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Vol.369 森ビル株式会社 

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なか・ひろき●タウンマネジメント事業部虎ノ門ヒルズエリア運営グループ リーダー。慶應義塾大学経済学部経済学科。2008年4月入社。大学で情報通信の勉強をしていたことから、IT系を中心に就職活動。先輩に誘われたことがきっかけで不動産デベロッパーにも興味を抱き、IT・メーカーなども含む約30社にエントリーし、数社に内定。六本木ヒルズの夏祭りを見て「長年にわたりコミュニティを育み、街を活性化するような仕事に携わりたい」という思いが募り、現社への入社を決意。

不動産売買の経験を通して、森ビルが長い年月をかけて培ってきた信頼の強さを実感

森ビル株式会社は、都市再開発事業、不動産賃貸・管理事業、オフィス・住宅・商業施設・ホテル・ゴルフ&リゾートなどの営業・運営管理、文化・芸術・タウンマネジメント事業、美術館・ギャラリー・展望台・アカデミー・カンファレンス施設・会員制クラブの企画・運営などを手がける総合デベロッパー。六本木ヒルズや表参道ヒルズ、そして14年には虎ノ門ヒルズを開業するなど、大規模複合施設を数多く手がけ、東京の姿を変えてきた。

 

08年に入社した中 裕樹さんは、賃貸オフィスの請求業務に1年間従事したのち、オフィス事業の営業戦略を立案する企画業務に2年間携わった。担当者が効率よく営業できるよう、仲介会社に提供する情報の収集、アプローチ先のリサーチ、新しいビルの内覧会の実施やパンフレットの制作、売上予算の策定など、さまざまな仕事を経験した。

 

その中でも手応えを感じたのが、10年にチームで手がけたパンフレット。それまでは、オフィス、レジデンス、商業施設など、各施設でそれぞれの営業ツールを制作していたが、森ビルの営業スペースを横断的に紹介するパンフレットを初めて制作したのだ。
「オフィススペースを単に賃貸するのではなく、商業施設やカンファレンスなど複合的な機能を活用してもらうのが、森ビルの営業スタイル。オフィス営業のパンフレットにフォーラムやホテルの情報も併記することで、森ビルはオフィスだけでなく、新しいワークスタイルも提供していることが理解しやすくなったのです。カンファレンスやイベントスペース・美術館などが横断的に紹介できるツールを作ったことで、入居テナントが六本木ヒルズをジャックする大規模プロモーションイベントなどの活動につながるきっかけになったと思っています」

 

11年からの3年間は、開発統括部用地企画部で不動産売買を経験。将来的に再開発につながる可能性がありそうな用地を見つけるのが、用地企画部の仕事だ。
「例えば、何もない駐車場を見ながら『数十年先にこの場所をこんなふうにしたい』と考えていきます。具体的な計画が立ち上がるずっと前の段階のことなので、どのように実を結ぶかわからないものの、想像力をかきたてられる興味深い仕事だと思いました」

 

ある時、中さんは再開発エリアに隣接するビルのテナントを移転させる仕事を任された。ようやく受け入れ先が決まり、移転が成立しそうだったのだが、契約直前にテナントと移転先のオーナーが大げんか。中さんが仲裁に入ってオーナーに頭を下げ続けたが、交渉は決裂してしまった。
「ところが、翌日オーナーから連絡があり『君は私の息子と同い年。頑張っている姿に心を打たれたよ』と契約してくださったんです。この時は『自分が担当していたから、成約できたんだ』と思えて、うれしかったですね」

 

もう1つ印象に残っているのが、13年に不動産購入を経験した時のことだ。
「長年虎ノ門に住んでいた高齢の男性が、複数社から引き合いがある中、決して好条件ではなかった当社への売却を決めてくださった。虎ノ門エリアは森ビルの発祥の地で、その方は創業者の森泰吉郎のこともご存じでした。『自分の土地を誰かに託すなら、森ビルと決めていた』というその方の言葉に、森ビルが長い年月をかけて培ってきた信頼の強さを、あらためて感じました」

