WOMAN'S CAREER

Vol.173 株式会社日本旅行

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さとう・みゆき●東日本営業本部 個人旅行営業部 マネージャー。埼玉県出身。47歳。早稲田大学文学部演劇学科卒業。1991年入社。学生時代に国内旅行添乗員のアルバイトを1年半経験し、旅行商品を扱う仕事に魅力を感じた。現在、夫と2人暮らし。

10年目の異動が、仕事の奥深さと己の未熟さに気づかせてくれた

演劇学を専攻し、演劇サークルに所属していた佐藤さんが、仕事を選ぶ上で大切にしたのは「生活必需品ではないけれど、心豊かに生きる上で必要なものを扱う仕事」。演劇に携わるためマスコミ業界を志望する一方、“生活を豊かにするもの”として、旅行会社やホテル、ブライダル事業の選考も受けていた。

「在学中に、国内旅行添乗員のアルバイトもしていたんです。旅先でお客さまが笑っている姿を見るのが好きで、国内旅行を企画する仕事にも興味を抱いていました。日本旅行にひかれたのは、選考の過程で『人こそ財産だ』という言葉を何度も耳にしたからです。『旅行は、手に取れる商品でもなく、何もないところからサービスを提案するもの。いい人材がいなければ、何も生まれない』という話を聞き、個人を大事にしてくれる会社なのでは、と感じました」

 

国内旅行を通じて、日本の魅力を広く伝えていきたいと考えていた佐藤さんだったが、入社後2週間の研修を経て配属されたのは、池袋駅旅行センター内の海外旅行受付カウンター。国内旅行を扱う部署でも旅行の企画を立てる立場でもなく、海外旅行の販売や渡航手続きを担当することになった。

「それまで海外には一度しか行ったことがなく、海外旅行に関する知識はほとんどゼロ。でも、受付カウンターには毎日、海外旅行に関する情報を得ようとお客さまが途切れなく訪れます。あらゆる国の地理的な勉強から、旅行プランの詳細まで、必死に覚えていきました」

 

配属されて数カ月たったころ、ある年配の夫婦が、国内旅行の相談をしにカウンターを訪れたことがあった。対応した佐藤さんは、「お客さまのご要望に応えなくては」と、慣れない国内旅行のチケットやホテル手配、周遊チケットの取り寄せなどを、30分以上かけて進め、希望通りの旅行プランを提供した。「ここは国内旅行の受付カウンターじゃなかったのに、お手を煩わせてごめんなさい」。そう言いながら、お客さまは帰っていったという。

「ずっと待たせてしまったことに気をもんでいたら、その1カ月後、旅行から帰ってきたそのご夫婦がいらっしゃり、『あなたのおかげで本当に素敵な経験ができました』とお礼を言ってくださったんです。さらにその後、『うちの息子が海外旅行に行くんだけど…』『息子が結婚することになって、ハネムーン先を探しているの』など、ご本人のみならず、ご家族が旅行に行く際も、毎回カウンターを訪れ、私に相談してくれるようになりました。カウンター業務は、旅行という商品を“売る”だけではなく、旅行をお客さまに応じてコーディネートする専門コンサルタントである。お客さまとの出会いを通じてそんなふうに捉えられるようになり、仕事が一気に面白くなっていきました」

 

入社以来9年半、受付カウンター業務を担った佐藤さん。「あなたが勧める旅行をしたい」「旅行のことはあなたにお任せしたい」と頼ってくれる多くのお客さまに恵まれ、海外旅行に関してはスペシャリストであるという自負も芽生えていったという。

そんな入社10年目の秋、これまでの仕事とはまったく異なる、海外旅行商品部への配属が決まった。これまでお客さまに提案していた旅行の“催行管理をする側”に初めて立つことになったのだ。

「カウンターに立っていた時は、ツアー予約が入ると海外旅行商品部に連絡し、『このホテルを取ってほしい』『この日程で飛行機を取ってほしい』と依頼する立場でした。お客さまのことを一番よく理解しているし売り上げも上げている、という意識から、チケットは希望した通りの日程で用意できて当たり前だと、どこかで思っていたんです。“依頼される立場”になって初めて、自分はこれまでなんて傲慢(ごうまん)だったんだろうと打ちのめされました。催行管理をする商品部は、定められた予算内でチケットやホテルを確実に手配し、現地での添乗員さんと密に連絡を取りながら、ツアーの中身を現実的なものにしていかなくてはいけません。旅行商品を提供するとはこんなに大変なことだったのかと、カウンターにいる時には全然わかっていなかったんです。自分から見えるものだけが正しいと思っていたことに気づき、頭を殴られた気分でしたね」

 

その経験から、旅行づくりに携わるさまざまな仕事を知るため、社内外の人と積極的にコミュニケーションを取るようになったと言う佐藤さん。社外の取引業者さんから、社内他部署のメンバー、添乗員さんなど人脈が飛躍的に広がったことで、入ってくる情報量も増えていった。

海外旅行商品部を9年間経験したあとは、新設されたヨーロッパツアー専門店「新宿ヨーロッパプラザ」に配属され、課長として店舗立ち上げから運営体制の確立までを担当。ヨーロッパの魅力をより深く伝えるために、現役の人気添乗員数名をローテーションで店舗に常駐させ、お客さま向けの説明会やワインの試飲会などを開催した。海外を飛び回る添乗員さんの話を聞ける貴重な機会に、お客さまも多く来店し、週末は常に大混雑だったという。

 

