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業界トレンドNEWS

Vol.325 陸運編

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個人向け宅配事業が成長中。自動運転やドローンなどの新技術が業界を変える可能性も

陸運とは、トラックや鉄道など「陸上の貨車を用いた輸送」のこと。代表的な国内企業としては日本郵便、日本通運、ヤマト運輸、佐川急便などが挙げられる。なお、陸運のうち90パーセント以上が、自動車輸送によって占められている。

 

国土交通省によると、国内の全貨物輸送量は2007年度の5800億トンキロをピークに年々減っており、15年度は4070億トンキロだった。これに伴い、陸運による貨物輸送量も減少。07年度に3760億トンキロあった輸送量は、15年度には2260億トンキロと4割近く減っている。背景にあるのは、国内にあった製造業の生産拠点の国外移転や、分散されていた拠点の集約化だ。さらに、「モノからコトへ」(キーワード参照)という産業構造の変化や、国内の人口減少などが逆風となり、今後も貨物は減ると予想されている。陸運業界にとっては、厳しい状況が続くだろう。

 

こうした中、有望な領域として期待されているのが個人向け宅配事業だ。経済産業省によれば、15年の国内の消費者向けEC(Electronic Commerceの略。電子商取引)市場は13.8兆円。対前年比7.6パーセント増と大きく成長しており、今後も拡大が見込まれている。そのため、宅配事業に対しては「少量の荷物を時間通りに頻繁に運ぶ」というニーズが高まりつつあるのだ。15年度の宅配便市場シェアのうち46.7パーセントを占めるヤマト運輸では、06年当時、「宅急便」の売上高が7374億円だった。ところが、11年には8213億円、16年には1兆50億円へと伸びている。こうした状況に対応するため、各社は物流網の強化に取り組んでいる。例えばヤマト運輸は、総合物流ターミナルの整備を進行中。地域の貨物を「沖縄国際物流ハブ」「厚木ゲートウェイ」「羽田クロノゲート」「中部ゲートウェイ」「関西ゲートウェイ(建設中。17年秋に稼働予定)」の5大ターミナルに集約し、これらを結ぶルートの輸送力を強化することで、関東・中部・関西などの主要都市で当日配送の実現を目指している。

 

個人向け宅配事業では、送り先が不在だった場合の再配達コストが大きな課題となっている。そこで陸運各社は、コンビニと提携して「荷物をコンビニで受け取れるサービス」の拡大に積極的だ。例えば、15年10月には日本郵便がファミリーマートと協力してコンビニ受け取りサービスの提供を開始している。また、国土交通省の主導によって、駅などで荷物を受け取るためのインフラ整備も進みそうだ。消費者の利便性を高めながら再配達コストの削減を目指す取り組みは、今後も広がるだろう。

 

トラックドライバーの高齢化に伴う人材不足は、業界全体にとって深刻な課題。そこで、自動運転技術に注目が集まっている。経済産業省と国土交通省は、19年度に貨物トラックの「隊列自動走行」の実験を始める予定。先頭車両のみ運転手が運転し、後続車両が自動的に後を追う仕組みで、すでにテストコースでの実験は始まっている。トラック運送業のコストの半分が人件費と言われており、自動運転によって人件費の削減が実現できれば各社の業績に大きなプラスとなるだろう。

 

ドローン(キーワード参照)配送の動向にも注目しておきたい。米アマゾン・ドット・コムは13年12月、ドローンを使って注文後30分以内に商品を届けるサービス「アマゾン・プライム・エア」の計画を発表。16年12月には、イギリスでドローン配送の実証実験に成功している(ニュース参照)。ドローンによる宅配が実現すれば、陸運業界にとって大きな脅威となる可能性もあるだろう。一方、ヤマト運輸が楽天と組んでドローンを使った宅配事業の検討を始めるなど、陸運企業がドローン研究に乗り出すケースもではじめている。

 

陸運業界志望者が知っておきたいキーワード

モノからコトへ
必要な商品(=モノ)が多くの消費者に行き渡り、人々の関心がサービスや体験(=コト)に移りつつある状況を指す言葉。「モノからサービスへ」と言われるケースもある。こうした動きが加速してモノの消費が少なくなれば、その分、貨物輸送量も減る。

BtoC、CtoC
BtoCはBusiness to Consumer(Customer)の略。企業と個人消費者との間で行われる取引のこと。CtoCはConsumer to Consumerの略で、ネットオークションやフリマアプリなどを通じて個人間で行われる取引を指す。どちらも、商品の配送は宅配業者が手がけることが多い。

ドローン
小型無人航空機。遠隔操作や自動制御によって飛行可能な航空機の総称。日本では、2015年に千葉市が「国家戦略特区」に指定され、ドローンを使った宅配事業の実験を行っている。安全面などで課題はあるが、宅配コスト・配達時間の大幅削減、交通の便の悪い地域でも宅配が気軽に利用できるなどメリットは大きい。

このニュースだけは要チェック <ドローンの普及は陸運業界に大きな影響を及ぼしそう>

・米アマゾン・ドット・コムが、イギリスの一部地域でドローン宅配の実験を開始したと発表。ドローンが運べる荷物は、最大で5ポンド(約2.27キログラム)。現在のところ、ドローンを飛ばせるのは気象条件の良い日に限られているが、安全性が確認でき次第、飛行条件を緩和する方向だという。(2016年12月14日)

 

・佐川急便の親会社であるSGホールディングスと、日立物流が資本提携すると発表。両社の売上高を合わせると、業界トップの日本通運に次ぐ業界第2位に躍り出る見込み。国内貨物輸送量の先細りが懸念される中、経営規模の拡大によって競争力を高めるのが狙いと見られる。(2016年3月30日)

 

この業界とも深いつながりが <コンビニ受け取りサービスが拡大中>

コンビニ
コンビニで荷物を受け取るサービスを広めることで、再配達コストを削減

空運(貨物)
海外の航空網と国内の陸運網を有機的に結んでグローバル物流をスピードアップ

IT(情報システム)
ITシステムを積極的に導入することで物流の時間短縮や効率化を目指す

 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 未来デザイン・ラボ コンサルタント
小林幹基氏

kobayashi_sama

京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。大手電機メーカー、ニューヨーク大学客員研究員を経て現職。専門は、海外進出戦略、事業戦略、未来洞察による新規事業開発。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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