日本ユニシス株式会社 宮下尚さん【人事部長インタビュー】

ICTサービスの需要がさらに拡大するだろう2020年に向けて、今が変革の時

日本ユニシスは、コンピュータの黎明期(れいめいき)である1958年に設立し、メインフレーム(企業の基幹業務などに利用される大規模コンピュータ)を中心に企業の基幹業務システムを支えてきました。

90年代以降、オープンシステム(オープン標準のソフトウェアやコンピュータ)へと移行が進んだ後も、メインフレームで培った高い技術力と豊富な経験を基に移行対応を進めて存在感を高め、あらゆる業種のニーズに対応し続けています。現在では、ICT(情報通信)サービスを幅広く提供。日本ユニシスグループ全体で、あらゆる業界・分野の7000社超の企業を顧客に持ち、コンサルティングからシステムの設計、構築、運用保守にわたるまでのトータルサービスを提供しています。

先ごろ、2015年からの3カ年にわたる中期経営計画を策定しました。テーマは「変革・成長」。今まで事業の中核を担っていたSI(システムインテグレーション)ビジネスだけではなく、さらに新しい価値を創造・提供することでステップアップしたいと考えています。20年には、東京オリンピックという一大イベントが待ち受けており、ICTがかかわる要素も大。次の3カ年(18~20年)に大きくジャンプするためにも、今回の中期経営計画の遂行は非常に重要なものと捉えています。

新しい中期経営計画においては、変革を実行するための重点戦略として「5つの施策」を実施します。

まずは、「チャレンジ(1)デジタルイノベーション」。異業種をつなぎ、企業のデジタルビジネスを最速・最適に提供するサービスとプラットフォームを提供するのが目的です。

ICTは、すでにさまざまな業界に浸透していますが、業種間や企業間、ビジネス間を見ると、つながりが薄く連携が取れていない部分がいまだ多いのが現状。各社、各ビジネスのデジタルデータをわれわれがつなげることで、そこに新たな価値が生まれ、より便利な社会が構築できると考えています。

次に「チャレンジ(2)ライフイノベーション」。社会を豊かにするサービスを創造し、サービス事業主体として推進する計画です。

これは前回の中期経営計画より注力しているテーマ。13年には新潟県佐渡島の全域にネットワークを構築し、医療効率化のため地域医療連携システム「さどひまわりネット」を提供しました。言葉にすると簡単に聞こえるかもしれませんが、実際はとても難易度が高いもの。病院、薬局などに協力を仰ぎ、それぞれが持つデータをすべて公開いただき、共有する必要があります。地域住民の方々がより便利に医療機関にかかれるよう、医療機関や行政など皆が一致団結して推し進め、われわれも地道に働きかけ、実現することができました。

このライフイノベーションにおいてキーワードとなるのが、「ビジネス・エコシステム」という概念。自社で提供しているソリューションやシステムをつなげることで、利用者視点で社内外のサービスを組み合せて利用者密着・地域密着型のサービスを構築。われわれがかかわることで、より生活が便利になることを目指しており、短・中期的にはこのキーワードを推し進めることに注力します。

3つ目は、「ビジネスICTプラットフォームの変革」。これは当社の基盤となっているビジネスであり、先に述べた2つのイノベーションの基礎にもなるものですが、さらなる成長を実現するためには変革が必要不可欠。単にお客さまのニーズに応えたサービスを提供するだけではなく、そこに新しいサービスの提案、効率化の提案を追加することで、お客さまのさらなる売り上げ拡大、コスト低減を実現することが重要だと考えています。

以上3つが、ビジネスの重点戦略になります。

4つ目に掲げているのは「企業風土・人財改革」。新たな価値を創造する企業風土と人財に変革します。

前述したように、お客さまのニーズに応えるだけでなく、さまざまなビジネスのアイデアを提案することが真の顧客満足につながり、新しい価値創造にもつながると考えています。そのためには、それを支える「人財」も変わる必要があります。

具体的な策として、17年度までに「変革リーダー」を300人、社内で育成することを目指しています。「変革リーダー」とは、自ら新な価値を創り出し、組織を変革していける人財のこと。広い知識と柔軟な発想、リーダーシップを持って、周りを巻き込み、現場から変革を起こしていく必要があり、現場からの推薦によりメンバーを選出中です。新しい価値を生み出す過程は大変ながらも非常に楽しく、意欲が全身からあふれ出るもの。変革リーダーの頑張りが周りを触発し、全体の士気を高めてくれることも期待しています。

最後の5つ目は、「投資戦略」。自己資本の充実を図り、安定した経営基盤を確立すると同時に、上記4つに挙げた重点戦略、すなわちチャレンジと変革、人財変革に重点投資する計画です。

自身が変革を担っているという当事者意識を持ち、自ら考え、行動することが重要

変化に対応し続け、変革を推し進める過程で、当社の組織風土も徐々に変化してきたと感じています。汎用機メーカーとして業界をリードしてきた時代は、「精度の高いものを、安定的に提供する」「顧客のニーズに最大限応える」に重点を置いてきたため、個人の力よりも、団結力や組織対応力が秀でていました。

