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Vol.271 マンションデベロッパー編

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人口集中の続く首都圏が主戦場。海外進出と、特色ある物件の開発に注力する企業が増加

マンションデベロッパーは、総合不動産企業(住友不動産、三井不動産レジデンシャル、野村不動産など)、鉄道系企業(近鉄不動産、東急不動産など)、専業系デベロッパー(大京など)、ハウスメーカーなどの異業種参入系デベロッパー(大和ハウス工業など)に大別できる。また、あなぶき興産(本社:香川県高松市)のように地方を地盤とするデベロッパーもあり、企業によって特色は異なる。業界志望者は、個別企業ごとに研究を深めておきたい。

 

不動産経済研究所によれば、2014年の全国マンション発売戸数は8万3205戸。前年(10万5282戸)に比べて21パーセント減少した。マイナス幅が2割を超えたのは、世界金融危機のあった08年以来6年ぶりのこと。14年4月の消費税増税を控え、13年にはいわゆる「駆け込み需要」が発生。14年は、その反動で大きなマイナスとなった。また、東日本大震災後の復興需要や、東京オリンピックに向けた建設需要などが重なったことで、労務費・資材費が上昇。こうした中、デベロッパーが販売単価上昇の影響を見極めるために供給を先延ばしにしていることも、発売戸数減の背景と言える。この傾向は15年上半期(1~6月)になっても継続。首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンション発売戸数は1万8018戸で、前年同期に比べて7パーセント減だった。また、建築コスト上昇に伴う価格高騰により、特に郊外での新築マンション購入層が中古マンション購入に流れる動きも目につく。

 

なお、14年における首都圏の発売戸数は、全国の54パーセントにあたる4万4913戸。今後も首都圏への人口集中は続くと予想されており、販売戸数に占める比率はさらに高くなるだろう。中でも、20年にオリンピック開催が決まった東京都心部には、注目が集まっている。現在は、老朽化マンションの建て替え、新規マンションの開発計画が数多く進行中。また、仮設競技場として整備されたオリンピック会場跡地については、大会終了後、さらなる大規模開発が行われるだろう。14年における東京都23区の発売戸数は2万774戸で、全体の25パーセント。今後は、この比率がさらに拡大するかもしれない。

 

中古マンション市場にも注目しておこう。14年6月、老朽化したマンションの売却と解体の決議要件を緩和する「改正マンション建替え円滑化法」(キーワード参照)が成立し、12月から施行された。現在、日本には約590万戸のマンションが存在するが、このうち1981年以前の「旧耐震基準」で建てられたマンションが約106万戸を占める。これらのマンションは震度6以上で倒壊する危険性が指摘されており、耐震補強もしくは建て替えが緊急の課題。改正法の成立により建て替えが進むと期待されており、各社の業績にも影響を与えそうだ。一方、中古マンションを改装して価値を高める「リノベーション」(キーワード参照)市場も拡大中で、この分野に乗り出す企業も増えつつある。

 

新しい分野を開拓しようとする企業も多い。そのひとつは海外市場。中国には三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、大和ハウス工業などが進出し、上海・天津・瀋陽などの都市で開発事業を実施している。また、三井不動産がマレーシアでの高層マンション事業参画を表明したように、今後はマレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンなど東南アジア諸国での開発も盛んになってくるだろう。国内においても、「働く女性」に特化したマンションや、EV(電気自動車)充電設備がついたマンションなど、今まで以上に特色のある開発が実施されている。また、「CCRC」(キーワード参照)にも注目。政府が中心となって日本への導入・拡大を進めており、マンションデベロッパーが今後取り組みを開始する可能性は高い。

 

マンションデベロッパー業界志望者が知っておきたいキーワード

改正マンション建替え円滑化法
正式名称は「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」。14年12月施行された。これにより、区分所有者の5分の4が同意すれば建物の解体と跡地売却が認められるようになった。また、耐震性が不足しているマンションで一定以上の面積を有し、市街地環境の改善に資するものについては、容積率を緩和する特例も認められる。改正法には不十分な点があるとの指摘が一部から出ているが、建て替え促進の一助になると期待されている。
リノベーション
中古マンションなどを改築・改装して、価値を高めること。間取りを変更して使いやすくする、調理機器を一新して機能性を高めるなど、大幅な改装を指すことが多い。「リフォーム」と呼ばれるケースもあり、両者の差はかなり曖昧なものだが、大幅な機能変更・性能向上が行われる場合はリノベーションと呼ばれることが多い。
日本版CCRC構想
CCRCとは、Continuing Care Retirement Communityの略。「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」(日本版CCRC構想有識者会議より)を目指すもの。元気な高齢者向けに、医療・介護・コミュニティ機能を兼ね備えた住宅を提供し、第二の人生を楽しめるようにする構想だ。

このニュースだけは要チェック <特色あるマンション開発に注目しよう>

・東京建物が開発したマンション「ブリリア日本橋三越前」が売り出され、即日完売した。このマンションは女性顧客の要望に応え、洗面台や台所の形状・色を工夫したり、リラックスできるサンルームの設置を可能にするなどした。顧客ターゲットを絞って差別化を図ったマンションの一例。(2015年6月30日)

 

・野村不動産や三井不動産レジデンシャルが、大規模マンション「桜上水ガーデンズ」を完成。これは、1965年に完成した「桜上水団地」を建て替えたもので、古くからある樹木などを生かしながら戸数を増やし、住民同士が交流する場も設けた。老朽団地再生のモデルケースとして注目されている。(2015年8月28日)

この業界とも深いつながりが <介護サービス企業との連携が増えるか?>

メガバンク
物件仕入れの際には多額の資金が必要。銀行から物件情報を得ることも多い

自動車
自動車メーカーと協力し、電気自動車の充電施設を設置するケースが増えてきた

介護サービス
高齢者向けマンションの開発で、介護サービス会社と連携する機会が増えそう

 

この業界の指南役

日本総合研究所 未来デザイン・ラボ シニアマネージャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。同大学院工学研究科客員研究員。専門は、未来洞察、中長期事業戦略策定、シナリオプランニング、海外市場進出戦略策定など。主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場の開拓案件を数多く手がけている。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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