損害保険ジャパン日本興亜株式会社 野間和子さん【人事部長インタビュー】

※2016年4月1日付で人事部特命部長から執行役員熊本支店長へ異動。

「昔は、損害保険会社だったらしい」と言われるほど、進化したグループを目指す

国内の保険市場を取り巻く環境は、少子高齢化と人口減少に加えて、異常気象による自然災害の増加、人工知能やビッグデータなどを活用したデジタル技術の革新などによって、今後ますます競争が激化していくことが考えられます。

一方、世界はこの先何が起こるのかまったく予測できない不確実で変化の激しいVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代に突入しました。このような時代は、変化をいち早くキャッチし態勢を整え、スピーディーに対応していく必要があります。

そのような中、損保ジャパン日本興亜グループは、持続的に成長していくために、グループ共通のブランドスローガンとして「保険の先へ、挑む。」を掲げ、真のサービス産業として世界で伍(ご)していくグループを目指しています。

「世界で伍していく」とは、グローバルな保険グループを目指すということ。具体的には、世界の保険会社のトップ10に入ることを目指します。また、「真のサービス産業」とは、保険商品のみならず、お客さまの「安心・安全・健康」に資する最高品質のサービスをご提供するということ。当グループの事業には、国内損害保険事業、国内生命保険事業、海外保険事業の3つの大きな柱がありますが、これらに加えて、今後は、保険にとどまらずすでに参入している介護サービス事業、ヘルスケア事業、アシスタンス事業、住宅リフォーム事業などのサービス事業を積極的に展開していきます。

「安心・安全・健康」をテーマに、メインアトラクションとなる損保事業、生保事業、介護ヘルスケア事業と、メインアトラクションの魅力を高めるサービスやサブアトラクションとなる戦略事業群でテーマパークを構成、メインアトラクション自体の強化はもちろん、コアコンピタンス(他社との競争のなかで、優位性のこと)を持つ戦略事業がメインアトラクションと連動・連携することにより、「オンの時間」、すなわちお客さまとつながっている時間のさらなる強化と「オフの時間」の充実を図りたいと考えています。「そういえば、昔は損害保険会社だったね」と言われるほどに進化していきたいですね。

そのために注力するのは、次代を担う10代後半から30代くらいまでの世代に受け入れられる商品の開発と、販売モデルの構築です。今後、自動運転技術の発達によって自動車事故は減少していく可能性があります。一方で、IT技術の発展や環境変化等に伴う新たなリスクへの対応が必要とされています。また、保険の加入手続きなどを営業担当者とお客さまが対面で、紙を使って行うという方法も変わっていくはずです。これからの時代を担う世代のニーズに合った商品を開発し、時代の流れに応じて臨機応変に販売モデルを構築することで、すべての世代のお客さまに評価していただける会社を目指します。

その先駆けとなる施策として、2016年4月に、米国シリコンバレーに研究施設「SOMPO R&Dラボ シリコンバレー」を設けます。目的は、デジタル技術と結びつけた新しいビジネスモデルの研究。IoT(※)などと連携した商品や、新しい販売モデルにチャレンジしていきます。

(※)Internet of Thingsの略。これまではネットワークに接続されていなかった「モノ」がインターネットを介して情報をやり取りする能力を備えていくこと。「モノのインターネット」と訳される。

こうした取り組みの下、国内損害保険事業で収益を確保し、「安心・安全・健康」に関連した新たなサービス事業や、成長事業である海外保険事業に経営資源を投入していきます。

海外保険事業においては、M&Aを積極的に進めて収益を拡大していきます。アジアをはじめとした新興国市場においては、自動車保険を中心に、各国の事情に即した保険商品の開発・普及とM&Aを組み合わせながら、また、優良マーケットである北米・ヨーロッパにおいては、M&Aを加速します。

