理系のシゴトバ

Vol.148 株式会社東京アールアンドデー

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今回の訪問先 【東京アールアンドデー 厚木事業所 車両事業本部】
日本の主力産業、自動車。部品点数は約3万点とも言われており、完成車メーカーではそれらの部品の多くを専門知識のある協力会社に依頼してつくってもらいます。そして納品された部品を組み上げていくことで、1台の車ができます。自動車はどんなに人気の車種でも数年に1度、フルモデルチェンジを行います。デザインを一新するのはもちろん、お客さまのニーズ、社会の動きに応じた新しい機能や技術が搭載されていきます。そんな自動車の研究開発は、完成車メーカーだけで行われているわけではありません。1981年に設立された東京アールアンドデーは自動車関連の研究開発会社。設立当初は量産車両の車体関係のスタイリングや設計、試作業務を請け負っていましたが、翌82年よりレースカーの研究開発を開始。84年にはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの先進的な複合材料の応用技術開発や電気自動車(EV)の自主研究にも着手。またメカトロニクス機器の開発も開始しました。現在は2輪および4輪の車体の研究開発をはじめ、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド自動車(HEV)とそのコンポーネント(構成部品)の開発、CFRPを使った軽量高剛性部品の開発と製造、レーシングカー開発という幅広い事業を展開しています。今回はそんな自動車の研究開発を行っている東京アールアンドデー 厚木事業所のシゴトバを訪れました。

 

メーカーから依頼を受け、研究用車両や次世代車両の研究・開発に取り組む

東京アールアンドデー 厚木事業所は神奈川県厚木市愛甲東にあります。最寄り駅は小田急線の愛甲石田駅。そこから7分ほど歩けば、厚木事業所に着きます。
厚木事業所の周辺は閑静な住宅地が広がっていますが、車で2分ほど東に走れば東名高速道路厚木インターに着くなど、都心へのアクセスのよい場所にあります。
厚木事業所には車体の研究開発を行う車両事業本部のほか、グループ会社の株式会社ピューズのシゴトバがあります。ピューズが担当しているのはEVおよびそのコンポーネントなどの研究開発、製造販売、エンジニアリングサービスの提供。1999年に東京アールアンドデーでEVにかかわっていた部門が独立、子会社化されました。
厚木事業所には約160人の社員(ピューズを含め)が働いていますが、自動車の研究開発会社だけに、そのほとんどが車通勤だそうです。
社屋の前面に置かれている青色の車は東京アールアンドデーが2004年に少量生産したスポーツカー「VEMAC RD200」です。これは一般ユーザー向けの車ですが、東京アールアンドデーではレーシングカーの研究開発も行っています。
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写真は東京アールアンドデーが自社商品として企画開発中のEVのCG(コンピュータ グラフィックス)です。
「研究開発企業を名乗るのであれば、自社で車をつくることもしなければ、追随できませんからね」(常務取締役 車両事業本部長 岡村了太さん)
このモデルについては、商品化の予定はないとのこと。東京アールアンドデーでは国内完成車メーカーはもちろん、海外メーカー、国や地方自治体、大学などと連携して、普通自動車やバス、トラック、路面電車などさまざまな新しいEVの開発に取り組んでいます。
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車両事業本部ではどんな仕事に携わっているのか、岡村さんが教えてくれました。
「当事業部では車体の研究開発に取り組んでいます。当社独自の車体開発もありますが、ほとんどの仕事が完成車メーカーから依頼された開発案件。車一台のこともありますし、車体のあるパーツだけを依頼されることもあります。私たちが手がけるものの多くが量産車ではなく、次世代車両。その多くが、完成車メーカーから『こういうものをつくってください』と言われることから始まるのです。ただ『こういうもの』の詳細について決まっているのはあくまでも車のイメージや性能の値だけ。そのほかはどんなデザインでどんな材料、構造の車にするのか、私たちがお客さまと何度も話をする中で意図やイメージを具現化していくのです。またこれまでになかった機能を評価するための研究用車両やショーに使われるショーカーを開発することもあります。このように当社がつくる車は本当に特殊なモノ。しかもこれからどんどん市場に出て行くと思われる、EVであればそのコンポーネントまでもグループ内ですべて設計開発しています。つまり当社グループですべてを請け負うことができるのです。それが自動車関連の研究開発企業として、最大の強みとなっています」(岡村さん)