 

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デスクワークをするのは、フリーアドレス(固定席のないオフィススタイルのこと)の大テーブル。虎ノ門ヒルズ6階にオフィスがあるが、会議などで六本木ヒルズに行くことも多い。

 

イベントの企画・運営を通して、虎ノ門ヒルズ一帯の街の活性化に取り組む

14年、タウンマネジメント事業部に異動した中さんは、入社時からの念願だった街の活性化に携わることになった。
「ミッションは、虎ノ門ヒルズ一帯の魅力を向上させる施策を考え、広い視野で街全体をプロデュースすること。虎ノ門ヒルズ開業と同年に開通した新虎通りを含めたエリアのブランディングやプロモーション活動を通して、街ににぎわいを生み出すことです」

 

虎ノ門ヒルズで行われているヨガイベントやフラワーマーケット、ビアガーデン、街歩きといった比較的小規模なものから、11月20日に新虎通りを封鎖して実施したTOKYO SHINTORA MATSURI(メインイベントは東北六魂祭パレード)のような大がかりなものまで、年間を通して行われるイベントの企画・運営を担当している中さん。
「建物単体で考えると、似たような物件は東京のさまざまな場所にも存在します。ですが、エリアと連動することで、虎ノ門ヒルズならではの価値が生まれるのです。新橋や虎ノ門周辺は“おじさんの街”というイメージがありますが、ヨガイベントを開催すると300人ぐらい人が集まる。しかも大半が女性です。虎ノ門の将来像を考えながら、どんな人たちに集まってきてほしいかを考え、日夜企画を練っています」

 

中さんは虎ノ門を清掃するグリーンバードのボランティア活動にも参加している。開催は月2回。地元住民やオフィスワーカー、店員と楽しく付き合える関係づくりを心がけている。町会長や老舗の店主などを訪ねて、街の歴史を聞くこともあるという。
「フラワーマーケットのイベントを思いついたのは、この周辺に桜並木と川があったため『桜川町会』と名付けられていたことや、愛宕神社の桜が有名なことから。これからも地元の人たちと協調しながら、このエリアに新たなコンテンツをつくっていきたいと思っています」

 

虎ノ門ヒルズ森タワーを皮切りに、19年度には虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワーとビジネスタワーが竣工(しゅんこう)し、22年度にはステーションタワーも竣工(目標)する計画があり、このエリアは環状2号線や地下鉄新駅などの交通インフラとも一体化して、「国際新都心・グローバルビジネスセンター」へと進化していく予定だ。
「3棟が完成すれば、六本木ヒルズに負けない複合都市となります。今手がけているのは、その未来に向けた仕込みであり、これからはもう一歩進んで、真の国際新都心を見据えた上で“この街のあるべき姿”を考えていかなければなりません。『新しい都市はどうあるべきか』『世界の都市と東京はどう違うのか』などを、今後もしっかり考えていきたいと思っています」

 

中さんにとって、この仕事の醍醐味(だいごみ)は未来をつくれること。プロジェクトは壮大でも、動かしているのは社員一人ひとりの力であり、どんなアイデアを持って臨むかの積み重ねだと信じている。
「自分の提案でイベントが決定し、実施されて、街の活性化につながっていく。自分の発想力と行動が、街の未来をつくっていくのです。これからの目標は、社内外を問わず個人として選ばれる存在になること。単なる役割分担で仕事が回ってくるのではなく、『この仕事は、中に任せたい。森ビルの中さんと仕事がしたい。』と選ばれる存在になりたいし、そのために新しいチャレンジに取り組んでいきたいです」

 

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新虎通りに新しくできたカフェに顔を出し、スタッフと情報交換。新虎通りを一緒に盛り立ててくれる地元の人たちとのコミュニケーションを、大切にしている。

