人事部長インタビュー

Vol.61 キヤノン株式会社

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先端技術でフロンティアを切り開いていく

キヤノンという会社の特徴は大きく2つあります。まず、製品面においては、機械、電気、物理、情報、化学といった技術を掛け合わせることで、高度な光学技術と精密技術を核としたさまざまな製品を生み出していることです。

 

そしてイメージングの世界において、入力機器と出力機器の両方をほぼフルラインナップで持っていることです。入力機器ではカメラ、ビデオ、スキャナーなど、出力機器では複合機や、プリンター、プロジェクター、4Kディスプレーなどです。入力機器と出力機器の両方を持っていることに加えて、静止画と動画の両方の技術があるという企業は、世界でもそう多くはありません。

 

もう1つの特徴は、マーケティング面にあります。キヤノンは日本企業の中で、海外のマーケットにいち早く出て行った企業です。日本企業の多くは、まずは販売部門が拠点を設け、その後に生産(工場)、現地での開発という順番で海外進出をしていくのが一般的です。キヤノンもこのパターンを踏襲しましたが、キヤノンにはグローバル化における大きな特徴があります。それは、特定のマーケットで苦手な地域がない、ということです。アメリカには強いけれどアジアには弱い、国内には強いけれど海外には弱い、といったことがありません。

 

実際、売り上げに占めるエリアの比率は、日本が19.2パーセント、米州が28.4パーセント、欧州が30.1パーセント、アジア・オセアニアが22.3パーセントとなっています。日本の会社ですから日本の割合は多少多いですが、世界の国々の経済規模にほぼ比例しています。どの国、エリアに出て行っても、ちゃんとそのマーケットサイズにうまく受け入れられてきた。製品をしっかり評価してもらってきたということです。

 

カメラやプリンターは先進国では非常に高い普及率になっていますし、複写機・複合機は先進国では1社に数台~数千台、という時代になっています。こうした中では、まだ世界にはない、付加価値の高い、キヤノンにしかできない製品を継続的に開発し続けなければなりません。世界No.1のシェアを持っている製品も数多くありますから、ブランド力を生かすと同時に、幅広いラインナップで魅力的な製品を出し続ける。そうすることでキヤノンのファンになってもらい、継続的にキヤノンの製品を使っていただこうと努力しています。また、先進国では、ITの進展に伴いよりソリューションビジネスに軸足を移した製品・サービスを提供するという戦略もとっています。

 

一方で世界には、カメラや事務機などがまだ十分に普及していない新興国があり、エマージングマーケット(新興成長市場)と呼ばれています。もちろん競合他社もたくさんありますが、キヤノンのブランド力という強みは大いに生かせると考えています。

 

また、大きな成長が期待できるのが、新規事業です。最先端の技術でフロンティアを切り開いていく。例えば、ネットワークカメラ。昔は監視カメラと呼ばれていましたが、今では防犯対策のみならず、企業によるマーケティング活動やイベントなどでも活用されるようになっています。

 

例えば、店舗内外のお客さまの状況を把握し、どうしたら楽しくスムーズに買い物ができるか。そんな分析に使われ始めていたりします。2019年のラグビーのワールドカップ(日本大会)や、2020年の東京オリンピックなどで、外国人も多く来日しますが、行きたい場所に安全かつ円滑に導く装置としての需要も見込まれます。このマーケットは世界的に急拡大しており、大きなビジネスになると考えています。またMR(Mixed Reality:複合現実感)、医療機、知的ロボットなども期待の持てる分野です。

 

キヤノンといえば、カメラやビデオなど、一般のコンシューマー向けの商品をイメージする人が多いかもしれません。いわゆるBtoCというカテゴリーです。しかしながら、BtoCが売り上げ全体に占める割合は40パーセント弱です。50パーセント以上を占めるのが、いわゆるBtoBと呼ばれる企業向け、そして残り10パーセントが半導体製造装置、医療機器、ロボットといった産業用の製品です。BtoBや産業機器はBtoCのビジネス以上に、成長力を秘めており、この領域をさらに伸ばしていくことをキヤノンは考えています。

 

活躍のフィールドは世界に広がる

キヤノンは創業から77年を迎えていますが、当初から脈々と受け継がれてきた企業DNAがあります。それが、「人間尊重」「技術優先」「進取の気性」。また、創業期から受け継がれている行動指針が「三自の精神」です。何事にも自ら進んで積極的に行う自発。自分自身を管理する自治。自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識する自覚。ほかにもキヤノンでは、実力主義、新家族主義、健康第一主義、国際人主義という行動指針を定めています。

 

率直に申し上げて、派手な会社ではなく、地道に努力することを大切にする会社です。本社も東京の中心部にあるわけではありません。しかし、物事の本質を大事にしてきたという歴史があり、それが会社の発展を支えてきたと考えています。

 

若い社員に望むことは、好奇心を持つことです。絶えず思索と実行を繰り返すこと。そして人をポジティブに巻き込むことです。

 

ビジネスでは、いつもゴールが見えているわけではありません。むしろ、結論は見えていないことの方が圧倒的に多い。大学入試の数学の問題を解くように、あるパターンにあてはめれば答えが見つかるわけではありません。今日と明日では、状況も変わります。一見、まったく関係ないことのように見えることが、意外なところでつながっていたりもする。それを知るには、自分で勉強し、仮説を立て、トライ&エラーを繰り返すことで物事を解決していかなければなりません。