 

車両事業本部には車のデザインを担当するプロダクトデザイン部門デザイン部や企画開発部門設計部などの部署があります。写真はデザイン部の竹内悠人さんが車のデザインをスケッチしているところ。EVであればモーターやインバータ(モーターの回転数を制御する装置)、電池などの動力部分スペースや室内スペースなど、車に求められる基本機能を想定した上で、デザインを考えていくそうです。
「お客さまには複数案提出し、そこから最終的なデザインを決めていきます。最初はこのように手描きでスケッチしていきます。これまでにないデザインが求められるので、『かっこいいけど、本当にできるのだろうか』というものを描いて、 現実に近づけるようにしていきます。また、造形の細部のこだわった部分はわかりやすいように、拡大して説明を加えたりします。こうしてお客さまにデザインの意図が きちんと伝わるようにしています」(竹内さん)
デザイン案が決まったら、立体で形を確認するためにクレイモデル(粘土で作製する模型)をつくり、さらにお客さまと共にデザインの検討を行います。何度もクレイモデルを修正し、最終的な形が決まったところで3Dカメラを搭載した3次元非接触計測器でクレイモデルの寸法を計測し、3次元CADで3Dのデザインデータを作成します。プロダクトデザイン部門にはこのようなモデリングデータを作成するエンジニアも所属しており、村上歩美さんはその一人です。
「今はクレイモデルの計測を担当しています」(村上さん)
完成したデザインデータを設計部門へ渡します。
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デザイナーから上がってきた図面やデザインデータを基に、実際に車として機能するように設計をするのが企画開発部門設計部の米田和哉(まいたかずや)さんの役割です。
「デザインを生かしながら、お客さまが求める性能を実現できるよう、3次元CADで設計していきます。今、私が携わっているのは、電気バスの車両設計です。エンジンをモーターへと変更するために、自動車の骨格となるフレームの設計に携わっています。いかにデザインをそのままに、モーターやインバータなどの電気システムをうまく収めるか、電気部品の設計を担当しているピューズのメンバーと話をしながら、設計を進めていきます」(米田さん)
東京アールアンドデーの主なお客さまは国内外の完成車メーカー。もちろん海外メーカーとの打ち合わせでは、海外出張もあります。
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モーターやインバータ、バッテリパック(電池パック)のなどの各コンポーネントの設計を担当しているのがピューズ 技術部の坂本佳隆さんです。各コンポーネント単体をつなぎ制御するなど、車両全体の電気システムの設計をピューズで行っています。担当しているのが、廣岡芳記(よしのり)さんです。写真は米田さん(左)と坂本さんが、バッテリパックの配線の位置などについて、確認をしているところです。
「これは中型のオートバイ向けのバッテリパックです。形や大きさについての詳細の打ち合わせは、CADデータを見ながら行います。試作部から試作品が上がってきたら、実際に設計通りになっているか確認します」(米田さん)
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部署内はもちろん、プロジェクト内での打ち合わせも行われるそうです。
「デザイナー、設計、そしてピューズのメンバーが一堂に会してミーティングをすることはそう多いわけではありませんが、設計とデザイナー、設計とピューズのメンバーという組み合わせでは、よく打ち合わせを行っています。特にデザイナーと設計者は、何度もやり取りをして修正し、最終的な形にしていくのです」(米田さん)
「デザイナー、設計双方共に譲れないポイントがあります。それを何度もやり取りして、良い落としどころを見つけていくのです」(竹内さん)
打ち合わせは社内メンバーだけではありません。お客さまとの打ち合わせもひんぱんにあるとのこと。
「打ち合わせの内容によってはお客さま先に出かけたり、当社に来ていただいたりしています。受託で車体の研究開発をする仕事においては、コミュニケーション能力が欠かせません」(岡村さん)
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東京アールアンドデーでは、レース用車両や、自転車なども設計・開発しています。このような分野のフレームや外装に用いられているのがCFRPと呼ばれる複合材料です。CFRPの企画、開発、設計、製造、評価、加工を行っているのが、2011年に分社化された東京R&Dコンポジット工業株式会社です。厚木事業所からは車で約5分の距離です。写真は東京R&Dコンポジット工業のCFRPを製造するための設備です。
「CFRP製品の試作や加工をしてもらう際は、設計担当者もここに来て打ち合わせをしたりします」(岡村さん)
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ハタラクヒト 同じ仕事は二度とない。だからやりがいも大きい

