人材サービス編・2014年【業界トレンド】

海外で活躍する日本企業を支援するため、グローバル化を図る企業が増えつつある

人材サービス業界は、企業に人材を派遣する「人材派遣サービス」、人材を求める企業と転職・再就職を希望する人を引き合わせる「人材紹介サービス」、企業からまとまった仕事を請け負う「業務請負・アウトソーシング」の3つに大別できる。この中で最も市場規模が大きいのが「人材派遣サービス」。事務作業が主体の「一般事務派遣」、IT・電子機器・化学業界などに人材を送り込む「技術者派遣」、工場の生産ラインなどが対象の「製造派遣」、物流や引っ越し業界、各種イベントなどにかかわる「軽作業派遣」など、さまざまな分野に人材を供給している。 また、求人関連の広告を専門に取り扱う企業も、人材サービスに含まれる。リクルートホールディングス、テンプホールディングス、パソナグループなどが国内企業の代表格。また、アデコ(スイス)、マンパワー(米国)、ランスタッド(オランダ)などの外資系企業も、日本に進出してシェア拡大を目指している。

厚生労働省が2013年12月に発表した「平成23年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、11年度の派遣労働者数は261.5万人。ピーク時の08年度(398.9万人)に比べると、3分の2ほどに縮小した。また、11年の市場規模(労働者派遣事業にかかわる売上高)は5兆2512億円で、こちらも08年度(7兆7892億円)の3分の2程度となっている(下表参照)。

市場規模が急激に縮小したのは、08年のリーマン・ショックに端を発した不況の影響だ。この業界は、人手不足になる好況期と人材ニーズが激減する不況期とで、業績が大きく変化する。そのため下表で示したように、派遣労働者数・市場規模ともに3年連続で減少。しかし、12年末以降の景気回復により、各社の業績には明るさが戻ってきた。中でも技術者派遣、製造派遣の分野では回復傾向が見え始めている。ただし、景気の動向と政府の規制強化に影響を受けやすい業界特性があるため、消費増税後の景気と、規制強化の動向には注意を払う必要があるだろう。

こうした中、各社は他社との統合・再編を進めることで経営力強化を目指している。例えばテンプホールディングスは、13年4月、人材紹介分野に強みを持つインテリジェンスホールディングスを買収。このように、企業規模を拡大して体力強化を目指す企業は、今後も現れるだろう。

特定の業界に絞り、きめ細やかな人材サービスを提供する取り組みも活発だ。パソナグループが手がけている、農業を担う人材の確保・育成を目指した人材サービス「パソナ農援隊」や、リクルートホールディングス傘下のリクルートジョブズが展開する新規就農希望者向けイベント「新・農業人フェア」のように、農業に関連した動きが目立つ。また、団塊世代(1947~49年に生まれた人々)の大量退職を受け、中高年層に活躍の機会を提供しようとする試みも盛んになっている。

そして今、最も急がれているのがグローバル化への対応である。日本企業の海外展開を支援するためには、海外で活躍できる人材を発掘し、適切な企業に紹介するサービスが不可欠だからだ。例えば、テンプグループ傘下で再就職支援・キャリア研修を手がけるテンプスタッフキャリアコンサルティングは、12年4月に中国向けの職業紹介サービスを開始。リクルートホールディングスは13年8月、インドの大手人材紹介会社を子会社化している。従来は国内市場だけで完結することの多かった人材サービス業界だが、今後は海外を舞台に仕事をする機会が格段に増えそうだ。

押さえておこう <人材サービス業界へのニーズには回復の兆しが>

2007年度
派遣労働者数……381.2万人(対前年度比18.7パーセント増)
市場規模……6兆4652億円(対前年度比19.3パーセント増)
2008年度
派遣労働者数……398.9万人(対前年度比4.6パーセント増)
市場規模……7兆7892億円(対前年度比20.5パーセント増)
2009年度
派遣労働者数……302.0万人(対前年度比24.3パーセント減)
市場規模……6兆3055億円(対前年度比19.0パーセント減)
2010年度
派遣労働者数……271.4万人(対前年度比10.1パーセント減)
市場規模……5兆3468億円(対前年度比15.2パーセント減)
2011年度
派遣労働者数……261.5万人(対前年度比3.6パーセント減)
市場規模……5兆2512億円(対前年度比1.8パーセント減)

※厚生労働省「平成23年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」より。09年以降、3年連続で冷え込んでいた市場だが、12年以降は好転の兆しが見え始めている。

このニュースだけは要チェック <労働者派遣制度の動向に注目しよう>

・厚生労働省が労働者派遣制度の見直し案をまとめた。現状、一つの業務につき最長で3年と定められている派遣期間が、条件を満たせば無期限にできるなどの改定がなされる。14年の通常国会に提出され、施行は15年4月の見通し。施行されれば、業界にも大きな影響が出そうだ。(2014年1月29日)

・厚生労働省が、13年11月の有効求人倍率(季節調整値)を1.00倍と発表した。求人倍率が1倍以上になった(=求人数が求職者数以上になった)のは、リーマン・ショック前の07年10月以来6年1カ月ぶり。人材ニーズが順調に回復していることを裏付けるデータと言えよう。(2013年12月27日)

この業界とも深いつながりが <技術者派遣、製造派遣などで各業界を支える>

自動車
自動車工場向けの製造派遣は、人材サービスの中で大きな地位を占める

IT(情報システム系)
SE、プログラマーなどの技術者派遣は、いち早く回復傾向となっている

病院・診療所
看護師・薬剤師などの派遣、人材紹介サービスを開始する企業も登場

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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