理系のシゴトバ

Vol.151 オイレス工業株式会社

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今回の訪問先 【オイレス工業 軸受事業部 第一技術部】
エンジンをはじめ回転する機械に必ず使われている部品、軸受(じくうけ。ベアリングとも呼ばれる)。その歴史は古く、古代エジプト時代まで遡(さかのぼ)ると言われています。軸受は回転する軸を支え、滑らかに回転させ、摩擦によるエネルギー損失を防ぐ役割を担い、大きく「転がり軸受」と「すべり軸受」の2種類に分かれます。転がり軸受はボールベアリングとも呼ばれ、その名の通りボール(玉)やコロなどの転動体を、軸との間に使用することで荷重を支持します。一方のすべり軸受はすべり面で荷重を支持、すべり軸受は一般的には軸と軸受の間にグリースや潤滑油などの油脂類を使用して、摩擦を軽減し滑らかな回転を実現します。しかしそのような油をまったく使わない、または油を使う量・回数を少くしたオイルレスなすべり軸受の開発にいち早く取り組んできたのが、オイレス工業です(オイレスという社名はオイルレスベアリングが由来)。オイレス工業の強みはそれだけではありません。金属はもちろん、樹脂、金属と樹脂を複層化した軸受など多種多様な製品ラインナップにより、顧客のニーズに合わせて提案ができること。また、その軸受の材料に関しては、自社で研究開発し、製造まで行っていること。それが高品質で高性能な軸受の提供につながっています。オイレス工業は軸受のほか、免制震装置も手がけており、その分野でも国内市場をけん引しています。今回はすべり軸受の開発・設計を行っているオイレス工業 軸受事業部 第一技術部のシゴトバを訪れました。

 

