理系のシゴトバ

Vol.160 パナソニック ヘルスケア株式会社

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【今回の訪問先】パナソニック ヘルスケア バイオメディカ事業部 培養・実験環境機器技術部 培養機器設計課
医療や創薬など「研究・医療支援機器」の分野では、さまざまな機器が使われています。研究所では細菌や細胞を培養したり保存したりする機器、実験作業に携わる人と周辺環境および試料を保護し、良好な操作環境を提供する実験環境機器や滅菌・乾燥機器、さらに病院では電子カルテシステムや調剤機器、病棟や介護施設で使われるフードケータリング機器などはその一例です。このような研究から診断、治療に至る幅広いヘルスケアの領域で必要となる機器の開発、提供を行っているのがパナソニック ヘルスケアです。パナソニック ヘルスケアのルーツは1949年、四国の地で事業を開始したことです。69年に松下寿電子工業として発足し、ビデオデッキやビデオムービーなどの映像機器や、パソコン用のハードディスクドライブ、光ディスクドライブといった情報機器などの製品を生み出してきました。そして1991年、当時主流であった光学式に対して使いやすさを大幅に向上させた電極式血糖値測定システムから、医療機器分野を主力事業として手がけるようになりました。10年には現在の社名に変更、12年に三洋電機株式会社の事業部門と統合。現在は「体外診断機器」「医療IT」「研究・医療支援機器」の3つの事業をコアとして、付加価値の高い製品の開発、提供を行っています。同社が手がけるさまざまな製品の中でも、保存機器、培養機器(CO2インキュベーター)は国内外でトップクラスのシェアを有するまでに成長しています。今回はパナソニック ヘルスケア バイオメディカ事業部のシゴトバを訪れました。

 

細胞の研究に欠かせない培養装置を開発

パナソニック ヘルスケア バイオメディカ事業部のシゴトバは群馬県邑楽(おうら)郡大泉町にあります。大泉町は群馬県の東南に位置し、南は利根川をはさんで埼玉県熊谷市に隣接しています。最寄り駅は東武小泉線の西小泉駅。同駅から群馬地区事業所の入り口まで徒歩で25分ほどかかるため、車で通勤する人が多いそうです。また社用バスはJR熊谷駅から出ており、通勤時以外にも運行していることから、出張や外出の際にも使われているそうです。
約96万平方メートル(東京ドーム約20個分)という群馬地区の広大な敷地には、パナソニック ヘルスケアのほか、さまざまなパナソニックグループ会社が開発・製造拠点を構えています。
パナソニック ヘルスケアの組織のうち、ここ群馬地区に事業拠点を設けているのはバイオメディカ事業部とメディコム事業部の2事業部。バイオメディカ事業部は保存機器や培養機器、薬局関連機器などの「研究・医療支援機器」、メディコム事業部では電子カルテシステムなどの「医療IT」を手がけています。

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バイオメディカ事業部 培養・実験環境機器技術部 培養機器設計課のシゴトバを同部同課に所属する馬場愛美(まなみ)さんが紹介してくれました。
「私が所属する培養・実験環境機器技術部 培養機器設計課は、その名の通り、培養機器(CO2インキュベーター)の設計・開発を行っている部署です。CO2インキュベーターとは、温度や湿度、二酸化炭素濃度を制御し、人や動物の細胞の培養を行うために用いられる装置です(中には酸素濃度を制御できるモデルもあり)。当社のCO2インキュベーターは国内外でトップクラスの市場シェアを獲得しています。私たちが開発するCO2インキュベーターの特徴は、棚受けをなくした内箱一体式を採用することで、内装部品点数を大幅に削減しているところ。これにより器内の清掃時間を大幅に削減できるようにしました。また他社ではなかなか採用していない過酸化水素で器内を除染するモデルを用意しています。これらの理由により、お客さまからの支持につながっているのだと思います」(馬場さん)

 

