理系のシゴトバ

Vol.153 株式会社東光高岳

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今回の訪問先 【東光高岳 蓮田事業所】
一部都市などでは、景観の向上や通行のしやすさなどの理由から、電線を地中に埋設するという無電柱化が進んでいますが、まだまだ私たちの周りには電柱が立っています。電柱の上部を見ると、いくつかの装置が付いています。それは変圧器や開閉器(電気回路の開閉に用いる装置)と呼ばれる電力機器です。このような電柱に取り付けられる機器のほか、発電所や変電所などの電力会社向けの電源・変電設備、工場やオフィスビル、マンションなどに設置される電力機器など、発電所から社会の隅々にまで至る電力流通システムをカバーする製品・サービスを提供しているのが東光高岳です。2012年に東光電気(1928年設立。当時の社名は東京電燈)と高岳製作所(1918年設立)が共同株式移転により東光高岳ホールディングスを設立。そして2014年4月に東光高岳ホールディングスが先の2社を吸収合併して事業会社化し、現在の東光高岳が誕生しました。東光高岳では変成器や開閉器などの電力機器のほか、その開発で培った知識、ノウハウを生かして、ビル全体のエネルギーの削減や再生エネルギーの活用を促す機器およびソリューション、さらには最先端光応用技術を用いた検査装置の開発なども手がけています。今回は東光高岳の開発拠点の一つ、蓮田事業所のシゴトバを訪れました。

 

ICTを組み合わせ、環境に優しいエネルギーソリューションを開発

東光高岳 蓮田事業所は埼玉県東部に位置する蓮田市郊外にあります。最寄り駅はJR東北本線(宇都宮線)の白岡駅。東京・上野駅から白岡駅まではJR東北本線で約40分。白岡駅から15分ほど歩けば、蓮田事業所の正門に着きます。
事業所周辺は工場が立ち並んでいますが、少し離れると首都圏のベッドタウンとして開発された新興の住宅地が広がっています。通勤手段は自由で、マイカー通勤の人もたくさんいるそうです。

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今回、紹介するのはエネルギーソリューション事業本部 ソリューション製造部 開発グループと技術開発本部技術研究所 材料技術グループのシゴトバです。前者のシゴトバを大澤岳士(たけし)さん、後者のシゴトバを小川賢治さんが案内してくれました。写真はソリューション製造部の執務スペース。同じフロアには小川さんの所属する技術研究所 材料技術グループの執務スペースもありました。執務スペースは見渡す限り壁はなく、オープンで明るい雰囲気です。
「私が所属するエネルギーソリューション事業本部 ソリューション製造部 開発グループは、ICT(情報通信技術)を生かして省エネルギーを行う事業を展開しています。例えば工場やビルなどの省エネルギー化や効率化を図ったりする仕組みや、実際にどのくらいのエネルギーを使っているかをPCやクラウドサーバーで収集してエネルギーを管理できるようにするための装置やシステムの開発を行っています」(大澤さん)

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写真は大澤さんたちのグループが開発しているソリューションの一例です。
「これは人検知センサを使用した制御システム『T-Zone Saver(※)』で、照明の照度や空調の強弱を制御するためのソリューションです。大成建設株式会社と共同開発しました」(大澤さん)
天井に組み込まれた「T-Zone Saver」が1.8メートル四方のゾーン単位で人がいるかどうかを検知し、照明や空調を賢く制御。それにより、大幅な省エネと快適な環境が同時に実現できるようになるというものです。
このほかにも一括受電マンション向け自動検針システムなどのソリューションも開発しているそうです。
「このソリューションは、スマートメーターの開発を行っている当社の関連会社、東光東芝メーターシステムズ株式会社と密接に連携して開発を行っています。このようにメーター会社と連携することで、より信頼性が高く安定したシステムを提供できることも当社の強みになっているんです」(大澤さん)

