【重要】会員サービス終了のお知らせ
理系のシゴトバ

Vol.159 日本板硝子株式会社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【今回の訪問先】日本板硝子 建築ガラス事業部門 機能硝子部 新商品開発・評価グループ
紀元前1世紀の後半、エジプトで宙吹き(吹き竿に溶けたガラス種を巻き付け、中空で吹いて成形する技法)という製造法が発明されて以来、食器や保存器向けに、大量のガラスが生産されるようになりました。そんな二千余年前から存在していたガラスは、現在でも食器や住居やビル、車の窓ガラスなどの素材として使われており、私たちの日常生活になくてはならないものです。1918年の設立以来、そんなガラスという素材にこだわり、建築や自動車向け製品はもちろん、ディスプレーなどの高機能ガラス、さらにはハイテク素材として注目されているガラス繊維などの分野において、さまざまな製品を開発、提供しているのが、日本板硝子です。現在、日本板硝子グループは、世界最大級のガラスメーカーという地位を築いていますが、そのきっかけとなったのは、2006年に英国の大手ガラスメーカーであるピルキントン社を買収したことです。ピルキントン社は世界のガラス産業の核であり、高品質ガラス製造技術の世界標準であるフロート製法を開発した会社。この製法によって、今も建築用および自動車用の多くのガラスが生産されているのです。お客さまのニーズをいち早く捉え、より高機能で、高付加価値をもたらすガラスの開発にチャレンジしている日本板硝子。今回はそんな高機能ガラスの開発に取り組んでいる日本板硝子の千葉事業所にある 建築ガラス事業部門 機能硝子部 新商品開発・評価グループのシゴトバを訪れました。

 

機能ガラスの開発・評価をする仕事とは

建築ガラス事業部門 機能硝子部 新商品開発・評価グループのシゴトバは、千葉事業所(千葉県市原市姉崎海岸)内にあります。千葉事業所の最寄り駅はJR内房線の姉ケ崎駅。そこから車で10分ほど走ると、千葉事業所の正門に着きます。
千葉事業所は東京湾に面しており、いわゆる京葉工業地域の一角にあります。周囲には大きな工場が立ち並んでいますが、少し内陸の方に行くと、緑豊かなのどかな風景が広がっています。
駅からも歩けますが、20分と少し遠いため、多くの従業員がマイカーや自転車で通勤しているそうです。

photo1

 

建築ガラス事業部門 機能硝子部 新商品開発・評価グループのシゴトバを同グループ所属の小木曾(おぎそ)由美さんが紹介してくれました。
「建築ガラス事業部門 機能硝子部では、フロートライン(建築用および自動車用板ガラスの主流となっている製造方法)で作られた建築用の板ガラスに、合わせガラス(2枚以上のガラスを強じんな樹脂膜で接着して一体化したガラス)や複層ガラス(2枚のガラスの間にスペーサーという金属部材で中空層を設けたガラス)など、なんらかの二次加工を施したガラスを扱っています。その中で、私が所属する新商品開発・評価グループは、その名の通り新しい商品を開発したり、市場に出る前の性能評価を行っています」(小木曾さん)

機能ガラスの中でも最近、注目を集めているのが真空ガラスだそうです。真空ガラスは今から約20年前に日本板硝子とシドニー大学が提携し、商品開発された複層ガラス。真空は熱を伝えないという科学原理を生かし、2枚のガラスの間に真空層を設けることで高い断熱性能を有することができます。日本板硝子では「スペーシア」という商品名で販売されています。
「現在、私が主に担当しているのが真空ガラス。開発された新しい真空ガラスの耐久性を評価したり、また新たな真空ガラスを作るための材料を評価したり、真空ガラスに関する海外メーカーの特許の調査および自社特許の管理をしたり、営業や製造から頼まれて調べ物をしたりするなど、真空ガラスに関するさまざまな業務を担当しています。数ある仕事の中で、現在メインで従事しているのが、ISO(国際標準化機構)の仕事。ISOでは真空ガラスに関する国際標準を作ることを行っており、私はそのメンバーの一人として携わっています」(小木曾さん)

2016年5月に、真空ガラスとは何かという定義づけから、構成部品の説明、寸法公差(表示された寸法に対して許される誤差の範囲)、ガラスの性能の測定方法および耐候性評価などの国際標準の内容がほぼ合意に至り、16年11月からは強度評価の議論に入るところとのこと。自席では測定結果を検討したり、ISOの会議用の資料をまとめたり、海外のメンバーとメールや電話でやり取りしたりしています。

photo2

 

特に欧州では真空ガラスに対する期待が高いと小木曾さんは語ります。
「発売時から省エネ大賞を受賞し、注目を浴びていたスペーシア。ただ当初は市場の求める断熱性のニーズとしては少しオーバースペック気味だったかもしれません。というのも日本の断熱性の基準は世界においては遅れているからです。一方欧州では高い断熱性が求められています。3枚ガラスを使った複層ガラスも欧州では一般的になってきています。近年では日本でも断熱性能の市場ニーズは高まってきており、政府の断熱改修への補助金事業の推進もあって、真空ガラスへの注目はますます高まってきています。真空ガラスと複層ガラスを組み合わせた真空複層ガラスもハウスメーカーに標準採用されるようになってきました」(小木曾さん)

真空ガラスを採用すると、冬は暖房負荷を軽減し、夏は日射熱を反射します。つまり冬は暖かく、夏は涼しい環境を作り出すということ。近年、真空ガラスは、エコを意識したさまざまな住宅や建築物に採用されています。

photo3

 

