外食編・2013年【業界トレンド】

「朝食市場開拓」「海外展開」など新市場を目指す動きが盛ん。人材採用も成長のカギ

財団法人外食産業総合調査研究センターによると、2012年における外食産業(飲食店、集団給食、喫茶・酒場、料亭・バー、ファストフードなどの合計)の市場規模は29兆1847億円。東日本大震災の影響で市場が縮小した11年に比べ、世帯当たり外食支出額が増加したことから、1.8パーセント増加した。ただし、ピーク時の1997年に比べると市場は10パーセント以上縮小。今後も、人口減少などにより劇的な拡大は期待できない。中食(なかしょく:弁当や総菜など、家庭外で調理された食品を持ち帰って自宅で食べること)や内食(うちしょく/ないしょく:家庭内で調理された食事をとること)の増加も懸念材料だ。外食業界には、少なくなる「胃袋」を取り込む方策が問われている。

市場環境の変化に対応するため、各社は経営のさまざまな場面で改革を進めている。まず取り組んでいるのが、「提供シーン」の拡大。例えば、朝食市場への本格的な開拓、海外展開が代表的である。朝食市場では、日本マクドナルドが低価格メニューを導入して集客力強化を図っているし、モスフードサービスは朝食メニュー提供店舗を現在の3倍以上に増やす意向だ(ニュース記事参照)。また、すかいらーくが年金生活の高齢者を狙って低価格セットの販売を開始するなど、フェミリ―レストランでも朝食市場開拓の動きが盛んになっている。

流通にも変化が表れている。食材の安定的な調達と食の品質・安全志向の高まりへの対応を両立させるため、野菜を契約農家で調達したり、植物工場で安全な野菜を生産したりする動きが活発化してきた。契約農家などに対して一定量の仕入れ契約を締結することで、従来の個別契約よりも安定して、場合によっては安価で調達可能となる。農家にとっても農産品の品質アップが直接売り上げにつながることになり、モチベーション向上の面も含めてメリットが大きい。

国内の市場だけでなく、海外市場を狙った動きも加速している。特に目立つのが、東アジア、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国への展開だ。海外進出する際の事業方針には、商品を現地の嗜好(しこう)に合わせる「現地化」、日本と同じ商品構成・価格設定を目指す「日本水準」、現地の競合よりも安価に設定する「価格重視」などがある。すでに成功例も出てきており、例えば「現地化」の事例では、進出先のニーズに合わせた商品が人気を呼んでいる(下表参照)。

慢性的な人手不足は、外食業界にとって深刻な課題。特に12年以降、人手の確保は難しくなる傾向にある。そこで各社は、研修を充実させたり、賃金水準を向上させたりして人材の確保に努めている。14年春の新卒採用においても、外食各社は前年並みもしくは前年以上の採用人員を計画中だ。有効求人倍率が改善しており、コンビニなどとの人材獲得競争が厳しくなっていく中で優秀な人材を集めることは、持続的な成長を実現するために不可欠だと言えるだろう。

押さえておこう <外食業界における「現地化」の成功事例>

モスフードサービス
米食の多いアジア地域で、「ライスバーガー」を主力商品として展開。台湾では大規模なテストマーケティングを実施した上で、台湾の上級米を使い塩味・酸味を薄めにするなどのアレンジを実施した「焼き肉ライスバーガー」が人気に。台湾のブランド豚を使った新商品も展開している。
吉野家
インドネシアなどのイスラム圏で、「ハラール」(「ハラル」とも呼ぶ。イスラム法上で食べることができるものを指す。加工や調理において一定の手順を踏むことが必要)に対応。また、マーケティング調査に基づき、現地の人に好評な「甘くて塩味」なメニューを新開発した。
味千ラーメン
数百店を展開している中国で、大人数でたくさんの料理をシェアする現地の文化に対応。ラーメン店にもかかわらず、焼き鳥や炒めものといった豊富なサイドメニューや、多彩なデザート類を提供して人気を集めている。

このニュースだけは要チェック <食の安全を高める動きも活発>

・日本サブウェイが、傘下のサンドウィッチ店「サブウェイ」で使われる野菜のすべてを、14年末までに契約農家からの仕入れに切り替えると発表。化学肥料・農薬を使わず、品質と安全性にこだわった食材を提供することで、価格競争に陥らず顧客を取りこむことが狙いとみられる。(2013年7月10日)

・モスフードサービスが、「モスバーガー」約1400店すべての開店時間を午前7時台に繰り上げる方針を発表。同時に、朝食専用メニューを新たに開発し、一部の店舗で試験的に販売している。朝食を外で食べる人が増え、「朝食市場」が活性化している現状に対応した動きの一例だ。(2013年4月18日)

この業界とも深いつながりが <コンビニなどの「中食」は強力な競合>

コンビニ
弁当や総菜など「中食」の拡大を打ち出しており、外食業界にとってライバル
ビール・酒造
居酒屋やバーなどにとって、ビール会社は商品の重要な仕入れ先だ

食品
食材の仕入れ先。外食企業が自ら農産物の生産に乗り出すケースも増えている

この業界の指南役

日本総合研究所 マネージャー  田中 靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギー等、主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場開拓案件を数多く手がけている。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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