その後、汎用機からオープンシステムの世界に移行したことで、競争は激化。ニーズに合ったサービスを提供するだけでなく、より新しい価値を提供する姿勢が必要になったことで、団結力に加えて個人の発想力、すなわち「一人ひとりが当事者意識を持って価値を創造しようとする力」が磨かれてきたと感じますね。そのため、従来ながらのアットホームな社風に加えて、互いに刺激し合い、高め合う風土も根づいてきたという印象を受けています。

実際、社内で活躍している社員を見ると、受け身ではなく、自ら積極的に学び、考え、行動している人が多いですね。そして積極的に社内外の人とかかわり、コミュニケーションを取っています。

当社が進めている重点戦略においては、パートナーとなるさまざまな顧客企業と連携を取りながら、新しい価値を生み出していくことが必要になります。皆の意見を取りまとめながら、われわれのやるべきこと、介在価値を考え、自ら陣頭指揮を取りながら実現に動く推進力を持った社員が多数活躍しており、頼もしく思いますね。彼らの活躍が新しい価値を生み、高い顧客満足を実現しています。

学生の皆さんへ

人はとかく、面倒くさいことがあると、それを避けたりあきらめてしまうことがありますが、社会に出たらさまざまな困難が待ち受けています。それを一つひとつ乗り越えてこそ、成長があるのです。

だからこそ、大学生のうちに、何か一つ、最後までやり遂げる経験をしてほしいですね。どんなことでもいいのです。サークル活動でも勉強でもアルバイトでもいいので、「最後までしっかりやり遂げた」という実感を持つと、大きな自信がつきます。そして、何か壁にぶつかったときに、「あれをやり遂げられたのだから、これも突破できるのでは?」という、頑張りの“基準”にすることができます。社会の荒波を乗り越える武器にも、心の支えにもなるはずです。

また、「自分にとって大事なものは何か」を見極める時間も、しっかり確保してほしいですね。当社を志望する学生に「なぜこの業界? 日本ユニシス?」と聞くと、どこの会社でも通用するようなあいまいな回答をする人が多くて残念に思います。「これがやりたい」「こんな目標を成し遂げたい」など、何か一つ大切にしたい軸を持っている人は、企業選びでも判断基準が明確なので、話を聞いているとその人ならではのストーリーが見えてきます。

社会に出ると、必ずしも自分の思い通りに進まない場合もたくさんあります。例えば、希望の部署に配属されない…というケースも多いでしょう。そんなとき、軸がないとすぐにメゲてしまったり、迷走してしまって180度違う方向を選んで失敗してしまうことがあります。しかし、軸さえあれば「いつかこの目標を達成するために、この部署ではこんな経験を積もう」とか「今のうちにこういう勉強をしておこう」など、目標達成のためにブレずに進むことができるでしょう。

就職したら、場合によっては1つの会社に30年以上も勤めることになります。ぜひ今のうちに自分の軸と、武器となり得る経験を積むことで、社会に出てからも自分に自信を持って突き進めるようになってほしいですね。

同社30年の歩み

コンピュータ黎明期である1958年に創立して以来、金融、製造、流通、エネルギー、社会公共などの幅広い分野のお客さまに対して時代を先駆けるソリューションを提供。「U&U」(Users & Unisys)という精神を揺らぐことのない指標として掲げている。
1988年
日本ユニバック株式会社/バロース株式会社の統合により日本ユニシス株式会社が発足。国内最大規模の航空業界向け予約システムを開発。24時間365日の安定稼働を実現。
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1991年
「モノづくり」の高度化を支える純国産3次元CAD/CAMシステム「CADCEUS®」を開発。自動車や機械、建築など、日本の幅広い製造分野で品質向上とスピードアップに貢献。
2000年
大規模Windowsサーバ「ES7000®」を発表。企業の基幹業務を支える大規模システムに採用。
2007年
Windows Server、SQL Serverを基盤としたフルバンキングシステム「BankVision®」が稼働開始。国内外から高い注目を集める最新の情報技術が活用され、システム機能を柔軟に追加・変更できるという特長を持つ。
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2008年
日本ユニシスグループ、インフォシス、戦略アライアンス協定に調印。営業活動、ソリューションサービス提供において一貫したグローバルソーシングを実現。
2009年
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(pHV)向けの充電インフラシステム「smart oasis®」を提供開始。低炭素社会の実現に向け、行政機関や各種産業と連携しサービスを拡充。
2011年
2008年に立ち上げたICTサービスの新しい名称に「U-Cloud®(ユークラウド)」を採用。
2012年
大日本印刷株式会社と業務提携。「クラウド事業」、「新プラットフォームサービス事業」、「マーケティング・販売連携」の3軸でのさらなる連携強化を図る。
2013年
新潟県佐渡島における医療の効率化のため地域医療連携システム「さどひまわりネット」を提供。佐渡市内の病院、診療所、調剤薬局から介護施設での医療情報を共有一元管理するシステムで地域医療に寄与している。
2014年
充電インフラシステム「smart oasis®」の活用により、電気自動車のシェアリングビジネスに参入。

取材・文/伊藤理子 撮影/鈴木慶子

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