トイレタリー編・2018年【業界トレンド】

商品単価上昇、外国人需要拡大などで好調。「アジア」「高齢者」など新市場開拓がカギに

トイレタリーとは、人の肌や髪などを清潔に保ったり、身だしなみを整えたりするために使われる日用品のこと。石けん、シャンプー、洗剤、おむつ・生理用品、歯磨き粉などの商品が該当する。主な国内メーカーとしては、花王、ユニ・チャーム、ライオンなどがあり、グローバル市場ではプロクター・アンド・ギャンブル (P&G)、ユニリーバといった外資系メーカーが大きな存在感を発揮している。また、化粧品メーカーなど他業界のメーカーや、ドラッグストアなど流通系の企業がトイレタリー製品を手がけるケースもある。

トイレタリー製品は日常生活に欠かせないため、景気の変動があっても使用量が極端に落ち込むことはない。それゆえ、売り上げは比較的安定した業界と言える。下で示しているように、ここ数年は販売量・販売金額ともに堅調。2017年1~9月の販売量・販売金額も、前年同期を上回っている。また、2016年の販売量は2006年より12.7パーセント増えたのに対し、2016年の販売金額は2006年より22.4パーセントも増えている。つまり、この10年で商品の単価は上昇傾向にあるわけだ。

商品単価上昇の背景にあるのは、高付加価値商品の需要拡大だ。例えばシャンプーの分野では、シリコンや硫酸系成分を使わず、天然由来成分をアピールした製品が売り上げを伸ばしている。また、洗濯の際に用いられる柔軟剤の分野では、衣類を柔らかく仕上げるだけでなく、嫌な臭いの抑制や良い香りが持続するなどの機能を付加した製品が人気だ。さらに、単に体の汚れを落とすだけでなく、肌の潤いを保つなどスキンケアを意識した石けんやボディソープ、歯をきれいにするだけでなく歯周病予防などに効果のある歯磨き粉なども好評。このように、「優れた基本機能+高付加価値」を実現して消費者にアピールする取り組みは、今後も盛んになると見られる。

外国人消費の拡大も、トイレタリー市場の好調を支えている。ここ数年、訪日外国人数は急激に伸びているが、アジアなどでは日本のトイレタリー製品に対する人気が高く、旅行者がドラッグストアなどで大量購入するケースが目立っているのだ。また、外国人の「越境EC」(消費者がインターネットを使い、居住している国以外から商品を購入すること)による販売も拡大傾向である。

反対に、アジア市場への進出を加速する企業も多い。例えば中国では、品質の良さ・安全性の高さが評価され、日本メーカーの紙おむつが人気。ユニ・チャームや花王、大王製紙などは、中国で紙おむつ生産を行ってシェア拡大に力を入れている。例えば、海外進出に積極的なユニ・チャームの場合、2016年12月期における海外売上比率は57.4パーセントに達した。今後も大手を中心に、海外市場に注力する企業は増えるだろう。ただし海外市場では、P&Gやユニリーバといったグローバル企業との競争が不可避。日本企業の強みである「高品質」「安全性の高さ」という強みを生かしながら、現地の事情に合わせて事業展開していくことがカギとなりそうだ。

現在は好調なトイレタリー業界だが、国内市場は人口減少が進み、市場縮小の危険性が大きい。そこで、高齢者をターゲットにした商品など、新市場の開拓が重要な課題となっている。中でも有望視されているのが「高齢者向けおむつ」だ。一般社団法人日本衛生材料工業連合会によると、ここ最近の大人用紙おむつの生産量は右肩上がり。2011年に58.1億枚だった生産数は、2016年には74.4億枚まで拡大している。各社は、オムツを丸ごと交換せず内側のパッドを交換することで少量の尿漏れに対応する工夫をしたり、おむつを着けていることがわかりにくいように形状を工夫したりといった取り組みを重ね、売り上げアップを目指している。また、尿漏れに伴う臭いや、加齢臭などを気にするシニア世代が多いことから、シニア向け消臭剤や消臭・防臭効果のある石けんや洗剤などの需要も増えそうだ。

トイレタリー製品の販売量・販売金額は堅調

2006年
販売量……211.1万トン
販売金額……7130億円
2012年
販売量……221.1万トン(対前年比0.4パーセント減)
販売金額……7823億円(対前年比1.0パーセント減)
2013年
販売量……228.2万トン(対前年比3.2パーセント増)
販売金額……8068億円(対前年比3.1パーセント増)
2014年
販売量……228.7万トン(対前年比0.2パーセント増)
販売金額……8300億円(対前年比2.9パーセント増)
2015年
販売量……228.1万トン(対前年比0.2パーセント減)
販売金額……8388億円(対前年比1.1パーセント増)
2016年
販売量……237.9万トン(対前年比4.3パーセント増)
販売金額……8726億円(対前年比4.0パーセント増)

※日本石鹸洗剤工業会発表のデータから抜粋。東日本大震災後の2012年以降、販売金額は4年連続で伸びている。

このニュースだけは要チェック<新ニーズの取り込みを狙う商品に注目>

・ライオンが口臭ケアの新ブランド「NONIO(ノニオ)」を創設。口臭予防に効果のある成分を配合した歯磨き粉とマウスウォッシュを新たに発売した。若い世代の口臭に関する潜在ニーズをとらえ、それを訴求する商品をリリースした形だ。(2017年8月23日)

・花王が米国子会社である花王USA Inc.を通じて、ヘアサロン向けスーパープレミアムブランドを持つオリベヘアケア社を買収したと発表。海外での存在感や利益率を高める戦略の一環として、高価格商品を扱う同社を買収したものとみられる。(2017年12月19日)

この業界とも深いつながりが<ドラッグストアは最重要な販路>

化学
化学メーカーの新素材を使って新たなトイレタリー製品を作るケースも

ドラッグストア
ドラッグストアやスーパーマーケットは、商品の販路として切っても切れない関係

化粧品メーカー
トイレタリー分野への進出を強める化粧品メーカーが増え、競合関係が激化

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英
イラスト/千野エー


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