理系のシゴトバ

Vol.144 株式会社ソディック

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今回の訪問先 【ソディック アドバンスト研究センター】
私たちの身の回りにはさまざまな工業製品があります。それらを製造するのに欠かせないのが工作機械です。工作機械といってもさまざま。ワイヤ放電加工機(ワイヤを電極にして、放電現象により金属を加工する機械)やハイスピードミーリングセンタ(マシニングセンタ:フライス削り、中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの異種加工を1台で制御する工作機械)、射出成形機(プラスチックなどの熱可塑性樹脂を加工する機械)、食品機械のほか、最近、注目を集めている金属3Dプリンタなどもあります。このようなモノづくりの現場に欠かせない工作機械を開発し、国内外に提供しているのがソディックです。自動車業界やエレクトロニクス業界などの幅広い分野で評価を獲得している背景には、独創的な技術開発力があります。同社のほとんどの製品に採用されているリニアモータテクノロジー。この技術を採用するメリットは、加工の高精度、高効率を実現するだけではありません。部品の交換頻度を下げたり、機械の構成が単純化されるため省スペース化やメンテナンスの容易性も実現するのです。このような最先端技術を積極的に取り入れ、社名の由来であり社是でもある「創造(So)」「実行(di)」「苦労・克服(ck)」し、創業以来、培ってきたノウハウと経験を組み合わせ、お客さまのためにより良いモノを提供し、成長し続けているソディック。今回は次世代技術に関する研究に取り組むソディック アドバンスト研究センターを訪問しました。

 

