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Vol.279 住宅メーカー編

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省エネ住宅への取り組みが活発化。成長を求め、中古市場・海外市場への進出も盛んだ

一戸建て住宅などの設計・施工を行う住宅メーカーには、積水ハウス、大和ハウス工業、積水化学工業、住友林業、旭化成ホームズなどがある。ただし、年間施工棟数が1000棟を超える大手のシェアは、首都圏で3割程度。一方、年100棟未満の企業がシェアの4割程度を占めており、小規模な企業も存在感を示している業界といえる。

 

国土交通省の「建築着工統計調査報告」によると、2014年度における新築持家住宅・分譲戸建住宅の着工戸数は40.2万戸。リーマン・ショックの影響で着工件数が激減した09年度(38.2万戸)より5パーセントほど増加したが、消費税増税前の駆け込み需要があった13年度(48.7万戸)と比べると、約17パーセント減少している。なお、着工戸数は景気動向や消費者の給与水準、移住者数の影響を強く受ける。

 

今後日本では、住宅購入の中心である30~40代の人口が減少していく。そのため、住宅着工戸数の大幅な増加は期待できない状況だ。また、17年4月に予定されている消費税再増税も懸念材料。1997年(3パーセントから5パーセントに増税)と2014年(5パーセントから8パーセントに増税)には、駆け込み需要後の反動減に加えて消費の冷え込みが起こり、着工戸数はマイナスとなった。17年にも同様の事態が起きる可能性は高いだろう。

 

こうした中、各社は省エネ型住宅の開発・販売に取り組んで売り上げ拡大を目指している。普及期に入ってきたのが、「ネット・ゼロ・エネルギー住宅」。これはZEH(Zero Energy Houseの略。「ゼッチ」と読む)とも呼ばれ、家庭内の消費量より多くの電力を発電することで、エネルギー消費量を実質ゼロ以下にするというものだ。例えば、ミサワホームは17年度に販売する戸建住宅のすべてをゼロ・エネルギー住宅にする予定(下記ニュース参照)。また、パナホームは18年度に85パーセント、積水ハウスは16年度に70パーセントまでネット・ゼロ・エネルギー住宅の比率を高める目標を掲げている。

 

また、自家発電システム・蓄電池・HEMS(Home Energy Management Systemの略。ITやセンサーを活用して住宅内のエネルギーを管理する仕組みのこと。「ヘムス」と読む)などを組み合わせ、エネルギー消費の最適化を目指した「スマートハウス」関連の動向にも注目が集まっている。14年4月に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」が改正されたことで、電力の使用状況を確認しやすい「スマートメーター」が普及する見込み。そのため、HEMSを活用した住宅の着工も増えると期待されている。各社は他業界の企業とも協力しながら、ビジネスの創出に取り組んでいる(下記データ参照)。

 

新築住宅市場の減少に備え、中古住宅に関する取り組みも活発。リフォーム部門を強化する住宅メーカーは少なくないし、中古住宅の流通体制を整備して新たな市場づくりを目指すところもある。例えば大和ハウス工業は、住宅メーカー各社が設立した「一般社団法人移住・住みかえ支援機構」と連携し、中古住宅を貸し出す際の家賃保証サービスを提供。自社が過去に建設した住宅に対し、完成から50年目までは最低月3万~7万円の家賃を保証する仕組みだ。これにより、住人が自宅を貸し出しやすい環境を整え、中古住宅市場の活性化や、住み替え時のリフォーム需要などを期待している。また他社でも、中古物件情報の一元管理などを進め、消費者が中古住宅を買いやすい環境を整えている。

 

大手各社は、海外事業の拡大にも積極的。人口の増加が見込まれる東南アジアを中心に、アジア新興国やオーストラリアで多額の投資が計画されている。海外市場は、国内に比べて安定的な成長が見込まれており、今後も継続的な取り組みが行われていくだろう。

 

他業界と提携し、HEMSやゼロ・エネルギー住宅への取り組みを加速

住人の健康状態をHEMSで管理
積水ハウスが日本IBMと共同で、居住者の心拍数や睡眠状況などをセンサーで確かめ、HEMSで管理する「スマートヘルスケア」の実証実験をスタート。住人の健康状態に合わせて室温を自動調整するなどの機能がテストされている。
コンテストの実施
大和ハウス工業が、スマートハウスを活用した新たなサービス創出に向けたアプリ開発コンテスト「家CON-2015」を開催。学生やベンチャー企業などから、多くのアイデアが集まった。
電機メーカーと協力してZEHづくり
ミサワホームは京セラと組んで、太陽電池と蓄電池を組み合わせたゼロ・エネルギー住宅のモデル住宅を建設。パナホームは、パナソニック製の太陽電池や蓄電池を使ったゼロ・エネルギー住宅を発売している。

このニュースだけは要チェック <省エネ住宅の普及と、海外展開に注目しよう>

・ミサワホームが、木造住宅ブランドの「SMART STYLE(スマートスタイル)」シリーズ全商品に、太陽光発電システムを標準搭載すると発表。同社は、2017年度に新築戸建住宅の全国ZEH標準化を目指しており、今回はそれに向けた取り組みの一環だ。(2015年4月1日)

 

・住友林業がNTT都市開発と共同で、オーストラリア・メルボルン近郊の宅地開発分譲事業を開始すると発表。21年までに、1065区画の宅地を段階的に整備・販売する。現地ニーズに合った住宅を提供することで、順調に増えている現地の住宅需要を取り込む狙い。(2015年9月17日)

この業界とも深いつながりが <スマートハウス開発で他業界と協力が進む>

デジタル家電
省エネ住宅には、太陽光発電システムや蓄電池、センサー技術などが不可欠

セキュリティ(警備業)
住宅メーカーが警備会社と協力し、空き家の管理支援体制を強化する動きもある

IT(情報システム系)
スマートハウスには、インターネットを通じた情報のやりとりが必須

 

この業界の指南役

日本総合研究所 未来デザイン・ラボ シニアマネージャー 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。同大学院工学研究科客員研究員。専門は、未来洞察、中長期事業戦略策定、シナリオプランニング、海外市場進出戦略策定など。主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場の開拓案件を数多く手がけている。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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