人事部長インタビュー

Vol.53 アステラス製薬株式会社

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『VISION2015』に手応え。次の10年の成長を目指す

日本に限らず世界各国で、財政を圧迫する医療費を抑制する動きがありますが、治療満足度の低い疾患領域に対する医薬品ニーズは不変であり、製薬産業は今後もますます期待される産業だと考えています。

 

アステラス製薬は、山之内製薬と藤沢薬品という日本でトップクラスの2社が、世界のリーディングカンパニーを目指すべく2005年に合併・誕生しました。当社は、医療用医薬品、特に新薬の研究開発に経営資源を集中しています。他社が手がけているOTC薬(薬局などで購入できる一般用医薬品)やジェネリック医薬品(新薬の特許満了後に他社が同じ有効成分で安価につくる後発医薬品)は取り扱わず、得意な分野で強みを発揮し、新薬を生み出すことにフォーカスしてきました。

 

アステラス製薬では、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」という経営理念を掲げています。イノベーションを生み出し、それを患者さまの価値に変え、世界中の人々に広く届けること――それが私たちの存在意義です。継続的に価値を生み出すため、2006年に策定した『VISION2015』の中で、私たちは「グローバル・カテゴリー・リーダー」というビジネスモデルを掲げ、追求してきました。これは、治療満足度が低く、高い専門性が必要とされる複数の疾患領域において、付加価値の高い製品をグローバルに提供し、競争優位を確立しようという取り組みです。もともと山之内製薬が得意だった泌尿器領域と、藤沢薬品が得意だった移植・免疫領域の2つに加え、第3のグローバル・カテゴリー・リーダーとしてがん領域でもリーディングポジションを獲得していくという成長戦略を立てました。

 

そして、合併前は2社の合計で1兆円に届かなかった総売上高が2012年度には1兆円の大台に達し、14年度はさらなる伸びを見込んでいることから、この成長戦略は成功だったという手応えを感じています。合併によって多様な人材がそろったことも、成長の後押しとなりました。ヨーロッパ事業に強い山之内製薬とアメリカ事業に強い藤沢薬品が、相互の強みを活用し現在では約50ヵ国で自社販売を実現していることは、大きな相乗効果だったと言えます。

 

ここ10年、定期的に新薬を上市(じょうし:承認された新薬の市場販売が開始されること)している医薬品メーカーが少ない中、当社は継続的に新薬を上市してきました。これは新薬創出に力を入れ、定期的に上市できる体制がうまく機能してきた成果であり、今後も順調に成長していくと予想しています。なぜなら、医薬品メーカーは製品のラインナップ、パイプラインの状況から、ある程度先まで成長軌道を予測することができます。一方で、新薬に特化する医薬品メーカーはパテントクリフ(新薬特許が切れた後、ジェネリック医薬品の進出によって売り上げが減少すること)を避けて通ることはできず、パテントクリフに対する対策も必須です。

 

医薬品メーカーの成長は、こうした将来を見据え、早い段階から準備をしていくことで決まってきます。そのため現在は、引き続き『VISION2015』の内容をブラッシュアップし成長にチャレンジしながら、次の10年、15年先をどう戦っていくかという事業戦略を専門部署で検討している段階です。

 

アジア駐在でグローバル感覚を養い、将来のマネジメント人材に

当社の売上高の約50パーセントは日本市場が占めており、日本で活躍する優秀な人材の確保は重要課題の一つです。一方で、売上高の約50パーセントは海外であり、今後ますます海外市場における当社の手腕が試されることになります。アステラスグループの従業員は約1万7500名。そのうち国内従業員が約8000名、あとの約9500名は海外の現地スタッフです。

 

当社のビジネスモデルに必要なのは、それぞれの国や地域で活躍できる人材であり、日本人にこだわる理由はありません。むしろ、現地のドクターや行政当局と接するには、母国語で話せ、文化的な背景も理解している現地スタッフの方が適任でしょう。日本人駐在員に期待するのは、アステラス製薬のカルチャーやシステムを現地に伝える役割であり、実際、日本人駐在員はグループネットワークのハブとして、グローバル化推進の核となってくれています。

 

海外赴任率は、日本の医薬品メーカーの中ではトップレベルです。近年はアジアを中心とする新興国の駐在員が増えています。赴任先では36、37歳でも社長や副社長の肩書を持ち、その国の総責任者としての責任を担ってもらいます。現地で次のマネジメントを担う人材に鍛えられていくという意味で、アジアはグローバル人材のトレーニングセンターであり、アジア駐在経験者が将来は各部署に戻って活躍していくことを期待しています。こうした日本人のグローバル化とグローバル人材のベストな活用が、重要な人材戦略だと考えています。

 