もう一つ、当社が持続的に成長していくために推し進めているのが、社員の働き方の変革です。今後、社員一人ひとりの生産性を上げて、より専門性の高い業務や新しい事業の創出にリソースを向けなければ、激しい競争を勝ち抜いていくことはできません。一方で、出産や育児、介護といったライフイベントと仕事の両立は、社員一人ひとりにのしかかる大きな課題です。社員が安心して仕事とプライベートを両立し、生産性の高い仕事をしていくには、長時間労働からの脱却が必須。そのために、業務の効率化や、社員の働き方を支援する制度の導入を推し進めています。

具体的な取り組みの一つが、「ワークスタイルイノベーション」と題した一連の取り組みです。例えば、これまで利用制限があった在宅勤務制度やシフト勤務制度の適用対象者の範囲を拡張したり、1カ月の利用回数の制限を撤廃するなどの対応を行いました。また、2016年度は、男性社員の育休取得率100パーセントを目指しチャレンジしています。

なお、ダイバーシティの中でとりわけ女性活躍推進は、当社の社員の約半数が女性であることもあり、10年以上前から数値目標を掲げて取り組み、すでに「女性の働きやすさ」は実現できていると自負しています。次のフェーズとして注力しているのは、「能力を高い次元で生かす」こと。2020年度までに女性管理職比率をグループ全体で30パーセントにすることを目標に、「女性経営塾」「プレ女性経営塾」「キャリアアップ研修」といった女性社員向けの階層別の研修を設け、管理職・リーダー候補となる女性社員を育成しています。

社員に求められるのは、新しい発想や、チャレンジし続ける姿勢

保険という概念を超えた新しい事業の創出や、より高度で専門性の高い業務を行うために今後社員に求められるのは、既成概念にとらわれない新しい発想や、チャレンジし続ける姿勢、自ら考えて判断し、スピーディに対応することなどです。今、研修などを通して社員の意識改革を進めています。

もちろん、大前提となるのは、お客さまの「安心・安全・健康」をお守りしたい、お客さまに喜んでいただきたい、という使命感です。2011年の東日本大震災や、15年の台風15号、18号によってお客さまが甚大な被害を被ったとき、当社は素早く保険金のお支払いを行いました。目の前のお客さまのお役に立つことこそが当社の存在意義であり、いつまでも変わらない基本。その上で、チャレンジし続けたいという社員には、チャレンジする場や機会を豊富に用意しています。

例えば、社内公募制度「ジョブ・チャレンジ制度」には、海外も含めた200弱のポストを用意しています。また、16年4月には、「ジョブ交流制度」「ジョブ支援制度」という2つの制度を新設します。「ジョブ交流制度」は、勤務地限定の社員を対象に、各地区の社員と本社部門の社員との人材交流を目的とした制度。「ジョブ支援制度」は、地方の遠隔地の職場を中心に公募ポストを設け、地方の職場支援と、社員が希望する地方の職場でマネジメントなどより高い役割を担うことによってキャリアアップの機会を提供することを目的とした制度です。

人事制度も段階的に見直していきます。年功序列を廃し、入社後のパフォーマンスとやる気、チャレンジする姿勢が評価された社員が、よりスピード感を持ってキャリアアップできるようにしていきます。若い世代でも実力があれば部店長や役員に抜てきしますので、これからは40代の役員が生まれることもあるでしょう。

また、海外保険事業を担う人材を育成する場も設けています。シンガポール国立大学ビジネススクールと提携した育成拠点「SOMPO Global University」です。日本を含めた世界各国の拠点から25〜30名程度を選抜し、集合研修を受けたのち、世界各国のグローバルカンパニーで10カ月~1年間、責任ある仕事を担っていただきます。日本語が一切通用しない環境下で、ときに逆境や修羅場を経験することで、心身のタフネスさ、ダイバーシティの理解、異文化対応力などを向上させ、海外ビジネスをけん引できる人材を育成します。