 

中さんのキャリアステップ

STEP1 2008年 オフィスビル賃貸の請求業務を経験(入社1年目)

4月に入社し、同期約40名と2カ月間の新入社員研修に参加。ビジネスマナーや各部署の仕事内容を学ぶ講義のほか、ビル実習では、温水洗浄便座の作動からビルの裏側の危険箇所の確認まで、防災センターの安全対策の徹底ぶりを目の当たりにした。6月、管理運営本部運営業務管理部に配属となり、オフィスビル賃貸事業の請求業務に従事。数千件にも及ぶ請求をミスなく行う大切さなど、オフィス営業の裏方業務を学んだ。

STEP2 2009年 オフィス事業の営業戦略立案などに携わる(入社2年目)

4月、設立2カ月目の営業本部オフィス事業部営業推進部に異動。08年に起きたリーマン・ショックの影響で、テナントが次々退去していく中で、オフィス事業の営業戦略立案や予算策定など、営業担当のサポート業務を担当。1年目はルーティン業務が多く、仕事ができるつもりになっていたが、できないことの方が多いことを実感。厳しい社会情勢と厳しい上司の下で鍛えられ、仕事の円滑な遂行方法などのビジネスの基本を身につけることができた。

STEP3 2011年 再開発事業のための不動産売買などに携わる(入社4年目)

7月、都市開発本部開発統括部用地企画部に異動。再開発事業推進のための不動産売買や、共同事業の事業企画業務に従事。交渉相手は不動産のプロばかりなのに、不動産の専門用語も坪単価の相場もわからない自分にがくぜんとし、必死で勉強。異動後2年間は、自社が所有するビルを投資家やREIT(不動産投資信託)に売却する仕事が多かったが、異動後1年間は先輩に同行して実務を学び、2年目には売却、3年目には購入を経験。

STEP4 2014年 虎ノ門ヒルズのブランディング・PRやエリアの活性化に携わる(入社7年目)

8月、タウンマネジメント事業部虎ノ門ヒルズエリア運営グループに異動。虎ノ門ヒルズのブランディング・プロモーション業務を通じて、虎ノ門エリアの活性化に取り組む。最初に手がけたのは、文化の多様性を象徴するパブリックアート「ルーツ」のお披露目パーティ。それまで担当していた数十年サイクルの不動産業務とは異なり、1カ月でイベントを準備する仕事のスピード感に驚いたが、イベントは無事終了。現在は、定期的にイベントを運営しながら、11月には新虎通り初の大規模イベントを開催。

ある日のスケジュール

8:30 出社してメールをチェックしたのち、グリーンバードの清掃ボランティア活動に参加。
10:30 グループ定例会議。メンバー5名で業務の進捗状況などを話し合う。
12:00 一人の客として体験するため、虎ノ門ヒルズ内の店舗でランチをとる。
13:00 来年度のイベントについて、企画会社と打ち合わせをする。
15:00 新虎通りにある近隣店舗の人たちと、今後の販促活動について相談。
17:00 防災センターとイベントの安全対策などについて打ち合わせをする。
18:00 虎ノ門ヒルズの夜ヨガイベントに立ち会って、19時ごろ退社。途中、他社のイベントを見学して帰宅。

プライベート

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おいしいものに目がなく、月に1回程度は、妻と二人でちょっと背伸びして高級レストランで食事を楽しんでいます。「私も奥さんも中華料理が好きなので、つい多くなります」。

 

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週末は新しい施設や公園に足を運び、仕事のヒントにしながら、のんびり過ごす。「最近よく行くのは南池袋公園。素敵なレストランがあり、芝生では子どもたちが遊んでいて、癒やされます」。

 

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子どものころから大のプロレスファン。数カ月に1度は観戦に出かけている。写真は両国国技館に観戦に行った時のもの。「最近はプロレスが再ブーム。チケットが取れなくて困っています(笑)」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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