高速・高精度、低価格を実現する最先端制御システムを開発

ソディック本社およびアドバンスト研究センターがあるのは神奈川県横浜市都筑区。最寄り駅は横浜市営地下鉄「仲町台駅」。そこから7分ほど線路沿いに歩くと、ソディック本社の入り口に着きます。周辺は一軒家やマンションなどが立ち並ぶ閑静な住宅街が広がっていました。
アドバンスト研究センターとはその名の通り、次世代のソフトウェアおよびハードウェアに関する研究開発に取り組む拠点です。グローバル化をいち早く志向してきたソディックでは、研究開発体制もグローバル。1991年に中国・上海にソディック上海、2000年にアメリカ・シリコンバレーにソディックアメリカを設立し、日本のアドバンスト研究センターおよび各事業部の研究開発部門と協力の下、3拠点体制により最新のNC(数値)制御装置の開発が行われています。
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アドバンスト研究センターのシゴトバをアドバンスト研究センター第1G グループマネージャーの林泰さんと同Gメンバーの濵田大樹さんが紹介してくれました。写真はアドバンスト研究センターの執務エリアです。
「アドバンスト研究センターでは、会社の将来に役立つと思われる、世に出ていない新しい技術の研究開発を行っています。5つのグループがあり、私がマネジメントしている第1Gの担当は主にモーションコントローラなど制御システムの開発です。私たちの部署は世に出ていない新しい技術の開発なので、『この機械をこのように制御する仕組みが欲しい』という具体的な課題が与えられるわけではありません。そのような製品よりの開発は、各事業部の開発部門が担当。私たちの部署では『より速度を上げたい』『精度を高めたい』『よりコストを下げたい』という抽象的な目標を達成する方法を、例えば電気的な仕組みを変えるのか、動きそのものを変えるのか、という何もないところからさまざまな視点で検討し、開発していくのです」(林さん)
モーションコントローラとは、ソディックの工作機械に搭載されているリニアモータを制御する装置。同社では加工する際によりスムーズに速く動作させるためにリニアモータ技術を採用。リニアモータおよびモーションコントーラは同社で独自開発されています。
一方、濵田さんが担当しているのはワイヤ放電加工機の機能開発。
「どういう機能を付加すればお客さまに喜ばれるモノが提供できるのか、チームのメンバーと話し合いながら機能開発に取り組んでいます」(濵田さん)
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「私が手がけた制御システムは、ほとんどの工作機械に応用されています」(林さん)
写真は金属3Dプリンタ「OPM250L」。金属粉末を均一に敷くリコーディング工程とその粉末をレーザー光でスキャンして溶融凝固させるレーザー加工工程を複数回繰り返し、高速の回転工具で切削加工(高速ミーリング加工)を行います。これらの工程を繰り返して積層させていくことで工作物ができあがります。もちろんOPM250Lにもリニアモータ技術が採用されています。OPM250Lは日刊工業新聞社主催「2014年十大新製品賞 本賞」および「第45回 機械工業デザイン賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」、日本デザイン振興会が運営する「2015年度 グッドデザイン賞」をトリプル受賞しました。十大新製品賞は優秀新製品の開発奨励と日本の技術水準の向上に資することを目的に創設された制度で、また機械工業デザイン賞は工業製品のデザイン振興と発展を目的としています。グッドデザイン賞はくらしや社会を豊かにする「よいデザイン」に対して贈られる賞です。これらの受賞からも、同社の技術、性能が高く評価されていることがわかります。
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こちらはソディックの主要機種、リニアモータ駆動を採用した超精密ワイヤ放電加工機「AP250L」。従来のボールネジ駆動方式を採用していたワイヤ放電加工機とは異なり、機械精度の低下が発生しないのが特徴です。同機種では機械精度10年を保証されています。
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「1日の大半はこの実験室で過ごしています」と林さんは言います。
実験室にはそれぞれの作業デスクがあり、パソコンも設置されています。
「ここでプログラミングをしたり、試験結果の解析などを行ったり、資料をまとめたりしています」(林さん)
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作成したプログラムがちゃんと動作するか、基板に入れて確認しているところです(写真は濵田さん)。
「テストするための電子回路基板も、自分たちで作成しています。このようなむき出しの基板で動かして、例えばモータの制御プログラムであれば回転の数値を取得し、細かく解析していきます。ここで調整できれば実際の機械に入れて動かしてみるんです」(林さん)
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はんだごてを使って、基板を作成しているところ。
「当社では製品化する場合、最初は部品などを専門メーカーから購入して作り上げていきます。その後、よりお客さまが求める機能やコストを実現するため、主要な部品を内製化していくんです。だからこそ、実際に手を動かして基板を作成するという作業も発生します。基板の作成は得手、不得手な人がいるので、わりと得意な人や好きな人が作ることが多いですね」(林さん)
「私もまだうまく作成できないので、必要なときはメンバーに作ってもらったりしています」(濵田さん)
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作成した制御プログラムを実際の機械に搭載し、正しく動くか確認するため、操作盤をいじっているところです(写真は林さん)。
「制御プログラムで難しいのは加減速制御のプログラムです。加減速とは加速と減速のことで、例えば車であればすーっと動き出してすーっと止まると乗っている人も安心ですよね。それと同じで機械も加減速がいかになだらかにできるかが大事になるんです。そのようなプログラムにするために、細かなデータを取得して解析し、調整していくわけです」(林さん)
写真は高性能ワイヤ放電加工機「SL400G」。要素技術をすべて自社開発しているモデルです。
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制御システムの開発は、拠点と連携して行われます。写真は石川県加賀市にある加賀事業所のメンバーとテレビ会議システムを使って会議をしているところ。
「最もひんぱんに会議をするのは、加賀事業所のメンバーです。加賀事業所は国内の生産拠点としても中核的な役割を担っています。ここにはアドバンスト研究に携わっているメンバーもいますし、その先進技術を製品に応用する事業部の研究開発部門もあります。そのようなメンバーとコミュニケーションして、次世代技術の開発に取り組んでいます。そのほかにも、ソディックアメリカ、ソディックタイランド、ソディックアモイ、蘇州ソディックなどの海外拠点のメンバーとも会議をすることがあります。まさにグローバル体制で開発が進められているんです」(林さん)
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ハタラクヒト 進化する技術にいかに対応していくか。大事なのは柔軟性

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引き続き林さん(写真左)と濵田さんに「ソディック アドバンスト研究センター」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

林さんは2001年岡山大学工学部機械工学科を卒業し、ソディックに入社しました。
「大学時代はある特殊な材料の新しい加工法に関する研究に従事していました。研究室にソディックの放電加工機があり、使っていたんです。調べてみたところ、グローバルでビジネスを展開している。ここなら海外で活躍するチャンスがあるのではと思い、選びました。モノづくりをしたいというよりも、海外で働きたいという気持ちがいちばん強かったですね」(林さん)

