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Vol.322 家電量販店編

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市況悪化やネット通販の拡大に対応し、「家電以外」の分野に乗り出す動きが加速

家電量販店とは、テレビなどのAV機器や、冷蔵庫や洗濯機などの生活家電(白い色をした製品が多いため、白物[しろもの]家電とも呼ばれる)といった製品の小売店をチェーン展開する企業群のこと。ヤマダ電機、ビックカメラ、エディオン、ケーズホールディングス、ヨドバシカメラなどが該当する。

 

調査会社ジーエフケー マーケティングサービス ジャパンの「家電・IT市場動向」によると、2010年における家電製品の国内小売額は約9兆4000億円。「エコポイント制度」(一定以上の省エネ性能を持つ地デジ対応テレビなどにポイントを付与する仕組み。11年3月末に終了)などが追い風となり、市場は大幅に拡大した。その後は反動が出て、11年は8兆5000億円、12年は7兆4800億円、13年は7兆4400億円と縮小傾向にあったが、14年は消費税増税前の駆け込み需要で対前年比1.2パーセント増の7兆5400億円と伸びた。だが、15年は対前年比5.7パーセント減の7兆1100億円となり、厳しい状況となっている。

 

家電量販店はどこも同じような商品を扱っているため、最大の競争要因になるのは「価格」だ。そこで従来の家電量販店は、事業規模を拡大して大量仕入れを行い、コスト削減によって売価を下げることが基本戦略だった。つまり「薄利多売」(キーワード参照)の事業モデルである。ところが、Amazonに代表されるインターネット通販がライバルとして登場。こうした企業は実店舗を持たないため、人件費などのコストを最小限に抑えることができ、価格競争の面で有利なのだ。前述の「家電・IT市場動向」によれば、家電業界におけるネット通販の構成比は年々拡大中。14年に初めて10パーセントを超え、15年には11.6パーセントに達した。今後も、ネット通販は拡大を続けるだろう。

 

市場環境の悪化とネット通販の台頭により、大手家電量販店各社の売り上げは右肩下がりの傾向。例えば、業界最大手であるヤマダ電機の売上高は、13年が1兆7034億円、14年が1兆4645億円、15年が1兆4207億円だった。そこで各社は、家電製品以外の分野を強化して売り上げの回復を目指している。特に目立つのが、住宅関連事業への参入だ。ヤマダ電機は、11年に大阪の住宅メーカーであるエス・バイ・エルを買収。エディオンは、13年に住宅設備メーカーのLIXILグループと提携を発表した。さらに、ビックカメラやコジマ、上新電機などもリフォーム事業を展開している。住宅のリフォーム・販売を手がけながら、家電製品の買い換え需要をつかもうとするのが、各社の狙いだ。

 

16年4月から始まった「電力小売全面自由化」(キーワード参照)に伴い、電力小売事業者、または販売代理店として電力分野に新規参入する企業も多い。例えば、ヤマダ電機は電力小売事業者として、16年6月より「ヤマダのでんき」を開始(ニュース参照)。また、ビックカメラは東京電力や関西電力(ニュース参照)、エディオンは中部電力、ノジマはJX日鉱日石エネルギーとそれぞれ提携し、販売代理店として店頭で電力を販売している。多くの来店客を集める家電量販店は、電力小売事業者にとって魅力的な販路と言えるだろう。

 

本業である家電製品の小売事業については、訪日外国人への販売力強化が進んでいる。中でも、15年の流行語にもなった「爆買い」(キーワード参照)に象徴されるように、中国人旅行者への取り組みは重要だ。例えばビックカメラは、中国の格安航空会社である春秋航空と提携して、旅行者にクーポンを配布するなどのサービスを展開。また、日本空港ビルディングとの合弁会社Air BICを設立し、羽田空港国際線ターミナル内に外国人旅行者や海外に向かう日本人を対象にした免税店をオープンした。なお、中国経済の減速を受けて中国人観光客の消費が伸び悩みつつあるため、今後は欧米、台湾、タイをはじめとする東南アジア各国などへの対応も求められそうだ。

 

家電量販店志望者が知っておきたいキーワード

薄利多売
1つの商品の利益を少なくして売価を下げ、大量に販売することで、全体として儲けを最大化させる考え方。数多く仕入れ大量に売るには、経営規模を拡大する方が有利になる。そのため、12年にビックカメラがコジマを、ヤマダ電機がベスト電器を子会社化したように、ライバル企業の買収を目指す動きがよく見られる。

電力小売全面自由化
従来の電力小売業は、東京電力、関西電力といった各地域の電力会社が独占してきた。しかし、2000年に大規模工場やデパート、オフィスビルへの電力小売事業が自由化され、16年4月には一般家庭への電力小売事業も自由化された。これに伴い、家電量販店をはじめとするさまざまな企業が参入している。

爆買い
外国人旅行者が猛烈な勢いで買い物をする様子を指した言葉。円安によって日本での買い物に割安感が出たこと、免税制度の拡大、アジアからの旅行客の購買力アップなどが背景にある。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、15年における中国人旅行者の1人あたり旅行支出は28.4万円で、全外国人の平均(17.6万円)を大きく上回っている。

このニュースだけは要チェック <電力分野に参入する動きが盛ん>

・ビックカメラが関西電力と提携して電力販売をスタート。首都圏の店舗などで電力契約を受け付ける。ビックカメラはすでに東京電力とも提携しており、消費者は複数の電力サービスを比較して選ぶことができる。(2016年7月1日)

 

・ヤマダ電機が、テーマパークを運営するハウステンボスの子会社HTBエナジーと業務提携して「ヤマダのでんき」を開始。月々の利用料に応じてポイントが貯まり、ヤマダ電機などでの買い物に活用できる仕組みだ。(2016年6月1日)

 

この業界とも深いつながりが <住宅系企業とのつながりがさらに強まりそう>

住宅メーカー
住宅メーカーなどと提携し、リフォーム事業を強化する動きが盛んに

電力・ガス
電力会社と提携し、電力小売事業や電力の販売代理店業に乗り出す

eコマース
Amazonなどのインターネット通販サイトは強大なライバル

 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 未来デザイン・ラボ コンサルタント
小林幹基氏

kobayashi_sama

京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。大手電機メーカー、ニューヨーク大学客員研究員を経て現職。専門は、海外進出戦略、事業戦略、未来洞察による新規事業開発。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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