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Vol.318 電子部品メーカー編

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世界市場で日系企業が健闘。自動車や医療機器分野の需要増で、今後も成長が見込めそう

電子部品とは、デジタル機器や電化製品などに搭載されている部品の総称だ。コンデンサー、抵抗器、トランスなどの「受動部品」(キーワード参照)、スイッチ、コネクタなどの「接続部品」、音響部品、センサー、アクチュエーターなどのように電気をほかの動作に変換する「変換部品」、電子回路基板(板状の「基板」に電子回路を配線したもの)などがある。また、集積回路(半導体の上にさまざまな電子回路を配置しまとめた部品と)、液晶デバイスなどを含むこともある。今回は、日本企業の存在感が特に大きい「受動部品」「接続部品」「変換部品」などの一般的な電子部品について解説する。

 

電子部品業界は、日本が高い競争力を持つ産業の一つだ。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2015年における日系企業の電子部品生産額(見込み)は、前年より11.0パーセント増の9兆1908億円。一方、世界の電子部品生産額は23兆9441億円(前年比10.2パーセント増)で、日系企業の生産額は世界市場の4割近くを占めている。日本企業がトップクラスのシェアを獲得している製品も少なくない。例えば、村田製作所の「チップ積層セラミックコンデンサー」(キーワード参照)や、日本電産の「ブラシレスDCモーター」(キーワード参照)は世界トップシェアとされる。また、TDKの「ハードディスク用磁気ヘッド」や、京セラの「電子部品用表面実装セラミックパッケージ」なども世界市場で大きなシェアを獲得。電子部品メーカーは、大手を中心に早くから積極的な海外展開を行ってきており、村田製作所やTDKの15年度における連結海外売上高比率は90パーセントを超えている。

 

JEITAが公表している「電子部品 用途別構成比推移」によれば、電子部品の生産額で最も大きな割合を占めているのは通信機器(41.2パーセント)。そして、自動車(24.0パーセント)、PC・周辺機器(9.8パーセント)、AV機器(5.7パーセント)と続く。09年以降の電子部品業界は、スマートフォンの世界的な普及によって大きな恩恵を受けてきたと言えるだろう。ただし、スマートフォンは多くの人に行き渡りつつあり、市場の成長速度には鈍化の兆しが見える。そこで電子部品メーカー各社は、新たな成長市場の取り込みを目指しているところだ。

 

今、注目されている成長市場は2つ挙げられる。1つ目は自動車分野だ。自動車メーカー各社は、高度運転支援システムや自動運転の実用化を進行中。また、電気自動車などの次世代車も普及が進みつつある。そのため、今後の自動車にはさらに多くの電子部品が搭載されるだろう。そして2つ目の成長市場は、ヘルスケア・メディカル機器分野。村田製作所がインプラント医療機器用コンデンサーを製品化するなど(ニュース参照)、新分野への展開は着実に進んでいる。

 

M&Aにより、自社に足りない技術・商品を得たり、新市場への足がかりをつかんで成長を目指したりする企業は多い。例えば、TDKは慣性センサー分野で強みを持つ欧州企業を買収した(ニュース参照)。また、積極的に投資を行う企業も目立つ。村田製作所、日本電産は16年3月期に過去最高となる設備投資額を記録しており、スマートフォン市場減速の中でも攻めの姿勢を明確に打ち出している。成長市場開拓のためには素早い事業展開が求められており、M&Aや大胆な投資の動きは今後も加速していきそうだ。

 

電子部品メーカー志望者が知っておきたいキーワード

受動部品
コンデンサー、抵抗器、トランスなど、電力の消費・放出・蓄積する機能のみを持った部品のこと。電力の増幅や整流といった「能動動作」を行わないため、受動部品と呼ばれる。反対に、電子管や半導体、電気モーターなどのように、電気を流すことで電力の増幅や整流を行う部品を「能動部品」と呼ぶ。

チップ積層セラミックコンデンサー
コンデンサーは電気を一時的に蓄える部品のこと。積層セラミックコンデンサーは、電気をより多く蓄えるため、電極と誘電体を何段も重ねたもの。積層セラミックコンデンサーは小型・大容量化が進んで主流となっており、多くの電子機器に搭載されている。

ブラシレスDCモーター
「ブラシ」と呼ばれる電極がないモーター。ブラシ付きのモーターは、ブラシが摩耗するために定期的な部品交換が必要。一方、ブラシレスモーターには、メンテナンスの必要性が少ないという利点がある。

IoT
Internet of Thingsの略で、「アイオーティー」と呼ぶ。「モノのインターネット」と訳されることもあり、インターネットに、デジタル家電、自動車、工場、家といったさまざまなモノが接続されることを指す。IoTがさらに進めば、多くのモノに電子部品が搭載されることとなり、電子部品メーカーにとっては追い風となる。

このニュースだけは要チェック <M&Aの動きが活発に>

・TDKが、フランスのセンサーメーカーであるトロニクスマイクロシステムズを買収すると発表。これにより、「慣性センサー」分野の技術力を高め、産業機器、自動車といった分野でさらなる成長を目指す。(2016年8月1日)

 

・村田製作所が医療機器関連の展示会で、インプラント(埋め込み型)医療機器分野用の積層セラミックコンデンサーを製品化したと発表。心臓ペースメーカーなど、人体に与えるリスクが高い機器にも利用できる、高い信頼性があるという。(2016年4月22日)

 

この業界とも深いつながりが <自動車向けの市場が拡大する見通し>

自動車メーカー
自動運転システムや、電気自動車などの次世代車には電子部品が不可欠

携帯電話メーカー
スマートフォンの需要拡大は、電子部品メーカーにとって強い追い風だった

病院・診療所
高性能な電子部品を搭載した医療機器が、さまざまな医療機関で使われている

 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門未来デザイン・ラボ コンサルタント 
橘田尚明氏

橘田尚明

東京大学大学院技術経営戦略学専攻修士課程修了。中長期経営計画策定支援、新規事業テーマ構築支援、未来洞察などのコンサルティングを中心に活動。米国公認会計士。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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