このように、チャレンジしたいという気持ちを持った人がチャレンジする場所や機会が豊富にあるのが、当社の特徴であり、魅力です。新しい事業やより専門性の高い業務への挑戦は大変ではありますが、求める人にはチャンスがある、面白い会社ではないかと私は感じています。

学生の皆さんへ

変化の激しい時代を生き抜くために、学生時代に取り組んでほしいことが3つあります。

1つ目は、しびれるような体験をすること。獅子の子落とし(ライオンは自分の子を崖の上から落として、はい上がってきたものだけを育てるという俗説)がありますが、このような厳しい試練に直面し、乗り越えようとする経験を味わった人は、どんな変化にも対応できるたくましさを持っていると感じています。ゼミ活動やクラブ・サークルでもアルバイトでも、何でも構いません。ぜひ1度か2度、しびれるような体験していただきたいと思います。

2つ目は、人よりも秀でている、あるいは「好きだ」「自信がある」と思えるものを何か一つ見つけて、磨きをかけること。外国語や会計など、何でも構いません。これからの時代の組織経営では、強い個性や特性を持った人材が集まって面を作ることで競争相手に打ち勝つことが重視されるでしょう。ゼネラリスト人材のみならず、特定の分野に特化したスペシャリスト人材やエキスパート人材が、今以上に求められるようになるのです。

3つ目は、リベラル・アーツ、すなわち教養を身につけること。どれだけデジタル技術が進んでも、最後の最後に行き着くのは、「人」だと思うのです。信頼され、深みのある人間性を持った人の根底にあるのは、教養です。時間のある学生時代に、古典も含めてさまざまなジャンルの本を読んで、教養を身につけてください。

同社30年の歩み

2014年9月、株式会社損害保険ジャパンと日本興亜損害保険株式会社が合併して誕生。損害保険会社単体では国内最大の収入保険料を誇る企業に。国内損害保険事業を中心に、国内生命保険事業、海外保険事業、アセットマネジメント事業など、さまざまな事業を展開している。

1987年

前身会社の一つである安田火災海上保険が文化貢献として本社ビル内に開設した美術館でゴッホの『ひまわり』の常設展示を開始。日本で唯一、ゴッホの『ひまわり』を見ることができる美術館となる。

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《ひまわり》1888年 フィンセント・ファン・ゴッホ 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館蔵

1994年
金融機関として初めて「消費者志向優良企業」通商産業(現経済産業)大臣表彰を受賞。
2002年
インターネットで販売を行うインターネット向け商品、新・海外旅行保険【off!(オフ)】の販売開始。
2005年
日系損害保険会社として初めて中国における現地法人設立認可を取得。
2008年
環境省から「エコ・ファースト企業」に認定。
2010年
損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が経営統合し、共同持株会社NKSJホールディングス株式会社(現損保ジャパン日本興亜ホールディングス株式会社)を設立。

2013年

英国キャノピアス社を買収。海外スペシャルティ・マーケット(※)に本格算入。

(※)専門性の高い財物保険や海上保険の引き受けを行う市場。キャノピアス社は、世界を代表する損害保険市場・英国ロイズ保険市場のトップ10に入っていた企業。

2014年
損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が合併し、損害保険ジャパン日本興亜株式会社となる。
個人向け新商品ブランド『THE(ザ)』シリーズ提供開始。
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2015年
「女性の活躍の推進に向けた積極的な取り組み」が評価され、東京証券取引所主催「企業行動表彰」を受賞。

2016年

IoT技術の活用によって安全運転を支援する個人向けテレマティクスサービス(※)『ポータブル スマイリングロード』(ワンプッシュで事故連絡ができる機能や、走行データに基づいた運転診断機能などがついたスマートフォン用アプリ)の発売開始。

(※)カーナビやGPSなどの車載機と、携帯電話などの移動体通信システムを利用してさまざまな情報やサービスを提供すること。

取材・文/浅田夕香 撮影/鈴木慶子

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