企業TOPが語る「仕事とは?」

Vol.32 佐川急便株式会社

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1956年生まれ。明治学院大学経済学部卒業後、82年に東京佐川急便にセールスドライバーとして入社。2000年に佐川急便本社営業部部長、02年に執行役員 九州支社長、08年に取締役執行役員となる。09年に佐川グローバルロジスティクス代表取締役社長、12年にSGホールディングス執行役員 兼 佐川急便専務取締役 兼 佐川引越センター取締役を経て、13年2月よりSGホールディングス執行役員 兼 佐川急便代表取締役社長(現在)。

ドライバーの仕事に小さな喜びを見いだし、毎日を楽しんだ

私は中途入社ですが、入社の動機の1つは、ここで働いていた知人から「個人の裁量で営業活動ができる、比較的自由に働ける」と聞いたことです。今の当社の言葉でいえば、「セールスドライバーはエリアの社長である」ということですね。もう1つはやはりお金ですかね(笑)。お正月を目前に、お金がないのも寂しいので「ちょっと働いてみようかな」という軽い気持ちで、10月に入社しました。

 

当時は3日間の研修があり、その後すぐにセールスドライバーとしての仕事が始まりました。私が担当したのは、千代田区岩本町エリア。「仕事はきつい」と聞かされていましたが、学生時代も朝早くから夜遅くまでアルバイトをしていたので、私の中では想定の範囲内でした。それよりも、一日の仕事の時間配分やお客さまとの折衝など、すべて自分の責任で進められることがうれしく、収入面でも満足していました。

 

アルバイトはかなりやりました。高校時代は日雇いの肉体労働をしていましたし、大学時代は、朝は測量の仕事を手伝い、昼間はジーンズショップ、夜は飲食店に勤めていました。学費を稼ぐためだったのですが、振り返ってみると当時から「どうやったらこの仕事を早く終えられるか」「もっとジーンズが売れる方法はないか」ということを常に考えていましたし、同じ店に長く勤めていたので、店長並みの仕事を任せてもらいました。そういう意味では、アルバイト経験が社会に出てからも随分役立ちましたね。

 

セールスドライバーは、毎日2トントラックに荷物を積んでいきますが、最後にお預かりした荷物が荷台の観音扉にパズルのようにピタリと収まるのが、私にとっては何よりの快感でした。荷物が300個の日も400個の日も、毎日ピタリと収まるんです。また、毎日1分と違わない同じ時間に集荷に行くことがカッコよく思えて、「佐川急便が来たから17時だな」と、お客さまにとって私が生活や仕事の一部のように思ってもらうことにも喜びを感じていました。ほかにも、同業他社より少しでも早く配達する、荷物が多い日も少ない日も同じ時間に集荷を終える、お客さまとの会話を楽しむ、誰よりも早く出社するなど、毎日の仕事の中で自ら目標や小さな喜びを見いだし、楽しんでいたんです。このときに、ドライバーの仕事を「ただの集荷と配達」と捉えていたら、つらかったかもしれません。

 

ドライバーとしての業務は2年程度と比較的短く、その後は主任を1年、係長を1年経験して、課長に昇進しました。当時の主任は、4、5人で構成される1つの班を任され、休みなどでスタッフがいなければドライバーとなってそのルートをカバーしたり、新人を教育したりすることが主な仕事でした。

 

係長になるとトラックに乗ることは少なくなり、4つか5つの班を統括し、ドライバーでは管理しきれない大口顧客のフォローや、ドライバーが出た後の営業所内の事務処理などを行っていました。このころから、顧客の未収管理も含めた売り上げ管理なども行うようになりました。

 

課長になったときに、ある人から「管理職の仕事とは何か?」と聞かれ、作業のことばかりを語っていた私に、その人は「管理職とは、24時間常に考えることだ」と教えてくれました。頭の片隅でずっと考え続けていると、日常の中からでも仕事に関係するヒントは必ず出てくるものです。以来、その教えを実践してきましたし、従業員にも同じことを求めています。

 

もう1つ、従業員には読書をするよう促しています。なぜなら、われわれはお客さまのために、常に改善意識を持たなければなりません。ところが、改善策というのは自分の経験値でしか図れないことが多く、経験を積むには時間がかかります。そこで、書籍などから過去の成功事例や失敗を学び、自分の業務に照らして考え、解決の糸口を見つけてほしいのです。それに企業人として、たくさん本を読んで自分の引き出しを増やすことは重要ですから。

 

