人事部長インタビュー

Vol.65 ヒューリック株式会社

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既存物件の建て替えと3Kビジネスで、2023年には経常利益850億円に

不動産業界は、短期的に見ると比較的ポジティブな状況です。金融緩和によって不動産投資が活発化していること、日本の景気が回復局面に入っていることがその要因です。オフィスビルなどの空室率は低下していますし、賃料も上昇傾向にあるので、全般的にはいい状況だといえるでしょう。

 

しかしながら、もう少し長期的に見ると、日本の中心である東京のマーケットは引き続き活発であっても、高齢化や人口減少が進む中で、地方などを含めた全体では高い成長を望めるとは思えません。ですから、そのような低い成長の中で、いかにチャンスを見つけていくかがこれからの課題です。

 

ヒューリックの事業の中核は、法人向けオフィスの賃貸ビジネスであり、それを軸に投資や開発事業などに領域を広げている不動産のデベロッパーです。当社は、旧富士銀行(現みずほ銀行)の支店や社宅などの不動産を保有管理してきたことから、所有物件の約9割が首都圏、しかも駅に近い好立地にあるのが特徴です。

 

一般的に、銀行の支店は好立地にもかかわらず、容積率(敷地面積に対する建築延べ面積)を有効に活用していないケースが少なくありません。当社は、こうしたビルを建て替えることで面積を広げ、商業施設などの新たなテナントを組み込んで賃料収入を増やしてビルの収益性を高めてきました。オフィスビルの空室率や賃料は市場動向に左右されがちですが、ニーズの強い都心の駅近物件は空室率が低く、賃料が大きくぶれることもありません。これが当社の強みであり、経営の大きな安定基盤となっています。

 

事業戦略の中心として継続的に行っているのは、こうした既存物件の建て替えによって不動産のバリューアップを図ること。東証1部に上場した2008年から8年間で約50棟を建て替え、今後も同様のペースで建て替えを進め、物件の質と収益を高めていく計画です。

 

また、近年は、成長戦略として“3Kビジネス”にも注力しています。これは、高齢者・観光・環境の頭文字をとったもの。高齢者向けビジネスでは、有料老人ホームや介護施設などのニーズの高まりに着目しています。銀行の社宅を建て替えて、介護施設運営会社に長期間貸して収益を上げていくなど、時代に合った用途に造り変えて収益化していきます。

 

観光ビジネスでは、インバウンド(海外からの訪日客)を取り込んでいく物件の建て替えや投資を行います。一例が、浅草の雷門近くに建つ「ヒューリック雷門ビル」。ここは老朽化した銀行の元支店ビルを建て替える際にホテル用途に変更し、自社で運営しています。このように、立地を見ながら最も有効に活用できる形への建て替えを進めていて、現在は「有楽町二丁目開発計画」が進行中です。

 

東京ディズニーリゾートオフィシャルホテルである「東京ベイ舞浜クラブリゾート」、日本のシニア層や海外の富裕層を想定した箱根や熱海の高級旅館などへの投資も積極的に行い、さまざまな軸で成長分野を収益に取り込んでいます。

 

環境ビジネスは、すぐに収益に結び付くものではありませんが、自社ビルにも採用している自然採光や自然換気などの技術研究に投資し、当社が建設するビルにこうした環境性能を盛り込んでいきます。また、現在建っているビルの多くは50年程度で建て替えるのが一般的ですが、当社が新規で建築する物件は“100年使えるビル”へと長寿命化を図っていきます。顧客の環境意識も高まりつつありますから、将来的にはこうした他社との差別化で当社を選んでいただけるものと期待しています。

 

ヒューリックは、23年に経常利益850億円を目指しています。実は、「中期経営計画(2014-2016)」では、16年の目標を380億~400億円としていましたが、15年12月決算で16年の目標を上回る経常利益425憶円を達成しました。3カ年計画を2年で達成できたため、16年1月末に新たな3カ年計画「中期経営計画(2016-2018)」を発表しました。

 

ダイバーシティ経営で、年齢や性別に関係なく長く働ける職場に

本業である不動産事業に携わっている社員は、役員を除くと130名弱。この人数でこれだけの収益を挙げているので、当社の一人当たりの収益は非常に高いといえます。事業を大きく展開するにあたって、必要に応じて増員はしますが、今後も少数精鋭のプロフェッショナル集団を目指し、社員一人ひとりの力を積み上げて組織としての人材力を高めていこうと考えています。

 

私が考えるプロフェッショナルとは、いろいろな事業分野に関する専門性を身につけ、それをしっかり活用できること。当社の組織は、不動産部門と企画管理部門で構成されていますが、不動産関連知識以外にも、企画管理部門なら会計や法律などの専門知識を身につけているということです。そして、その知識を組織の中で発揮していけることが重要です。

