理系のシゴトバ

Vol.146 伊藤超短波株式会社

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今回の訪問先 【伊藤超短波 生産本部】
スポーツにケガはつきものです。そんなスポーツおよび医療分野において、ケガなどをなるべく早く治癒させるために用いられるのが物理療法機器です。物理療法とは物理的なエネルギーを用いた理学療法のことで、電気刺激療法や温熱療法などさまざまな方法があり、その治療現場では数多くの機器が用いられています。そんな物理療法機器分野をけん引しているのが伊藤超短波です。伊藤超短波の創立は1916年(当時の社名は東京医学電気)。この年に創始者である伊藤賢治氏は交流式レントゲン装置などを開発。34年に超短波治療器を製作・発売して以来、小型低周波治療器や骨癒合治療器、電流筋肉刺激装置など、さまざまな物理療法機器を開発し、病院や接骨院などに提供してきました。特にスポーツの世界では選手のコンディションを維持したり、ケガをした場合にはより早くベストの状態に回復させたりするために活用されています。柔道やサッカー、野球、陸上、バレーボール、ハンドボールなど、種目を問わず、さまざまなスポーツの選手が活用しており、同社もその選手およびスポーツの発展をサポートしています。また、このようにこれまで伊藤超短波では業務用の治療器だけでなく、これまで培った技術を生かして、一般の方でも容易に使える家庭用治療器や美容器、運動器を開発、提供しています。今回はそんな製品を生み出している伊藤超短波 生産本部のシゴトバを訪れました。

 

より良いモノをより早く、より安く生産するための仕組みづくり

伊藤超短波 生産本部があるのは茨城県稲敷郡阿見町。阿見町は茨城県の南部に位置している自然豊かな街。霞ヶ浦の南に面しており、年間を通じて気候も穏やかです。生産本部の周辺は住宅地も広がり、のどかな雰囲気。最寄り駅はJR常磐線の荒川沖駅。そこから車だと約5分ですが、徒歩だと20分ぐらいかかるため、ほとんどの社員は車やバイク、自転車などで通勤しているそうです。

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伊藤超短波で生産している業務用の超音波治療器です。深部の患部を立体的に加温したり、筋肉の中など深部に直積刺激を与える高速度ミクロマッサージ効果を実現する超音波と、筋や腱(けん)、靱帯(じんたい)など損傷を受けた皮膚に近い浅部から深部までの軟部組織の治療に効く低出力超音波という異なる2つの超音波技術が採用されています。またユーザーが治療内容の設定や実行が簡単に操作できるよう、タッチパネルを搭載。カラーやフォルムなどデザイン面においても、徹底的にこだわっているそうです。

このような業務用以外にも一般家庭向けに超短波治療器や低周波治療器、さらには高周波を利用した電子美容器など、さまざまな製品を開発、提供しています。そしてこれらの製品すべてが、この拠点で製造されているのです。

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生産本部のシゴトバを生産本部 生産技術課 生産技術係の野村俊文さんが紹介してくれました。

「生産本部は私が所属している生産技術課、部品を調達する購買課、購入した部品が収められている倉庫を管理する部品管理課、原価やコストを計算する管理課、製品の組み立てを行う製造課、製品の品質を検証する品質管理課、そして製品の出荷を行う物流管理課で構成されています。私たち生産技術課が担当するのは、設計から渡された図面を基に、なるべく工数をかけず、品質の良いモノを作り上げられるよう、部品構成をまとめたり、現場の作業が簡単になるような治具の作製をしたり、現場の作業手順書を作成することです。ただ最近の新製品開発では、企画段階から携わります。そうすることで、品質はもちろん、組み立てやすさやコストにこだわった製品を生み出すことができるからです」(野村さん)

写真は生産本部のシゴトバ、製造ラインです。ここですべての製品が組み立てられています。

「このフロアの奥に私たち生産本部の執務エリアがあります。生産現場がすぐ側にあるので、トラブルがないか、現場を見て回っています」(野村さん)

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設計書に基づいて必要となる部品構成をパソコンに入力しているところ。ここでは、治具の作製も行うそうです。

「治具というと、加工や組み立ての際に使う部品や工具のイメージが強いですが、私たちが設計するのはそのようなモノだけではありません。例えば検証作業をボタンひとつで行うようなソフトウェアも、私たちにとっては治具。工具だけではなくソフトウェア開発も行います」(野村さん)

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伊藤超短波では毎年、約10種類の新製品が登場しています。

「新製品の中には現行モデルをマイナーチェンジしたものもありますが、そうではない初めての新製品の場合は、作成した作業手順書に従って現場の担当者に作業を進めてもらうのですが、その際に指導が必要になることも多々あります。そんな場合は、現場に出向き、直接指導します」(野村さん)

写真は野村さんが、現場の担当者に作業手順について指導しているところ。

「作業担当者とコミュニケーションすることで、組み立てやすい手順になっているか、現場の思いを知ることができます。組み立てやすさについては徹底的にこだわって考慮したつもりでも、現場の担当者が作業しにくければ、改善しなければなりません。常日ごろから、現場の担当者に声をかけて作業に改善点はないか、確認するのも私たち、生産技術課の重要な仕事です」(野村さん)

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試作品ができたときや、新製品の製造ラインを立ち上げたときは、「自分たちで検査を行います」と野村さん。

「仕様書通りの性能を有したものができているか、自分たちで確認するんです。思った通りの性能ができていない場合は、設計部門にフィードバックすることはもちろん、製造過程で問題がないかチェックするんです。製造過程で不具合が生じていた場合は、作業手順に問題がないか、検討し、改善します」(野村さん)

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野村さんが開発した治具のひとつ、検証のための全自動計測システムです。

