カード・信販・消費者金融編・2015年【業界トレンド】

クレジットカード会社などは業績好調。消費者金融は「保証業務」などで多角化を図る

「販売信用」とは、消費者が商品を購入する際にいったん代金を肩代わりし、後払い・分割払いのサービスを提供。それによって、手数料収入や金利収入を得る事業だ。幅広い販売信用関連事業を提供する信販会社(オリエントコーポレーション、ジャックスなどが該当)と、クレジットカードによる決済サービスを中心に提供するクレジットカード会社(三井住友カード、三菱UFJニコス、クレディセゾンなど)とに大別できる。

クレジットカード決済の取扱高は、ここ数年大きく伸びている。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、2014年のクレジットカード取扱高(キャッシング除く)は42兆4322億円。前年(38兆5264億円)に比べ10.1パーセント増、04年(20兆8864億円)に比べると2倍以上となった。

背景にあるのは、クレジットカード各社の提供するポイント付与サービスを使い、生活防衛を図ろうとする動きが消費者の間で盛んなこと。従来、クレジットカードのポイント還元率は0.5パーセント程度のものが多かったが、このところ、1~2パーセントという高還元率のカードが登場し、人気を集めている。また、クレジットカード決済が主となるeコマース(電子商取引)分野が、引き続き堅調に伸びていることも強い追い風だ。例えば、楽天は自社のeコマースサイト「楽天市場」での取扱額が伸びたことで、楽天カードの利用も増え、利益拡大につながっている。また、公共料金の支払いをクレジットカードで行う人も増加中。今後もeコマースの拡大、景気回復による個人消費の伸びなどが予想されるため、しばらくは好業績が期待できるだろう。

一方、貸金業者が個人に金銭の貸し付けを行い、金利収入を得る消費者金融(アコム、SMBCコンシューマーファイナンス、アイフルなど)は、縮小傾向が続いている。金融庁の「貸金業関係資料集」によると、04年3月末における「消費者向貸付残高」は19兆6550億円。ところが、14年3月末には6兆2287億円まで減少した。

06年、最高裁がいわゆる「グレーゾーン金利」(キーワード参照)を認めない判決を下した。これをきっかけに、過払い金の返還請求が相次ぎ、消費者金融各社の経営は悪化。現在も、各社は多額の過払い金返還に追われている。さらに、10年6月に完全施行された改正貸金業法では、借りすぎ・貸しすぎを防ぐために「総量規制」が導入された。これは、消費者への貸し出し総額を、年収の3分の1までに制限するよう義務付けたもの。こうした取り組みの結果、貸付残高は減少の一途をたどっている。近年、各社の業績には下げ止まりの傾向も見られるが、今後も貸し付け分野では厳しい状況が続きそうだ。

そこで消費者金融各社は、収益源の多様化によって業績回復を目指している。例えば、銀行が提供するカードローンの審査や保証業務(キーワード参照)に力を入れるなどの取り組みが盛んだ。

カード・信販・消費者金融志望者が知っておきたいキーワード

eコマースの規模拡大
経済産業省によれば、13年における消費者向けeコマース市場は11.2兆円。08年(6.1兆円)に比べて8割以上拡大した。eコマースではクレジットカードが利用されるケースが多いため、eコマースの取引額が増えれば、クレジットカード会社の売り上げ拡大につながる。
公共料金のクレジットカード払い
電気・ガス・水道料金などの公共料金をクレジットカードで支払うと、ポイント還元が受けられる。そのため、口座振替ではなくクレジット払いを選ぶ消費者が増加。また、国民健康保険料や各種税金をクレジットカードで支払えるケースも増えている。
グレーゾーン金利
「利息制限法」で定められた上限金利は超えているが、「出資法」で定められた上限金利には達しない金利のこと。10年、出資法の上限金利が利息制限法と同じ水準に引き下げられたため、消滅した。消費者はグレーゾーン金利によって生じた「過払い金」を、貸金業者に返還請求できる。
消費者金融の「保証業務」
信用保証会社としてカードローンの申込者を審査し、利用者が返済不能となった場合には代わりに支払いをすること。例えば、アコムの14年12月末時点における保証残高は7481億円で、対前年同期比15.6パーセント増。SMBCコンシューマーファイナンスの14年3月末時点における保証残高は7525億円で、対前年同期比14.1パーセント増だった。

このニュースだけは要チェック <eコマースによるカード会社買収に注目>

・ヤフーがソフトバンクと共同で、クレジットカード会社であるKCカード(福岡市)から事業の一部を買収。ヤフーは「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」などのeコマース事業を展開しており、クレジットカード事業を取り込むことでサービス強化を目指す。(2014年6月25日)

・三井住友信託銀行が、米シティグループが運営するクレジットカード事業「ダイナース」を買収する方向で独占的な交渉に入ったと報道された。富裕層顧客が多いとされる「ダイナースクラブカード」などの会員を取り込むのが、三井住友信託銀行の狙いとされる。(2015年2月13日)

この業界とも深いつながりが <大手銀行グループ傘下の企業が多い>

メガバンク
メガバンクグループ傘下のクレジット・消費者金融会社は多い

eコマース
eコマースが拡大すれば、クレジットカード取扱高にも好影響が

スーパー
大手流通グループがクレジットカード事業に乗り出すケースも

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 高津輝章氏

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一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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