WOMAN'S CAREER

Vol.177 株式会社リクルート住まいカンパニー

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ひぐち・けいこ●分譲マンション営業統括部 首都圏営業エリアマーケティング部2グループ グループマネジャー。京都府出身。35歳。大阪大学法学部卒業。2003年、株式会社リクルートに入社。以来、分譲マンション領域の営業一筋。2012年に分社化され、株式会社リクルート住まいカンパニーの在籍となる。現在、夫と5歳の息子と3歳の娘と4人暮らし。

マネジメントが人を変える。ある上司との出会いで、人材育成の大切さを実感

「ハイヒールを履いて、背筋を伸ばしてしゃんと働いているような女性になりたい」
それが、樋口さんが小学生のころ描いていた“将来の自分像”だった。たわいのない友達との会話で、「私は将来ケーキ屋さんになりたい」「私はお花屋さん」と、特定の職業を言い合っていた時から、“何に”なりたいかではなく、“どんなふうに”なっていたいかばかりイメージしていたという。
「就職活動では、マスコミから金融業界まで幅広く会社を回りながらも、何をしたいかわからないまま、会社に合わせて志望動機を考え、口にしている自分に強い違和感を抱いていました。そんな悶々(もんもん)としていた時に、なんとなく受けたのが株式会社リクルートでした。人材領域から住宅、結婚、旅行などあらゆる分野の情報誌を扱っていて、学生からすると、“何をしているかよくわからない会社”(笑)。それゆえ、志望動機を考えるのに苦戦していると、人事担当者から『志望動機よりも、まずはあなた自身について知りたい、今までどう生きてきたのかを聞かせてほしい』と言われたんです。それまで、選考のたびにがちがちに着ていた鎧(よろい)を、脱いでいいんだ、と初めて思えた衝撃的な出来事でした」

 

全国の不動産売買、住宅購入、賃貸情報ポータルサイト『SUUMO(スーモ)』を運営する株式会社リクルート住まいカンパニーは、2012年10月に分社化するまで、リクルートの住宅領域事業部だった。ほかにも、人材事業(現・リクルートキャリア)、じゃらんなどの旅行事業、ゼクシィなどの結婚情報事業(現・リクルートマーケティングパートナーズ)まで事業領域は幅広く、当時は、入社時にどの部署に配属されるかは未知数だった。何をするのかわからない中、樋口さんがリクルートに興味を抱いたのは、面接で『とらばーゆ』(主に女性を対象にした就職・転職情報誌)に関しての事業紹介VTRを見てからだった。
「30年ほど前まで、女性が会社を辞めることはあってもキャリアアップをするという発想は乏しかった。そこに“転職する”という新しい価値観を創り出したのが『とらばーゆ』だったんです。そんな事業の歴史を知り、世の中にない価値観を生み出せる、素敵な会社だなと思いました」

 

入社して配属されたのは、住宅情報名古屋営業部の分譲マンショングループ。市販情報誌『住宅情報スタイル』(当時。現在のフリーペーパー『SUUMO新築マンション』)の広告営業として、マンションデベロッパーを回るルートセールスを担当した。縁もゆかりもない土地で、マンションの事業モデルもわからない上、営業メンバー5人のうち2人のベテランの先輩が、樋口さんの入社半年後に退職し、独立していった。突然、地元の大手デベロッパーを担当することになり、「最初の2年間は大変だった思い出しかない」と笑う。
「営業歴20年の先輩から、突然入社1年目の新人が担当になったので、お客さまにとってはマイナス要因しかありませんよね。さらに当時は、インターネットが徐々に台頭していった時代で、『お金を出して情報を得る』ことに抵抗を感じる人が増え始めていました。市販誌の売れ行きも落ち始め、広告効果もなかなか出ないという非常につらい状況です。こうなったら、私自身の介在価値を高めるしかないと思い、デベロッパーのお客さまが手がける複数の物件を毎日のように回り、売れ行きをお客さま以上に把握しようと努めました。『この物件がある街の魅力を近隣住民に取材しましょうよ』『販売担当者向けに勉強会を実施してはどうですか』など現場の課題と向き合い提案していくことで、お客さまとの信頼関係を築いていきました」

 

