人事部長インタビュー

Vol.68 株式会社マツモトキヨシホールディングス

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次世代ヘルスケアとオムニチャネルをキーワードに、顧客との接点を増やす

ドラッグストア業界の企業間競争は激しく、厳しい状況にあると言えます。業界や業態を超えた提携によって規模を拡大する企業がある中で、トップを走り続けてきた当社としても、同業者との連携なども視野に規模を拡大し、将来的には売上高1兆円と業界シェア10パーセントを目指していく考えです。

 

現在、当社はさまざまな事業戦略を掲げていますが、中でも新松戸駅前店でスタートした「次世代ヘルスケア」への取り組みは、お客さま一人ひとりの美と健康をサポートする「かかりつけ薬局」を具体化することができました。今回のプロジェクトは薬剤師や管理栄養士などの資格を持つスタッフが連携し、お客さまがこれまでに経験したことのない「新しい価値の体験」を提供することでQOL(生活の質)の向上を図ることが目的です。管理栄養士が常駐し、食生活や生活習慣についてカウンセリングを行い、その結果を基に不足しがちな栄養素を検出します。お客さま一人ひとりに合わせたサプリメントを分包し、オーダーメイドサプリとして提供。管理栄養士が味や成分のレシピを監修してビタミンやミネラルの吸収をサポートする特許素材を配合したサプリメントも開発し、販売しています。店内で試飲できるオリジナルのスムージーも「甘さが控えめで飲みやすい」などの感想を頂き好評です。社内では上記のコーナーを「SUPPLEMENT Bar」と呼んでいます。

 

また、薬剤師が常駐する調剤コーナーにおいて検体測定室を設け各種の検査サービスも実施しています。血液検査は外部に送って一週間後に結果のフィードバックをもらっていましたが、新松戸駅前店では検体測定室で検査して、すぐに結果を見ながら、一人ひとりにアドバイスを行うヘルスケアサービスを提供しています。ほかにも業界初となる口腔内環境をチェックできる機能も設置しました。唾液を検体測定し、その場でむし歯菌や酸性度、白血球、タンパク質、アンモニアなどをグラフ化することで歯科医院への定期検診を推奨し早期治療につなげることができます。社内では上記のコーナーを「HEALTHCARE Lounge」と呼んでいます。

 

さらに新松戸駅前店では化粧品のカウンセリングも強化しており、肌チェックにおける水分量やハリ・ツヤなどを数値化して個別にカウンセリングシートを作成しています。社内では「BEAUTYCARE Studio」と呼んでいますが「SUPPLEMENT Bar」と連携することにより一人ひとりの美と健康を内外美容という観点からサポートすることができるようになります。

 

当社のビジネスは医薬品や健康食品、化粧品につながっていけば理想ですが、それを前面に打ち出すのではなく、お客さまにとって何が望ましいかを考えた店づくりをしています。カウンセリングを受けることで、ほかのサービスにも興味を持ってもらい、お客さまが行き来する。まずはスタートした新松戸駅前店で検証しながら店舗を増やしていく計画です。3つの機能すべてを展開するのが難しい場合は立地や環境によって、この店舗には「SUPPLEMENT Bar」、この店舗には「Health Care Lounge」、「Beauty Care Studio」といった個別の機能を導入する展開を考えています。

 

皆さん病気にかかれば病院に行きます。しかし、少し具合が悪い程度なら市販薬を買うとか、相談してみようという場所がドラッグストアだと思います。さらにドラッグストアでは病気にかかったときも処方箋を受けるなど、治療を担うこともできます。そして再発しないように、健康食品などで未病や予防のサイクルに戻していく。常にお客さまの健康というキーワードの流れの中でかかわっていくことがわれわれの存在価値だと思っています。予防から治療までを担うことで健康寿命の延伸につながり国が抱える医療費の高騰を軽減できると考えております。

 

ドラッグストア業界全体は競争が激化していると捉えています。各企業の売上高を見ても5000億円規模の大手がひしめき合っている中で、企業努力での成長や合併による規模拡大を図るなどしています。ヘルス&ビューティを中心に据えて重点的に展開していく会社と、食品などを強化することでスーパーマーケット業態に近い形で展開している企業もあります。方向性は違うとは思いますが、その中で自分たちの強みをどう出していくのかという競争をしている状況です。

 