より環境に優しくメンテナンスがいらない「軸受」の開発

オイレス工業の本社および軸受製品の主力生産拠点である藤沢事業場があるのは、神奈川県藤沢市郊外の工業団地の一角。この敷地内にはテクニカルセンター(TC棟)と呼ばれる研究開発拠点があり、ここに軸受事業部 第一技術部のシゴトバはあります。
最寄り駅は小田急江ノ島線、相鉄いずみ野線、横浜市営地下鉄線各線が交差する「湘南台駅」。そこからバスに7分ほど乗れば、本社・藤沢事業場に着きます。
このように最寄り駅からは少し離れていることもあり、車やバイク、自転車で通勤する人もたくさんいるそうです。
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軸受事業部 第一技術部のシゴトバを同部 技術一課の髙曽根昴(たかそねすばる)さんと内山詠美子さんが紹介してくれました。髙曽根さん、内山さんはともに2012年の同期入社で、同じ部署で軸受の開発に取り組んでいます。
「軸受は自動車や火力発電設備、鉄道車両、建設機械、OA機器、家電、産業用機械、生産設備など、さまざまな機械で使われています。軸受事業部では第一技術部と第二技術部の2つに分かれて製品開発を行っています。私たちが所属する第一技術部が開発しているのは自動車用途以外の軸受です。そして第二技術部が自動車向けの軸受を開発しています。自動車用途以外と言っても幅広い産業に軸受を提供しており、そんな中でも現在、私と内山さんは建設機械向けの軸受の開発に携わっています」(髙曽根さん)
第一技術部が担う業務は製品開発だけではありません。「技術サービスを提供していることも当社の強みなんです」と髙曽根さんは言います。
「例えば、お客さまが『今使っている軸受の寿命を延ばしたいんだけど、どうすればよいか』と営業に相談したとします。こういう技術的な問題が絡む相談には、営業担当者だけでは対応できません。そこで私たちが過去のデータを調べたり、これまでに蓄積された知見を駆使したり、お客さまの環境に合わせた試験を実施したりして、その困りごとを解決するような提案をまとめます。これが技術サービスです」(髙曽根さん)
「技術サービスは、製品を売る前も、売った後も行います。お客さまの課題を解決した提案が、次の製品開発に結び付くこともあります。技術サービスは営業をバックアップして売り上げにつなげることに加え、製品開発にもつながる非常に大切な業務なんです」(内山さん)
写真は軸受事業部 第一技術部の執務エリアです。このフロアには営業部や軸受の新しい材料の研究開発などを行っている研究開発部のデスクも並んでいます。
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軸受はさまざまな機械の部品として使われています。写真はオイレス工業が開発している主力製品の軸受です。水玉模様に見える部分には摩擦・摩耗が低減されるように固体潤滑剤が埋め込まれています。固体潤滑剤にも用途に応じて種類があり、例えば、中央の青い水玉模様の軸受は水力発電設備など海水中でも使用できるという製品で、耐食性、耐寒性にも優れており、マイナス40度など極低温の環境下でも使用できるそうです。
「青色を採用したのは、コーポレートカラーということもありますが、水中でも使えることが一目でわかるようにしているそうです。また、黒色の方は火力発電設備などでも使われる軸受です」(髙曽根さん)
現在、軸受はできるだけグリースなし(無給油)のものが求められる傾向にあるそうです。
「建設機械向けの軸受では、まだグリースなしのものは実現できていません。また業界問わずメンテナンスフリーに対するニーズも高いですね」(髙曽根さん)
「軽量化も求められていています。軸受を軽量化することで、機械を稼働させるエネルギーの低減化が図られるからです。環境に対するお客さまニーズは年々、高まっていますね」(内山さん)
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「軸受は機械の部品の一つですが、軸受の性能によって機械全体の性能が決まってしまうような重要な役割を担っています。また建設機械の軸受とひと口に言っても、お客さまの機械によって求められる要件は異なります。『お客さまが求める性能を満たしたり、お客さまの困りごとを解決するモノ作りをする』。これが、私たち開発者の大事なミッションなんです。その製品の性能を評価することに費やす時間も多いですね」(髙曽根さん)。
写真は摩擦や摩耗状況など、お客さまの要求を満たしているかどうかを調べるため、試験機に軸受をセッティングしているところです。
「これはスラスト試験機です。軸受に荷重をかけて回転させ、摩擦や摩耗具合について目標とする性能を満たしているか、評価します。このほかにも摩擦係数や耐摩耗性能を評価する試験には、ジャーナル試験機という試験機を用いることもあります。ジャーナル試験機では実際にブッシュ状(円筒形状)の軸受を回転軸に通して回転させ、摩擦係数や摩耗量を測定します」(内山さん)
試験にはそれなりの時間がかかると内山さんは言います。
「試験の中には、治具(じぐ:試験機に固定するための器具)の設計から取りかからなければならないこともあります。その場合は、治具の図面を描くところから始まり、図面ができれば治具に必要な部品の注文や加工などを行ってもらい、作業ができるように組み付けます。このようなところから携わることもあるので、実験には数十時間もかかることがあるんですよ」(内山さん)
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軸受の性能は回転軸の表面の滑らかさによって大きく変わります。そこで写真のような機械を使って、表面の粗さを測定します。
「この機械は表面粗さ測定機と言い、表面の微細な凹凸を測定することができます。例えば、予想していた性能が出なかったときは、必ずこの測定機を使って、回転軸および軸受の表面の粗さを測定します。新規開発で使うというよりは、お客さまの課題を解決する技術サービスの業務で使うことが多いですね」(髙曽根さん)
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執務エリアのデスクではメール処理などの事務作業のほか、試験や測定のデータを分析したり、お客さまに提出する資料をまとめたりします。
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「提案の中には、お客さまに採用されないものもあります。例えば、性能面で他社に負けてしまった場合は、その原因を徹底的に究明します」(髙曽根さん)
とはいえ、そう簡単に原因が見つかるものではありません。同じ部署の上司や先輩、同僚、さらに研究開発部のメンバーと議論し、徹底的に原因を究明して、次の製品開発へと生かしていきます。
写真は髙曽根さん(左)と内山さんが情報交換しているところ。
「部署内のコミュニケーションは活発です。上司もとても話しかけやすいので、仕事しやすいですね」(内山さん)
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テクニカルセンターの隣りにあるR&Dセンター内にはショールームがあり、そこでお客さま相手に説明をすることもあります。
「通常は営業がお客様の対応をするため、私たちがお客さまと直接かかわる機会はそう多くはありません。しかし、営業では答えられない技術的な質問が来た場合は、お客さまのもとへ出向き、商談に参加することもあります。また展示会に出展する際は、私たち技術部門のメンバーもブースに立ち、お客さまの技術的な質問に対応します」(髙曽根さん)
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ハタラクヒト 家族のような温かさ、人情味あふれるシゴトバ

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引き続き、髙曽根さんと内山さんに「オイレス工業 軸受事業部 第一技術部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