当社でのキャリアの道筋はさまざまです。入社時からの数年間はMR(医薬情報担当者)などで活躍し、日本の営業部隊を統括する幹部になる人もいれば、キャリアシフトしてグローバルで活躍している人もいます。自らほかの職種やグローバルキャリアを開発したいという人のために、当社では「ジョブチャンレンジ制度」があり、海外に出るチャンスを得る「グローバルキャリアエントリー制度」も用意しています。海外では、日本以上に困難な場面に遭遇します。それを乗り越えるには「海外で活躍したい」という強い意志と覚悟が必要ですし、さらに言えば、物怖じしない度胸と粘り強さ、行動力やコミュニケーション力、TOEIC(R)Test730点以上の基礎的な語学力も求められます。

 

アステラス製薬では、グローバルに活躍できる外国人人材を育成するため、人材の交流も積極的に行っています。現在は、アジアをはじめとする海外グループ会社から赴任してきた駐在員が日本の各部署で活躍しており、日本にあるアジア・オセアニア事業本部の30パーセントはアジア人材です。こうした人材交流は、将来は自国に戻ってリーダーになってもらうためのものですが、彼らと競い合うことは、日本人社員にとってもよい刺激になっています。

 

日本でのアジア人材の採用にも力を入れており、今後もアジアのグループ会社からの駐在員、日本採用のアジア人材共に増やしていく予定です。ビジネスのグローバル化が強く求められる中、グローバルに活躍できる人材を増やしていくことは、当社のビジネス展開に必須であると考えています。

 

アステラス製薬が期待する人物像――それは「スピード」「変革力」「専門力」「ネットワーク力」を持った人です。グローバルな分野で、競合企業を常に先行するスピード感を持ってやり遂げる。グローバルな変化を先取りし、必要なリスクをとって主体的に変革し続ける。グローバルな競合に打ち勝てる専門性を持ち、高いパフォーマンスを発揮し続ける。グローバルな社内外の情報やリソースを取り込んで、業績向上につなげていく。私たちは、社員に対してこのような期待を持っています。

 

学生の皆さんへ

勉強でもサークル活動でも、アルバイトでもボランティア活動でも構いません。学生時代にしか挑戦できないことを大切にしてください。小さな成功体験を積んで、成功する喜びを味わう訓練をしておいてください。なぜなら「これをやり遂げた」「他人に負けない」といった自信は、社会に出て経験するに違いない数々の試練を克服する際の心のよりどころになるからです。そういう経験をしている人は説得力が違うので、「仕事を任せたい」と思えるものです。

もう1つ、自分のキャリアについて考え始めてほしいと思います。「自分は何をしたいのか」「どんなことができるのか」「その組織に入ったら、どんなことを求められるのか」を考え抜き、できれば答えにたどり着いてください。もしも早い時期に自分の方向性がぼんやりとでも見えてくれば、準備しておくことができます。その準備は勉強や語学かもしれないし、論理的な思考力かもしれない。大学生活はキャリアを考え始め、準備と覚悟をする最終ステージだと思って、大切に過ごしてください。

 

同社10年の歩み

1894年に藤澤友吉が大阪に創業した藤澤商店(旧藤沢薬品)と、1923年に山内健二が大阪に創業した山之内薬品商会(旧山之内製薬)が前身。2005年4月1日、両社の合併によりアステラス製薬が発足した。「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」ことを経営理念に掲げて事業展開を図る、研究開発型のグローバル製薬企業。
2005年
山之内製薬と藤沢薬品が合併し、アステラス製薬発足。同年、キャンディン系注射用抗真菌剤「マイカミン」を米国で発売。
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2006年
低ナトリウム血症治療剤「バプリゾール」を米国で発売。ゼファーマ株式会社を第一三共株式会社に譲渡。過活動膀胱治療剤「ベシケア」を日本で発売。
2007年
免疫抑制剤「アドバグラフ」を欧州で発売。米バイオベンチャーのアジェンシス,Inc.買収。
2008年
つくば研究センター新棟完成。
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2009年
骨粗鬆症治療剤「ボノテオ」、高血圧症治療剤「ミコンビ」を日本で発売。抗生物質「ヴィバティブ」を米国で発売。
2010年
成人気管支喘息治療薬「シムビコート」を日本で発売。米国医薬品会社OSIファーマシューティカルズ社買収。高血圧治療剤「ミカムロ」を日本で発売。
2011年
過活動膀胱治療剤「ベタニス」、骨粗鬆症治療薬で4週に1回服用する経口剤「ボノテオ錠 50mg」を日本で発売。
2013年
アムジェン社と日本における戦略的提携 。5開発品の共同開発・共同商業化と合弁会社アステラス・アムジェン・バイオファーマの設立。
2014年
「ダイバーシティ経営企業100選」受賞。2型糖尿病治療薬/選択的SGLT2阻害剤「スーグラ錠」、前立腺癌治療剤「イクスタンジカプセル」を発売。
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取材・文/笠井貞子 撮影/鈴木慶子

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