「外観やタッチパネルに不具合がないかなどは、自分たちの目で見て行いますが、その他超音波が正しく出力されるか、電気刺激が正しく行われるかどうかなど、18項目にも及ぶ試験が、パソコンのエンターボタンを押すだけで自動的に実施することができるんです。このようなツールを作ることで、作業効率が大幅に向上。現場担当者の負担も減りますからね。こういった治具を手作りすることで、技術の幅も広がります。大変ですが楽しいですね」(野村さん)

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「品質試験も担当しています」と野村さん。生産技術課と品質管理課の部門長を兼任している西村将さんがその理由を次のように語ってくれました。

「品質管理をすることで、どのような組み立て方をすればより品質の高い製品ができるかがわかります。また逆もしかりで、品質の視点からも製品のより良い作り方を考えることができる。より早くより良い製品を作るために、部門のセクショナリズムは不要です。そこで兼任をきっかけに、同部門のメンバーにはどちらの仕事にも携わってもらっているのです」(西村さん)

写真は1階にある信頼性管理センターで負電荷治療器に付属しているマットの折り曲げ試験を行っているところです。信頼性管理センターには、ロボット試験機をはじめ、引張試験機、X線装置など、品質を確かめるためのさまざまな検証装置が設置されています。

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電源コードが決められた条件で何回屈曲させると断線をするか、屈曲試験を行っているところです。このほかにも電源コードの品質を確保するために、抜き差し試験を行ったりもします。

「断線した際の屈曲回数や抜き差しの値を記録し、要件を満たしているかどうか確認します」(野村さん)

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断線したケーブルは、写真のようなX線装置を使って、中の様子を確認します。

「自分たちで作ったものの品質を確かめることで、品質を高めるモノづくりについて追求していくことができるんです」(野村さん)

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ハタラクヒト 技術の幅が広がり、チャレンジできるシゴトバ

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引き続き野村さんに「伊藤超短波 生産本部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

野村さんは2012年に中部大学工学部機械工学科を卒業して、伊藤超短波に入社しました。

「モノづくりが好きだったので、とにかくモノづくりができる会社に就職したいと考えていました。大学は愛知県。愛知でモノづくりというと自動車メーカーがすぐ頭に浮かびます。しかも私は大学時代、自動車部に所属し、自動車をカスタマイズしたりしていました。そして金属ジャッキなど必要な工具を大学の工作室で作っていたりしていました。でも趣味は趣味としておいておきたいと思い、また就職するにあたって最大の条件だったのは、機械や電気、ソフトウェアなど、いろいろな技術にチャレンジさせてくれるような、常にエンジニアとしてスキルアップできる環境でした。自動車メーカーでは、車全体にかかわることはできません。伊藤超短波ではさまざまな分野にチャレンジができるという話を聞き、入社を決めました」

 

野村さんは柔道を習っていたため、接骨院などで伊藤超短波の製品をよく見かけており、なじみがあったそうです。

入社後は1年間、製造現場のライン長を経験。

「製品の組み上がり方や検査の仕方などを学びました。生産技術や品質管理などの業務に就くには、現場経験が不可欠ですからね」

 

現在は3つのプロジェクトを抱え、生産技術や品質管理の仕事にまい進している野村さん。最もやりがいを感じる瞬間は、「自分が作製した治具によって、作業時間が大幅に短縮されたなど目に見えた改善結果が得られたとき」と語ります。

治具はこれまで、仕様書を渡して外部の業者に作製してもらっていたそうです。しかし最近は技術者のレベルアップのため、内製化が進められているのだそう。

「その道の専門家が講師として教えてくれる『変化・進化の教育』というものを1年間受けました。検査時間の大幅削減を実現した自動検査ソフトウェアが開発できたのも、この教育があったからです。これまで作った治具の中で、劇的な効果を発揮したのが、ある新製品向けの電子回路基板用の検査装置です。この電子回路基板は非常に部品点数が多く、人が検証すると丸1日かかるため、量産化するには自動化が不可欠だったのです。そこで私を含め生産技術課のメンバーで、その検査を自動化する装置を作ったところ、検査時間が30分に短縮できました。作業時間の短縮はコスト削減に直結します。自分たちの技術が会社、そして製品を買ってくださるお客さまに貢献できていることを実感できるんです。それがこの仕事に携わる面白さですね」

 

また生産技術だけではなく、品質管理や治具の作製など、幅広いことにチャレンジできるのも、伊藤超短波 生産本部の良さだと野村さんは言います。

「生産というと機械というイメージがあるかもしれませんが、先にも言ったように私たちは幅広い業務に携わります。治具作製ではソフトウェアや回路基板を作ったり、電気やプログラミングの知識なども求められます。電気系出身者も多く、皆さん活躍しています。私のようにいろんなことに携わってみたい、新しいことにチャレンジしたいという人にとっては、すごくやりがいのある、楽しいシゴトバです」

 

仕事の疲れをリフレッシュする空間・活動

食堂です。厨房(ちゅうぼう)設備がないため、希望者には仕出し弁当が届けられます。

「近くにあまり食べるところがないんです。中には10分ほどかけて自転車で牛丼チェーン店に食べに行くという強者もいますが(笑)。だいたい皆さん、お弁当を持参したり仕出し弁当を食べています」(野村さん)

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フットサル部など、クラブ活動も活発に行われているそうです。写真はフットサル部の試合のワンシーン。このときの試合会場は東京・調布にある味の素スタジアム。白いユニフォームが伊藤超短波です。

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伊藤超短波にまつわる3つの数字

創設以来、ケガを早く治癒させる物理療法機器の開発にまい進してきた伊藤超短波。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 80カ国以上

2. 27.12メガヘルツ

3. 584件
前回(Vol.145 出光興産株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美  撮影/平山諭

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