「和室への入り方、テーブルへの料理の出し方、店舗に利用されている家屋の歴史や建築様式、掛け軸などについて学び、2カ月ごとに替わる料理を試食しながら料理長の解説を聞いて、基本的な知識を身につけました」

 

部屋での接客が許されたのは、入社3カ月目。先輩と2人で8名の大部屋を担当した。この日を待ちわびていた村端さんだったが、初めての接客は、緊張しすぎてお客さまの顔を見ることができなかった。
「お客さまの顔を覚えていなかったので、トイレから戻る際に迷っていた方が、担当している部屋のお客さまだとわからず、あとで先輩に叱られました。その時に『部屋に入る前にひと呼吸置いて落ち着くこと。そして、退室する際にはひと通り見回すこと。そうすれば、お客さまの顔を覚える余裕ができる』とアドバイスを受け、実践するようにしました」

 

その後もしばらく先輩と一緒に大部屋で接客しながら経験を積み、9月からは1人で部屋を担当するように。そして、12月からは、大切な接待の席なども任されるようになった。

 

電話で予約が入ると、営業担当が内容を確認し、部屋と接客係を振り分ける。接客係は、その内容を台帳で確認し、常連のお客さまであれば好みを把握して準備を整え、当日は予約時間の30分前には入り口に待機して出迎える。部屋に案内した後は、場の雰囲気を察しながら、タイミングよく料理や飲み物を提供し、会計を済ませて車まで見送るまでが、接客係の一連の仕事だ。
「重要なのが、ほかの係とのコミュニケーションです。フロントとの荷物預かりや会計方法の確認、調理場とのアレルギー対応の情報共有、食器が足りずに料理が滞ることのないよう洗い場の状況を把握するなど、各部門との連携がとれていて初めて、お客さまにご満足いただけるサービスを提供できるのです」

 

現場に出た当初は、フロントとの連携不足で、会計を済ませないままお客さまを見送ってしまったり、預かっていた荷物を渡さないまま送り出してしまったなどの失敗も経験した。上手に接客できるようになったのは、入社2年目になってからだ。
「幹事の方が、ゲストに飲み物の注文を聞きたいのに聞けないようなら、タイミングを見て私からお声がけするなど、部屋の雰囲気を察しながら自然に気配りができるようになりました」

 

村端さんが接客で心がけているのは、担当する部屋の雰囲気を自分のサービスで盛り立てること。
「やりがいを感じるのは、幹事の方が喜んでくださったとき。ゲストが喜んでくださるのは、ホストがおもてなししているから当然のこと。帰り際、ホストである幹事の方に『また来るね』と声をかけていただけると、何よりも励みになります」

 

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料理はお客さまの左から、飲み物は右から出すのがルール。はかま姿をアレンジした制服にも慣れ、入社当初は1時間かかっていた着付けと整髪も30分で終えられるように。

 

自分の接客にご満足いただき、リピーターや指名が増えることが喜び

3年目に入り、通常の接客業務に加えて、新しく入社したパートやアルバイトの教育係、全部屋の生け花係、お品書き係を担当することになった村端さん。
「新入生に指導しているのは、お客さまの立場に立ってサービスすること。家族を迎えるような温かい気持ちでおもてなしをするようアドバイスしています」

 

入社するまで生け花の知識は皆無だった村端さんだったが、生け花係になってからは、週に1回先輩について全部屋の花を生け替え、その後のメンテナンスを行うようになったので、花に関する知識もかなり深まった。
「季節によって、花の開き具合や傷み方が随分違うことを知りましたし、最近は、道端に咲いている花を見て、季節を感じられるようになりました。床の間の花に気づいて「素敵だね」と言ってくださるお客さまもいるので、楽しみながら担当しています」

 

2カ月ごとに入れ替わるお品書きをプロの筆耕者(写字や清書を専門に行う人のこと)に依頼し、予約数を見ながら印刷発注するのも村端さんの仕事だ。お客さまのリクエストで料理内容に変更が生じたら筆耕を手配したり、披露宴などの祝宴用には華やかな紙に印刷したりと、こまやかな気配りが欠かせない。
「日々の接客業務にこうした仕事が加わったことで、最初はいっぱいいっぱいでした。『何もかも自分でやらなければ』と抱え込み、空回りしていたんです。半年ほどたって『できないときは先輩に引き継いで、助けてもらえばいいんだ』と気づいてからは、かなり楽になりました」

 

お祝いや接待など、特別な日に利用する人たちが多く、近くに大使館が多いことから外国人や政治家などのVIPも少なくない。こうした人たちをもてなす村端さんの接客の極意は、「何をしたら喜んでいただけるか」を常に考え、先回りして動くこと。VIPを担当するときは部屋の外で待機して、呼ばれる気配を察して声がかかる前に顔を出し、次の会合があるようなら料理を出すテンポを速めるなど、臨機応変にサービスしている。
「以前、ご家族の披露宴で初めてご利用いただいたお客さまが、その後も度々来店して私を指名してくださり、娘のようにかわいがってくださいます。そんなふうに自分の接客にご満足いただき、リピーターや指名が増えていくのはうれしいですね。私は、学生時代のアルバイトも含め、接客の仕事をつらいと思ったことは一度もありません。一人ひとりのお客さまに臨機応変に対応する難しさはありますが、人とかかわることが好きな人にとっては、素敵な仕事だと思います」

