メガバンク編・2017年【業界トレンド】

新しい収益源の開拓とコスト削減の取り組みにより、各社はさらなる成長を目指す

メガバンクとは、預金・貸出金の残高がきわめて大きな銀行のこと。日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の3社を「3メガバンクグループ」(=3メガ)と呼ぶことが多い。また、この3行にりそなホールディングスと三井住友トラスト・ホールディングスを加えた5行を「5メガバンクグループ」と呼ぶこともある。

2008年の「リーマン・ショック」直後に大きな赤字を出して以降、3メガの業績は順調に回復していた。ところが、ここ最近はその傾向にかげりが見え始めている。2016年度決算における当期純利益は、MUFGが9264億円(前期より2.6パーセント減)、SMFGが7065億円(同9.3パーセント増)、みずほFGが6035億円(同10.0パーセント減)となり、SMFG以外は減益となった。SMFGが増益となったのも、前期に消費者金融や海外保有株による大きな損失を計上したことの反動と見られており、銀行にとって本業である「資金運用収益」(貸出金から得られる利息収入などからなる)は減少している。

業績が伸び悩んだ原因としては、景気の先行き不透明感による企業の資金需要の低迷や、銀行間の競争激化による利下げ競争などが挙げられる。さらに、2016年に日本銀行がマイナス金利政策を導入したことで生じた「利ざや」(下記キーワード参照)の減少や、国債など有価証券の運用収益減少も追い打ちをかけた格好だ。今のところ3メガは大きな利益を維持しているが、厳しい経営環境は今後も続く見通しである。

こうした中、各社は収益確保のためさまざまな取り組みを行っている。その一つが、アジアを中心とした海外事業の加速だ。3社の中でグローバル化が最も進んでいると言われるMUFGでは、貸出金残高の約40パーセントが海外貸出となっている。また、2017年7月には三井住友銀行が海外事業の拡大を図るため、マレーシアの100パーセント子会社に2億ドル以上の増資を行っている。このように、海外銀行への出資や海外拠点の増強によってグローバル事業を拡大する流れは、今後も続いていくだろう。

各社は「フィンテック」(下記キーワード参照)の研究開発にも積極的だ。なかでもメガバンクが注目している技術の一つが「ブロックチェーン」(下記キーワード参照)である。この技術を使って複数の金融機関が取引記録を共有することで、決済の透明化とスピードアップ、データの安全性向上を図ることが可能。また、取引システムの開発・維持コストが安くなると言われている。2016年10月には、ブロックチェーンを使って24時間リアルタイムで送金可能なインフラ構築を目指す「内外為替一元化コンソーシアム」が発足。2017年7月時点で、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行など61の金融機関が参加している。また2017年7月には、みずほFGが丸紅や損保ジャパン日本興亜などと共同で、ブロックチェーンを活用して日本・オーストラリア間の貿易決済をする実証実験を行った。顧客の利便性、安全性アップと銀行の経費削減ニーズを両立できる技術とされ、期待は高い。

ほかにも、仮想通貨(下記キーワード参照)を使った決済サービス、スマートフォンやタブレット端末に小さな機器を取り付けてクレジットカード決済を行う「モバイル決済」、人工知能による審査を活用した融資などが登場し、注目を浴びている。フィンテックへの取り組みは、今後もますます進んでいくだろう。

グループ再編の動きも起きている。MUFGは2017年5月、三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行の法人融資事業を集約すると発表。グループ内で重複している事業を一本化し、事業の効率性を高める狙いだ。また、みずほFGは「One Mizuho」をスローガンに、組織の一体化による収益力を高める計画を進行中。2016年10月には、傘下の資産運用会社4社を統合した(下記ニュース参照)。コスト削減による経営合理化や、グループ一体となって総合的な金融サービスの提供などを目指す組織再編の動きには、ぜひ注目しておきたい。

メガバンク志望者が知っておきたいキーワード

利ざや
預金者が受け取る「預金金利」と、企業などに貸し付ける際の「貸出金利」の差。日本銀行の「マイナス金利」導入によって市中金利(金融市場における標準的な金利のこと)は低下傾向となっており、その影響で貸出金利も下がっている。一方、預金金利はマイナスにはできないため、利ざやが小さくなって金融機関は打撃を受けている。

フィンテック(FinTech)
Finance(金融)とTechnology(技術)による造語で、金融とITを組み合わせたサービスを指す。仮想通貨(ビットコインなど)を使った決済サービス、人工知能でローンの審査を行うなどが代表例だ。

ブロックチェーン
「分散型台帳システム」とも呼ばれ、お金を取引した際の記録をまとめた「ブロック」を、チェーン(鎖)のように追加していく仕組みのこと。データを特定のコンピュータに書き込むのではなく、ネット上に分散した形で保存される。多くの利用者がデータを共有するため、データの改ざんが難しくて安全性が高いとされる。

仮想通貨
普通の通貨とは異なり、特定の国や金融機関などが保証をしていない電子的な通貨のこと。商品やサービスを購入する際に使うことができる。「ビットコイン」などが代表格。

オープンイノベーション
他社や研究機関などと協力しながら、変革を起こそうとする考え方のこと。従来の金融機関は、自社だけでサービス開発などを進める傾向が強かった。しかし、フィンテックなどの先端分野では、IT系企業や研究機関などとの連携が不可欠で、多方面から知恵を集める姿勢が大切になりそうだ。

このニュースだけは要チェック<仮想通貨の取り組みには要注目だ>

・三菱東京UFJ銀行が、独自の仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験をスタートした。2018年春には一般向けにサービスを提供する予定。利用者にとっては、店舗での決済や振り込み・外貨両替のコストが安くなり、手数料が引き下げられるというメリットがある。(2017年5月1日)

・みずほ投信投資顧問、新光投信、DIAMアセットマネジメント、そしてみずほ信託銀行の資産運用部門が統合され、新会社「アセットマネジメントOne」が設立された。資産運用事業は今後の成長が期待されている市場であり、みずほFG統合によってこの分野での競争力を高める計画だ。(2016年10月1日)

この業界とも深いつながりが<IT企業と連携する機会がさらに増えそう>

IT(情報システム系)
フィンテックなどの先端技術は、金融業界にとって不可欠なものに

証券
同じグループ内の銀行と証券会社が連携し、金融証券やサービスを提供

地方銀行
地方を中心に、メガバンクと地方銀行の競争が激化しつつある

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 関西コンサルティンググループ コンサルタント
木下直紀氏

木下直紀

東京大学法学部卒業。大学卒業後、大手都市銀行を経て現職。民間企業向けの事業戦略策定、業務プロセス改革、組織風土変革等の調査・コンサルティング業務に従事している。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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