できあがった機能ガラスが、求められた性能を発揮しているか評価装置を使って試験を行います。写真は熱貫流率を測定するための装置に試料をセットしているところです。
「熱貫流率とは熱の伝えやすさを表した数値で、ガラスの性能はこの熱貫流率で測られます。熱貫流率は小さいほど断熱効果が高くなります」(小木曾さん)

photo4

 

写真は真空ガラス「スペーシア」のサンプルをチェックしているところ。
「真空ガラスという基本技術を用いて、さまざまな商品開発を行っています。例えばより断熱性を向上させたり、強い日差しを和らげる機能を強化したり。またコスト削減を図るため、材料検討を行ったりもしています。サンプルが上がってくると、評価装置で性能評価するだけではなく、このように手に取って確認することも行います」(小木曾さん)

photo5

 

グループ内で情報を共有するためのミーティングでのひとコマ。スクリーンにプレゼンテーションを映してメンバーに説明をしているところです。
「現在、ISOの規格作りは第2段階に入る準備をしています。第2段階では機械的強度の測定方法などを検討しています。ISOでの話し合いがどこまで進んでいるのかなどを含めた、携わっている仕事の進捗報告をするとともに、真空ガラスの機械的強度を測定するためにどういう試験を行えばよいのか、どんな結果を求めればよいのか、このような場でグループのメンバーから意見を出してもらったりしています」(小木曾さん)

photo6

 

真空ガラスの国際標準を策定するため、ISOの国際会議にも出席します。写真は15年に京都で行われたISOの会議での様子です。
「年に数回、世界数十カ国から代表が集まり、真空ガラスの国際標準に関する会議を行っています。日本工業標準調査会(JIS)の代表として、私たち日本板硝子のメンバーが会議に参加するんです。次はイタリア・ローマで16年11月に開催されます。もちろん私も出席します」(小木曾さん)

photo7

 

ハタラクヒト 結婚・出産後の女性も活躍しているシゴトバ

photo8

引き続き小木曾さんに日本板硝子で働く魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

小木曾さんは06年3月に大阪大学大学院工学研究科マテリアル応用工学専攻を修了し、同年4月に日本板硝子に入社しました。
「ガラスという素材は、古くなっても溶かせばまた同じガラスを作製できます。そのリサイクル性の高さ、市場の循環性の高さに面白みを感じたのです。また、私は結婚・出産をしてもずっと仕事を続けたいと考えていたので、将来子どもから、『どんな仕事をしているの』と聞かれたときに、説明しやすいような身近な製品に使われている素材がよいと思いました。ガラスなら、窓ガラスをはじめ、身近なところに使われています。これらの理由から、ガラスに携わってみたいと思いました。ガラスメーカーの中で日本板硝子を選んだのは、真空ガラスという技術にひかれたからです」

 

入社して4年間は兵庫県伊丹市にある技術研究所でガラスの表面処理に関する研究開発に従事。09年に現在の部署に異動。その後、結婚、2度の出産を経験して、15年より本格的に真空ガラスの国際標準づくりを担当することになりました。
「私は考えることが大好きなので、今の仕事は面白いですね。というのも、国際標準づくりは一筋縄ではいきません。どんな規格が求められているのか、国によっても違うからです。世界にはどんな課題があって、どう解決していくのがよいのか。課題を満たすには、どんな測定方法を使えばよいのか。そんな新しいこと、わからないことを考えていくのは本当に楽しいことですね。ガラスの評価は10年~20年という長い期間をかけて行われていきます。それだけに大変ですが、やりがいは大きいですね」

 

一方、今、仕事上で最も苦労しているのは英語だと小木曾さんは言います。
「ISOの国際標準づくりに携わっているため、どうしても英語を使う機会が多いのです。英語はそんなに苦手ということではありませんでしたが、最初はメールを書くのも緊張しましたね。辞書で調べた通りの言い回しを使っても通じるのかなど、英語の論文で確認したり、上司のメールを参考にしたりして、今も勉強しています。学生時代にもっと勉強していればよかったとちょっと後悔しています(笑)」

 

小木曾さんは材料系の出身ですが、周囲には機械系をはじめ、化学系や建築系などさまざまな出身専攻の人が働いていると言います。
「仕事で使う知識の多くは、会社に入ってから身につけていくものです。新しいことを自ら提案していけるような人がメンバーになってくれればいいですね」

 

最後に日本板硝子という会社の風土や文化について尋ねました。
「当社は1918年に設立された歴史ある会社です。昔ながらのおだやかな雰囲気があり、親切な人が多いのが特徴です。女性も活躍しています。現在、私には2歳と5歳の二人の子どもがいますが、皆さん協力的ですごく働きやすい環境です」

 

サッカーや野球などの活動で、リフレッシュ

photo9

日本板硝子ではクラブ活動も盛んに行われています。
「好きな人たちが集まって部を作り、活動を行っています。千葉事業所ではサッカーやテニス、野球などの部活動が行われています。最近は自転車部もできました。私も以前はテニス部に所属し、部活動を楽しんでいました」(小木曾さん)
写真はサッカー部の活動の様子です。

 

photo10
こちらは野球部の活動の様子。野球場を借りて、練習試合を行っているところです。

 

日本板硝子にまつわる3つの数字

1918年の設立以来、建築用や自動車向けに機能性ガラスを提供している日本板硝子。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次の記事で!

1. 0.2

2. 4

3. 130

前回(Vol.158 クボタ株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美  撮影/臼田尚史

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
10分トレーニング:みんなの回答をチェック! ▼
1年生も、もちろん!
大学生・院生・短大生・専門学校生になったら!

リクナビで詳しく見てみよう!

この企業についてリクナビで研究する