現在は、東日本の全エリアにおける個人旅行商品の販売部門マネージャーとして、販売施策の立案から店舗スタッフの教育まで幅広い業務を担当している佐藤さん。経験上、店頭で日々お客さまに接しているスタッフの気持ちがよくわかるからこそ、お店にはできるだけ多く足を運び、仕事への不満や不安などにも相談に乗るようにしている。

「本社からは、お客さま一人ひとりに時間をかける丁寧な接客を求められる一方、実際の店舗では2~6人のスタッフで、国内旅行から海外旅行まで全商品を網羅しなくてはならず、常に時間に追われている状態です。私は本社と店舗間の調整役も担い、販売スタッフには、『すべてのお客さまへ同一対応は難しいよね。じゃあ今月はヨーロッパ旅行をご購入いただいたお客さまにリピートしていただけるよう意識してみよう』などと、手の届きそうなゴール設定をするなど、その人に合ったアドバイスをするよう心がけています」

 

店頭販売の現場も商品企画部門も経験し、旅行づくりにかかわる人とは社内外を問わずコミュニケーションを重ねてきた。「人脈をコツコツと作り上げ、いろんな立場の人の気持ちが理解できるようになった今だからこそできる仕事」だと話す。

「インターネットの普及によって、旅行販売カウンターはもう必要ないんじゃないかという声もあります。実際に、自分であらゆる情報を取れる時代ではありますが、人とつながってこそわかるリアルな情報もあります。マーケットの変化には敏感に、時代とともに変化していきながら、対面のスタイルだから提供できる旅行会社の新たな価値を、これからも追求していきたいと思います」

 

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ヨーロッパ旅行をさらに売っていくための販促施策をメンバーと話し合う。

 

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店頭スタッフ研修のスケジュールについて、メンバーと情報を共有する。

 

佐藤さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目、池袋駅旅行センターの海外旅行受付カウンターに配属

国内旅行の商品企画を希望していたが、正反対の「海外旅行の店頭販売」に配属される。「新人時代は、お客さまの話を聞くことに徹し、旅行の目的をヒアリングしながら、その方に合った最適な旅行を提案しようといつも必死でした」。3年後には、池袋駅内にあったカウンターが街中の店舗に移り、海外旅行、国内旅行すべての相談カウンター業務を担うことに。「店頭まで『とても楽しかった』と旅行の感想を言いに来てくださるお客さまや、リピートしてくださるお客さまにも恵まれ売り上げも好調。10年間、同じ店舗を担当しているので、手続きなどルーティン業務のスピードも誰よりも速く、自分の仕事にはとても自信を持っていましたね」。

STEP2 入社10年目、海外旅行商品部に異動

海外旅行商品部に異動し、「マッハ」「ベストツアー」のヨーロッパ、カナダ、ミクロネシア、オセアニアツアーの催行管理とヨーロッパ商品企画を担当。「今まで自分が販売してきたツアー商品なのに、実際に催行されるまでの流れをまったく知りませんでした。自分一人で完結できる仕事は一つもなく、カウンター業務しか見てこなかった私は、井の中の蛙(かわず)であったと思い知りました」。15年目には、マカオを「滞在型のリゾート」として売り出すプロモーションプロジェクトに携わった。現地を視察して専用のツアーカタログを作成し、販促活動にも参加。2006年には、社内の優良企画商品賞を受賞した。「マカオが大好きになり、これまでプライベートを含めて10回以上渡航しています」。

STEP3 入社19年目、新設の新宿ヨーロッパプラザに異動

日本旅行の強みである、ヨーロッパのパッケージツアーを専門に扱う新設店舗「新宿ヨーロッパプラザ」の立ち上げを担当。前例のない取り組みだったため、毎日が試行錯誤だったという。日替わりで現役添乗員さんに来てもらい、お客さま向けの説明会や相談会を毎日、1日に3回開催。渡航先で起こった面白い旅エピソードやオススメスポットなどを話してもらった。こうして、お客さまとの対話を大事にしていく新しいスタイルを確立していった。

STEP4 入社23年目、東日本営業本部 個人旅行営業部のマネージャーになる

北海道、東北を除いた東日本の全エリアを担当し、販売施策の立案や店舗にかかわる案件を管轄している。商品切り替えのタイミングには、全国の店舗を回り、販売スタッフに商品の売り方を伝えていく。「現場の声を商品部門や本社に伝えたり、逆に本社の指示を現場が受け入れやすいように言葉を選んで伝えたりと、両者の調整役を担うことが私の役割。今までやってきたことがすべて役立っています」。

ある一日のスケジュール

6:00 起床。朝食の準備、身支度。
8:30 出社し、メールチェック。一日の段取りを決める。
10:00 販促制作物などの打ち合わせ。
11:00 海外旅行や国内旅行の商品企画部との定例会議。
12:00 同僚とランチ。
14:30 店頭スタッフ研修の策定、資料作成。
16:00 店頭スタッフからの相談を電話で受ける。
18:45 退社。
20:15 帰宅。夫と夕食。
24:00 就寝。

佐藤さんのプライベート

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仕事でマカオのプロモーションに携わって以来、マカオが大好きに。写真は、マカオ名物のエッグタルト。

 

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平日も、仕事終わりに飲みに行くことが多い。写真は、友人と浅草に飲みに行くところ(中央が佐藤さん)。

 

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2015年5月に夫と奄美大島に旅行へ。カヌーに初挑戦し、夫婦で悪戦苦闘した。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

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