人事部長インタビュー

Vol.70 株式会社日立製作所

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技術を通じて社会に貢献していく。それが創業当時から受け継ぐ精神

当社は、情報・通信システム、電力システム、社会・産業システム、電子装置・システム、建設機械、高機能材料、オートモティブシステム(「環境」「安全」「情報」分野における自動車部品の電子・電動化)、生活・エコシステム、金融サービス、その他の10部門から構成されるコングロマリット企業(複合企業体)です。かつて、日本企業のビジネスモデルは、モノやサービスを単独で提供することが基本であり、それを効率的に生産・提供していくことが勝ちパターンでした。ところが、それが急激に変わりつつあります。

 

こうした状況急激な変化に対応するために、当社は2009年より事業の基軸を「社会イノベーション事業」に絞り、製品やサービスを単独で提供するビジネスではなく、ソリューションを提供していくという事業戦略を推進してきました。

 

まず、日立の「社会イノベーション」として、インフラ技術と先進的なITを組み合わせてトータルソリューションを提供することで、社会やお客さまが直面しているさまざまな課題を解決することを目指します。エネルギー、交通、ヘルスケア等、これまでも手がけてきました分野でしたが、あらためて「製品やサービスは、解決したい課題のために存在するのだ」と捉えて事業を見直し、ソリューションを提供していく企業を目指しています。

 

例えば、当社はイギリスの高速鉄道プロジェクトにも参画しています。日立がイギリスで高速鉄道事業を手がける意味は何なのか。それは、イギリス人が必要としているからであり、鉄道を提供するのであれば、どういう形がベストなのかを考え、私たちにできることは何かを考えていく。ニーズから創り出していく事業だと思っているからです。だからこそ、当社が現地工場を建設し、保守サービス体制を整備するなど、現地での事業をイチから手がけているのです。このように、現地で今後数十年にもわたる関係を築いていく事業体制は、これまでとは違う一段進んだアプローチだと考えています。

 

もう1つの重要戦略が、グローバル展開です。国内市場だけでは今後の事業成長が期待できません。高齢化が進んで労働人口が減っていけば、経済も縮小していくからです。そうした中で企業として成長を目指すには、やはり海外しかありません。

 

もちろん、ターゲットは世界ですが、事業によって展開先は異なります。再び鉄道の例で言いますと、鉄道はヨーロッパが世界基準ですから、イギリスに鉄道事業の本社を置いてグローバルにオペレーションするのが理想的でしょう。IT関係は、今後もアメリカが世界の中心でしょうから、事業の起点はシリコンバレーになるだろうと思います。そして、インフラ整備であればアジアが中心。たくさんの課題を抱えているのも、成長しているのもアジアですから。

 

世界には、飢餓や水の問題等、まだたくさんの課題があります。そうした課題に対して、個人として寄付をするというアプローチもあるでしょうが、企業ならビジネスとしてどう取り組んでいくかを考えなければなりません。事業として継続的に成り立つ方法を考え、提案し、実行していく必要があるのです。こうした社会の課題解決に、今後とも挑戦していきたいと考えていますし、製品や技術を通じて社会に貢献していくという精神は、日立の創業当時から受け継がれてきたDNAだと思っています。

 

これからの核になっていくのは、ビジネスをつくり出していけるフロント人財

事業の方向性を「社会イノベーション事業をグローバルに展開していく」と定義したことから、人財戦略も大きく方向転換し、11年より人財マネジメントシステムをグローバル共通にしていく取り組みを始めています。現在は、全世界にいる約25万人の従業員のデータベースの構築、マネージャー約5万人の評価制度設計など、グローバル共通の基盤をつくっている最中です。

 

その上で、業績を評価し、成果を出していくためのパフォーマンスマネジメントも国内全社と他国のグループ会社で世界共通にしていきます。このように、世界中で同じ指標を使うことで、例えば日本人が海外に出ても、また外国人が日本に来ても、同じマネジメント方法で仕事を遂行できるようになるのです。グローバル共通のマネジメントに変えていくことで、外国人が日本で働く、女性が育児休暇後に復帰する、介護休職から復帰する等、多様な人たちが多様な働き方をできるようになっていくと考えています。

 

さらに、グローバルという点では、10年ころより、日立グループ全体で年間1000人を海外に送り出すなど、若手の海外派遣にはかなり力を入れています。語学を習得する、グループ会社で働く、お客さま先で仕事をするなど、選択肢はさまざまです。第1段階として、30代前半までにこうした海外経験を積み、その後は、海外業務研修や留学、海外赴任等にチャレンジしてもらいたいと期待しています。

 

日本では、ダイバーシティというと女性の活躍が注目されますが、当社では、女性だけでなく、外国人、LGBT、障がい者などすべてを対象に考えています。まずは、上層部の意識改革のために、取締役会の改編に取り組みました。これにより、現在は13名中9名が社外取締役となり、社外取締役9名のうち5名が外国人、またその5名のうち2名が女性という構成になっています。そのほかにも、女性や外国人の採用を増やす、人財の多様化を目指す取り組みを推し進めています。

 

