自動車タイヤ編・2013年【業界トレンド】

原料安と円安の追い風を受け、国内企業の業績は好調。新商品開発でシェア拡大を目指す

アメリカのタイヤ専門誌『タイヤビジネス誌』によれば、2011年におけるブリヂストンの世界シェア(売上高ベース)は15.2パーセントだった。これは、ミシュラン(フランス)、グッドイヤーを抑えて世界トップ。また、住友ゴム、横浜ゴムといった国内企業も、売上高で世界トップ10位に入っている。ただし、大手各社のシェアは、ピレリ(イタリア)、ハンコック(韓国)といった新興勢力の台頭によって下降気味だ。

一般社団法人日本自動車タイヤ協会によれば、12年における新車用タイヤの国内販売本数は4662万本(四輪車用の合計)。これは、対前年比で15パーセントという大幅増だった。背景には、東日本大震災直後の落ち込みからの回復や、エコカー補助金制度による自動車販売台数の増加などが挙げられる。エコカー補助金制度が終了して自動車販売台数が減る13年には、対前年比で5パーセント程度の需要減が見込まれているが、全般的には安定的な業界だと言えるだろう。自動車の生産台数は景気によって大きく左右されるが、タイヤはある程度すり減れば交換が必要であるため、需要が落ちにくい。また、電気自動車など新しいタイプの自動車が増えることで、エンジンや変速機といった従来型自動車用の部品を手がける部品メーカーは将来的に苦境に立たされる可能性が高くなっているのに対し、タイヤのニーズは今後も継続してあり続けると考えられるからだ。

国内企業の業績は好調だ。要因の一つは、自動車タイヤの主原料である天然ゴム価格の急落。11年に記録的な高値となった天然ゴム相場は、世界経済の減速などによって、わずか1年半程度の間に半値以下になった。これにより、タイヤの製造費も安く抑えられている。
そして、13年に入って円安が一気に進み、国際的な価格競争力が高まったことも大きかった。この結果、各社は売上額がさほど伸びていないのに、利益を大きく伸ばすことに成功している。ただし、「原料安+円安」による好業績は、外部要因の変化によって崩れ去るリスクも大きいと言えるだろう。

そこで各社が力を入れているのが、商品力アップだ。特に注目されているのが、タイヤの表面を削り、新たなゴムを張って再生する「リトレッドタイヤ」(キーワード参照)。欧米では先行して広まっており、日本でも普及が期待されている。こうした動きに対応し、ブリヂストンは13年7月、表面のゴムを2回交換できるトラック・バス用のタイヤ「M800」を発表。これまでは1回しか交換できなかった従来のリトレッドタイヤに比べ、コストと環境負荷を引き下げられると期待されている。ほかにも、さまざまな高機能タイヤが生み出され、シェア拡大を目指している(キーワード参照)。

今後、自動車の需要は、日欧米から新興国へとシフトしていくだろう。そのため、自動車タイヤメーカーにとっても、海外展開は不可欠。業界志望者なら、生産工場の新設・拡大といった動きにはぜひ注目しておきたい。

押さえておこう <新しいタイプの自動車タイヤをまとめておこう>

リトレッドタイヤ

タイヤの地面に接する部分(トレッド部)を削り取り、新たな部材に張り替えることで再利用できるタイヤ。新品のタイヤに比べ、ゴムなど原材料の消費が少なくて済み、価格も3分の2程度と安いのが特徴だ。ランニングコストが安いため、トラック・バス業界から注目されている。

ランフラットタイヤ

パンクしても、100キロメートル程度であればそのまま走行できるタイヤ。パンクによる事故の危険性を大きく引き下げられるのが、最大の強み。現時点では、省燃費走行に向かない、価格が高い、商品選択の幅が狭いなどの欠点がある。

低燃費タイヤ

「転がり抵抗」を抑えてエネルギーのロスを小さくすることで、燃費性能を高められるタイヤ。各自動車メーカーのハイブリッド車、電気自動車などで採用が拡大中だ。国土交通省が「低燃費タイヤ等普及促進協議会」を設置するなど、国を挙げた普及活動も進められている。

低騒音タイヤ

タイヤの内部に音や振動を吸収する素材を埋め込むなどして、騒音を抑えるタイヤ。高速道路や悪路など、騒音が出やすい環境では非常にメリットがあると言われている。

要チェックニュース! <タイヤを再生する取り組みが加速しそう>

・ブリヂストンが、リトレッドタイヤの製造工場と、廃タイヤの中間処理工場を集約した「ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪」を開設。使用済みタイヤの調達から、再生タイヤの生産、販売までを一つの場所で行うことで、収益性を高めるのが狙いとみられる。(2013年7月16日)

・横浜ゴムが、タイの生産販売子会社でトラック・バス用タイヤの生産能力を増強するため、拡張工事を開始すると発表。同社は世界各地でトラック・バス用タイヤの販売を伸ばす計画を立てており、今回の工場増設もその一環とされている。(2013年4月17日)

つながりの深い業界 <化学メーカーと協力するケースも多い>

自動車
低燃費タイヤの性能アップが、ハイブリッドカーなどの燃費向上に一役買っている

建設機械
ショベルカーなどの超大型タイヤは、タイヤメーカーにとって重要な商品だ

化学
高機能タイヤの開発には、化学メーカーが提供するゴム素材の改善が欠かせない

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 粟田 輝氏

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慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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