髙曽根さんは2012年3月に工学部材料物性工学科を卒業し、4月にオイレス工業に入社しました。
「大学で開催された説明会に参加するまで、実は軸受についてはまったく知りませんでした。しかし、その説明会で軸受がさまざまな機械に欠かせない部品であること、そしてより良い軸受を提供するために、耐摩耗性と低摩擦性というシンプルなことを徹底的に追究している会社の姿勢にひかれました。軸受ってカッコイイなと思ったのです」(髙曽根さん)
一方、髙曽根さんと同期の内山さんは理学部物理科学科を卒業。
「社会に貢献できるモノ作りの会社に就職したいと考えていました。リクナビでいろいろな会社を調べている中で、軸受に出合いました。軸受はいろんなところに使われています。さまざまな産業に向けに軸受を提供しているオイレス工業に行けば、自分の活躍の場も広がるのではと考えたのです。一部上場企業ながら、従業員は1000人程度とコンパクトなところも魅力に感じました。大企業だと埋もれてしまうのではという心配があったからです。また軸受の開発なら、学生時代に学んだという物理の知識も生かせると考えました」(内山さん)

 

入社後、一貫して自動車業界以外の産業に向けた軸受の開発および技術開発に携わってきた髙曽根さんと内山さん。仕事の面白さややりがいについて聞きました。
「お客さまからの困りごとを解決したときですね。満足された表情を見ると、どんなに苦労をしたとしても、本当に良かったと思います。自分の仕事がこんなふうにお客さまの役に立っているんだと実感できる瞬間です」(髙曽根さん)
「自分の考えたものが形になるときが、いちばん、やりがいを感じる瞬間です。当社では少数精鋭で開発を行っているので、任される範囲も多い。ですので自らが思いついたアイデアを実践させてもらえる環境なんです。そこは魅力ですね」(内山さん)

 

軸受事業部 第一技術部では機械系、材料系の学部出身者が多いと言います。
「軸受は機械を構成するうちの一つの部品なので、開発に携わりたいのなら機械の知識が必要です。そしてあればいいと思うのが、英語力。今後当社においてもグローバル化が加速していくと思われるからです」(内山さん)
「企画力も大事だと思います。第一技術部では営業はもちろん、研究開発や生産に携わる人たちと連携、協力して仕事を進めていきます。企画ができる人というのは、人を動かすことができる人だと思うんです。だから企画力があると、仕事がスムーズに進むのではと思います」(髙曽根さん)

 

最後にオイレス工業 軸受事業部 第一技術部の文化、風土についてたずねました。
「平均年齢は30歳ぐらいと若いシゴトバです。困っている人がいるとすぐに助けてくれるような、そんな温かい風土があります」(内山さん)
「ひと言で表すなら『家族』ですね(笑)。部長がお父さんで、先輩方はお兄ちゃんという雰囲気で、人情にあふれ、すごくまとまりのあるシゴトバです。風通しも良く、働きやすいと思います」(髙曽根さん)

おいしい・安い・おなかいっぱい、三拍子がそろった大人気食堂

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藤沢事業場の食堂です。安くておなかいっぱいになり、しかもおいしいので、ランチでは行列ができるほど、社員にも好評です。
「定食は日替わりでAとBの2種類あります。B定食はヘルシーさが売りで、200円台で食べられます。A定食はがっつり系で、こちらも300円台です。そのほか、麺類(日替わり)、カレーがあります。麺類はなんと150円。おいしいだけではなく懐への優しさも魅力です」(企画管理本部 人事部 担当者)

 

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2002年にR&Dセンターが完成した際に、寄贈されたモニュメントです。
「『創造への挑戦』という言葉が刻まれており、エンジニアには常に技術革新に情熱を持ち続けてほしいという偉大な先輩技術者からのメッセージです」(人事部 担当者)

 

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野球同好会もあります。この同好会は髙曽根さんが復活させたのだそうです。
「メンバーは30人ぐらいいます。OBの方たちにも協力してもらい、楽しく活動しています」(髙曽根さん)

 

オイレス工業にまつわる3つの数字

軸受、中でもオイルレス軸受の分野で強みを発揮し、国内市場をけん引しているオイレス工業。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!
1. 約17パーセント
2. 2318件
3. 2100ミリメートル

前回(Vol.150 国立研究開発法人 産業技術総合研究所)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史

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