(※)「T-Zone Saver」は大成建設株式会社の登録商標です。

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デスクではエネルギーソリューションを実現するための機器、およびそれに組み込んだり制御したりするソフトの開発を行っています。写真は「T-Zone Saver」の構成要素の一つ、エリアコントローラの制御プログラムが、正しく動作するか確かめているところ。大澤さんが手に持っているのが、エリアコントローラです。これが照明につながり、消灯や点灯、さらにはその照度を何パーセントにするか自動で制御します。
「開発プロジェクトにおいては、お客さまのニーズを把握している営業を含めた関係者間で話し合いを行い、仕様を決めることから始まります。できあがった仕様書を基に必要な部品やプログラムを外部の専門メーカーに製作を依頼したり、自社でプログラムを書いたりします。そして一連のシステムの試作ができあがると、狙った機能がちゃんと出ているか試験を行います。このように私たち開発グループのメンバーは、仕様決めから製品化までの一連の流れに携わることになります。最初はプロジェクトの一プロセスを任されるだけですが、入社3年目の現在は、3~4件の製品化プロジェクトに携わって日々奮闘しています」(大澤さん)
開発グループではハード専門、ソフト専門というように、自分の専門分野を主に担当する人とハードとソフトの両方を担当する人がいるそうですが、大澤さんは後者を選択。ハードにもソフトにも等しく携わり、知識を高めているそうです。
「ソフトの開発とひと口に言っても、開発言語も複数あります。JavaやC、C#、さらにはScript系の言語など、OSや用途に合わせてさまざまな言語を使い分けて開発しています」(大澤さん)

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製品開発は、さまざまな部署の人とコミュニケーションをとりながら進めていきます。そのためミーティングの時間も多いそうです。
「例えば技術に関してわからないことがあると、先輩や上司に聞くことはもちろんですが、技術研究所のメンバーに相談したりもします。そのほかにも同じソリューション製造部の品質保証や設計グループのメンバー、さらには営業と打ち合わせするなど、コミュニケーションを取る場面は多いですね」(大澤さん)
写真は開発グループのメンバーと、既存ソリューションの改善について検討を行っているところです。

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固体絶縁モールド用のエポキシ樹脂を開発

次は小川さんにシゴトバを紹介してもらいました。
「技術研究所 材料技術グループは蓮田事業所だけではなく、小山事業所(栃木県小山市)にもあります。違いは対象としている製品や材料。ここ蓮田事業所では固体絶縁モールド(コイルや導体などを樹脂で一体成形したモノ)製品に使われるエポキシ樹脂の高機能化、高効率化、グリーン化(環境負荷の低減)などに関する研究開発を行っています。一方の小山事業所では変圧器や開閉器などを対象に、それらを高付加価値化するための電気材料に関する研究開発が行われています」(小川さん)
東光高岳の固体絶縁エポキシモールド製品の強みは、高い電圧クラスでも変電ができることだそうです。
「そのほかにも例えば屋外で使われるエポキシモールド製品についても、オンリーワンに近い技術を有しています。屋外で使われるモールド製品の代表例が、鉄道車両の上に搭載される接地形モールド変成器。屋外ということで紫外線による劣化や、車両の上に設置することによる振動など、屋内とは違う環境で使われます。そのような環境にも耐性を持つような樹脂を開発していくのが、私たちの仕事です」(小川さん)
エポキシ樹脂の開発といっても、合成をするなど、樹脂そのものを一から作るわけではないそうです。例えば発熱に耐えられる樹脂を作るのであれば、どのような樹脂を使うのか、どのくらい配合すれば求めている要件を満たすのか、その配合レシピ開発をするのだそうです。開発した樹脂のサンプルは、さまざまな装置を使って性能評価します。写真はガラス転移温度を測定し、耐熱性を評価しているところです。
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万能試験機を使って、どのくらいの外力に耐えられるか3点曲げ試験による評価を行っているところです。
「私たちが開発している電力用エポキシ樹脂は、絶縁性や耐熱性だけでなく、機械強度も必要となります。曲げ試験や引張試験などの機械強度の評価も行い、最適な材料の配合や成型プロセスの検討を行っています」(小川さん)
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経年劣化の評価も行います。促進耐候性試験機を使って紫外線で加速劣化させたサンプルの表面を写真のようなマイクロスコープを用いて観察します。
「劣化の様相を拡大観察するとともに、表面粗さや水の接触角(はっ水性の評価)などを測定することで劣化を定量的にとらえます。またその時の電気特性も取得し、樹脂の劣化と電気特性の関係性を研究しています」(小川さん)
小川さんの仕事はこのような樹脂の研究開発業務だけではありません。製造現場で何かわからないことが起こると、エポキシ樹脂の専門家として相談に乗ったりする場面も多いそうです。

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写真は東光高岳の主力製品の一つ、柱上用センサ内蔵自動開閉器です。これが電柱に設置され、電力会社と高圧需要家の責任を分解します。同製品は蓮田事業所で開発、製造されています。