 

社員に期待するのは、仕事に対して強い思いを持ち、自らリーダーシップをとって貢献していくこと。当社のような小さい組織では、一人ひとりがかなりの貢献をしていかないと業績の拡大は難しいと思います。実際に現場で活躍している若手社員は、何事にも好奇心と情熱を持って自ら主体的に取り組んでいくタイプですし、会社としてもそうした働きを期待して早い段階で仕事を任せ、彼らの成長を促しています。

 

プロフェッショナルになるために必要なのは、学びと経験です。文系出身者も理系出身者も、多くの場合、一度は不動産部門で不動産業務を経験してもらいます。30歳ぐらいまでに最低2つの部署を経験し、その後は、本人の希望や適性などを見極めながら、各分野で専門性を高めていってほしいと考えています。学ぶという点では、各種研修や資格取得の支援制度などを整備。30歳ぐらいまでには、宅地建物取引士や不動産証券化協会認定マスターをはじめ、社内で推奨する資格のうち、2つは取得することを奨励していて、それに伴う費用は会社が補助します。

 

当社は、ダイバーシティ経営に非常に力を入れています。子育てや介護が必要になった際の支援策をはじめ、性別や年齢などにかかわらず社員が長く働けるような仕組みを整備してきたことが評価され、2015年には経済産業省選定の「ダイバーシティ経営企業100選」を受賞しました。新卒採用は、男女ほぼ半々で推移していますし、ダイバーシティ経営の一環として、20年までに「女性管理職を20パーセントにする」という目標を掲げています。

 

育児を理由に離職する人をなくしたい、男女関係なく安心して仕事に打ち込める環境を整えたいとの思いから、14年には事業所内に託児所を設置しました。事業所内託児所は、女性社員だけでなく男性社員も利用しています。男性の育児休暇取得も推進していて、15年末には配偶者出産休暇を増やし、育児休暇の分割取得ができるようにするなど、さらに取得しやすい制度に改革しました。今後とも、プロフェッショナルな人たちが性別や年齢などに関係なく活躍できる職場環境はもちろん、処遇面についても一層配慮していきたいと考えています。

 

学生の皆さんへ

社会に出て大切になる基礎力は、コミュニケーション力と論理的な思考だと思います。社会では、多くの人とかかわっていくことになるからです。自分がやりたいことを見つけ、それをやり切ったという経験を持つことで、こうした力を養ってください。何をやるにも自分一人でできることは限られていて、いろんな人とのかかわりが生じます。そういう機会を大切にし、その中で自分の意見をしっかりと出し、広い意味でコミュニケーション力を磨いていくことが望ましいと思います。

 

私自身は、大学時代は部員80名ほどの部活動に参加。渉外係として、同じ活動をする外部の団体と交渉して外部の意向を部員に伝えたり、定期的に行うイベントの集客を担当したりしていました。当時は「高い評価を得られる部活動にしたい」という一心でしたが、今思えば、その時に一生懸命やった経験が社会に出て生きているように思います。近年の学生は、自分の将来に対する意識が高いがゆえに、学生時代の過ごし方のウエイトがそこに偏り過ぎているようにも見えます。もっと“学生時代にしかできないこと”を意識して良いと思います。

 

同社10年の歩み

1957年、富士銀行(現:みずほ銀行)が所有する不動産を母体に日本橋興業株式会社を設立し、店舗ビル管理業務や損害保険代理店業務を開始。設立50周年を迎えた2007年を機に、「HUMAN(ひと)」、「LIFE(生活)」、「CREATE(創造する)」という3つの言葉の組み合わせたヒューリック株式会社に商号を変更。今では不動産賃貸事業を中核に建て替え・開発・投資などを手がけるほか、「3K(高齢者、観光、環境)ビジネス」に注目し、取り組みを強化している。
2007年
商号をヒューリック株式会社に変更。
2008年
東京証券取引所市場第1部へ上場。
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2010年
不動産賃貸会社2社(千秋商事株式会社、芙蓉総合開発株式会社)との合併を実施。
2011年
ヒューリック銀座数寄屋橋ビル竣工。
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2012年
昭栄株式会社と合併。同年、「THE GATE HOTEL 雷門 by HULIC」の開業やヒューリック本社ビル竣工に伴う移転を実施。
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2013年
ヒューリックリートマネジメント株式会社を設立。
2014年
ヒューリック新宿ビル竣工。JPX日経400銘柄に採用される。
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2015年
新株発行に伴い、資本金が626億1700万円に。同年、シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズとの吸収合併実施。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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