ターニングポイントは入社3年目の時。樋口さんの成長を本気で考えてくれるマネージャーに出会い、仕事が圧倒的に面白くなった。
「それまで、ベテランの先輩や専属のマネージャーが不在の中、仕事を進めてきたので、具体的に何をすべきか指示してくれる存在がいませんでした。その上司は、インターネットの広告商品を強化するための商品開発の担当に私を任命し、新しい特集の起案から商品設計、その特集に掲載する顧客確保を任せるなど、明確な役割を与えてくれたんです。この仕事を通じて、特集のテーマ設定のため、市場ニーズや現状課題の分析力、商品企画担当者と協業しながら、商品化していく段取り力、スケジュール調整力、社内外の関係者を巻き込んでプロジェクトを動かしていく力など、仕事を動かす上で必要なあらゆる力が身につきました。それもすべて、私の課題を抽出し、何をやらせたら伸びるかを考えた上で具体的に指示を出してくれた上司のおかげ。人材育成の大切さを、身をもって感じましたね」

 

7年目に東京に転勤したのち、第1子出産で1年間、第2子出産で1年半、それぞれ産休・育休を取得した樋口さん。復帰後も、分譲マンション営業として15~30物件を担当してきた。9時から17時半の時短勤務を続けてきたというが、「業務量とライフスタイルに合わせた働き方ができないか」と会社と相談し、入社13年目の2015年7月からは在宅勤務をスタート。現在は、グループマネジャーとして4人の営業メンバーと3人のスタッフメンバーを持ち、在宅と出勤のバランスを取りながらマネジメント業務を担っている。
「マネージャーになってから、権限の大きさと責任の重さを日々感じています。メンバー一人ひとりの課題と強みを抽出し、何を伸ばすためにどんな仕事を与えるかを決めるのがマネージャーの仕事。私自身、マネージャーによって、仕事への姿勢が一変した経験をしているので、人材を生かすかどうかはマネージャー次第だと、本当にプレッシャーを感じます。また、営業上、お客さまの要望をどこまでくめるかなど、常にスピーディーな判断を求められ、事業全体への影響の大きさを実感しますね」
営業部門のマネージャー職と子育ての両立を、在宅勤務で行うことを、大変に感じることはないのだろうか。そんな疑問をぶつけると、「それは、業務設計能力で解決できるんです」という言葉がすぐに返ってきた。
「お客さまのスケジュールに合わせるのではなく、こちらの都合に合わせてもらえるようなタイミングで動くことが大切。直近のスケジュールを調整しようと思ったら『この日程しか空けられない』と言われるのは当然です。でも2週間先なら、希望した日程を押さえやすいですよね。これは子育ての有無にかかわらず誰でもできることで、要は『私は17時半までしか働かない』と決めるだけ。また、1回の打ち合わせや商談で伝えたいことを伝えきり、その後はメールや電話のフォローで対話できるようきちんとシナリオメイクすることも、業務設計能力の一つ。私は子育てとの両立により必要に迫られて力をつけましたが、業務効率は飛躍的に上がりましたね」

 

現在、会議があるときは出勤し、自宅でもできる資料作成は在宅で…など業務内容に応じて働き方を変えているという樋口さん。今後、「営業職でもマネジメントでも、育児との両立はできる」という例を自分が働くことで示していきたいと話す。
「入社以来、分譲マンション営業一筋でやってきましたが、いまだに“何をするか”より“どう働くか”にしか興味がありません。私が介在して発信したマンション情報が、消費者に届いて住まいを購入され、生活に大きな変化が生まれたのであれば、それは誰かに新しい価値を与えたことになる。そこに大きな意義を感じています。当社のミッションは、“未来にある普通のもの”を生み出すイノベーションを起こすこと。そのためにまず、会社そのものが魅力的であることが大前提。どんな職種、ライフスタイルでもイキイキと働けて初めて、世の中に新しい価値を問う企業になれると思います。私がその好例となれるよう、会社にも積極的に働きかけ、組織づくりに注力していきたいですね」

 

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グループメンバーとのミーティング。掲載した広告の効果状況、業界の景況などを共有する。

 

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メンバーの営業同行へ。移動中も、情報収集のための貴重な時間。お客さまの状況をメンバーから詳しく聞き、業務上の相談に乗りながらお客さま先に向かう。

 

樋口さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目、名古屋営業部の分譲マンショングループに配属される