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ハタラクヒト 部署間の隔たりがなく、コミュニケーションしやすいシゴトバ

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引き続き、大澤さん(写真左)と小川さんに東光高岳で働く魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

大澤さんは名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻を修了後、2014年に東光高岳に入社しました。
「学生時代は超伝導の研究に携わっていました。そこで培った電力に関する知識を生かせる会社に進みたいと思い、電気系の会社に絞って就職活動を行いました。東光高岳を選んだのは、研究室の先生がもともと統合前の高岳製作所と付き合いがあり、『良い会社だよ』と紹介していただいたから。それがきっかけとなり就職することになりました」(大澤さん)
一方の小川さんは中央大学大学院応用化学専攻を修了後、大澤さんと同年に入社。
「人の役に立つ仕事に就きたいと思っていました。そんなときに知ったのが統合前の東光電気でした。変成器や開閉器などは電力のインフラを支える機器です。その開発に携わるということは、まさしく人の役に立つ仕事。しかし化学出身の私が、この会社に入って役に立つことがあるのか、最初は疑問に思いました。しかしエポキシ樹脂を材料として使っており、ここでなら私の知識が生かせる場があると思い、就職を決めました」(小川さん)

 

東光高岳では電機メーカーではあるとはいえ、材料開発やICTを活用したソリューションの開発も行っているため、電気系はもちろん、化学系、情報系など、さまざまな理系学部・学科、専攻の出身者が働いているそうです。
「私の場合は、学生時代に学んだ化学に関する基礎知識は生かせていますが、仕事で使う多くの知識は、入社してから学んだものがほとんどです」(小川さん)
「大事なのは新しい技術を取り入れるためのスキルが身についているかどうかです」(大澤さん)

 

仕事のやりがいや楽しさについてうかがいました。
「省エネ分野では日々、技術が進化しています。そんな新しい技術に触れられることはこの仕事の楽しさの一つ。また私たちが開発した製品をお客さま先に取り付ける際に、同行することがあります。実際に現場で自分たちが開発した機器が動いている様を見ると、『やった』という達成感が得られます。しかしそこまで至るには、何度もお客さまと要望のすりあわせを行います。その工程がいちばん、大変かもしれません」(大澤さん)
「研究開発の仕事には正解はありません。どういうふうに進めるとゴールにたどりつけるのか、自分の考えで進めていかなければなりません。それがやりがいであり、楽しさですね。もちろんその分、アウトプットを出せないときは、本当に悩みます。上司や先輩に相談して、アウトプットを出せるように導いてもらったりします」(小川さん)

 

最後に東光高岳という会社の風土、文化について聞きました。
「上司や先輩とも仲が良く、気兼ねなく話せる雰囲気です。コミュニケーションがすごく活発なシゴトバです」(小川さん)
「部署間の隔たりがないので、連携が取りやすく仕事がしやすいですね。ほかの部署の人に聞きたいことがあれば、ふらっと行って聞いたりしています(笑)。そんな雰囲気のシゴトバです」(大澤さん)

 

メニューが豊富な食堂、クラブ活動も盛ん

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社員食堂はメニューの豊富さが自慢です。写真はある日の社員食堂のランチメニュー。
「定食A~Dの4種類が日替わりで用意されます。そのうちC定食は食改善定食といって、ローカロリーのメニューとなっています。定食はいずれも420円。定食のほかにも、カレー、ラーメン、パスタ(各350円)、うどんとそば(各250円)をラインナップしています」(労務人事部 人材開発グループ 中澤孝史さん)

 

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クラブ活動も盛んです。写真はフットサル部の練習シーン。
「最も積極的に活動しているのが、マラソン部。毎年冬に開催される埼玉県駅伝競走大会に出場しており、09年には7位入賞を果たしました。そのほかにも野球部、テニス部、ガーデニング部、つり部、山岳部など18団体が活動しています」(中澤さん)

 

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東光高岳が製造している製品・ソリューションを一堂に集め、紹介しているショールームもあります。

 

東光高岳にまつわる3つの数字

発電所や変電所などの電力会社向けの電源・変電設備、工場やオフィスビル、マンションなどに設置される開閉器や変成器などの電力機器の開発、製造を行っている東光高岳。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 500キロボルト

2. 99パーセント

3. 127日

前回(Vol.152 パナック株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美  撮影/臼田尚史

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