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Vol.356 医薬品卸編

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IT化や物流改革で業務効率向上を目指す動きが盛ん。業界再編や「垂直統合」にも注目を

医薬品卸とは、医薬品メーカーから仕入れた医薬品を病院や調剤薬局、ドラッグストアなどに供給する専門商社のこと。手がけるのは、病院などで使われたり、病院や調剤薬局などで処方箋に基づき供給されたりする「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどで販売される「一般用医薬品」に大別できる。2015年度における国内卸医薬品販売額のうち、医療用医薬品の割合は96.2パーセント。医薬品卸の売り上げは、病院・調剤薬局向けの事業が支えていると言えるだろう。

 

医療用医薬品分野の中で大きなウエイトを占めているのが、調剤薬局向けの事業だ。社団法人日本医薬品卸売業連合会によれば、1992年度当時、医療用医薬品の94.8パーセント(販売額ベース)が病院・診療所向けに供給されており、調剤薬局に提供されたものは5.2パーセントに過ぎなかった。ところが、この比率は年を追うごとに増え、2005年度には44.8パーセント、2010年度には51.3パーセント、2015年度には55.2パーセントとなっている。背景には、政府が「医薬分業」(下記キーワード参照)の方針を掲げ、医療機関以外での薬の処方を奨励したこと。そして、このところ小規模な診療所が増える傾向にあり、これに伴って周辺の調剤薬局も増加したことなどが影響している。こうした流れに対応し、医薬品卸各社は調剤薬局に医薬品情報を提供する人材を強化したり、地域に密着した卸会社を買収したりして、調剤薬局とのつながりを強化する動きを強めている。

 

経済産業省の「商業動態統計調査」によれば、過去5年間における医薬品・化粧品卸売業の市場規模は24兆4200億円(2012年)→25兆300億円(2013年)→24兆3900億円(2014年)→25兆5580億円(2015年)→24兆9840億円(2016年)と推移。このように、市場が1年ごとに拡大・縮小を繰り返しているのは、2年に1度行われる「薬価改定」(下記キーワード参照)の影響が大きい。国はふくれあがる医療費を抑制するため、繰り返し薬価引き下げを行っているのだ。医薬品卸業界にとって薬価変更の影響は大きく、各社は動向を注視している。

 

薬価の引き下げをはじめとした政府の方針変更や、さまざまな経営環境の変化にいち早く対応することは、医薬品卸業界にとって重要な課題。また、物流の効率化を実現して利益率を高め、競合に打ち勝とうとする努力も欠かせない。そこで各社は、ITの導入や物流システムの改善などを積極的に行っている。例えば、膨大な販売データから顧客ニーズを分析してタイムリーな営業提案につなげる、高度に自動化した大型の物流センターを新設するなどの取り組みが代表的だ(下記ニュース参照)。

 

業界再編のニュースにも注目しておこう。社団法人日本医薬品卸業連合会によると、1992年に351社あった医薬品卸は、2017年には74社まで減った。その過程で、大手はメディパルホールディングス(2016年度売上高は3兆639億円)、アルフレッサホールディングス(同2兆5518億円)、スズケン(同2兆1270億円)、東邦ホールディングス(同1兆2310億円)の「4メガ」に集約されている。今後も、大手を中心とした買収・提携の動きは十分に起こり得るだろう。また、事業の多角化や本業との相乗効果を狙い、医薬品卸が医薬品の開発・製造や調剤・小売りに進出する「垂直統合」(下記キーワード参照)も盛んだ。例えば、アルフレッサホールディングスは2017年7月、調剤薬局のユースケアを買収すると発表(下記ニュース参照)。また、メディパルホールディングスは同年9月、医薬品開発などを手がけるJCRファーマと資本提携すると発表している。

 

ジェネリック医薬品(下記キーワード参照)の普及にも注目しておきたい。2016年のジェネリック医薬品の数量ベースのシェアは59パーセント。しかし、政府は医療費抑制のため、早い段階で80パーセントにまで引き上げることを目標に掲げている。こうしてジェネリック医薬品の比率が高まると、医薬品卸が扱う商品数も増えて在庫コストの負担が重くなる可能性も考えられるだろう。また、病院や調剤薬局に対する商品説明をきちんと行う必要もあり、各社は対策に追われそうだ。

 

医薬品卸業界志望者が知っておきたいキーワード

医薬分業
医療機関の処方箋に基づき、外部の調剤薬局が薬を出す考え方。医師と薬剤師が協力しながら診療や調剤を行う環境を整えたり、医師が利益追求のため必要以上の薬を処方するのを防いだりすることが目的。
薬価改定
国が、診療行為に使える医薬品の範囲と、使った医薬品の医療保険における支払い価格を定めた「薬価基準」を調整すること。一般的に、新たに開発・発売された医薬品ほど価格が高く設定される。
垂直統合
自社の仕入れ先や販売先に対する買収や業務提携を通じて事業領域を拡張し、仕入れ先や販売先の経営資源を活用したり、業務の結びつきを強めて相乗効果を挙げたりすることで、競争力を高める考え方のこと。
ジェネリック医薬品
後発医薬品とも呼ばれる。特許期間が終了した新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を持つ医薬品を、他社が製造・販売しているもの。研究開発費があまりかからないため、一般の医薬品より安い。ただし、ジェネリック医薬品が普及しても、先に作られた医薬品に完全にとってかわるわけではなく、医薬品卸はどちらも並行して扱う必要がある。
病院と診療所
病院とは、入院用ベッドが20床以上ある医療施設のこと。一方、入院用ベッド19床以下は診療所とされる。厚生労働省の「医療施設調査」によると、2005年に9026あった病院は、2016年に8442と減少。一方、2005年に9万7442だった一般診療所は、2016年には10万1529に増えた。

このニュースだけは要チェック<「垂直統合」を目指す動きが活発に>

・アルフレッサホールディングスが、調剤薬局事業を展開している完全子会社の日本アポックと、首都圏を中心に調剤薬局を展開しているユースケアとの間で合併契約を締結したと発表。本業である医薬品卸だけでなく、調剤薬局事業の強化にも乗り出すのが狙いだ。(2017年7月28日)

 

・メディパルホールディングスが、同社最大規模の高機能物流センターを埼玉に整備すると発表した。入荷から配送までの業務を大幅に自動化した設計だという。同社は2017年3月、岡山でも新物流センターを稼働させており、物流拠点の拡充に積極的だ。(2017年2月2日)

 

この業界とも深いつながりが<業務効率化のためIT系企業との協力が必須>

IT(情報システム系)
顧客提案の精度向上や物流システムの改善のため、ITの活用が進む

病院・診療所
医療用医薬品の販売先として、切っても切り離せない関係だ

医薬品メーカー
仕入れ先だが、医薬品卸が医薬品開発に乗りだして競合になるケースも

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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