名古屋営業部に配属され、新築マンションから戸建て・中古・土地などの情報を集めた市販誌『住宅情報スタイル』の新築マンション担当として広告営業を行う。マンションの事業モデルもわからず土地勘もなく、お客さまに教えてもらいながら成長していく。「メディアを『売るだけ』なら私がやる意味がない」という思いで、お客さまに自分の価値を感じてもらうために現場を回り、物件課題の解決のサポートを行ってきた。3年目になると、伴走して具体的なアドバイスをくれる上司に出会い、マネジメントの大切さを実感。「営業力がついてきた4年目には、メンバーに任せて自由にやらせてくれるマネージャーがつき、とても心地よく仕事をさせていただきました。メンバー一人ひとりの年次、実力に応じたマネジメントがいかに人を成長させるかを学びましたね」。

STEP2 入社7年目、東京の分譲マンション営業部に異動

市販誌からフリーペーパーへ、紙媒体からネットへとメディアが大きく転換したタイミングで、東京に異動。人の多さ、電車の路線の複雑さ、営業エリアの物理的な広さなど戸惑うことばかり。メディアの力が強く、広告効果も出ていたため、名古屋時代の“営業担当の介在価値”で売るスタイルから、“綿密な広告設計”をしていくスタイルへと変わっていった。「この物件にとって最適なメディアは何か、何を伝えるべきかの設計力を常に求められ、体を張って情報収集するよりも、頭を使った、スマートな営業担当になりました(笑)」。

STEP3 入社8年目、第1子出産のため1年間の産休、育休を取得

東京に異動後、半年後に結婚しすぐに妊娠。ワーキングマザーとして復帰している仲のいい後輩がいたため、子育てへの不安はあまりなかったという。「時短勤務で仕事をしている人もいましたし、子どもを持ちながら働いている人は、社会にはたくさんいるじゃないですか。今まで自分の人生を振り返ると、『周りの人が普通にできていて、自分はできなかったこと』があまりなかったので、(育児と仕事の)両立だって私にもできるんじゃないか、と気楽に考えていました」。その後、9時~16時の時短勤務で営業部に復帰し、さらに3カ月後には17時半までに業務時間を延長していった。

STEP4 入社12年目、第2子出産のため産休、育休を経て、入社13年目に現部署に復帰

保育園になかなか入れなかったため、1年半の産休・育休を取得。その間「フィトセラピー」(植物・自然療法)のセラピスト資格を取った。「仕事とは別に、自分のキャリアや成長につながるものを持っていたい」と考えたためだ。「リクルート住まいカンパニーが新しい価値を生み出す企業であるために、自分ができることをやっていきたい。そう思う一方、ここで力をつけてから会社を辞めるのも一つの道だと考えています。そのためには、辞めたときに自分に何があるのか、今の会社で培えるものは何かを日々考え吸収していかなくてはいけません。マネジメント能力はキャリア形成においてとても大切な要素だと思うので、まずは、マネージャーにしていただいたことを感謝しながら、人材育成力、状況把握能力、判断力など総合的な力をつけていきたいです」。

ある一日のスケジュール

5:00 起床し、在宅勤務の一環として資料作成など業務を進める。
7:00 家族全員で朝食。保育園の送りは夫が担当。出勤までに掃除、洗濯、夕食準備など。
10:00 メンバーの営業同行で、お客さま先に直行。
12:00 帰社し昼食をとりながら、社内会議に向けての資料作成。
13:00 広告制作のディレクターと打ち合わせ。
14:00 メンバーのタスク整理と業務指示をメールで配信。
15:00 営業部のマネージャーミーティング。グループの売り上げ状況、市況について情報共有。
17:30 退社。保育園に迎えに行く。
19:30 夕食。入浴、歯磨き、明日の荷物の準備を済ませる。
21:30 子どもと一緒に就寝。

 

樋口さんのプライベート

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2015年2月、家族でグアムに旅行。年に1回は海外旅行へ行くというのが入社したころから実行してきた自分との約束ごと。出産後も遠出は難しくなったが有休を活用して旅行へ。

 

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保育園のパパ・ママ友と地元イベントで出会ってワイワイ(写真右から2番目が樋口さん)。子どもを通じて地域の方と知り合うことも多く楽しみが増えた。気の合う仲間とのひとときはリフレッシュの大切な時間。

 

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育休中から1年間スクールに通い始め、試験を受けて取得したセラピストの資格。まずは自分や家族の体にとってよいことを、と精油の活用や食事の工夫を生活に取り入れている。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

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