 

一方の濵田さんは東海大学大学院理学研究科物理学専攻を修了後、12年にソディックに入社。
「学生時代の専門は物理学。実は工作機械のことは、よく知りませんでした。地元の神奈川で就職を考えていたので、神奈川に本社のある会社を中心に就職活動をしていました。そんな時、横浜で開催された合同企業説明会に参加し、ソディックの持つ技術力の高さにひかれ、工作機械の開発に携わってみたいと思いました」(濵田さん)

 

濵田さんのように工作機械についてよく知らない人も「珍しくありません」と林さんは言います。
「技術は常に進化していきます。したがって数学など理系の知識がベースとしてあれば、あとはその進化する技術にいかに対応していくかです。つまりそういう柔軟性を持っていることがいちばん重要なんです。実際私たちのグループは機械のほか、電気、物理、情報系の出身というように学生時代の専門はバラバラです。新しい技術を獲得していくという前向きさがあれば、学生時代の専攻は関係ありません」(林さん)
「私はプログラミングの知識もありませんでしたし、工作機械のことも配属後に一から勉強しました。ただ日々、仕事をしながら勉強するので本当に大変。しかし自分の作ったモノがちゃんと動いたのを見ると、これまで苦労したことも忘れてしまうぐらい、うれしさに包まれるんです」(濵田さん)

 

林さんも「やはり大きな達成感が得られるのは、自分で設計したプログラムが動く瞬間です。私たちが開発しているのは先進技術。だから日々が新しいことへのチャレンジなんです。そのチャレンジがうまくいき、動くことが楽しい。それがやりがいになり、また次にチャレンジしようと思えるんです」と語ります。

 

濵田さんは「日々、仕事をしながら勉強しなければならないので、それが大変」だと教えてくれましたが、一方の林さんに苦労した経験を聞くと、「ソディックアメリカに赴任した時ですね。英語がそれほど堪能ではなかったので、生活面で少し苦労しました。でも文化の違いを経験する良い機会となりました」と笑いながら話します。勉強することはたくさんありますが、それが楽しいので、仕事では苦労を感じたことがないそうです。

 

最後にソディック アドバンスト研究センターというシゴトバの文化・風土について聞きました。
「当社は創業者の古川会長、そして金子社長というように経営トップが技術者だからか、技術へのこだわりが強い会社です。技術を探究したいという人には、働き心地がよいと思います」(林さん)
「アドバンスト研究センターの平均年齢は、30代半ば。年代の近い人が多く、楽しい雰囲気の中で仕事をしています。また意外に飲みニケーションも多いんです(笑)。だからみんなでストレスを発散して次の仕事に向き合うことができます。働きやすいシゴトバですよ」(濵田さん)

 

おいしいメニューが安価に食べられる食堂、先進技術をわかりやすく紹介するショールーム

食堂です。
「ほとんどの社員が利用しています。メニューもそれなりに選べますし、おいしくて人気なんですよ」(人事・コンプライアンス統括部 人事管理室室長 鎌田弘次さん)
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ある日のメニューです。日替わり定食(420円)のほか、カレー(380円)、麺(日替わり、330円)などのラインナップ。500円もかけずにおなかを満たすことができます。
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テニスコートです。主にテニスクラブのメンバーが使用。メンバーの中には毎日、昼休みに練習する人もいるそうです。ソディックにはテニスクラブのほか、フットサル、バドミントン、ゴルフ、自転車などのクラブがあり、社員交流の場になっています。
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カフェコーナーです。こちらは主に来客時に使うスペースとのこと。コーヒーなどが用意されており、リラックスした雰囲気の中でお客さまと打ち合わせができるようになっています。
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ショールームです。金属3Dプリンタ「OPM250L」をはじめとする主力機種を設置。ショールームに至る通路では、ソディックの精密技術が容易に伝わるように米粒に約100個の文字を彫ったものも展示されています。
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ソディックにまつわる3つの数字

NCワイヤ放電加工機や射出成形機、食品機械など、モノづくりの現場に欠かせない工作機械を開発し、国内外に提供しているソディック。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 1500アンペア

2. 100パーセント

3. 40

前回(Vol.143 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史

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