写真はインキュベーターの器内。ここに培養したい細胞を入れて、外扉に用意されているタッチパネルで条件を入力し、集中管理します。もちろん、培養している間、誰もが容易に触れないよう外扉をロックし、パネルの操作を制限するセキュリティ機能も付けられています。
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パナソニック ヘルスケアのもう一つの主力製品、超低温フリーザーです。再生医療や遺伝子の研究などで使われる試料の保存などに使われる冷凍庫です。冷却性能はマイナス150度。写真のような縦型のモデルだけではなく、横型のモデル、環境配慮型モデル(ノンフロン)など、お客さまのニーズに合わせて選択できるように、さまざまなモデルをラインナップしています。
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「CO2インキュベーターの設計・開発という仕事の中でも、これまで私が主に担当していたのが性能評価と、インキュベーターを構成している部品やオプション品の設計でした。そして今、取りかかっているのが、新製品の構造設計です。これまでの部品の設計に加えて、各部品を配置し、製品全体の形を設計していきます。使い勝手の良さなどはもちろん、組み立てのしやすさなども考慮しなければなりません。開発スケジュールなどの大まかな流れは先輩のサポートを受けますが、メインで構造設計を担当するのは今回が初めて。2年後ぐらいに市場に出すことを目標に、ワクワクしながら取り組んでいます」(馬場さん)

 

デスクで3次元CADを用い設計を行っているところ。2台のモニターが用意されており、画面が広く使え、設計しやすい環境が整っていました。
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馬場さんが主に性能評価を行うのは、製品になる前の試作品。試作品ができれば実験室で性能評価を行い、それを何度も繰り返して製品が完成していきます。
「性能評価とひと口で言ってもさまざまな評価項目があります。器内の温度や湿度、二酸化炭素の濃度が一様に保たれているかチェックすることに加え、強度、使い勝手なども評価します」(馬場さん)

 

下の写真は器内温度を測定するセンサーの取り付けが完了し、インキュベーターの裏側のフタをドライバーで締めているところ。
「途中でセンサーの動きがおかしくなったり、組み方がよくなかったりしたときなども、ドライバーを使って外装を外してチェックします」(馬場さん)
試作品の評価に加え、営業担当者から依頼された現行品の性能評価を行うこともあるそうです。
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写真は器内に温度を測定するセンサーを複数設置し、器内の温度が一様に保たれているか評価するための、操作を行っているところ。
「5~6時間はインキュベーターを実際に動かしてデータを取ります」(馬場さん)
取得したデータは、SDカードに保存して自席に持ち帰り、正しく動作しているか検証します。
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製造現場に足を運ぶこともあります。
「製造の最終工程では全数検査(製品をすべて検査すること)を行っています。そこでまれに不具合が見つかることもあり、製造現場の担当者と一緒に解決策を検討する場合もあります」(馬場さん)

 

写真は製造現場の担当者に組み立ての仕様の変更点について相談しているところです。
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インキュベーターの製造ラインの様子。このように製造現場では1台ずつ、部品を組み立てていくことで、製品ができ上がっていきます。
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バイオメディカ事業部の事業所棟の1階には、ショールームも用意されています。
「バイオメディカ事業部で開発している主な製品が展示されています。お客さまが来たときは、営業担当者ではなく、私たち技術者が製品の説明をします。お客さまがどんなインキュベーターを求めているか、ニーズをつかむため、営業担当者と同行してお客さま先にうかがったりすることもあるんですよ」(馬場さん)

 

写真はショールームでバイオメディカ事業部 事業企画部に所属する同僚と話をしているところです。
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ハタラクヒト 年齢、性差に関係なくのびのびと活躍できる

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引き続き馬場さんにパナソニック ヘルスケアで働く魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

馬場さんは2014年に静岡大学大学院工学研究科機械工学専攻を修了し、パナソニック ヘルスケアに入社しました。
「母が医療事務に従事していたことから、私も医療にかかわる分野で働き、多くの人を笑顔にしたいと思いました。そこで大学時代に学んだ機械工学の知識を生かせる、医療機器メーカーを中心に就職活動を行いました。当社を選んだのは、インキュベーターの分野において国内外で高いシェアを獲得していたからです。ここで製品開発に携わることで、世界中の人の役に立てると考えました」

 