 

好奇心旺盛な人は、わからないことをそのままにしません。自分で自律的に自己啓発し、勉強します。いつも思索を繰り返し、実行する人は、どうしてだろうと深く考えられる人です。例えば、新聞を読んでまったく別の紙面に載っているアメリカの大統領の演説と、フランスの銀行の総裁の発言と、中東でイスラム過激派が起こしている事件が歴史の大きな流れの中で必然的に起こっていることを感じられるかどうか。産業、政治、経済、宗教など幅広い角度から見ていけば、それがつながっていることが見えてきます。

 

また、人を巻き込める人が持っているのが、コミュニケーション力です。頭脳明晰というだけでは人を動かすことはできません。人の気持ちをくみ取り、上司からの指示を的確に把握すると同時に、同僚や先輩をフォローすることができるか。困難にぶつかっても周囲を叱咤激励し、時に厳しく、時に優しく、ある方向に全員をまとめていくことができる。会社では、そういう人材が求められます。

 

だからこそ、教育研修には力を入れています。入社時研修は、数カ月に及び、その後分野別のトレーニー(研修生)として専門研修に行く人も多い。高度な研修を受け、特定領域の専門家になってから配属される、という人もいます。配属後も、各階層別に必須の研修に加え、選抜型の研修、自己申告型の研修もあります。

 

グローバル面では、海外トレーニー制度の活用も活発です。中国、インドといった地域へ社員を出向させて研鑽(けんさん)を積んでもらうアジアトレーニーという制度もあれば、欧米トレーニーもあります。技術者向けに、留学して修士や博士コースで学べる海外技術者留学制度もあります。

 

これ以外にも、充実したeラーニングの仕組みを整え、できるだけ日常業務に負担をかけることなく、学べる環境をつくっています。

 

海外の売り上げが80パーセントを超えるキヤノンでは、職種にもよりますが、事務職だと10年で半数以上の人が海外勤務を経験します。技術職の社員も多くが国外に出ており、長期にわたって勤務する人もいます。日本の良さを知る人が、海外の良さも知ることで国際的な感覚が養われます。物怖じせずに海外の人と交流することで、グローバルな人材が育っていきます。

 

日本国内では、販売部門が別法人になっているため、キヤノン本体では開発・製造がその基幹業務です。そのことが影響しているかもしれませんが、あまり派手なところがなく、堅実な会社だ、という印象を持っている社員は少なくないようです。スポーツや文化的活動などのイベントも多く、家族的なところも特徴で、自由な雰囲気がいいという社員もいます。頑張るところは頑張り、楽しむところは楽しむ、そうしたメリハリを、とても大切にしている会社でもあります。

 

学生の皆さんへ

ゼミでもクラブ活動でもアルバイトでも奉仕活動でも、どの分野でも構いませんから一生懸命にやってみてほしいですね。失敗の経験も含めて、学生時代に世の中を少しでも学ぶことが大切だと思っています。社会人になったとき、とても大切なのが、社会性です。政治や経済、歴史、科学などを理解し、世の中がどのように成り立っているのか、できるだけたくさん見ておくこと。世の中に関心を持って生きてきたかどうかは、仕事での対応力を大きく変えることになります。文系でも理系でも、勉強はできるが世の中のことがわかっていないというのでは実社会では通用しません。ただし、学生の本分は勉強ですから、勉強することは大切です。所属する学部に限ったものでなくてもいい。経済学部だけれど経営を勉強するのもいいし、小説や哲学書を読みまくった、というのでもいい。知的な思索は、時間がたっぷりある大学時代だからできること。ぜひ、その時間を有効に使ってほしいと思います。

 

同社30年の歩み

1933年に高級小型写真機の研究を目的とする精機光学研究所を開設し、37年に精機光学株式会社として創業。カメラやビデオ、プリンター、スキャナーなどの「イメージングシステム」、コピー機やファクシミリなどの「オフィス」、半導体露光装置や医療機器、業務用ディスプレーなどの「産業機器その他」の3つのビジネスユニットで事業を展開する。
1985年
世界初のバブルジェット方式インクジェットプリンター「BJ-80」発売。
1987年
オートフォーカス一眼レフシステム「EOS」発売。
1992年
レーザービームプリンター生産1000万台達成。
カートリッジ生産1億本達成。
1993年
複写機生産1000万台達成。
1994年
インクジェットプリンター生産1000万台を達成。
1997年
カメラ生産1億台を達成。
2000年
コンパクトデジタルカメラ「IXY DIGITAL」発売。
2005年
「リアルタイムX線撮影装置用大画面センサーの発明」で2度目の恩賜発明賞(※)授賞。
※公益社団法人発明協会が主催する全国発明表彰の賞
2011年
映像制作用のレンズ・カメラで構成する「CINEMA EOS SYSYEM」発表、映像制作市場へ本格参入。
2013年
業務用30型4Kディスプレー「DP-V3010」を発売し、4K映像制作ディスプレー市場に参入。ph_hrmanager_vol61_01
2014年
デジタルカメラ生産2億5000万台を達成。
カメラ用交換レンズ生産1億本を達成。

 

取材・文/上阪徹  撮影/鈴木慶子

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