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「東京アールアンドデー 厚木事業所」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました(写真左から廣岡さん、竹内さん、坂本さん、村上さん、米田さん)。

 

今回、お話をうかがった皆さんは車が好きで東京アールアンドデーに入社したという共通点がありました。もちろん、完成車メーカーをはじめ、ほかにも車に携われるところはたくさんあります。その中で、東京アールアンドデーを選んだ理由として、「いろんなメーカーとの開発に携わることができる」「車を一台丸ごと開発できる」「EVの開発ができる」ということを挙げた人がほとんどでした。
学生時代の専攻は車両事業本部の場合、多くは機械系ですが、「材料系の人もいますし、建築系の出身者もいます」と岡村さん。電気電子系出身者の場合、ほとんどがピューズへの配属になるそうです。いずれにしても「大事なのは『モノづくりをしたい』『こういうモノをつくりたい』という思い。そういう思いのある人たちが集まっています」と岡村さんは話します。

 

仕事の面白さ、やりがいを感じる瞬間について尋ねました。
「お客さまの要求を反映するために試行錯誤を繰り返し、実際に自分が考えたモノができあがったときにやりがいを感じます」と竹内さん。とはいえ開発案件の多くが、完成車メーカーから委託されたもので、デザインしたものの多くは、量産車を対象としてないので、そのままの形として市場に出ることはないそうです。それでも面白いと言えるのは、「同じ仕事は二度とないからです」と米田さん。
「毎回、お客さまからの要望は異なります。たとえ、過去にやった案件と似ていても、必ず、前よりもいいものをとプラスアルファで何かを加えていくことが必要なんです。そうすることで、以前よりも良いモノができる。そういう進歩を実感できることがこの仕事の面白さであり、やりがいになっています」(米田さん)
「車の開発では、デザインや設計、ピューズの方々などいろいろな部署・人がかかわります。そういう立場の違う人たちと一つのモノをつくり上げていくことが本当に面白いですし、できあがったときの感動も大きいですね」(村上さん)
またEV用の電気システムを開発しているピューズの廣岡さん、坂本さんは「やりがいを最も感じる瞬間は、自分たちが考えた制御システムが、思惑通りにでき、お客さまから『うまく動いています』というお褒めの言葉を頂いたときですね。次も頑張ろうというモチベーションになります」と語ってくれました。

 

最後に東京アールアンドデーという会社の風土、文化について聞いてみました。
「職人気質な人たちが多いですね。だからといって気むずかしいわけではなく、わからないことがあれば、懇切丁寧に教えてくれます。女性は8パーセントと少ないのですが、働きやすいですね」(村上さん)
「聞きたいことが聞けるいい雰囲気のシゴトバです」(米田さん)
「シゴトバによって多少、雰囲気は異なります。例えば車両事業本部は比較的、静かなイメージがありますが、私たちが所属するピューズのシゴトバは、もう少しガヤガヤしていたり。共通しているのは、若いうちから責任ある仕事を任される風土があること。車好き、モノ作りをしたいという人にとって働きがいのあるシゴトバです」(廣岡さん)

 

自社開発した車両でレースに参戦

東京アールアンドデーが開発したRD09V車両が、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で行われた「スーパーFJ(フォーミュラ・ジュニア)」というフォーミュラカーレースに参加し、1~3位までを独占した時(09年)の写真です。
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社内懇親イベントでの一コマ。中井インターサーキット(神奈川県足柄上郡)で、開発品のポケットバイクを使用したレースが行われたそうです。
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東京アールアンドデーにまつわる3つの数字

量産車はもちろん、研究用車両、ショーカー、EVなどの次世代車両の研究開発を行っている東京アールアンドデー。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 88パーセント

2. 時速370キロメートル

3. 1993年
前回(Vol.147 ポーラ化成工業株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美  撮影/臼田尚史

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