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Vol.346 人材サービス編

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大手企業を中心に海外対応力を強化。国内では、働き方改革などの動きが追い風となりそう

人材サービス業界は、企業に人材を派遣する「人材派遣サービス」、人材を求める企業と転職・再就職を希望する人を引き合わせる「人材紹介サービス」、企業からまとまった仕事を請け負う「業務請負・アウトソーシング」、人材の募集やマッチングをWeb上や誌面で行う「求人広告業」などに分類することができる。

 

人材サービスを総合的に手がける企業としては、リクルートホールディングス、パーソルホールディングス(旧テンプホールディングス。下記ニュース参照)、パソナグループが3強。また、IT・電子機器・化学などの業界で技術者の人材派遣サービス(=技術者派遣)を中心に手がけるテクノプロやメイテック、工場の生産ラインなどで働くスタッフの人材派遣サービス(=製造派遣)が中心のワールドホールディングスなど、専門分野で強みを発揮する企業もある。一方、アデコ(スイス)、マンパワー(米国)、ランスタッド(オランダ)などの外資系企業も日本に進出しており、シェア拡大を目指している。

 

厚生労働省の「平成27年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、2015年度の労働者派遣事業にかかわる売上高は5兆6790億円。前年度(5兆4394億円)より4.4パーセント伸び、2年連続の増加となった。近年、国内の景気が回復傾向で、人材需要は拡大中。また、少子高齢化が進んで働き手が減り、人手不足が深刻になりつつあることもあって、人材サービス業界には多くのビジネスチャンスが生まれている。

 

このところ、人材サービス業界で課題となっているのが「海外対応」だ。顧客である国内企業が海外事業を拡大しているため、人材サービス企業にもグローバル化が求められている。例えばリクルートホールディングスは、2015年にオーストラリアとアメリカの人材派遣会社を買収。パーソルテンプスタッフは2016年4月、アメリカの人材派遣会社であるケリーサービスとの合弁事業を、アジア・パシフィック全域に拡大すると発表した。また、パソナグループは2016年12月、日本でベトナム人向け就職支援サービスを提供するアセゴニアと業務提携し、ベトナム事業を強化すると発表している。今後も、外国企業の買収・業務提携によって海外事業を強化する動きに注目が必要だ。

 

国内では、「ダイバーシティ・マネジメント」(下記キーワード参照)や「働き方改革」(下記キーワード参照)に注目したい。多くの企業が、多様な人材が活躍できる環境を整えたり、労働時間の短縮を目指したりする取り組みを進めている。その際、人材の活用法やマネジメントに関して豊富なノウハウを持つ人材サービス企業にアドバイスを求めるケースが増えているのだ。例えば、ダイバーシティ・マネジメントや働き方改革などをテーマとしたセミナーの開催、採用や研修の支援、社内制度改定へのコンサルティングなどの分野は、人材サービス企業にとって大きなビジネスチャンスが期待できるだろう。また、託児施設に保育士などを派遣するだけでなく、運営面でのサポートを行うなどの関連ビジネスも模索されている。

 

地方創生・地方振興を支援する取り組みも盛んになっている。地方では働き手の確保や、人材育成などが大きな課題となっており、これらの切り口から行政向けの事業を手がける動きが活発になっているのだ。例えば、地方自治体と連携し、就農希望者の募集・研修・生活支援などを一貫して手がけるなどの取り組みがある(下記ニュース参照)。

 

人材サービス業界志望者が知っておきたいキーワード

ダイバーシティ・マネジメント
ダイバーシティ(Diversity)とは、「多様性」を意味する言葉。性別・年齢・人種・国籍などが異なる多様な人材が、それぞれの能力を十分に発揮できる環境を整えることで、会社や職場を強くする経営の考え方。グローバル化や女性・高齢者の社会参画などが進む中で、ダイバーシティ・マネジメントの重要性は今まで以上に高まっている。
働き方改革
労働時間の短縮や非正規雇用者の待遇改善などにより、多くの人が活躍できる社会を目指す改革のこと。安倍内閣下で推進されている取り組みだ。働く側にとっては、より働きやすく、暮らしやすい環境が整うのが長所。一方、企業の側にも、出産・育児中の女性をはじめとする人材が有効活用できるなどのメリットがある。
有効求人倍率
全国の公共職業安定所(ハローワーク)における「有効求人数」を、「有効求職者数」で割った値。景気が良くなるほど求人数が増え、求人倍率は高くなる傾向だ。リーマン・ショックの影響を受け、2009年度の有効求人倍率は0.45倍に落ち込んだが、景気回復とともに上昇を続け、2016年度には1.39倍と26年ぶりの高水準となった。
テレワーク
「離れた場所で」という意味を持つ「テレ(tele)」と、「work(仕事)」を組み合わせた造語。自宅や「サテライト・オフィス」(企業の本社から離れた場所に設けられた、比較的小規模なオフィス)などで働くことを指す。通勤時間の短縮や通勤ラッシュの緩和などが期待でき、育児や介護と仕事を両立しやすい手段として注目されている。

このニュースだけは要チェック<農業分野での取り組みに注目>

・テンプホールディングスが社名をパーソルホールディングスに、傘下のテンプスタッフが社名をパーソルテンプスタッフに変更した。人材派遣サービスのイメージが強かった同社は、グループブランドを改めることで、多様な人材サービスを提供していることをアピールするのが狙いとみられる。(2016年7月1日)

 

・パソナグループが、食料・農業・農村に関する研究開発を行う国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)との連携協定を締結。農研機構は、パソナグループが行う農業関連研修における新技術・新品種の紹介や、生産現場で生じる課題への支援などを行う予定。(2017年6月19日)

 

この業界とも深いつながりが<さまざまな業界の人材需要に応える>

自動車メーカー
自動車工場の生産ラインにスタッフを送り込む人材サービス企業もある

IT(情報システム)
IT業界の成長に伴い、SE、プログラマーなどへのニーズが拡大中

地方自治体
地域の担い手となる人材を確保・育成することで、地方創生に貢献

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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