当社の業績は好調です。インバウンド(訪日外国人)の話題だけ取り上げられると困りますが、大きな影響があるのは間違いありません。2014年10月に消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類、そのほかの消耗品)が免税対象となったことを受け、いち早く取り込んでマニュアルを作成したりレジの仕組みを変えました。都心部においては既存店の近くに免税特化型店を出店することにより既存店の売り上げが減少することはなくその店の売り上げが上乗せになりました。直近の中間決算においても売り上げや各利益とも過去最高を更新しています。

 

当社が掲げる事業戦略の中で「オムニチャネル」にも大きな期待を寄せています。オムニチャネルとは、実店舗やオンラインストアなどのチャネル(流通経路)を統合し、どのチャネルからも同じように商品を購入できる環境を整えることです。当社は「LINE」含めたSNSにいち早く取り組みました。これまでもポイントカードがあり、その会員数にプラスして「LINE」や公式アプリが加わったので、多くの会員数を確保できたと思います。このビッグデータを活用して新たな取り組みを行っており、お客さまが買い物をするタイミングや場所を意識して役立つ情報やクーポンの配信につなげています。

 

国内と中国でECサイトも立ち上げましたが大きな反響を得ております。一時期は医薬品がネット販売できるようになってリアル店舗が危ないのではないかと言われましたが、影響は少なかったです。当社はネットで店舗の在庫状況を確認することができたり、取り置きや配達指定したりすることができます。ネットとリアル店舗のシナジー効果を生み出すことによりこの課題をチャンスに変えることができました。一つひとつの事業戦略を確実に実行することにより将来的に売上高1兆円と業界シェア10パーセントを達成したいと考えております。

 

仕事に対する思いと、計画を立てて前向きに取り組む姿勢を評価

人事上の課題はたくさんありますが、まだまだ足りないと思うのは人材育成だと思っています。人材育成の体系はきちんと作り職種別に育成プログラムを整備しています。ところが階層別に見たとき、マネージメントや経営管理の知識など、将来この会社を引っ張っていく人材を育てていく部分がまだ弱いと思っています。

 

会社として歴史があり、右肩上がりで成長した会社ですから、数字が良い状況では大きな問題ではないのでしょうが、将来的な課題は見えてきています。多くの事業会社がある中で将来その会社を担う人材の育成が求められる状況です。ビジネスリーダーや経営人財をどう選抜していくか。16年はこの部分を具体化して、早期育成プログラムの展開をはじめ、階層別の補強に対応しています。そして新卒で入社された学生の皆さんが会社を担う人材に成長できるよう整備してまいります。

 

入社してからは、店舗で専門性を発揮しながら活躍していただきますが店舗運営を目指したい人は、店長やスーパーバイザーへとなっていただく。早い人で店長ライセンスを得て、3年で店長になっている人もいます。一方で職域の広がりについても知ってもらいたいと思っています。当社は店舗運営だけではなく幅広い仕事があります。花形と言われる商品開発もあれば商品を仕入れる仕事もあります。仕入れ額は数億円から数百億円という単位に携わる大きな仕事です。薬剤師であっても例外ではなく海外事業や内外美容、FC(フランチャイズ)ビジネスの仕事もあります。

 

人事担当者としてわれわれが大事にしているキーワードは、「思い」と「取り組み姿勢」です。どんな仕事にも思いを持って取り組むことが非常に重要だと思っていて、単に言われたからやるのでは何の面白みもありません。一方で当グループは目標を掲げると、それに向かって達成する意欲が非常に高いという風土があり、その点をとても評価しています。そこに思いを持って取り組むともっと成果が出ると思います。なんでこんな仕事をするのかではなく、こうありたい、こうでなければいけないという思いがあるともっと成果が上がるはず。どんな場面でも、「会社のためには、こうした方がいい」というふうに考えが及ぶかどうかが重要ですね。

 

従業員の能力はさまざまですが、取り組み姿勢がしっかりしていれば、どんなことも成功につながると思っています。どんなに優秀な人でも取り組み姿勢がなっていなければ成功できない。当社では、どう取り組むかという計画を立て、仕事に前向きに取り組んでいく姿勢を大事にしていますし、そういう人を求めています。

 

面接のときにも、実は質問の中から「この人はどういうふうに物事を進めてきたのか」「どういう考え方なのか」を聞き出そうとしています。きちんと物事を考え、自身の考えを話せる人は社会に出ても、自分から前向きに取り組んでくれると思うからです。

 

学生の皆さんへ

社会に出たら、常に人と話をして連携していかなければなりません。相手が一般の人でも、取引先企業の担当者でも、社内の別の部署の人でも、相手の気持ちを考えながら、「自分がこれを言ったら相手はどう受け取るのか」「どう交渉すれば理解してもらえるのか」を、当たり前のように考えられるようになること。若いうちから、それを感じられるかどうかがポイントだと思います。