 

村端さんの直近の目標は副主任になることだ。副主任になると、アレルギーや宗教上の理由、ベジタリアンやグルテンフリー(麦類のたんぱく質を除くこと)のリクエストを受けて、料理内容を調理場と調整するなど、さらに重要な役割を担うようになる。
「調理場や営業など、他部門とのより緊密な連携が求められますし、スタッフのマネジメントも重要な仕事となります。店内は広く、配置するスタッフが多いので、副主任として、業務が円滑に進むようなシステムづくりにも取り組んでいきたいですね」

 

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毎週火曜に先輩が生けた美しい状態を維持するために、各部屋の生け花の様子をチェックし、整えるのも日課の一つ。

 

村端さんのキャリアステップ

STEP1 2013年 自社の和食と洋食を試食する2日間の研修に参加(入社1年目)

4月に入社。入社式翌日から2日間、同期約70名との合同研修に参加。自社のレストランで提供している洋食と和食を試食しながら、講義に耳を傾けた。接客業の面白さなど、本部長の熱意が伝わる話に「従業員は皆、店が好きなんだな」と再認識。早く現場に出たいという思いに胸が高鳴った。そして何より、料理のおいしさが印象に残った。

STEP2 2013年 入社後2カ月間は接客をすることなく、各種研修で基礎を習得(入社1年目)

4月、和食店舗「東京芝とうふ屋うかい」に配属。入社後2カ月間は、お客さまが少ない時間帯に行われる研修で、日本の文化や作法、接客の基礎をみっちりと学んだ。入社1カ月目は、先輩から言われたことしかできず、同期同士で話し合っては悩んでいたが、2カ月目に入り、先輩から「わからないことは、今のうちに聞いておかないと、お客さまの前に出たときに恥ずかしい思いをする」と指摘され、臆せず先輩に質問するように。6月からは先輩と一緒に大部屋を担当し、9月からは一人で部屋を担当。

STEP3 2014年 部屋の雰囲気を察しながらサービスを実践(入社2年目)

接客にも慣れ、部屋の雰囲気を察しながらサービスできるように。それまでは自分が叱られる立場だったが、新人が入ってくれば新人ができないことも自分の責任になると気づき、身が引き締まった。芝店は、お客さまが少ない時間帯に開催される講習会が充実しているので、英語をはじめ、器、衛生、日本酒、シャンパンの抜栓、結納など、接客業務に直結した知識を幅広く身につけることができた。

STEP4 2015年 接客に加えて、新入生の教育、全部屋の生け花とお品書き係を担当(入社3年目)

接客に加えて、パートやアルバイトを中心とした新入生の教育係、全部屋の生け花係、お品書きの手配なども担当することに。仕事にも慣れて自信がついてきたが、新入生教育を担当したことで、謙虚な気持ちでサービスするという初心を思い出すことができた。16年9月、約100名の和洋折衷の立食パーティでは、しとやかな所作が求められる和食部門とは異なる、洋食部門のきびきびとしたサービスに触れ、いい刺激になった。

ある日のスケジュール

10:00 早番出社。着付けして、髪を整える。担当のお客さまの内容を確認し、部屋を準備。
11:00 入り口にてお客さまを出迎え。部屋に案内しながら館内を説明し、食事のサービスを行う。
14:00 サービス終了後、まかないのランチ。毎日違うメニューなので、楽しみにしている。
15:00 お品書きの作成、各部屋の生け花の管理など、個人の仕事を行う。その後、グラス拭き、器の用意など、夜のお客さまの受け入れ準備を行う。
17:00 フロント、営業、調理場全体で夕礼。その後、担当のお客さま内容の確認と準備に取りかかる。
17:30 新人教育のため、お客さま内容の確認、入り口での出迎え、案内を新人と一緒に行う。自分が担当するお客さまへのサービスを終え、顧客ノートを記入。
20:00 遅番のスタッフに引き継ぎを行い、退社。

プライベート

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休日は、学生時代の友人や職場の先輩と一緒に外出することが多い。写真は15年に同僚と行った京都。「おいしいお酒と食事を楽しみつつ、他店のサービスを参考にしたりしています」。

 

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夏休みなどの長期休暇は、友人と旅行を楽しむ。写真は14年の夏休みに、イギリスとフランスを6日間旅行したとき。「フランスのモンサンミッシェルでは、オムレツを堪能しました」。

 

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2カ月に1回は土・日が休日となるが、普段は毎月曜を含む月7日が休日。「のんびりしたいときは、好きな音楽を聴きながら自宅で料理を作り、ワインを飲みながらくつろいでいます」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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