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今や物流は企業の生命線とも言える重要な役割を担っている

学生の皆さんには、ドライバーで入社して社長になることなど想像ができないと思います。私自身もまったく想像していませんでしたし、店長でさえ目指したことがありませんでしたから(笑)。ですが、以前の社長も現在のSGホールディングス代表取締役会長 兼 社長の栗和田も、ドライバーからスタートしています。ですから、これから当社に入社する方も、最初はドライバーから始まるのだと思ってください。

 

そして、与えられた状況の中で常に最大限の力を尽くすこと。いつも頑張っている姿を人は見ていて、何かのチャンスのときに引き上げてくれるものです。私の場合は、営業として着実に目の前の仕事をしていくうちに課長に昇進し、7年ほど課長をした後に城西店の店長となり、そして2000年に営業部長となりました。

 

物流に対する見方が変わったのは、09年に佐川グローバルロジスティクスの代表取締役社長となったときです。それまでは国内の宅配便事業の問題ばかりに取り組んできましたから、このときに初めて、お客さまが海外での物流にも困っているという現実を知りました。

 

お客さまは、海外からの調達から国内の配達までを一括で任せたいと考えているのに、それができないために、海外はここ、通関はここ、船はここ、倉庫はここというふうに、大変な思いをして個別に手配していらっしゃる。当社なら、丸ごとお請けすることができるわけです。それまで、日本国内に入ってきた荷物のことしか見ていなかった私は、「物流はここから始まっているのだ」という当たり前のことに、あらためて気づかされたのです。

 

私がドライバーだったころの物流の問題は、「遠方なんだけど、この荷物を明日の午前中に届けてもらえる?」「今日は、遅い時間に集荷に来てくれる?」など、ドライバーが現場で解決できることがほとんどでした。ところが、現在の物流は企業の生命線ともいえるほど重要な役割を担っています。そうなると、当然ドライバーだけでは解決できない問題も増えてきます。

 

とはいえ、お客さまの方からドライバーに「こういうことをできる?」と相談してくださることは滅多にありません。やはり、ドライバーの方からお客さまが抱えている物流の問題点やニーズに気づいていかなければなりません。そのためには、アンテナを常に高く張り、お客さまの荷物はどこで作られて運ばれて来ているのか、原料をどこから調達しているのか、どれぐらい生産しているのかといった情報を吸い上げるセンスや勉強が必要です。そして、吸い上げた情報をグループ全体で共有し、グループとして解決策を提案していかなければ、お客さまは佐川急便に振り向いてくださらないと思っています。

 

この会社に入って仕事でつらいと思ったことはありませんでしたが、苦労したのは英語です。ドライバーとして入社したときは、英語が必要になるとは夢にも思いませんでしたが、佐川グローバルロジスティクスの代表取締役社長となり、非英語圏であっても多くの企業のトップは英語が話せるのを見て、「せめて英語ぐらいは話せたら」と思いました。

 

ですから学生の皆さんには、英語とできれば中国語でコミュニケーションがとれるぐらいの語学力を身につけ、インターネットで積極的に海外の情報を収集するなどして国際感覚を養っておくことをお勧めします。そして、もう1つ社会に出て必要になるのは、コミュニケーション力です。人と接する仕事には、会話が欠かせません。ですから、アルバイトなどを通じてコミュニケーション力を磨いておくといいですね。

 

佐川急便の仕事は、配達して集荷するだけではありません。その先には、幅広いジャンルの仕事が広がっているのです。佐川急便に入社したからといって、ずっと佐川急便で働くわけではなく、営業の現場で経験を積んで店長や管理部門へ進む道もあれば、公募制度を利用して海外やグループ企業で頑張る道もある。全員にいろいろなチャンスがあるのです。その意味では、免許があればよかっただけのわれわれの時代よりも、ずっと働きがいがあると思います。

 

新人時代

会社の近くに住んで、朝早くから夜遅くまで働いていましたが、ドライバーになって5カ月目で担当ルートのお客さまと結婚しました。それが現在の妻です(笑)。当社は荷物を配送先ごとに店番(店の番号)で管理しているので、店番を書けないと仕事が終わりません。そこで、全国約300の店番を単語帳に書いて、仕事の合間に必死で暗記。店番を覚えていないスタッフを手伝って、随分感謝されました。

プライベート

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昔はスキーやダイビングもしましたが、現在の趣味はゴルフ。お客さまとの付き合いで20年ほど前に始め、日曜は毎週のようにコースに出ています。妻も10年ほど前に始めたので、半分は妻と一緒にラウンドしています。日課にしているのはウォーキング。朝は頭が冴えるので、仕事のことを考えながら歩いています。毎朝1時間ほど歩いてから朝食を済ませ、従業員が出勤する前には出社しています。写真は、城西店時代に会社のメンバーと行ったスキーツアー(前列の左から3人目)。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/臼田尚史

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