 

私自身は、大学時代のアルバイト経験が大きかったと思います。青果市場で、野菜や果物を小売店へ配送するアルバイトでした。深夜の時間帯に2トントラックを運転して配送する仕事なのですが、仲卸業者の方々や配送先の小売店の方々など、人と接する場面は多かったですし、カーナビなどない時代に、どのように誤配なく時間通りにお届けするかを必死に考えていましたね。事前に社会を見たことが自分の経験値になりましたし、何よりも意識が変わりました。もっとたくさんの量を運ぼうとか、もっと大きなトラックを操ろうといった、高い目標を自分自身に課していったこともその一つで、在学中に大型自動車免許まで取得してしまいました。だからといって、アルバイトを勧めているわけではありません。学生の本分は勉強ですし、大学できちんと勉強しておくことが、将来の専門性につながると思います。今後、さまざまな場面で学生の皆さんとお会いできることを楽しみにしております。

 

同社30年の歩み

1932年(昭和7年)千葉県松戸市小金に、松本清が個人経営の「松本薬舗」を開店。54年に法人組織化し、75年に「株式会社マツモトキヨシ」に社名変更。現在は、「1st for you.あなたにとっての、いちばんへ。」をグループ経営理念として掲げるマツモトキヨシホールディングスの中核事業会社となっている。「マツキヨ」の愛称で親しまれるドラッグストアを、立地や顧客層に合わせさまざまな形態で店舗展開。新業態店舗の開発にも意欲的で、小スペースを活用した駅中の医薬品特化型店舗や、健康と美容に特化した店舗などを展開中。近年は調剤薬局事業の拡大にも注力。調剤薬局併設店舗のほか、調剤専門薬局も積極的に出店している。
1987年
「明るく健康で美しく過ごしていただきたい」、「気軽に相談できる入りやすいお店」、として都市型ドラッグストアの展開をスタート。7月にその第1号となる上野アメ横店をオープン。
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1990年
日本証券業協会へ店頭登録銘柄として登録。
1994年
顧客ニーズに応じ業態変化を進展していく中で、郊外の幹線道路沿いで駐車場を備えた大型のドラッグストア事業も進行。3月、千葉県柏市加賀に初のロードサイド型店舗をオープン。
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1995年
3月の売上高は1017億7800万円、216店舗と、業界売上高ナンバー1に。
1999年
8月に東京証券取引所1部上場。
2001年
意欲的な出店とともに地域の優良企業との資本・業務提携、フランチャイズ契約によりマツモトキヨシグループ拡大戦略がスタート。2001年3月期に500店舗を達成。
2002年
創業70周年。ポイントカードをスタート。2013年9月末の会員数は1867万人に。現金ポイントカード
2007年
10月、株式会社マツモトキヨシホールディングスを設立。
2009年
商品開発に力を入れプライベートブランド「MKカスタマー」のテレビCMを1月に放映開始。6月、育児短時間制度で勤務する女性店長が誕生。7月、医薬品特化型新業態「medi+マツキヨ」を開設。
2010年
3月、内外美容を掲げる新業態「H&B Place」を開設。5月、薬学生の新カリキュラムにおける薬局実務実習の受け入れを開始。12月、ネイルサロンやセルフフェイシャルエステを併設した渋谷Part2店リニューアルオープン。
2011年
8月、「全員参加型の創造的企業風土」として10プロジェクトが開始。
2012年
5月、東京スカイツリーに隣接する商業施設「ソラマチ」に2店舗同時オープン。7月無料通話・無料メールアプリ「LINE」に公式アカウントとして参加。クーポンなど、お得な情報を発信する新サービスを開始。12月創業80周年を迎える。
2013年
3月、千葉大学大学院薬学研究院に、患者さまへの情報提供や薬剤師の育成に生かせるよう「医薬品情報学(マツモトキヨシHD)寄附講座」を開設。
2015年
9月、次世代ヘルスケア事業の1号店として、新松戸駅前店をリニューアルオープン。不足しがちな栄養素を検出したオーダーサプリの提供、スムージーの試飲などを実施している暮らしのヘルスケアショップ「matsukiyo LAB」(写真)を併設。10月、Central Food Retail Company Ltd.(セントラルフードリテール社)との共同出資により設立したセントラル&マトモトキヨシ リミテッドが、タイ王国バンコクに「マツモトキヨシ」海外1号店をオープン。12月、新たなプライベートブランド商品「matsukiyo」の販売を開始。
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取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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