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Vol.297 自動車メーカー編

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エコカーと自動運転が焦点。他社との提携などを通じて開発速度を高めることが大切だ

国内の自動車メーカーには、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、スズキ、マツダ、富士重工業などがある。一方、海外企業としてはフォルクスワーゲン(ドイツ)、ゼネラルモーターズ、フォード(共にアメリカ)、現代自動車(韓国)、ルノー(フランス)などが代表格だ。

 

国際自動車工業会によると、2015年における世界の自動車販売台数は8968万台。前年(8792万台)より2.0パーセント、10年(7501万台)より19.6パーセント増えた。地域別に見ると、ヨーロッパは1904万台で10年(1881万台)より1.3パーセント増。北米・中米・南米の合計は2523万台で、10年(1973万台)より27.9パーセント増。アジア・オセアニア・中東の合計は4385万台で、10年(3519万台)より24.6パーセント増。アフリカは155万台で、10年(127万台)より21.7パーセント増となっている。中国(15年の販売台数は2460万台で、世界最大の市場)やアメリカ(販売台数1747万台で世界2位)などで需要が拡大し、グローバル市場は成長傾向。一方、日本(販売台数505万台で世界3位)では若者の「車離れ」が進み、人口減少時代に突入したこともあって市場は縮小気味だ。そこで各社には、さらなるグローバル化が求められている。

 

エネルギー・環境問題に対する関心が世界的に高まっていることを受け、ここ数年の自動車業界では「エコ」の追求が活発だ。三菱自動車工業の「アイ・ミーブ」、日産自動車の「リーフ」といった電気自動車の認知度は高まっているし、トヨタ自動車は14年12月に燃料電池自動車「MIRAI」の販売を開始した。今後は低価格化を進め、電気自動車向けの充電ステーションや燃料電池車向けの水素ステーションなどを整備して、普及を加速することが重要だろう。また、「クリーンディーゼル」(キーワード参照)や「ダウンサイジングターボ」(キーワード参照)といった手法を使って燃費を改善する取り組みも行われている。

 

安全性を向上させることも、自動車業界における大きな流れの一つ。この分野のパイオニアは富士重工業で、運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」をいち早く市場に投入して人気を呼んだ。他社も似通ったシステムの導入を進めており、交通事故の抑制効果が期待されている。また、自動運転の技術開発も盛んだ。例えばトヨタ自動車や日産自動車は、20年をメドに自動運転技術を市場投入すると公表している。実現には、「カメラやセンサー、GPSを使って車の位置や周りの状況を確認する」「さまざまなデータを、コンピュータを使って適切に分析・判断する」「通信技術を使い、自動車同士で情報をやりとりする」などの技術が必要。これらは自動車メーカーにとって、従来とは異なる技術領域と言える。

 

エコや自動運転といった新たな取り組みを進めるためには、巨大な投資が必要だ。また、できるだけ短期間で開発しなければ他社に後れを取ってしまう。そこで自動車各社は、他社と提携することで開発費の負担軽減と開発のスピードアップを図っている。例えば、前出の「EyeSight」は富士重工業が日立製作所などと協力して開発したもの。今後は、自動車メーカーがIT企業などと協力して技術開発を進める機会が増えそうだ。また16年1月、トヨタ自動車がダイハツ工業を完全子会社化、スズキとの提携を検討中と報道されたように、自動車メーカー同士が提携・合併などを行う可能性も十分に考えられるだろう。

自動車メーカー志望者が知っておきたいキーワード

クリーンディーゼル
ディーゼルエンジンには、二酸化炭素排出量が少ない、ガソリンエンジンより燃費が良い、安い軽油で走れるなどの利点がある。一方、窒素酸化物や黒煙を多く出すことから、先進国などでは規制に阻まれて販売台数を伸ばせなかった。しかしディーゼルエンジンの排ガスクリーン化が進んだことで、ここ数年、多くの新型車が投入されている。

ダウンサイジングターボ
「ターボ」と呼ばれる過給機を使うことで、馬力を維持しながらエンジンを小型化する考え方。一定スピードで走る場合、従来型のエンジンより燃費の向上が期待できる。また、エンジンの排気量に応じて課税額が決まる日本などでは、自動車税が割安になる点もメリット。一方、渋滞時などに燃費が悪くなるなどの欠点も指摘されている。

運転支援システム
カメラやレーダーなどを使い、前を走る車や障害物、車線などを感知して安全な運転を手助けする仕組みのこと。衝突の可能性が高まった際に自動ブレーキをかける、前の車と適切な距離を保ちながら一定速度で走る、車線を外れそうになったときに警告を出すなどの機能を持つシステムが実用化されている。

グーグルの自動運転車
米グーグル社が開発中の自動運転車は、すでに公道を使った本格的な走行テストを重ねている段階。近い将来、実用化されると見込まれている。既存の自動車メーカーにとって大きな脅威になる可能性があり、危機感を募らせる企業も多い。

新型カーシェアリング
自動車をインターネットに接続して位置を把握。スマートフォン経由で集められた利用者の目的地情報と組み合わせて、効率の良いカーシェアリングを実現する仕組みの構築が進められている。また、こうしたシステムを自動運転車と組み合わせれば、新たな交通システムが確立されるのではないかという議論もある。

このニュースだけは要チェック <自動運転技術の進化は止まらない>

・日産自動車と提携関係にあるルノーが、自動運転に関する計画を公表。2016年に高速道路の単一車線上で安全な自動運転を可能にする技術、18年に自動的な車線変更など複数車線での自動運転を可能にする技術、20年には交差点を含む一般道での自動運転を可能にする技術を導入予定とのこと。(2016年1月8日)

 

・トヨタ自動車が、インドネシアの西ジャワ州カラワン市にエンジン工場を建設し、生産を開始したと発表。建設費用は約205億円で、小型乗用車用のエンジンを手がける。最先端の生産技術を導入した工場を稼働させることで生産性を高め、新興国の需要取り込みを強化する狙いだ。(2016年3月7日)

 

この業界とも深いつながりが <電子部品メーカーやIT企業との協業が進む>

電子部品メーカー
運転支援システムや電気自動車などの制御には、高性能な電子部品が欠かせない

IT(情報システム系)
自動運転を実現するため、データ分析・通信技術を持つIT企業と協力する

デジタル家電
電気自動車などに搭載される燃料電池や蓄電池を開発する家電メーカーもある

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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