入社後、現在の部署に配属され、CO2インキュベーターの設計、評価に携わってきました。
「最もやりがいを感じる瞬間は、試行錯誤してできたモノが製品として発売され、その評価を聞いた時です。良い評価をしていただいた時は、お客さまの役に立てたことを素直に実感できます。また『この方が良かった』など、要望や改善点を頂いた時は、その製品の改良版や次の製品で、どのように要望に応えていくか、どうしたら満足していただけるかを考えることも、この仕事の面白さのひとつです」

 

その一例として馬場さんが紹介してくれたのが、入社して初めて携わったCO2インキュベーター「MCO-230AIC」という製品のこと。同製品では、過酸化水素水除染後に棚の滑りが悪くなるという問題を抱えていました。その製品の性能評価を担当していた馬場さんは、これまでどのようなことを試してきたのか先輩から教わり、それらの方法以外で改善できる方法があるのかを検討したそうです。
「棚の後ろ角に紙のテープを貼ると、ある程度改善することを発見し、上司に提案しました。そしてその案が採用され、現在はさらに滑りやすいフッ素テープを貼る仕様となっています。それに伴い、特許も出願しました。入社して間もない若手社員の意見でも採用してくれる風土も、やりがいにつながっています」

 

製品開発の仕事はやりがいがたくさんある一方で、苦労することもたくさんあります。
「一番大変だったのが、通常なら1カ月ぐらいかけて行う性能評価をより短い時間で行わなければならなかったことです。いかに無駄なく、効率よく評価を進め、予定に間に合わせるか検討しました。何事もなく終わればよいのですが、そうはいきません。課題点が出たら、その対策をして再テストを繰り返していく必要もあります。その都度、スケジュールを立て直し、なんとか間に合わせることができました」

 

馬場さんは機械工学の出身ですが、周りには情報系や光学系、農学系専攻の出身者もいるそうです。
「学生時代に学んだことで今の仕事に役立っているのは、3次元CADを使った設計の知識があったことと、工学全般の知識です。それ以外に欠かせないのが培養の知識。それがなければ、お客さまがどのように使うのかわからないからです。私は培養の知識がまったくなかったので、配属されてから専門書を読んだり、先輩に教えていただいたりして身につけていきました。あと最近、必要と感じているのが英語力。私たちの製品はワールドワイドで販売されているため、海外のお客さまもいます。今はまだ海外のお客さまを担当したことはありませんが、将来に備え、身につけたいと思っています」

 

最後にパナソニック ヘルスケアという会社の風土や文化についてたずねました。
「男性が多いため、一見すると堅苦しい印象を受けるかもしれません。ですが、『わたしたちは、たゆみない努力で健康を願うすべての人々に新しい価値を創造し、豊かな社会作りに貢献します』という経営理念、『個の尊重とチームワーク、チャレンジ精神、高い倫理観』という価値観の浸透により、年齢、性差に関係なく誰もがのびのびと活躍できるシゴトバとなっています。働きやすいですね」

 

 

非日常を味わえるイベントでリフレッシュ

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毎年、クリスマスシーズンには、群馬地区ではクリスマスパーティーが開催されています。
「社員食堂に、バイオメディカ事業部とメディコム事業部の社員が一堂に会して行うイベントです。この時はサプライズで、事業部長にサンタクロースの格好に扮してもらいました(笑)」(馬場さん)

 

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大泉町では毎年、7月の第4土曜日、日曜日には「大泉まつり」を開催しています。同祭りは郷土産業の発展と町民の触れ合いおよび近隣市町との親善交流など、住民総参加の一大レクリエーション。パナソニック ヘルスケアの社員も積極的に参加しています。写真の神輿(みこし)の上に乗っているのは、同社の女性社員です。

 

パナソニック ヘルスケアにまつわる3つの数字

「体外診断機器」「医療IT」「研究・医療支援機器」の3事業をコアとし、グローバルに製品の開発・提供を行っているパナソニック ヘルスケア。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 125カ国

2. 1966年

3. 1972年

前回(Vol.159 日本板硝子株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美  撮影/臼田尚史

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