当社にとって技術力は重要であり、今後もさらに磨いていかなければなりません。一方で、グローバルにソリューションを提供していくことを考えたとき、その核になるのは、ビジネスをつくり出していけるフロント人財です。フロント人財とは、事業の課題を見つけ出し、それに対するソリューションを組み立てていく人財。お客さまと一緒にソリューションを考えていくには、技術的な知識が必要ですし、社内にどんなリソースがあるかも把握していなければできません。高いコミュニケーションスキルを持って世界中の人たちと協働し、自ら発信しながら他者の意見も取り入れる柔軟性も求められます。

 

そして、何より重要なのは、強い志を持って最後までやり抜く力です。プロジェクトではしばしば難題にぶつかりますが、途中で逃げずに最後までやり抜かなければなりません。また、私たちの仕事は、1つ仕上げて終わりではありません。今イギリスで取り組んでいる高速鉄道事業の例でいえば、最初に設備や仕組みをつくるだけでなく、そこから何十年にわたって継続的に運用していく覚悟が必要なのです。私たちは、社会に貢献したいという志を強く持ち続け、設定したゴールに向かって頑張っていける力に期待しています。

 

学生の皆さんへ

いろいろなことに好奇心を持ち、社会で起こっていることに対してアンテナを高くして、さまざまな情報を取り入れ、自分の頭で考え抜いてください。日本にいると、どうしても日本の情報に覆われてしまいます。そういう意味では、海外で起こっていることにも目を向けてほしいと思います。例えば、「イギリスがEUから離脱すると、どんなことが起こるのか」を、自分の頭の中に今ある情報だけででもいいから考え抜いてみる。さまざまな問題を考え続ける力を身につけておくと、社会に出てきっと役に立ちます。そのためにも、学生のうちにたくさんの人と接し、いろいろな活動に参加してほしいと思いますし、そのときに培ったネットワークを社会に出てからも持ち続けていることも大切です。いろいろなことにアンテナを立て、さまざまな問題を考え続けられる人が、新しいビジネスをつくり出していけるのだろうと期待しています。

 

同社30年の歩み

前身は、現在の茨城県日立市にあった銅と硫化鉄鉱を産出する久原鉱業所日立鉱山。創業者の小平浪平は、当時日本最大の水力発電所の建設に携わる若きエンジニアだったが、「自らの力で電気機械を製作したい」という強い志で、日立鉱山へ。1910年、国産初の5馬力誘導電動機(モーター)を完成させたことが、日立製作所の原点。創業の精神である「和」「誠」「開拓者精神」をさらに高揚させ、日立人としての誇りを堅持し、優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献することを基本理念とする。1970年代、世界の大規模水力発電所向けの輸出で実績を上げた。米国誌『フォーブス』が毎年発表する世界企業ベスト2000では、日本企業として唯一コングロマリット(複合企業体)に分類されている。

1975年
1970年代、日立は世界の大規模水力発電所向けの輸出で実績をあげた。1975年、カナダのバンクーバーから300kmのマイカ発電所への世界最大級の水車ランナーの搬入では、日立運輸東京モノレール(現・日立物流)は断崖を削り、テラスを張って97日間かけて運搬した。
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1979年
ATM量産1号機を出荷。1976年に旭工場と中条工場を中心に全社規模でATM機の開発に着手。1978年に中条工場からATM試作機が、翌1979年に旭工場から量産1号機がついに出荷された。
1981年
日中合併第一号となる福建-日立電視機を設立。日立のブランドが中国国内に定着し、カラ―テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの輸出が拡大した。
1982年
「電子線ホログラフィー」が、量子力学の論争に終止符を打つ。長年の論争となっていた量子力学のアハラノフ・ボーム効果を検証した。また、基礎研究所で開発した100万V電子線ホログラフィー電子顕微鏡は世界最高の分解能を記録し、超電導体の磁場の観察でも画期的な成果をあげた。
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1983年
国産初のスーパーコンピューター「S-810」が誕生。科学計算用に超高速演算を可能にした国産初のスーパーコンピューター「S-810」の心臓部のボードと、その後継機となる「S-820」の中央演算処理装置ともに、国立科学博物館の「未来技術遺産」に登録されている。
1995年
光トポグラフィーを開発。近赤外線を照射して脳血流をとらえるため、血流で脳の活動の様子がわかり、新生児の脳機能の解明、ALS患者の対話装置の開発など、脳科学研究で新たな領域を開拓した。
1997年
DNAシーケンサーを開発。これは遺伝子の塩基配列を超高速で分析する装置で、米国の科学雑誌から「ヒトゲノム(人間の全遺伝子情報)の解明を3年早めた」と絶賛された。
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2000年
がんの早期治療に期待される「陽子線治療装置」開発。超高速に加速した水素の原子核(陽子)を身体に照射すると、ある一定の深さで完全に止まり、そこで大きなエネルギーが発生する。そのため病巣だけを集中して治療することが可能に。従来のX線治療よりも副作用や体への負担が少ないがん治療装置として注目され、2000年、初号機を筑波大学に納入した。
2010年
日立創業100周年を迎えた。
2015年
英国鉄道史上最大規模となる都市間高速鉄道の案件を受注。日本の車両メーカーとして初めて英国に進出。すでに車両の開発を完了し、今後は営業開始へ向けて急ピッチでプロジェクトを推進(2015年4月時点)。
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2016年
売上高10兆343億円、営業利益6348億円、総従業員数33万5244人(連結/3月末時点)。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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